残念イケメンと劣等生   作:ライトフォレスト

10 / 21
FGO(バビロン)にかまけて進んでいませんでした。
ラスボスはルチャ娘(真理)

さて、今回は一万字を超えてしまいました。
長々と書き連ねて途中見飽きてしまうかもしれませんが、頑張ってください。
あんまり長々と原作沿いになるならショートカットをシャカシャカとしないといけないかもしれないですね・・・。

では、どうぞ。


10話 喧嘩の次は・・・

――――昼休み

 

・・・どうしてこうなった。

 

 

事の発端は登校時。

新入生3日目、俺は深雪と共に"一高前"駅という文字通りな駅で電車を降り、いつの間にか同じ電車(現代ではリニアモーター式。席が完全個室のようなプライベート空間になっている。)乗っていたエリカ、美月、レオ、それに隆(いつものメンツといっても過言ではない)と一緒に学校までの短い道のりを、言葉で明るく揺らしながら歩いていた。ある人が後ろから現れるまでは―――

 

 

「達也くーん!」

 

 

全員で声の方を振り返ると、そこには生徒会長七草真由美がこちらに手を振ってやってきている。

 

「達也さん、会長さんとお知り合いだったんですね。」

 

「いや、一昨日が初対面のはず・・・。」

 

「そうは見えねぇけどなぁ」

 

 

「達也君はモテモテねぇ・・・」

 

隆が俺を見てニヤニヤしている。顔半分を覆う黒の背景に桜の散った絵が一部ついた扇子が不気味に見える。

そして深雪が『モテモテ』という言葉に黒いオーラを一瞬発生させた。

 

 

今日も、何か起こりそうだ。

 

 

 

「達也君、オハヨ~。あ、深雪さんもおはようございます。」

 

俺だけ扱いが雑だったのは気のせいだろうか。

そう思ったがやはり相手は3年の生徒会長。俺は今の考えを飲み込んだ。

 

「おはようございます、会長。」

 

「おはようございます。」

 

やはり兄妹というべき、丁寧な挨拶をいつもの笑顔を浮かべる目上の人(生徒会長)に、それに続いて周りの同級生も緊張のためか、ぎこちなくも丁寧な挨拶を述べる。

 

「おはようございます。朝から積極的ね(ボソ)」

 

「?」

 

隆は一言挨拶の後に何か言ったが、会長にはよく聞き取れなかったようだった。

 

「会長はおひとりですか?」

 

「うん、朝は待ち合わせはしてないのだよ。

それに深雪さんにも少しお話したいこともあるし、あと隆君にも。だからご一緒しても構わないかしら?」

 

あら?私も?などと気の抜けたことを言っている隆をしり目に達也は、

 

「別に構いませんが・・・会長、俺だけ扱いが違うのは気のせいでしょうか?」

 

さっきの挨拶の差といい、俺に対してだけ口調の砕け方が違う。

 

「ソ、ソウデシタカ?」

口調や表情も言動と噛み合ってない。

切れるという感情を普段は《持てない》達也でも、ストレスはたまる。

彼の後ろで発せられるクックッと抑えた笑い声によって更に薪がくべられる。

 

「それでお話というのは生徒会の事でしょうか?」

それを察した深雪が話を逸らす。

 

「ええ、一度ゆっくりお話をと思って、お昼はどうする予定かしら?」

 

「食堂でとると思います。」

 

「達也君も一緒に?」

その言葉に深雪はクラス、待遇が違うことを思い出し、顔を俯かせる。

 

「兄とは、違うクラスなので・・・。」

 

真由美は何度もうなずいて見せる。

「そうよね、変なことを気にする生徒も多いものね。」

二人の後ろでうんうん、と声も聞こえてきた。

きっと美月だろう。

 

「じゃあ生徒会でお昼をご一緒しない?達也君も。ランチボックスでよければ自配機がありますし。」

 

 

「なぜ生徒会室に自配機が?」

 

「あら。丁度いいわね」

 

