この作品実はプロローグを書く前にクライマックス部分を書き終えておりまして、そこに向かう道筋を一時期見失ったので非公開にさせていただいておりました。
でも、思えばこの作品は元々何も考えずに書き始めた話なので、このまま何も考えずに突っ走りたいと思います。でも、もしも特異点が発見されたのなら、定礎復元まで再び非公開にするかもです。
気が付いたらジャンヌリリィで番外編を一話書いていた……。本編が終われば公開しますね。多分。
「――以上が私たちが話せることの全てです」
橙の癖のあるショートヘアをシュシュで結っている少女、藤丸立香はそう言った。
さきほど、俺が危機一髪割り込んで守った少女はどうやら、あの集団のリーダー的なポジションらしく、色々な事を話してくれた。橙色の髪に、茶色の瞳、髪は短く昔のジャンヌを思い出させる黄色人種の少女は、未来から世界の危機を救うためにこの世界にやって来たのだと語った。
彼女からは色々と有意義な情報を聞くことが出来た。
聖杯について、サーヴァントについて、マスターについて、魔術について、カルデアについて、人理について、未来の地球が亡びることについて、レイシフトについて、そして、特異点について……。
西暦2016年、人類は突如滅びることになる。その原因となる事柄は特異点と呼ばれ、世界各地、色々な時代に存在すると言う。その特異点を正し、歴史を元の通りに戻すことが彼女たちの使命なんだとか。
そして、この中世フランスに来てからはもう既に結構な日数が経っているらしく、初めは立香とマシュの二人だけだったが、今では仲間も増え、先ほどの四人に加え、さらに数人の協力者を得ることが出来たらしい。
「なるほど、つまり君たちは竜殺しの呪いを解くために聖人を探しており、二手に分かれた。そして、聖人を分かれた仲間が見つけた。その仲間と合流するために、集合場所であるここに向かっている最中にあの竜の軍勢に襲われたと」
「はい、そうなります」
立香の隣に立つ少女が俺の言葉に応える。立香と同じくショートヘアのその少女の名前はマシュ・キリエライト。自分の身の丈ほどある大きな盾が特徴の彼女はサーヴァントと人間が融合したデミ・サーヴァントと呼ばれる存在だそうだ。
「隊長、どう思いますか? サーヴァントだとか、人理だとか、魔術だとかよく分からんことをのたまっておりますが……とてもじゃないですが、与太話にも程があります」
俺の横に立つ副隊長は怪訝な様子を隠そうともせずに言う。
俺たちが昨日、今日と拠点にしている滅びた街。その中で唯一奇跡的に無傷だった建物の中には俺を含めて四人の人物がいた。
本当ならば、マシュと立香を未来からサポートするモニター役、ロマニ・アーキマン、通称ロマンと呼ばれるスタッフもいるらしいのだが、通信が安定せずに連絡が取れないらしい。未来からの通信やら、レイシフトやら、俺が知らない2016年の地球は科学的にも他の分野的にもとんでもないくらい進歩しているらしい。
その他の人間は先ほどの戦闘の傷を癒したり、竜の肉で料理を作ったりと色々とやっているため、ここにはいない。
この調子でいけば今日も難癖つけて飲み会が始まりそうだった。
「確かにいきなり、魔術やら、人理やら言われれば与太話と切って捨てるが、現状を見てみろ。竜が空を飛び、死者がゾンビとなって人々を襲っているんだ。魔術やら、サーヴァントやら、聖杯の話が本当だと裏付けているようなものだ」
普通の世界でいきなり、魔術やらサーヴァントやら言われば与太話と切って捨てるか、そいつの頭の中を本気で心配しただろうが、生憎現状は普通ではない。ドラゴンが空を舞い、死者が生き返り、明らかに人の身以上の力を持つ奴らがうろついているんだ。
彼女達の言葉を信じるよりほかない。
今の俺に出来ることは、“あるがままの世界を受け入れることだけ”。考えるのも、疑問に思うのも、否定するのも、肯定するのもその後だ。
「まだ、君たちに聞きたいことはあるが、あまりこちらから一方的に聞くのもあれだ。今度は君たちの方からの質問に答えよう。何か聞きたいことはあるか?」
「貴方はサーヴァントなんですか?」
「それについては何も言えない」
立香からの質問にこう返し、さらに付け加える。
「自分でもよく分からないんだ。サーヴァントになれば座から色々とバックアップを受けるらしいが、俺にはそのバックアップがない。知識だって生前に持ち合わせたものだけだ。でも、あの時、あの場所で俺が死んだのは間違いない。死んだ人間が甦る道理はない。と、言うことは俺もサーヴァントと言えるのかも知れない。それに、竜の魔女の手下であるサーヴァントとも打ち合える力を何故か持っている。人間でもなく、あのゾンビとも違うのなら、それはサーヴァントと言えるのではないかな」
