告知するにはどのような手段がいいでしょうかね……。
このくらいの文字数なら何も考えずに書くことが出来るのでいいですよね。
はやくグダグダとして日常を書きたいのですが……本編が終わるまでは……番外編でその内書くかもです。その時は章分けしますね。
彼女の黄金に輝く瞳と目が合う。
「――――」
沈黙が流れたのはどのくらいだっただろう。
――それは一秒にも、十秒にも、そして、十分にも永遠にも感じた。
いや、実際のところ、そこまでの時間は流れていないのかもしれない。
しかし、俺にはその時間が、長くも短くも感じた。
彼女は小さく、口を動かす。
「――――。――――」
その口から洩れた言葉は、風に流され誰の耳にも届くことがなく宙に溶けて消えた。
「久しぶりだな。しばらく、見ない内に随分と変わったもんだ」
黒く染まった彼女に声を掛ける。あの純白な彼女とは何もかもが正反対だった。
この世の全てを燃やし尽くさんと、憎悪によって燃える瞳に、漆黒に染まった衣装、漆黒に染まるは、服だけでなく、彼女の代名詞と言えるあの純白の旗でさえも、黒く染まっている。
そして、あの長くて癖のない純金のような美しい髪は、色素がなくなり、銀色に変わり、そして大幅に短くなっていた。よく見れば身に纏う衣装も隅の方がまるで燃えた後の様にボロボロになっていた。
「まさか、今更あなたが召喚されるなんてね……。いえ、寧ろここまでなったから召喚されたのかしら……? まぁ、どちらでも良いわ。久し振りね、まさかお互いこんな所で顔を合わせるなんてね」
その声はあの時の璆鏘琳瑯としてなるような声ではなく、体の芯まで凍り付きそうな、憤怒と嫉妬、そして憎しみに満ちた声だった。
「召喚……? 何言ってんだ、お前? 何か知っているのなら教えてくれないか。こちとら、死んだと思ったら急にこんな世界で右も左も分からないんだよ」
俺の言葉に、彼女は右手を顎に当て何かを考えるようなそぶりを見せる。
「……自分の状況が分かっていない? ……聖杯による不完全なサーヴァント召喚? いや、そうよね、考えてみれば当たり前のことよね。完全なサーヴァントとして召喚されるはずがないもの。いえ、寧ろ貴方はサーヴァントと言うくくりに入るのかしら?」
「何をブツブツ言ってるのか知らないが、お前も俺を召使い(サーヴァント)呼ばわりか? 確かにあのドンレミの村では、お前の世話を色々と焼いた覚えがあるが、流石に召使い(サーヴァント)呼ばわりは感心しないな」
俺的には召使いというよりも、兄のような感じで接してきたつもりだったのだが、内心で召使いと思われていたのなら甚だ心外である。
「うるさい! そういう事じゃないの!」
俺の言葉を彼女は顔を赤く染めながら大きな声で否定する。
あっ、今の彼女は、昔のジャンヌのまんまだな。それに髪も短くなったし、何となく彼女の幼少期を思い出す。
「あっ……げふんげふん! 今のはなしよ!」
普段のイメージとは違うのか、先ほどの剣士が驚いた視線を黒いジャンヌに向ける。見られていたのに気づいたのか、黒いジャンヌは咳ばらいをして、
「とりあえず、アナタが自分の置かれている状況が分かっていないというのなら、私からは言うことはないわ!」
と仕切り直した。ちなみにその頬は未だに朱に染まっているのは言うまでもない。
昔から思っていたがジャンヌって俺が居ると締まらない奴だよなぁ……。
彼女の苦し紛れの言い訳に似たフォローが成功したのかしていないのか、それは今は置いておこう。
彼女が言うつもりがないと、言うのなら彼女は言わないんだろう。
それなら、俺は別に聞きたいことがあった。どうせ、俺自身の状況は他の誰でもない、自分自身が一番知っているし、この情報がなくても俺がするべきこと、彼女――竜の魔女に聞かなければならないことは決まっている。
「じゃあ別に聞きたいことがある」
「何で私がアナタの質問に答えなければいけないのかしら?」
「ここで、会ったのも何かの縁だろ。それに、聞きたいこといっても簡単で単純なことさ。君なら分かるだろ? 俺が聞きたいことと言うのが……」
「――分かったわ。少しだけアナタの茶番に付き合って上げる」
「お前が、竜の魔女で間違いないか?」
俺の問いかけに彼女は真っ直ぐに応える。
「ええ、私が竜の魔女よ」
「それじゃあ、君の目的は?」
「このフランスと言う国の滅亡」
――その瞳に迷いはない。
「その理由は復讐か?」
「……えぇ、私と貴方を殺したフランスへの復讐よ! 主の声はもう聞こえない。それは、フランスと言う国を主が見限ったから、だから私はこの国を滅ぼす。主の代わりに鉄槌を下し、貴方と私の憎悪を持ってフランスと言う国を炎に包む!」
――その瞳は小さく揺れた。しかし、その瞳の奥にある芯はぶれていない。
「そうか……では、そのフランスを滅ぼすという行為は君自身だけの為か?」
