さて、皆様は今年は何か貫こうという目標をお持ちでしょうか?
受験、内定、結婚、家を買う、最高記録を出す、大小の目標をお持ちになっていると思います。
ちなみに私が殊に目標にしていることは、『首の皮一枚ででも生き残る』です。なにがなんでもやりたいこと、やることを完済したいです。
そんなわけで、1/1中に出せたことも目標通り(目逸らし)
隆のキャラ紙を公開したほうがいいでしょうかね?
そこを迷っているのですが・・・・
そんなことよりも、今回の話をどうぞ。
お楽しみいただければ・・・ば・・・。
約1分間、
校門前にいた学生は時間が止まったように口をあんぐり開け、目をせわしなく瞬かせていた。
そして全員の視線は1人の男子生徒に向けられる。
森崎が現れてから駆け去るまで終始、扇子で顔半分隠していた隆。
「あらぁ、どうしたの?みんな」
森崎の意外な言葉は、ここにわざわざ俺たちがいる中に呼び出した隆。今日も達也の心配をし、何故か闘技場に一緒にいた(蝶を媒介にしていたが)隆だけ。
洗脳を行ったのだろうか、いや、全くメリットがない。達也は思考を巡らせながらも口を開く。
「何をしたんだ?」
最短にして一番聞きたいこと。
その場の隆と達也以外はタイミングを合わせたように頷いて見せる。入学初日の言動からは考えられない言葉が発せれたのは隆が何か仕組んだと、考えることは皆同じ。
「うっふっふ。それはねぇ・・・」
ゴクッ
「ヒ・ミ・ツ♡」
「はぁ?」
言葉の最後にウインクをしてみせる隆に美月とエリカは苦笑を浮かべ、レオは何もないところに躓いてひっくり返る。唯一、声をあげのは達也だけ。
「乙女のポケットには秘密がいっぱいなのぉ♡」
隆は今一度右目だけ力強く瞬いてみせる。
どうやら答える気はないらしい。
達也はあきらめたように今日一番の溜息をつく。
「乙女っつうより男だrブッ」
レオが起き上がりながら発した語尾がおかしくなったのは、隆がいつの間にかレオの両の頬を片手で掴んだからだ。日は落ちかけ、街灯の明かりがともる。背後上からの光で隆の顔を真っ黒に塗り染める。
「いやだわぁレオ君。男じゃなくてオ・ト・メ♡」
一文字言葉を重ねるごとに、自身の顔をレオに近づけ、指のかける力が強くなる。笑顔にかかる影は、眼光の暗黒を次第に強くする。
「ふぁ、ふぁふぁった!あふふぁっふぁ!」
隆の手が離れる。さした影も消え、顔も満足げに笑っている。
レオの頬にはクッキリと指の跡が赤く痛々しく残った。
エリカは両の頬をさすっているレオに駆け寄って「馬鹿ね」なんて言って再び騒ぎ始める。
美月は目の前の火消しに勤しんでいる。
そして深雪は楽しそうに口元を隠し、比べて達也は苦い笑みを浮かべて呼びかける。
「みんな、そろそろ帰らないか?」
全員がそうだったと達也のほうに向きなおす。
次いで隆も一人校門のほうに歩き、振り返る。満面の笑みで
「今日は達也君がおごってくれるから目いっぱい食べちゃいましょう!」
「・・・一人千円までと言ったのだが」
達也の溜息がまた一つ増える。
◇ ◇ ◇
「その桐原って二年、殺傷性ランクBの魔法を使ったんだろ?よく怪我しなかったな」
サンドイッチにかぶりつきながらレオは疑問を投げかける。
達也の提案で喫茶店に寄った6人は放課後の部活動勧誘の話題で盛り上がっていた。見て回った感想や入部した部活のこと、勧誘にかこつけたナンパをされたとか、様々な話が挙がる中で一番の注目を集めたのは達也の話。
「殺傷性Bと言っても高周波ブレードは有効範囲の狭い魔法だからな。刃を触れないことを除けばよく切れる刀と同じだしな、それほど対処は難しくない」