深雪はその言葉を不思議そうに、隆は顎に手を当てて薄笑いを浮かべている。

――――――――――――

 

 

 

・・・はぁ。達也は心の中で溜息をつきながら階段を上る。足に錘が乗っているように感じる。

深雪は達也とは逆に表情はどことなく明るく、今にもステップを踏みそうな雰囲気を醸し出している。

深雪と共に呼び出された隆も鼻歌交じりに達也の隣、深雪の反対側を歩いている。

隆の右肩にはいつもの淡いピンク色のトートバッグが掛けられ、髪はクローバーの装飾が付いたヘアピンを装着している。廊下に外からの昼日が差し込む。漫画やアニメであれば音符マークが出てきそうな空気を漂わせる青年の、梳かし整えられた赤みを帯びた黒髪を照らし、髪と似た色の瞳は先を見据えるべく半分ほど隠れている。

 

温まりきらない廊下の突き当りを曲がると、[生徒会]と横文字で書かれたプレートと両手扉、その横にインターフォンが設置されている。

深雪がインターフォンを押してマイク越しに中の人物と軽く挨拶を交わす。その後すぐに扉にかかっていたロックが解除(こんなところにも付いてるのね)される。

 

 

「(ん?)」

深雪の前に達也が立って妹を庇うように扉を開ける。カタギな隆にはこの行動に疑問を持ったが、扉は御構い無しに音を立てて開かれる。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

「お肉とお魚と精進、どれがいいかしら」

中に通された3人は生徒会室(と風紀委員長)が座っている長机に深雪、達也、私の順に並んで座る。

なんだか深雪さん、我慢してるみたいね。等と考えているうちに自配機で注文する物を尋ねられていた。

自配機と言うのは自動配膳機の略で、飲み物を売る自動販売機の食べ物バージョン。ダイニングサーバーとも呼ばれ、長距離を走る列車の食堂車両や空港の無人食堂に設置されている。のだがここ生徒会室にもある。

日はく、『遅くまで仕事がかかる事があるから』らしい。やはり生徒自治に重きをおくこのご時世、しかも魔法科高校という特殊な学校であるが故、なのであろうか。

 

達也は精進と答え、深雪も同じものを続く。

 

「あ、私はお弁当ですので」

と、バッグから四角い型の付いた大きな巾着袋を取り出す。室内にいた内の何人かは目を丸くする。

 

「へえ、隆君はお料理するの?」

真っ先に質問したのは真由美。興味津々げに机に乗り出している。

「えぇ、家事手伝いを少々やっていましたわ。」

放課後の一件から語尾が変わっている事に

施設に入ってから10年間、小学生までは手伝い程度。

中学に入ってからは家事全般の第一人者として3年間、登校前と帰宅後をフルに動き回っていた。

 

「なるほど。でも学校には食堂もあるし、教室での食事は禁止されているのに弁当にしようと思ったの?」

いつもの砕けた言葉で疑問をさらに投げかける。

教室の机は端末と一体になっているため、精密機械としてその周囲での食事は校則で止められている。

 

「昨日食堂を試したんですけど、どうにも口に合わなかったんですよね。それに、今までの節約意識が『一食400円は高い』と囁きましたわ。それに食べる場所は屋上にでも、と考えていました。」

 

なるほど確かに、と真由美は頷く。いつの間にか弁当を机の上に置いていた摩利は腕を組んで感慨深そうに見つめている。司波兄妹も、『私達もお弁当にしましょうか』『そうだな』等と言いつつもどこか甘い雰囲気を周囲に振りまいている。その空気に侵食されて周囲は惚けたり、にやけ顔でそちらを覗いている。隆も、あらぁなどと言って頬杖をついて見守っている。

 

 

チン♪

 

 

生徒会にある背の低い機械の箱が、食事会開始の合図を鳴らした。

 

 

 

 

 

 

「そろそろ本題に入りましょうか」

真由美はそう告げる。

昼食会も生徒会の自己紹介から始まり、摩利の弁当の話、隆の弁当の具、摩利の弁当は彼氏のためと隆が言い当てたり、人目もはばからず司波兄妹がイチャコラしていたりそれを冷やかそうとしたり色々あったが、ようやく話を始めるようだ。

