ある日突然中世フランスっぽい世界に   作:満足な愚者

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恐らくそのうち、第一話と統合します。

キリが第一話では悪い気がするので……。

主人公の強さですが、主人公の強さはあれでいいです。ただ、部下たちを少しばかり上げ過ぎてしまったような……いや、誤差の範囲内か……。

約束通りに二日間連続更新です。

それと誤字脱字訂正ありがとうございます。

作者はこの訂正報告を嬉しく思うと同時に自らの力量不足を悩むばかりです。


第二話

――刹那、場の雰囲気が変わった。

 

「テメェラ!慌てるんじゃない! とりあえず、戦闘員ではない奴らは逃げろ。そして、その他の人間も基本的に戦闘は避けろ。ドラゴンは兎も角奴らと戦闘は避けろ。いいか、これは俺からの命令だ!」

 

「「「「「Oui, mon.sieur(了解しました)!!!!」」」」」

 

副隊長の叫び声に似た号令が響き渡ると、彼らは一斉に返事をして、各々の武器を手に取り、急いで戦闘と逃走の準備を始める。

 

「すみません、隊長。隊長の眼前で俺みたいな三下が命令を飛ばすだなんて……。でも、奴らは本当にやばいんです。罰は受ける所存です。だから、今回だけは……」

 

「いい。気にするな。それにしても、俺もどんな奴がくるか見てみたい」

 

先ほどのドラゴンとの戦闘の時から少しばかり疑問に思っていたことがあった。それを確認したいし、そして何よりも部下が逃げ切るまでは時間を稼がないといけない。

 

各自が非常に素早く動いたおかげでそいつらが来た時にはすでに俺と副隊長から以外はこの場に見える人間はいなかった。

 

ソイツは竜の背に乗りながらやって来た。

 

「へぇー、送ったドラゴンの反応がなくなったから何かと思ったら、やっぱり君たちか……悪魔の軍、副隊長さん」

 

ドラゴンはゆっくりと下降して、地面に着地する。

 

ツバの大きな青いハットに、白い男性物の群服。そして、右手にはレイピアを持つその姿は、可憐であり、それが一つの芸術と呼んでも問題ないほど、整っていた。

 

男装の麗人と言えばいいのか、いや、もとより、男なのかもしれない。整った顔に、長い髪は美女にも、美男子にも見えた。とりあえず、言えるのはその人物は美しかった。

 

しかし、だ。その人物を見た時、俺の体のどこかが、体中に警鐘を鳴らす。

 

――ヤバい。コイツはヤバい。

 

脳が、心が、そして本能が、そいつのヤバさを俺に伝える。

 

戦場ですらそうそうなかった。そいつは俺たちに死を思い出させた。

 

「覚えていてくれたのか? こんな美人さんに覚えてもらえるなんて、男冥利に尽きるねぇ……」

 

「一度逃した首は、忘れないのさ。そして、そちらの人物はどちらさんだい?」

 

「はっ、聞いて驚け! こちらの人物は俺たちの隊の隊長! この悪魔の軍、隊長であり、“不死”の二文字を背負う男だ」

 

「……へぇ、私は知らないけど、結構有名な人なんだね。覚えておくよ」

 

「何? 隊長を知らないだと? どんなモグリだお前、それだけ腕の立つなら何処かの軍人だと思うが、隊長の名前を知らないだと? お前らの上司、竜の魔女の師であり、“不死”の二つ名をもつ隊長だぞ」

 

副隊長のその言葉に、そいつは顎を手に当て考えるそぶりを見せる。

 

「ジャンヌダルクの師匠だと……そんな人物であれば僕が知らない筈はないが……っく、狂化された影響か考えがまとまらない」

 

ソイツはブツブツと何か独り言をつぶやいたと思えば、急に顔を上げる。その瞳には狂気の二文字が見えた。

 

「――まぁ、いいや彼が何であれ、関係ないか。ここで、副隊長も君も死ぬんだから、ね」

 