感心したようにうなずくレオに達也はうんざりだと言わんばかりに答える。本人にしてみれば大したことはしていない。そう思っているからこそ褒められることはあまり好むところではないのだろう。
「でもそれって、真剣を振り回す人に素手で対応したんでしょう?危なくなかったんですか?」
「大丈夫よ美月。お兄さまなら心配いらないわ」
「そうねぇ、達也君なら素手でクマまでなら屠れそう」
「いやいやいや!それにしても余裕ね、深雪」
深雪の発言にオーバーに乗っかる隆に突っ込みを入れつつも、自身の疑問を投げかける。
「そりゃ、10人以上を相手に軽く捌いて見せたのは見事としか言えなかったけど、桐原先輩も実力から言えばあの場にいた剣術部の中でも頭一つ出てたのよ。本当に、心配じゃなかったの?」
確かに剣の技術と魔法格闘のセンスは良い方だったわね。まあ、私なんて魔法を使った戦闘なんてしたことないけど。
心の中で隆が呟いている目線の先で深雪が自信の表情を崩さずにエリカの問いに答える。一切の躊躇なく、
「ええ、お兄さまに勝てる者などいるはずもないもの」
これには流石のエリカも言葉を失ってしまったようだ。
確かに桐原の太刀筋は刀剣の切れ味に見合った鋭さを持っていた。武術の経験のある達也はそれに物怖じすることなく懐に飛び込み、相手を地面に抑えつけた。達人級のワザマエではあったが、深雪ほど自信をもって言える人はあまりいない。少なくともエリカは当てはまらない。
「達也さんの技量を疑うわけじゃないんだけど、高周波ブレードって特殊な超音波を発生させるのでしょう?」
「それは俺も聞いたことがある。使用者の中に高周波酔いを防ぐために耳栓つけている奴もいるそうじゃねぇか。まあ、それも計算ずくなのかもしれんが」
「そうじゃないのよ。単に、お兄さまの体術が優れているだけじゃないのよ」
「魔法式の無効化は、お兄さまの十八番なの。」
「魔法式の無効化?情報強化とか領域魔法とかではなくて?」
「えぇ」
達也は「しょうがないなぁ」という笑いを深雪に向ける。
深雪はそのままエリカからその時の状況を聞き、結論に至る。
「お兄さま、キャストジャミングをお使いになったでしょう?」
「深雪には敵わないな」
深雪の微笑みに達也も諦めの感情を含めた笑いをむける。
「それはもう、深雪はお兄様の事なら何でも知っていますもの」
「いやいやいやいや!それって兄弟の会話じゃないぜ?恋人同士のレベル超えちまってるって!」
「『そうかな?』かしら?」
ピタッとセリフを合わせた二人にレオはゴンッ!と机に突っ伏した。
「このラブラブ兄妹にツッコミ入れようってのがだいそれてるのよあんたじゃ
「あぁ、俺が間違ってたよ・・・」
二人はしみじみと会話する。
「それは著しく不本意なんだが」
「いいじゃありませんか。私とお兄さまが強い兄弟愛で結ばれているのは事実ですし」
今度はレオとエリカが同時に突っ伏す。
隆はあらあら、と両手で頬を包んでうっとりと見つめている。
「私はお兄様のことを誰よりも敬愛いたしておりますので」
見せつけるように隣の達也に椅子ごと体を寄せ、上目づかいで
「あーもー、私帰ろうかなー」
エリカは机に突っ伏したままやさぐれる。
「深雪、悪のりも程々にな?冗談だとわかってないのも約一名いるようだし」
達也の指摘に全員の視線がゆっくりと一点に向かう。
「えっ。えっ。冗談!?」
顔を真っ赤にして俯いていた美月はキョロキョロと見回しす。
「・・・まぁ、これが美月の持ち味だよね」
◇ ◇ ◇
キャスト・ジャミングは魔法を妨害する魔法。
情報粒子エイドスを書き換える工程を阻害する。
現在、キャスト・ジャミングを発動するには希少鉱石が必要。
「でもそれって特別な石がいるんじゃないの?アンティなんとかが必要なんじゃない?」
「アンティナイトよ、エリカちゃん。凄く高価なものだった思うんですけど」