 

「生徒会は学校自治に重きを置き、学校より生徒会は大きな権限を与えられています。」

 

 

「当校の生徒会は伝統的に生徒会長に権限が集められています。大統領制と言ってもいいかもしれませんね。

 生徒会長は選挙でえらばれますが、役員は会長が選任します。解任も同じ。各委員会の委員長の任命権も一部を除いて生徒会長が有しています。」

 

「私のような風紀委員長はその例外の一つだ。

 生徒会、部活連、教職員会の3者が三名ずつ風紀委員を任命する。」

 

「というわけで摩利もある意味で私と同じ権限を持っています。

 私や摩利は任期期間があります。その間だけ役員の採用が行える。ですが生徒会は任期の期間制限が掛けられていません。」

 

「毎年恒例なのですが、新入生総代を務めた生徒には生徒会役員になってもらっています。代々、生徒会長は新入生総代を務めた生徒が受け継ぎ、また新入生総代を務めた生徒を生徒会に、というパターンがここ5年間続いています。」

 

「生徒会長も首席で入学したわけですね、流石です。」

達也がそういうと真由美も歯切れ悪そうに照れて返答して見せる。

 

 

あらあら、罪な男ね。

 

 

コホン、

「そして今年から特別推薦制度を導入された折に、その生徒が入学したときには成績も考慮した上でに生徒会に入ってもらうことになりました。実は一般入試成績で当てはめると総合成績は深雪さんと同じだったのよ。」

 

隆のペーパーテストの点数は平均90点以上なのだが、やはり多少の難易度差がある様だ。それでも同率一位という事は魔法力も高いと言うことになる。

 

「というわけで深雪さん、隆君。私はお二人が生徒会に入ってくださることを希望します。

 

・・・引き受けていただけますか?」

 

司波さんは振り向いて達也君とアイコンタクトをとってる。

うーん・・・なんだか司波さん深刻そうね。

 

「会長は、兄の入試の成績をご存知ですか?」

 

「―――!」

 

あらあら――

 

「ええ、知っています。凄いですよねぇ…。正直、先生から答案を見せてもらったとき自信を無くしました」

 

「成績優秀者、有能な人材を生徒会に迎えるのであれば兄がふさわしいと思います。」

 

深雪ちゃんが言うことには、デスクワークでは実技の優劣は関係ない。

知識や有事の際の的確な判断力は新入生で達也君の右に出る人間はいないっと、つまり・・・

 

 

『兄も生徒会に入れてください』ってことね。

 

 

「残念ながらそれはできません。生徒会は一科生の生徒から選出しなければいけない規則なのです。生徒会の制度における役員任命権における唯一の制限事項。これを覆すためには毎年一回開催される生徒総会において議題として提出し、全校生徒の2/3の賛成を得なければ改定できません。一科生と二科生は全体で約半数ずつ在籍しているので現状不可能です。」

 

淡々として、どこか申し訳なさそうに語る会計の市原鈴音。

事実ここ第一高校における一科生(ブルーム)二科生(ウィード)での差別意識が相互に、高く存在する今の状況において全校生徒2/3の賛成票を得る確率は0に等しい。

声音からわかる現体制の悪影響を良しとしない感情。それはここにいる生徒全員が一致して所有するもの。

 

 

「…申し訳ありませんでした。分弁えぬ言動をお許しください」

椅子から立ち上がり、深々と深雪は頭を下げるが、咎めるものはいない。

 

「ええと、それじゃあ深雪さんは書記として、今期の生徒会に加わっていただくということでよろしいですね?」

 

「はい、精いっぱい頑張らせていただきます。よろしくお願いします。」

 

「こちらこそよろしくお願いします。隆君はどうなの?」

 

「私としては断る理由はありませんので、謹んで受けさせていただきますわ」

深雪の提言で後回しになった返答をさらりと並べ、キザっぽく右腕を左肩甲骨下に当てて会釈する。

 

