ある日突然中世フランスっぽい世界に   作:満足な愚者

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感想に指摘していただいたのですが、ジャンヌが立香の書いている日本語と主人公が書いていた文字が同じだとして主人公が未来から来たのではないかと予想した件についてです。

これは私が日本語が漢字、ひらがな、カタカナで形成されていると書いたのが悪いのですが、ここで言いたかったことは同じ漢字、ひらがな、カタカナで構成されているとは言え、現代と過去ではそれを文字に書き起こした時、まるで異なるということです。例えば江戸時代に書かれた書物と今の現代人が書いた文字とを見比べた時に、まるで違う文字の様に見える筈です。学のない作者にとっては昔の書物に書かれた言葉を見るとまるで異国の言葉の様に感じられます。ようは無学ゆえの話なのですが……。

閑話休題

ジャンヌは一応聖杯からの知識のバックアップがないので、文字の形だけで判断するしかありません。立香と主人公は未来から来てその年代も同じくらいのなので、文字の形も非常に似ています。そして、マシュが立香が未来の日本から来たと言ってますので、ジャンヌは主人公が未来から来たのではないかと仮説を立てたのです。


FGOの新章面白かったですね。難易度的にはキャメロットの方が上だった気がしますけど……。


第八話

その日は良く晴れた日の事だった。空には水で濡らした画用紙に青い絵の具を思いっきりぶちまけた様な青とも水色とも取れる晴天が広がり、雲の一つも見えなかった。

 

雲の代わりに見えるのは数えるのも億劫になるほどの竜の群れ。俺たちが今から攻め込まんとするオルレアンの空には黒い一つの生き物に見えるような密度で大量の竜が飛んでいた。間違いない、俺とジャンヌの予想通り彼方さんはこの戦いで全てを決めるつもりのようだ。

 

晴天を体現したような空はあの時と同じに見えた。

 

しかし、あの時とは違う。同じオルレアン奪還のための戦いだが、その意味合いが大きく異なる。あの時はイングランドからフランスを取り戻すために、今回は竜の魔女から世界を救うために。

 

――まさか、再びこの場所での戦いとなるとはな……。

 

人生塞翁が馬とは言うが、本当に分からないものだ。あの時一緒に戦った少女と同じ場所で今度は敵対する。本当に人生よくできたものだ……。

 

そう小さく笑みが零れた。

 

「――――――っ! ―――――っ!!」

 

軍服を着た大量の兵士の前に立つのは特徴的な金色の長髪。艶のある金髪を風にたなびかせ、決意の色が籠った碧眼で眼前の兵士を見渡す。手には、純白の旗が風に揺られていた。

 

フランス全土から最終決戦の為に集められた人数は、あのオルレアン奪還の時よりもと同じ程度か、さらに多い。綺麗な列を組み、一心に聖女の言葉を聞くその姿はあの時の焼き直しのようだ。

 

聖女の前、兵士の一番前立つのは鈍色の甲冑を着こむ戦士、清廉潔白、純白の騎士、その二つ名に相応しい彼の名前はジル・ド・レェ卿。このフランス軍の総大将を務める人物だ。

 

竜の魔女とジャンヌダルクはとてもよく似ている。当たり前の話だ。竜の魔女は聖女であり、聖女は竜の魔女、その根本は同じジャンヌダルクと言う一人の少女なのだから。

 

だからこそ、彼女をよく知らない人物は聖女を竜の魔女と勘違いしやすい。事実、聖女本人もフランス兵に竜の魔女と間違われ襲われかけたそうだ。

 

しかし、今はそんなことはない。ジル・ド・レェ卿が「彼女こそが聖女で、竜の魔女は偽物だ。聖女は天の国からこの国を救うために甦ったのだ」と、兵士の前で断言したからだ。勿論、ジル・ド・レェ卿の言葉は適切でない。聖女は竜の魔女で竜の魔女は聖女だ。でも、それを確信しているのはこの場では俺とジャンヌだけだ。ジル・ド・レェ卿が知る筈もなかった。

 

あの戦いで生き残った兵士であれば、大戦の前に兵士の前に立ち邁進させたジャンヌダルクのことは覚えているだろうし、白いジャンヌを見てその言葉を信用してくれるという確信はあった。