アンティナイト。
サイオンを流し込むことでキャスト・ジャミングを発動する特別な鉱石。
理論上、人でもキャストジャミングを発動することは可能なのだが、発生させると自身も魔法使用を阻害されるため、無意識領域にある魔法演算領域が本能的にその波の構成を拒否する。
達也君はCAD二つで作った気がするんだけど。
「いや、持ってないよ。そもそもアンティナイトは軍事物資だからね。」
「え?でもキャスト・ジャミングを使ったって・・・」
実際に発言したのはエリカだが、レオや美月も同じようにわからないという様子。
「あーこの話はオフレコで頼むんだけど」
エリカと美月とレオは息を潜め、テーブルに身を乗り出した達也に釣られて同じ体勢をとる。
「じゃあ私は音が漏れないようにするわ」
と言うと隆はピンクのバッグからテレビのリモコンを改造したようなCADを取り出し、ボタンをピッと押す。すると外からの音がシャットアウトされる。
ある境界線を発生させてそこから外内の空気振動を阻害したのだ。
つまり、カウンターから流れるBGMが聞こえなくなる代わりに達也の声も5人以外に聞こえなくなった。
「すまんな」
声が籠って聞こえるな、遮るというより反射している。
達也は説明を始める。
今回使ったのはキャスト・ジャミングの理論を応用した『特定魔法のジャミング』。
2つのCADを同時に使用しようとした時にサイオン波干渉が起こり魔法が発動しない。
その干渉波をジャミングと同じ用に魔法師を取り巻く事象のエイドスを含む
情報体次元とは、現代魔法額においてエイドスが記録される場所であり、この世界のエイドスがすべて記録されている次元のことである。
言うなれば
一方のCADで妨害する起動式を、もう一方のCADでそれとは逆の効果の起動式を展開し、魔法演算領域に移すことなくそのまま複写増幅し、そのサイオン波を無系統魔法として放つ。
これである程度魔法発動を妨害できるらしい。
全員が驚愕の表情を浮かべる。驚く4人には店内のBGMがいつ戻って来たのかさえもわからなかった。
最初に言葉を発したのは首を傾げ、腕を組むレオだった。
「どうすんのかはぜんっぜん分からねえが、おおよその理屈は理解できたぜ。だがよ、何でそれがオフレコなんだ?特許でも取っちまえば儲かりそうな技術だと思うんだがなぁ」
達也の顔が苦々しいものになる。
「一つは、この技術がまだ未完成なものだということ。相手は魔法を使いづらくなるだけでこっちは全く魔法が使えなくなる。これだけでも致命的だが、それ以上にこの仕組み自体が問題なんだ」
「そうねぇ、そんなに簡単な魔法の妨害が出回ると、治安維持や国の防衛に魔法が不可欠になった今の社会基盤が音を立てて崩れてしまうわねぇ」
しみじみとストローを齧りながら隆が呟く。
「隆の言うとおりだと俺は考えている。世の中には、差別の元凶だとして魔法を排斥しようと活動している過激派もいるからな。アンティナイトは産出量が少ないから現実的な脅威には今のところなってない面がある。対抗手段を見つけられるまで、あのキャストジャミングもどきを公表する気にはなれない」
質問したレオの表情も次第に晴れ、何度もうなずく。
「凄いですね・・・そんなことまで考えているなんて」
美月は嘆息を吐き出しながら呟く。
「いやいや、っと。そういえば説明の途中で思い出したんだが、隆が入学初日で使ったアレはなんなんだ?俺には魔法式が組み変わったように見えたんだが」
達也はふと隆に質問を投げ込む。
それに対して周囲は何のことだろうかと一斉に首をかしげてキャッチしたほうに視線を移す。
・・・さっきの事もあるから答えてくれるかは謎だが。達也は様子をうかがう。