「仕事についてわからないことがあったら、あーちゃんに聞いてください」

 

「だから会長・・・下級生の前であーちゃんはやめてください・・・」

 

 

・・・さあて、今日から忙しくなりそうね。

最愛の兄妹達に尽くしてきた時間をどう過ごそうかしら。

何もしてないとみんなの夢を見てホームシックにかかってしまいそう。

でも、今の学校は気にくわないわ。

発揮できる場所があるのに別の要因で勝手にバツにされるのはもったいないもの。

深雪ちゃんも、どうにかならないかしら・・・ん?そういえば・・・

 

「昼休みまでちょっと時間があるな。真由美、ちょっといいか?

 風紀委員の生徒会の推薦枠で今年卒業して開いてしまった分なんだが」

 

「それは今選任中よ。まだ学期始まって1週間しかたってないのに、急がせないでよ」

 

「生徒会の選任で一科生を選ばないといけないのは副会長、会計、書記だけだったよな?」

 

・・・・・・・あ。

 

「そうね。会長を含めたその4者で役員は運営されないといけないから」

 

「つまり、生徒会には風紀委員会で二科生を選抜しても規則違反にならないわけだ。」

 

「摩利、あなたって・・・」

 

真由美会長、あーちゃん、鈴原先輩は唖然としてる。

まあ、規則の裏を突いたこの提案は多分、前例のないことよねきっと、多分、メイビー。

でも・・・

 

「「ナイスアイデアよ!」ですわ!」

 

「はぁ!?」

いつも冷静そうに見える達也君もこんな声上げるのねぇ。

 

「そうよ。風紀委員なら問題ないじゃない!生徒会は司波達也君を風紀委員に指名します」

 

「ちょっと待ってください!俺の意見はどうなるんですか?大体、風紀委員が何をする委員なのかも説明を受けていませんよ」

 

「妹さんにも生徒会の仕事についてまだ具体的な説明はしておりませんが?」

 

「そうよ、二人とも状況は一緒よ。私もだけどね。それに風紀委員なんて読んで字の通り学校の風紀を管理する仕事じゃないかしら?」

ほら、会長もうなずいてるわ。

 

あ、深雪ちゃんがスッごい顔を輝かせてるわね、さっきまでシュンとしてたのに。

おら達也、横見てみろよ。

 

 

 

 

「そういう意味で聞いてるんじゃない!・・・本当にそれだけですか?」

 

達也は真由美から鈴音、摩利、あずさに順に視線を向ける。

どうやら3年生の先輩は仕事の内容を話す気はないらしい。

最後に狼狽えたあずさをじっと見つめていると、気弱そうな表情は性格もそうであったようで、風紀委員会の実務の内容を達也の無言の圧力によって話した。話さざるを得なかった。

 

要約すれば、

『校則違反者の取り締まり』

その別に、風紀委員長は罰則の決定のため生徒会長とともに懲罰委員会に出席して意見を出す。

いわば警察と検察の役割を持つ集団。

 

「凄いじゃないですかお兄さま!!」

 

「いや待て深雪。そんな『決まりましたね』みたいな視線を送るのは待つんだ・・・おい、何『え~』と言わんばかりの顔こっち向けてるんだ、隆」

 

「あら、なら折角の提案をお断りするの?」

 

達也は額に手をあて、そうじゃない。とため息まじりに言う。

 

「念のために確認させてください」

 

「何だ?」

 

「今の説明ですと・・・喧嘩が起こった際は仲裁に入らなければならないわけですよね。」

 

「そうだ。魔法を使用している場合でも、してない場合でも我々の任務の範疇だ」

 

「魔法を使用された場合、それを止めさせなければならないのですよね?」

 

「出来ればその前に諌めてほしいところだ」

 

「あのですね!俺は実技の成績が悪かったから二科生なのですが!」

柄にもない大声をあげる達也。

無理もない、本人としては魔法の発動速度が極端に遅い。

それは魔法による先頭において致命的、を通り越して絶命的な弱点。

そう考えれば実力のある人間が役を担うのが妥当。むしろ前提条件に等しい役職なのだ。

 