実際に自分でもよく分かっていない。でも、今まで聞いた情報をまとめると、サーヴァントである可能性が高いようだ。
確信の得ない俺の言葉を聞いた後、立香の横に立つマシュが口を開いた。
「貴方からは、サーヴァントとも人間とも言えない独特の雰囲気があります。どちらでもあり、どちらでもないような……。人間とサーヴァントが融合したデミ・サーヴァントの私以上に不安定です。彼女の様に不完全に召喚されたのでしょうか?」
「それにしては、完全にサーヴァント化している彼女と違って彼は不安定すぎる……こういう時に限ってドクターロマンとは連絡取れないし……」
マシュの言葉をうけ立香は顎に手を当て、むむむと眉間に皺を寄せる。
「まぁ、俺の事は自分でもよく分からないから置いておこう。俺がサーヴァントであれ、人間であれ、君たちの敵ではないことは間違いない。むしろ、目的も同じだ。他に何か聞きたいことはあるかい?」
俺の言葉に、立香はゆっくりと口を開いた。
「貴方は一体何者なんですか?」
その彼女の質問に答えたのは俺ではなく、横に立つ副隊長だった。
「お前ら、そんなことも分かってなかったのか? 未来からこの時代に来たと言うから、てっきりこの時代の人間については調べて来たとばかり思っていたんだがな。このフランスで黒目黒髪の軍人と言えば、この人しかいないだろう。いいか、よく聞け、この御方こそがあの世に一番近い隊の隊長であり、“不死”、“不死不殺”、“悪魔”の二つ名を冠する人物。そして、かの聖女ジャンヌダルクの師であり、一緒に処刑された、俺たち悪魔の軍の隊長様よ!」
「――――」
情報交換は、訪問者が来るまで続いた。
――コンコン。
木製の扉をノックする乾いた音が部屋に響いた。
情報交換も殆どが終わりかけの時だった。色々と決まったこともあるので、それについては、後々時間があるときに話したいと思う。
「はいよ、あいてるよ!」
意外と話し合いが長引いたため、宴会を待ちきれない部下達が突入でもして来たか。
そんな事を考えていた俺だったが、
「……え!?」
ドアの向こうからそんな驚いたような声が聞こえてきた。
聞こえてきたのは、“え”という一文字だけ。しかし、それでも俺には十分だった。
その声を俺が聞き間違える筈はない。
――まさか……。
扉が開かれ、二人の人物が入ってくる。
一人は背の高い男性だった。渋柿色の鎧を身に纏い、その腰には一本の剣。凛々しい顔つきにその目には悪を嫌う正義の二文字が見て取れた。一目見ただけで分かる。彼は聖女と同じく、神の名の下に生きて来た高名な人物だと。俺たちとはまるで正反対。彼はきっと聖人と呼ばれる人物なのであろう。彼が一歩部屋に足を踏み入れると長い髪が揺れた。
そして、もう一人。ローブを羽織っていた人物はそのローブを脱ぐ。
その人物は女性であった。純金の様な癖のない黄金の長い髪に、澄み切った青い瞳。碧眼は慈愛や慈悲の文字を宿し、整った顔はまるで女神のようだった。身に纏う衣装は漆黒ではなくあの時と同じく、純白のまま、穢れを知らない聖女のままだった。
全てがあの時、あの場所のままだった。
サーヴァントになれば、同じ場所に同じ人間が召喚されることもあると、先ほど立香から聞いたが、まさか、本当にそのままの人物が二人もいるなんてな……。いや、これはでも……あの竜の魔女に比べて……。
彼女と目が合う。彼女はよっぽどの驚きを受けたのか口をまるで酸素の足りない金魚のようにパクパクとさせた後、
「――お兄ちゃん!? どうして、ここに……!?」
――それは俺が聞きたいよ、ジャンヌ。
何の因果か分からないが、こうして俺と聖女ジャンヌダルクはこうしてフランスのある滅びた街で再会するのだった。
「お兄ちゃん……?」
ジャンヌの言葉に首を傾げるマシュと立香の視線に気づいたジャンヌは、顔を真っ赤に染めながら、
「えーっと、これはあれなんです! 間違いました。お兄ちゃんだなんて言ってないです! えーっと、彼は、えーっと!」
顔を熟れたトマト以上に赤くさせ、あわあわと手をぶんぶんと振り回すジャンヌ。何とも締まらない奴だ。この辺りは黒い方と変わりないようだ。
思わず笑みが零れた俺に、ジャンヌは、
「な、何を笑っているんですか! このままじゃ私のイメージが! 聖人としてのイメージが……せっかく真面目に作って来たのに……」
そんなイメージは元よりないと思うのは俺だけだろうか……。
様々な疑問点があるものの、俺たちは手を結び、オルレアンにて竜の魔女を倒すために共闘すると約束した。
物語は大きく動き始める。
何処を削ってどこを書くか非常に悩む今日この頃。難しい……。