「そこまで言ったら大体は察しているでしょう?そうね、私も起動式を読めるのよね。それであの時、魔法式の本来の効果を使用不能に、魔法式自体が砕けるように
全員の首がさらに10度ほど傾く。
その中で達也は一人だけ質問を続ける。
「添削?それは」
「ヒミツ☆もしくは皆への宿題にしようかな。期限は高校を卒業するまで」
「それに達也君、そんなにヘタレならなくても展開中の起動式が読めなきゃ、CADの干渉波を放てなきゃ、そのジャミングは使えないんだからいいんじゃないかしら?ねぇ、深雪ちゃん?」
深雪は問いに一瞬驚いたが、すぐに微笑む。
「えぇ、お兄さまは少し考え過ぎだと思います。ですが、それでこそお兄さまというべきでしょうか?」
「それは暗に俺が優柔不断のヘタレだと言いたいのか?」
達也はぶーたれた様子を演じてみせた。
「さぁ、エリカはどう思う?」
「さぁねぇ、わたしとしては美月に聞いてみたかったり」
深雪はエリカにパスし、そのまま美月に放り投げる。
今美月はその球をどうキャッチしようかとあたふたしている。
その状況に達也は苦笑を浮かべ、エリカと深雪はいたづらっぽい笑みを浮かべる。
その光景を見て隆はほっこりしたような表情をしている。
◇ ◇ ◇
部活動勧誘2日目。
1限開始前、昼休みを使って仕事を他の人の分も済ませた隆は放課後を出歩く許可を手に入れることができた。
――――――――――――――――
現在、俺はMMA(マジック・マーシャル・アーツ)の勧誘員を探している。
なぜって?興味があるからに決まってるだろ。
この為だけに昨日から(片手間だったけど)、今日は6時に学校に来て仕事を処理したしな?
「ねえ、あの子・・・」「えぇ・・・素敵〜」「イケメーン」という黄色い冷やかしと、
「誰だ?資料にはないぞ」「特推の奴か」「爆発しろ」という紫色の声が耳に入ってくる。そして誰も近寄ってこない。
別にリアルが充実してないんだがな・・・。まあでも今日はクローバーの髪留めを置いて来たからだろうな。だからワックス借りて軽くオールバック気味に調節した。ワックスが校則違反じゃないかって?そんなこと言ったらこの学校の男子生徒の4割は逮捕だ。
あれが寝癖なんておかしいでだろ?野暮は言うもんじゃない。
俺が誰に声をかけられることもなく、と言うか此方から先輩に声を掛けてMMA部のいる場所を聞き出したんだがな。
その道すがら、ギャーギャーうるさく騒いでる連中とその鎮圧に呼ばれた達也がいた。
「・・・大変そうだな・・。・・・・!」
有象無象の1匹、一科の奴がどさくさに紛れて達也に向けて魔法を撃ち込もうとしてやがった。野郎。
幸い、流石は達也と言ったところか。あの状況下でもどさくさ魔法式の無力化ができてら。大事には至らなくて少しホッとした。んだがな・・・
俺は薄桃のバッグから青いポーチを、そこから黄色い紙と黒くて小さなカードを取り出して梟を折った。
顔は覚えた、あとで処す。っとと、取り敢えずMMAの部室に急ぐんだぜ。
暫く歩くと部室らしき所が見えて来た。
だけど建物の前でまごついてるヤツがいるな。取り敢えず声かけてみっか。取り敢えず
「よーう、十三束。お前さんも見に来たのか?」
十三束は声をかけると飛び上がった。隆に比べて背が低い為、隆にはその動作を小動物のようだと、微笑ましく思った。
「俺は靏隆ってんだ。お前さんと同じ同級生だ、安心しろ」
一瞬の硬直ののちにホッと胸を撫で下ろしている。どうにも撫で回したくなってきた。すぐに強張った顔に戻ったが
「・・・どうして僕の名前を?」
「入学式の帰りの駅で会っただろって・・・あぁそうか!これじゃ分からんよな!」
十三束は記憶を巡らせる。入学式の帰り・・・。朧げに・・・確か、帰りの混雑でICカードを落としたのを誰かに拾ってもらったような・・・。