「べつにかまわんよ?」

だが、摩利は達也の苦言もどこ吹く風。

 

「・・・何がです?」

 

「力比べというなら私がいる。」

 

「ダメよ達也君。いくら言い訳をしても私の目はごまかせないわ。それに見回りとかだったら私も手伝うわ」

 

隆がそう言い終わるかすこし前か摩利が時計を確認する。

「っとと、そろそろ休み時間が終わりだな。放課後に話の続きをしたいのだが、構わないか?」

 

「・・・・・わかりました」

 

昼休みのお話し合いもここまで。

何か反論をしようとした達也も口をつぐんでそれに同意した。

達也自身、ここにもう一度来ればきっと逃げ場がなくなるような気がしているのだが・・・。

 

 

達也と別れた後に深雪は隆に一言礼を述べたのだった。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

放課後。昼に通った道順を歩く3人。

先ほどと違うのは赤くオレンジがかった太陽が廊下ごと3人を照らす。

達也には窓側を通る深雪の影がかかる。そのその深雪の顔は無表情ではあるものの、夕日の温かみのある光がまぶしくなく適度に照らしている。

隆は二人の前を歩いている。その方にかかるバッグ、紐にかけられた手が赤く光を受け止めている。表情はうすら笑いを浮かべ、達也のナイーブな気持ちを増加させる要因となっていた。

 

そして生徒会室前。実はインターフォンのほかに、外からロックを解除するカードリーダーが設置されていて、3人――達也は拒否しようとした――は認証ができるようにIDカードを登録していた。

先頭にいた隆はそのままカードをスラッシュして扉を開ける。

 

中にいるのは先ほどの4人のほかにもう一人、昼休みには誰も座ってなかった席に座っている。

背丈は隆より小さく、達也と同じくらい。体格は二人よりも細い。

 

「失礼します」

 

3人が並んでそれぞれの礼をすると、来客を確認した真由美と摩利は軽く挨拶する。

しかし―――

 

 

 

 あの人、嗚呼悲しいかな。私の嫌いな人間ね――

入学式で見た。確か生徒会副会長の服部刑部、だったかしら。

その視線は達也君を睨む、もしくは軽蔑する様な目線を向けている。

達也君はさすがと言っていいわね。

この視線に全くの動揺を見せてないもの。

あ、立った、その視線をまずやめなさいよ。

こっちくんな。

 

「 生徒会副会長の服部刑部です。司波深雪さん、靏隆君、生徒会にようこそ。」

 

今の視線に似合った神経質そうな声。

何初対面の女子と握手しようとしてんの?

あ゛?

 

 

ーーー

 

 

さて、生徒会室に入って早々冷ややかなご挨拶だ。

敵意を向けられるのは慣れてはいる(悲しいことに)

その視線のままこっちにやってくる。

背丈は大体俺と同じだが、線は細く生徒会副会長として何の凄みも感じない。

だがその周囲のサイオンの煌めきこの男子生徒の卓越した魔法力を指し示している。

 

「 生徒会副会長の服部刑部です。司波深雪さん、靏隆君、生徒会にようこそ。」

 

当然のごとく俺は無視される。

そのまま翻して席に戻る。

その光景を目にした深雪の感情が一瞬高ぶったのにはヒヤリとしたが、抑えてくれたので安心sーー

 

 

「あぁら、服部副会長。席に戻る前に何か忘れてないかしらぁ?」

 

できなかった。深雪も俺も驚いて声の主を向く。

隆は整った顔立ちに薄ら笑いを浮かべる、しかし半開きの目には好意的な光が見えない。

 

「・・・差し当たって思い浮かびませんね」

 

 

ビキビキィ・・・

また俺の隣から、前から不穏な音が聞こえた。

 

「そうね。ごめんなさい、副会長。私の勘違いだったわ」

 

 

「そうか、なら「所でですね副会長、私は食べず嫌いが大嫌いなの。貴方は見た目からセロリが嫌いだと見たましたわ。」

 