 

それでも、混乱はあると思ったが、小さな混乱すらない。ただ、皆黙って聖女の言葉を聞いている。

 

これもジル・ド・レェ卿の信用と信頼と聖女への信仰が成せることだろう。

 

『『――――!! ――!』』

 

聖女の鼓舞に応えるように兵士たちの士気も上がる。もともと自国を守るための戦いで士気も高った兵士たちが救国の聖女を目の前にして更にその士気を上げる。

 

「隊長」

 

そんな様子を少し離れた場所から見ていた俺の背中に声がかかる。

 

「どうした?」

 

振り向けばよく見慣れた野郎たちの顔。フランス全土で暗躍していた奴らも全てが揃っていた。

 

最後の最後までフランス政府軍とは折が合わずにあの時と同じように正規軍から少し距離を置いて集まっていた。最後まで我儘と言うか自由な奴らだ。本当にこいつら“らしい”。

 

皆、笑顔だった。思い思いに雑談をしている奴や、得物の最終チェックをしている奴、様々な奴らがいた。しかし、どんな奴も皆、笑顔だった。今から戦いに行く人間にはまるで見えない。その顔には死に対する恐怖何て微塵も見えない。

 

「どうしたって、言う必要あります?」

 

その先頭に立つのは副隊長。その顔に浮かぶのは笑いの色。

 

彼の問いかけに、俺も笑って首を振る。

 

「そうだな。それじゃあ」

 

俺の言葉を受け副隊長が号令を掛ける。

 

「お前ら! あの“不死”の隊長のお言葉だ! 聖女の言葉だけでは俺たちは物足りない、なぁそうだろ!」

 

『そうだそうだ!』 『俺たちには聖女じゃなく、隊長の言葉こそが相応しい!』 『隊長! 戦場にて“不死”の二文字を冠する貴方が死ぬはずはないと信じてました!』

 

「お前ら! 敬聴せよ! 我らが隊長のお言葉だ!」

 

その声を聞いた部下たちの動きは速かった。笑い声がぴしゃりと止まったと思ったら、数秒も立たずに一糸乱れぬ列となり、誰もが背筋を伸ばし、視線を俺へと向けた。その表情は誰しも真剣の二文字を帯びていた。その様子は横に並ぶフランス正規軍と同等かそれ以上の統一感があった。

 

「まずは、こうして全員が揃ったことを嬉しく思う。お前達、よくぞ竜の群れを乗り越え、誰一人も欠けることなくこの日まで生き残って来た! 流石はあの地獄を生き残った奴らだ! 俺はお前らの事を誇りに思う!」

 

「そして今日は、あの戦いと同じくフランスの記念すべき日になる! あの時はイングランドからフランスを取り戻す戦いであり、今回は竜の魔女からフランスを守る戦いだ! 相手は竜を操る竜の魔女、既にその手によって俺たちの愛すべきフランスはその殆どを焦土に姿を変えている! 厳しい戦いになるのは必至だ! ここで、奴を討たなければ、世界が亡びるそうだ! でもな、お前ら! 俺たちには世界を守る戦いなんて柄じゃない、なぁそうだろ!?」

 

『『その通りです、隊長!』』

 

俺の問いかけに隊員一同が声を揃えて叫ぶ。多数の人数で出された声は寸分の狂いも無く同調し、まるで一つの人間が出した声のようだった。

 

「そうだ! 仲間からも疎まれ、常に死線に立たされてきた俺たちのようなろくでなしには、世界を守るための戦いなんてむず痒くなるだけで、向きはしない! だからこそ、この度の戦は世界のためではなく、自らの誇りのために戦え! あの地獄の戦いを乗り越えて守った愛すべきフランスという国のために戦え! 俺からの命令はただ一つ、己の信念を貫き通せ!」

 

「この度の戦もあの救国の聖女が付いているんだ、俺たちに負けはない! そして、この俺も地獄から帰って来た! 死を乗り越え、三千世界の鴉を殺し、この地に戻って来た! フランスを守るために、そして、自らの誇りを守るために! 聖女がいて、そして悪魔である俺もいる……聖女と悪魔の加護を受けた俺たちに最早、敗北の二文字なし! 相手が神であろうと、魔女であろうと、悪魔であろうと関係ない! なぁ、そうだろう!?」