――やばい来る。

 

「――おい、俺の剣、まだ持っているか?」

 

「すみません、返すのが遅れました。これです!」

 

そう言って副隊長は腰に吊るしてあった剣を俺に投げる。長年使い越した剣であり、何の種も仕掛けも無い普通の一兵に配られたただの剣。切れ味も、そこまで良くはなく、長さも普通。特徴なんてどこにもない、ただの西洋剣。

 

でも、それを受け取った瞬間、それが手にしっくりと馴染んだ。

 

これが、俺の武器なんだと本能が告げた。

 

「――っち!」

 

弾丸のように突っ込んできたそいつと打ち合う。しかし、その勢いを受け止めるにはまるで足りずに後ろに吹き飛ばされる。

 

「驚いた。その剣ごと叩き折るつもりだったと言うのに……まさか、サーヴァントだとはね。いや、サーヴァントなのか、キミは?」

 

「人を召使い(サーヴァント)呼ばわりだとは、いただけないな。いきなり切り掛かってきて、それはないだろ」

 

「なるほど、君自身も自分が何なのか分かっていないという訳だね。まぁ、いい。君が何であれ、ここで討つことには違いない」

 

再び弾丸のようなスピードでこちらに向かってくる。

 

――力では勝てない。

 

さきほどの一太刀で分かった。コイツの方が力は圧倒的に強い。それさえ分かれば十分だ。

 

「――っ」

 

横からの一閃。その次は突き。そして、左からの薙ぎ払い。

 

その全てをいなす様に立ち回る。真面から打ち合えば、確実に負ける。なら、まともに打ち合わなければいい。

 

攻撃をいなし、力を拡散させる。

 

あの地獄で攻める剣技を磨く機会はなかったが、受ける剣技なら……きっとこのフランスでは誰にも負けない。

 

さきほどから思っていたことの答えは出た。何の因果か分からんが、俺は生前よりも力が増しているようだ。

 

「驚いた。まるで、歯ごたえがない。水を切っているような感じだ……。実戦にて培われた見事な剣技だ」

 

数回打ち合うとそいつは顔を驚愕にそめて、バックステップにて大きく距離をとった。

 

数度の打ち合いで十分分かった。確かにコイツは強敵ではあるが、一人だけなら十分に相手を出来る。“勝てる”ことはなくても“負ける”ことはない。

 

――しかし、だ。

 

問題は別にある。

 

目線をソイツから少しずらせば副隊長の姿が見えた。彼を巻き込むことは避けたい。

 

今の立ち位置的にアイツの方が副隊長に近い。狙われれば……。

 

「彼が心配かい? うふふふ、なら一つ約束しよう。僕はただの“見物人”には手出しをしないってね。なに、ここまで僕と打ち合える人間は珍しいから。そのお礼とでも思ってくれればいいよ」

 

俺の視線に気づいたのか、そいつは笑う。男だろうと女だろうと惚れてしまいそうな魅力がそこにはあった。

 

――見物人には手出しをしない。

 

この条件は確かに俺にとっては破格の条件だ。その瞳を狂気に染めてはいるが、まだどうにか理性はあるようだし、そいつが本当に自らが言ったことを守るのなら俺にとってこれほど有り難いことはない。

 

でも、だ。

 

それはあくまでも見物人には手出しをしないというだけであり、ソイツが見物人ではなくなれば、手を出すということである。

 

俺が隊長を務めた隊は社会につまはじきされた奴らの寄せ集めだ。意地やプライド、そして人情で生きている人間ばかりだ。そんな隊に所属する人間に、“君は弱いから、何もしなければ助けてあげる”なんて小ばかにしたことを言うとどうなるか

 

「て、てめぇえええええええ!」

 

 

――そう、怒るよな、お前は。怒らざるを得ないよな。

 

副隊長は手に短剣を大きく振り上げて、ソイツに……。

 

「――待て!」

 