 

「・・・は?」

 

「あら失礼。つい癖が出てしまいましたわ。

別に誹謗したわけではありませんのでお気になさらないでください。」

 

 

隆は素っ頓狂なことを言い出したようで『差別的なお前嫌い』と暗に発言している。何人かは気がついたようで苦笑いを浮かべている。

 

 

頭痛が・・・。俺が隆に肘で小突くと一言「ごめんなさい」と帰ってくる。だが俺の右側と前からは最悪な雰囲気が滲み出して

 

 

「えーと、じゃあ深雪さんに隆君。後はあーちゃんに聞いてね。あーちゃん、頼んだわ」

気まずい雰囲気の中、沈黙の空間に切れ目を入れたのは真由美。中条先輩に深雪と隆の事務作業の指導を任せ、自分は渡辺先輩と一緒に俺を生徒会室に連れていくようだ。

 

「ハイ」

中条先輩もいい加減諦めたらしい。

 

「じゃあ、あたしらも移動しようか」

 

「どちらへ?」

 

「風紀員会本部だよ。色々見ていながらの方がわかりやすいだろうからね。この真下の部屋なんだが、中でここと繋がってるんだよ。」

 

「・・・変わった作りですね。」

 

「私もそう思うよ」

 

 

 

 

あの副会長は鼻持ちならないけど、これからほぼ毎日顔を合わせるのだから、抑えないと。

 

「待ってください渡辺先輩。」

またかもやし小僧。

私は忌々しげな感情を無表情で上塗りして振り返る。

 

「なんだ服部刑部小承範蔵副会長。」

 

「フルネームで呼ばないでください!」

 

・・・実際そっち系の家系だったのね。

 

「じゃあ服部範蔵副会長」

 

「服部刑部です!」

 

さっきまでドギツイ視線を達也君に向けていたのに渡辺先輩と七草会長に弄ばれている。典型的な女性の前で緊張する男子のようなものかしら?

 

そして会長、今全員『お前が言うな』って思ってますよ。

 

「お話ししたいのは風紀飯野の補充の件です。」

あ、話が戻って来た。

 

「その一年生を風紀委員に任命するのは反対です」

あーあー、うんざりするわぁ

 

「おかしなことを言う。司波達也君を生徒会選任枠で指名したのは七草会長だ。口頭のものでも指名としての効力はある」

 

「本人は受諾してないと聞いています。本人が受け入れるまで、で正式な使命にはなりません」

 

「それは本人の問題であって、君が口を挟むことじゃないよ。」

 

いやだわぁ。

何を言ってるのかしらこのもやし。

今から風紀委員会本部に連れて行って昼休みで説明しきれなかった分を説明しようって言うのに。

それにはハイともいやとも行ってないのに承諾も何もないわ。

 

「過去、二科生(ウィード)を風紀委員に任命した例はありません」

 

・・・

 

「私の前で禁止用語を使用するとはいい度胸だな。」

 

「取り繕っても仕方ないでしょう。それとも全校生徒の1/3以上を摘発するつもりですか?」

 

「一科生(ブルーム)と二科生(ウィード)の区別は学校が認めるものでその実力差も証明されているものです。喧嘩を実力で沈める仕事です。二科生《ウィード》では当事者を諌めるのに実力不足です。」

 

・・・ウィード・・・ブルーム・・・

 

「実力にも色々ある。力比べなら私がいる。この学校で私と対等に戦えるのは七草会長と部活連の十文字会頭だけだ。他がいくら束でかかってこようがなんら問題はない。君の理屈に従うなら、私に実力が劣らない生徒ははその2人以外いない。試してみるかい、服部副会長?」

 

 

「私のことではなく、彼のことを言っているのです。」

怯み、気圧されながらも自分の発言を止めない服部。

 

「実力にも色々ある。と言っただろう。達也君には展開された起動式を読み取り発動される魔法を予測する目と頭脳がある」

 