 

『『その通りです、隊長!!』』

 

「なぁ、お前ら、空を見て見ろ! あの時と同じく雲一つない良い天気だ! 風も穏やかで、気温も過ごしやすい! なぁ、今日は“死ぬには良い日”だよな……。だからこそ、お前たちが今日と言う日に死ぬことは許さない! ろくでなしが死ぬには勿体ないほどの日だ! さきほど、ジル・ド・レェ卿は、兵士の前に立ち言った! 『人間であるのなら、その生を捨てろ! 私たちには聖女がついている』と! その代わりの言葉として、俺からお前たちに言う!」

 

「――俺たちは人間ではない、悪魔の軍だ! なら、命を捨てることは許さん! かの清廉潔白なフランス正規軍と一緒に死んだのでは何かの間違えで天国にも行きかねん! 前にも言ったように俺は地獄でお前たちと会うことを何よりの楽しみとしている! だからこそ、死ぬな! 人間であることが死につながるのであれば、人間を辞めろ! 俺たちは悪魔の軍だ! 悪魔であるならば信念を貫き、地獄にその身を落とすまで死ぬことは許さん!」

 

『『『Oui, mon.sieur(了解しました)!!!』』』

 

「そして、此度の戦、俺たちの役割は何だ?」

 

『『『――敵陣に誰よりも早く突っ込むことです!!!』』』

 

「そう、その通りだ! こんな大一番で奴らフランス正規軍に一番槍の馳走を食わせる訳にはいかん! 一番槍に相応しいのは誰だ!」

 

『『『――それは勿論、俺たち悪魔の軍です!!!』』』

 

「よくぞ言った! それでこそ、我が同胞だ! それでは、お前ら! 武器を掲げろ! 天に向かって叫べ! 勝利はもう既に目の前だ!」

 

「――――Vive La France! (フランス万歳!)」

 

今までので一番の大声を上げ、右手に持つ西洋剣を天へと高く上げる。

 

『『『『『Vive La France!!!! (フランス万歳!!!!)』』』』』

 

隊の士気が最高潮に達したその時だった。聖女が開戦の合図が告げられる。純白の旗が大きく振られた。 

 

「行くぞ、お前ら! 戦場で最強は竜でもなく、人でもなく悪魔だと言うことを思い知らせてやれ!」

 

そう全てはあの時と同じだ。ただ、単に敵陣に突っ走る、それだけの話。しかし、それだけの働きが後ろに続く兵士の士気を大きく上げることになる。

 

「お前たち、フランス軍隊であるのなら、あの悪魔たちに後れを取るな! 聖女が付いている人間の意地を見せてやれ!」

 

遥か後ろでジル・ド・レェ卿の叫び声が聞こえる。

 

「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」

 

横を向ければ見慣れた面々が己の得物を掲げ、ひたすらに敵陣を目指していた。これほど力強いことはない。

 

かくしてフランスと、世界を守る戦いはその幕を開けたのだった。

 

 

 

 

 

 

――――オルレアン最終決戦開幕。

 

 




お詫び
聞いた話なのですが、投稿作品を間違えて投稿する作者がいたらしいです。本当、顔を見てみたいです。きっと、子ジャンヌ並みの脳みそをしていることでしょう……。

すみません、私でした。本当にすみません。まさか、自分でもあんなミスをするなんて思ってもいませんでした。70万字以上、話数にして100話以上このハーメルン様に投稿させていただいているのに、まさか初歩的なミスをするなんて、死んでも死に切れません。

感想にお早い指摘をしていただいた方ありがとうございます。実はその時空港にいまして、気付いてなければしばらくそのままだったに違いありません。本当に助かりました。この場をお借りして、お礼申し上げます、ありがとうございました。

まぁ、こういう時は古今東西何もなかったことにするのが一番だと聞きましたので、では皆さん復唱しましょう「綾辻さんは裏(ry」 すみませんおふざけがすぎましたね。

今度はこんなミスが無いように注意しますので、なにとぞお許しを。



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