その動きを止める。他の誰でもない、俺だからこそ出来ること。

 

「た、隊長!」

 

目が合う。

 

長い付き合いだ、それだけでもう言葉は要らない。

 

「これは、隊長命令だ。副隊長、ここで死ぬことは許さん! 生き延びろ!」

 

「しか――」

 

「誰が言い訳を許した! 返事は!」

 

「Oui, mon.sieur(了解しました)!」

 

「お前は、これより隊員を集めて、安全なところまで皆を避難させろ! お前らも、すぐに動け! これは隊長命令だ。返事は要らん!急いで行動に起こせ!」

 

物陰に待機して、機会を窺っている彼らにも聞こえるように大声を飛ばす。戦場では大声を常に上げていたし、声は何時の間にか大きくなっていた。

 

「へぇ、殺意に染まった人間を言葉一つで止めるか……よほど部下に慕われているようだね」

 

「お世辞は有り難く受け取っておくよ」

 

ソイツは感心したようにうなずくと、

 

「見物人には手出しをしないと誓ったからね。彼が僕を攻撃しない限り、何処に行こうと僕はかかわらない。でも、しまったなぁ、また逃したとなると何て言われることやら……」

 

ソイツはもう副隊長の方を見ずに、俺と向き合う。

 

「それじゃあ、ギアを一つ上げさせて貰うよ」

 

あれでまだ本気じゃなかったのか……。

 

腰を深く落とすとそいつはまた俺に向かって突っ込んできた。

 

「隊長ご武運を!」

 

その隙を逃さす副隊長は駆けだす。

 

うん、それでいい。

 

――今はまだ、こいつらに俺たちの手の内を見せる必要はない。

 

「ハァア!」

 

叫び声とともに心臓めがけ突きが飛んでくる。速さも鋭さも先ほどよりも上がっている。

 

どうやら、本気ではなかったことは本当のようだ。本当に化け物かよ……。

 

――チッ! 

 

舌打ちと共に半身になって躱す。

 

横からの一閃。 

 

剣で受け止め、その勢いをそのままに後ろに飛ぶ。

 

相手はそれを予想していたのか、こちらに突っ込んで来る。

 

――そして、上段からの一撃。

 

しかし、俺が予想した攻撃が来ることはなかった。

 

俺たちを止めたのは空から降ってくる声。

 

「あらあら、誰がこの男を逃していいと言ったのかしら、セイバー?」

 

その声を聞いた第一印象は冷たくもあり、そして熱くもあるといった矛盾を感じた。心の底から、出てくる全ての物を軽蔑した冷めたさに、憤怒や恨みなどの熱を混ぜ合わせた様な、そんな印象を受けた。

 

その声を受けて、打ち合っていた剣が止まった。

 

「何か言ったらどうなの? 貴方は二度も獲物を逃がすのかしら? それともなに、サーヴァントでも見つけたのかしら?」

 

ソイツは空から竜に乗り降りて来た。竜の大きさは、さきほど襲ってきた奴らよりも一回り大きい。

 

そしてソイツは降り立つ。

 

彼女と目が合った。

 

「「――っ」」

 

息を飲んだのは、どちらだったのだろうか。彼女なのか、それとも、俺なのか。いや、お互いだったに違いない。

 

この世の全てを染めるような真っ黒な衣装に、色素が抜けきったような銀の髪。瞳は全てを炎に染めんとするする憤怒に染まり、そして手には漆黒の旗を掲げていた。旗には大きな竜の印。

 

全てあの時の彼女とは違う。でも、俺には分かる。

 

彼女は間違いない。風貌は違う、見た目も違う。

 

何もかもが違う。

 

でも、俺には分かる。ずっと、彼女の傍にいた俺は分かる。

 

そう、彼女は間違いなく

 

――ジャンヌダルク、その人だ。

 

 




そう言えば、あれだFGOの主人公の性別決めてなかった。どっちでも、特に内容は変わらないのでダイスで決めます。

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