「な、何ですって••••?」

驚くのも無理はない。

一般的な認識では『起動式を読む』のは不可能であるからだ。

 

「つまり、魔法が未発に終わっても、なにを使おうとしたかわかる」

 

「発動した魔法の種類や規模によって罰則が異なるのは知ってるな?七草会長がやるように魔法式をサイオン弾で破壊するとなにを発動しようとしたかわからない。かと言って発動を待つのは本末転倒。未然の災害は防ぐのは妥当だからな。そして、これまで発動した分の罰則しかかけられなかった者、罪が軽いままで終わった者にとっての抑止力となる」

 

「し、しかし実際の現場で魔法を未然に防げないのであれば・・・」

 

「それこそ一科生も同じだ。展開中の起動式を相手より遅く展開して相手より早く発動して破壊することのできる者はそういない。」

服部はすぐに反論をすることはできなかった。

確かに、それを実現するための魔法力を有する人間は少ない。

 

それこそ、真由美や深雪のような秀才者でなければなし得ない。

 

「それにもう一つ理由がある。今まで風紀委員会は一科生のみ任命されてきた。それはつまり二科生の違反者の取り締まりも一科生の生徒によって取り締まられてきたわけだ。君の言った通り、一科生と二科生には溝がある。そしてこれによってその溝をさらに深めるきっかけの一つになっていた。私が指揮をとる委員会が差別意識の助長をするのは私の好むところではない」

 

・・・カッコいい

 

「摩利がそこまで考えていたなんて。私はてっきり達也君が気にいったのかと「会長お静かに」」

 

会長お願いだから、空気を壊さないで。

隆は少しずつ下がってくる心の温度を感じる中で、ほんわかと雰囲気ブレイクをする真由美に口の中で呟く。

そして途中に制止した鈴音に心の中で親指を立てた。

 

確かにそうだ、生徒間の争いを生徒が諌めるこの学校で、優秀とされる一科生によって二科生を取り締まるのは、ある意味において二科生と一科生の壁を厚くし、一科生による統治を代弁しているようにも捉えることができる。

だが、もし二科生の達也が風紀委員として一科生の取り締まりに尽力すれば、緩和することも、差別の是正を唱える生徒が増え、学校自体の活気が増すのではないか。

隆は冷えきる前の頭で思案し、改めて目の前にいる摩利に感嘆の眼差しを送る。

 

 

逆を言えば、一科生からのやっかみが達也に降り注ぐわけなのだが。

 

 

でもやっぱり見た目だけではなく、中身でも女性に好意を持たれる人ーー別の意味でーーね。

 

 

これならさすがn「会長・・・私は副会長として、司波達也の風紀委員就任に反対します。渡辺先輩の主張に一理あることは認めますが、やはり風紀委員会の本質は違反者の取り締まり。実力に乏しい二科生ではこれには務まりません。必ずや就任の暁には会長の顔に泥を塗る事になります。どうか今一度お考え直しを。」

 

「お待ちください!」

深雪はいつも凛とした表情からは想像もつかないような大声をあげる。達也の実力を知る彼女にとって服部の。いや、この学校が下す評価に納得がいっていなかった。

お兄様には誰にも負けない力がある。

この学校の3巨頭と呼ばれる3年生が相手でも倒すことができる。知っているから。

知っているからこそ、尊敬し敬愛し深愛する兄が自分より低い評価を与えられることに耐えられない。

 

 

「確かに実技において兄の成績は芳しくありません。しかし兄の本当の力は今の評価基準に当てはまらないだけなのです。実践において、兄は負けません」

 

 

 

・・・先を越されちゃったわね。

昨日の喧嘩の時、ちびっ子(森崎)が魔法を使用した際に何かをしようとしていた。焦りはなく、ゆっくりとした動きで何かを発動させようとしていた。もし、エリカちゃんがちびっ子のCADを弾いていなかったら、もし私があの場に鳥を飛ばしていなかったら、どうなっていたのだろうーー

 

「司波さん。魔法の事象をあるがままに、冷静に理論的に認識できなければなりません。魔法師を目指すものが身内贔屓で目を曇らせることのないように心がけなさい」

 