「――ええ」
――彼女の瞳は……。
「じゃあ、最後に一つだけ。これが一番聞きかったことだ。――フランスを滅ぼすというのは君が、君自身が望んで選んだのか……?」
「もちろんよ」
彼女のそのセリフは今までの問答の中で一番本心から出たセリフだった。かれこれ、彼女との付き合いは長い。お互いに嘘は通用しない。それは彼女の姿が変わり果てても同じようだった。きっと、彼女にも俺の嘘は通用しないだろう。
「フランスを滅ぼすのは私の心の底からの願望よ。それを聞いて貴方はどうすると言うのかしら?」
「君なら分かるだろう? 俺がなんて言うかなんて」
そう、お互いに相手の事を知り尽くした俺たちなら。俺の内心を考えを一番よく知る彼女なら、俺の口から出るセリフが分かるはずだ。
「――“君がそれでいいならそれでいい”」
俺の答えはそのセリフを於て他に無い。
「――っ」
小さく息を飲む音が聞こえた。彼女の顔には、納得として不服といった相反する矛盾する言葉が浮かび、そして少量の動揺の色が浮かんでいた。
「質問は以上だ」
「じゃあ、私からも一つだけ言わせて貰うわ。ねぇ、私の下に来ない? アナタと私が手を組めば、簡単にフランスを滅ぼせる。今、邪魔をしているあの白いのだって、他の有象無象のサーヴァントだって敵ではなくなる。ねぇ、フランスと言う国を一緒に滅ぼさない? だって、あの時処刑されなければ私とアナタは……」
「その答えも別に聞かなくても分かってるだろ? 君がフランスを滅ぼすのに深い事情があることは分かった。その気持ちが憤怒であれ、憎しみであれ、嫉妬であれ、それを君が選んだのなら、俺は否定しない。“君がそれでいいならそれでいい”。でも、君の選択を否定しない代わりに俺も選択肢の中から自分の選択を選ばせて貰う」
「俺は他ならない自分自身の意思で持って君のその活動を止めさせて貰う」
彼女が彼女の意思で道を選んだように、俺は俺の意思をもって道を選ばせてもらう。ただ、それだけの話だ。
「――そう、やっぱりアナタはそう言うと思っていたわ……」
彼女はそう薄く笑うと、
「セイバー撤退よ」
そう、彼女の横に立ちレイピアをその右手に構えていた人物に声を掛けた。
「しかし、彼をここで討たなくていいのですか?」
「彼は特別よ。他の有象無象はサーヴァントも含め殺して構わないけど、彼だけはなるべく生かして捕らえたい」
「でしたら、彼が一人でいる今がチャンスでは? こちらはマスターも含め二人のサーヴァントがいます。彼が幾ら柔の剣技の使い手でも二人がかりなら……」
「いいえ、彼の力と知名度を考えるとサーヴァント二人で生け捕りは厳しいわ。“今の”知名度と伝承を考えれば、仕留めるのにサーヴァントが三人、生け捕りにしようと思えばもう一人は確実にいるわね」
「――なっ! そこまで、彼には知名度が……」
「そうね、知名度だけなら、私以上はないとしても、同等程度にはあるでしょうね」
「それだけの知名度がある英霊なら、私が知らない筈は……」
男とも女とも、美少女とも、美男子ともとれる彼女は少し焦ったような声色を出す。
「セイバーそこまでよ。彼とここで打ち合っても“勝ち”はしないし、“負け”もしない。千日手のまま日が暮れるわ。だから、今日は引く。マスターの言葉が聞けないのかしら……」
「いえ、そういう事でしたら、マスターの御意思に従います」
「そういうことだから、私達は一度引くわ。私はアナタがこちらについてくれるならいつでも大歓迎だから……でも、もしも、気持ちが変わらないようであれば、次からは、私とアナタは……」
「あぁ、そうだな――敵同士だ」
彼女は俺の言葉に小さく頷くと竜に跨る。横に立っていたセイバーと呼ばれた騎士も同様に竜に跨る。
この日初めて俺と彼女は敵同士になった。
竜に跨った騎士がこちらを向き口を開く。
「すまない、名乗るのが遅れた。私の名はシュヴァリエ・デオン! 覚えておいてくれ、“不死”の隊長よ!」
「あいよ」
その言葉に右手を上げて返す。
竜はその翼を羽ばたかせ、空へと浮かぶ。その彼女の背中越しに言葉を掛ける。
なに、少しだけ昔の様にからかってやろうと思っただけだ。
「髪、昔みたいに短くなってるじゃねぇか。それもそれで似合ってるよ」
「――っ! 馬鹿!」
髪が短くなったことによって見えるようになった、うなじが少し朱の色を帯びた。この分だと顔も真っ赤だろうな……。
ほんとに締まらない奴だ。
俺がそう笑っていると、
「アナタのその服装は似合ってないわ!」
そう返された。
――あぁ、そう言えばTシャツ短パンのままじゃん。
Tシャツ短パンに西洋剣を持つ青年……。締まらないにもほどがある。
どうやら、ジャンヌだけでなく俺も締まらないやつだったみたいだ。
――とりあえず、早めに着替えよう。
先決するべきはまずこれだ。