 

 

 

 

 

 

「はい、ブ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 

再び隆に視線が集中する。諭すような物言いをした服部も、必死に説得を試みていた深雪も、深雪の発言に目つきを変えた摩利も真由美もそちらに顔を向ける。

 

特に服部はひょうきんな顔をしている。

 

そして大声をあげた本人といえば、

 

両腕でバツを作り、口をタコの吸盤の様に尖らせている。

そして彼の体は心なしか先ほどより大きく見える。

 

「服部副会長。いえ、もやしセロリ。さっきから言わせておけば、やれ二科生だからだの実力が足りないだのいい並べてばかり。」

 

一歩。

 

「この学校の風潮に流されてしまって、外面ばかり気にして中身を見ようとしない。挙句、達也君の選任された理由である、展開された起動式の瞬間的な内容理解と差別意識の改善を論破できないからって感情論ですかぁ?論理的にってたった今おっしゃったのはどこの誰ですかネェ」

 

一歩。

迫力に押されて服部は仰け反り、それに合わせてゆっくり一歩踏み出す。

さらに体が大きくなった気がする。

 

「渡辺委員長の発言に一理あっても貴方の意見には一理どころか零割零分一厘も賛同しかねます。あまりにも感情的で外面ばかり。もっと中身を見なさいよ中身を。そんなんだから気になる人に振り向いてもらえないのですわ。いや、室内栽培のもやしにとってはこれが普通なのかしら?」

 

 

口頭のブーから少しずつ、再沸騰した隆の体温が下がっていく。昨日の喧嘩においても、あらかた言いたいことを言った後はどこかスッキリした様な顔を浮かべていた。

今回も〈〈叱りつける〉〉範疇の様だ。

 

 

 

「なっなっ・・・!貴様!!」

言葉に詰まる服部。

先程から変な発言、おかしな挙動、女っぽく髪留めをしている前方の生徒が今自分に向かって長々と罵倒している。

彼の頭が追いつくのに時間がかかるのも仕方がない。

 

 

「あぁら、どうしたのかしら?もやし先輩。貴方が怒る要素なんて一つもないわ。だって事実ですもの。貴族制度は国を腐らせる。本当に適任な人間を選ばないこの体制もそのうち瓦解するでしょうね。と言うより私が内部から、学校を物理的に倒壊させてでもぶち壊しますわ。」

 

 

 

「ま、魔法師として魔法力で全ての優劣がつくのは当たり前だ!それにお前が今何を言ったのか分かっているのか!!」

 

「魔法師として?はて、私は魔法大学を卒業する気はあっても、魔法師になる気はありませんわ。私の目指す道は医者です。何を言ったか?分かりますとも、この差別意識を無くそうって言っているんですよ。貴方の様な差別主義者を改心させ、自分たちを花だの雑草だの言わない様に意識改革をするのよ。」

 

服部は絶句する。その場にいる人間も隆の発言に目を見開き、開いた口を手で軽く押さえ、ただ見つめる。

その周囲の態度も気にすることもなく、隆は達也、摩利、真由美、服部の順に見回してからゆっくりと口を開く。

 

「あぁそうそう。これは提案なのですが」

 

 

 

 

「そこのもやしと達也君で模擬戦を行なったらどうですか?」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーその後、達也と服部で模擬戦を行い、達也が勝利。服部は達也の実力を認めたが、和解をする気は無いらしい。生徒会室に戻ってからは達也は摩利に腕を掴まれて風紀委員会本部に連れていかれた。

ーーその時、生徒会室の室温が一瞬下がったのは気のせいだろう。




隆君は友達思いな様ですね。
そして、憐れ服部はもやし呼ばわりと・・・
そういえば隆君の体格は達也やレオと同じくらいです。
どこかの赤いローマ王の様にお腹が前には出ていませんよ?そういえばあの赤い人、身長と体重の数値近いんですよねー・・・

おっとっと。さぁ、次回はどこまで行きましょうかね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。