考え込む十三束の頭に声を掛けられた気がし、見上げる。
「これならわかるかい?」
前髪を下ろしワックスで固めた髪で髪留めをしている時の状態を再現した隆の姿を見てゆっくりと拾ってくれた相手の容姿を思い出す。
「あぁ、あの時の・・・改めてお礼を「いいよいいよ。それよりも早く行こうよ」・・・そうだね」
十三束と隆は並んで門(と言うより扉)を叩いた。
◇ ◇ ◇
喧しい一週間が終わった。
その間に達也は一科の生徒によって騒動のどさくさに紛れて攻撃された。が大事には至ってない。そしてその中で手首に赤と青選に縁どられた白いリストバンドを付けた生徒について達也は特に気にかかていた。
そして風紀委員としての達也は校内では有名人だった。
並み居る
ひどいものでは魔法否定派に送り込まれた刺客だとかなんとか
そして、もう一つ。達也と壬生紗耶香のカフェでのお話し愛(?)。
壬生からの剣道部、そして表向きの、あるいは本人たちはそう思っている差別撤回の団体への勧誘だった。
これは余談なのだが、達也は部活動勧誘期間と喫茶店にいるときに、頭上からの視線を感じていた。誰かは分かっているが、目的はわからない。
◇ ◇ ◇
翌日の昼休み、生徒会では―――
ダイニングサーバーの利用がめっきり減っていた。
と言うのも摩利に隆、達也に深雪と続いて真由美まで弁当を用意しだしたからだ。
現在ではおかずの交換などをして弁当パーティ状態になっている。
そしてメンバーにあずさが加わった。
座る位置はいつも奥から深雪、達也、隆。
反対側はあずさ、真由美、摩利。と言っても隆の正面には誰も座っていないが。
「達也君」
摩利はさりげなく、だが下世話な表情で達也を呼びかける。
「何でしょうか、委員長」
対して達也は無表情に返す。
隆は早々に食べ終わって謎の書類をまとめている。
(知らない名前の先輩の名前がたくさん書かれているのはわかるが)
「昨日、二年の壬生を、カフェで言葉攻めにしたのは本当かい?」
もし達也の口に食べ物が入っていたらリバースしていたことだろう。
達也の隣で無心に資料作成していた隆の手も止まっている。
「・・・先輩も年頃の淑女なんですから、『言葉攻め』等という、はしたない言葉は使うべきではないと思われますが」
「ハハハ、ありがとう。私を淑女扱いしてくれるのは達也君ぐらいだよ」
思わぬ反撃に摩利は苦笑を浮かべる。
が、これで終わるはずもなく、
「恋人をレディとして扱わないなんて、渡辺先輩の彼氏はあまり紳士的ではないようですね。」
「そんなことない!シュウは・・・・あ」
摩利はしまった!と思いとっさに口を塞ぐ。
対して達也は無表情で見つめている。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
双方が静かに見つめ合う。
「なぜ何も言わない」
「むしろ何かコメントが必要ですか?」
摩利はブスくれた表情のまま、自分の隣で肩を震わせている真由美に目線を逸らす。
「籍を入れるのは五年後ってとこかしら」
ここにも下世話な人間が1人。
隆としては頭の中で考えているつもりだったのだが、どうやら口からこぼしていたようだ。
「あっ、なっな・・・な!・・・靏っ!貴様何をっ!!!」
「あれ?口に出てました?・・・(ピコーン!)もしかして大学入る前に?いやぁまさか渡辺先輩がそこまで大胆だとは」
「バッ、バババババババババカ者!!!!マッマだだそんなこと話し合うような歳じゃない!!!」
摩利の顔は火がついた様に真っ赤に染まり、恥ずかしいのか怒っているのか分からなくなっている。堪え切れなくなった真由美も吹き出して、さらに加速していく。
ーーー5分後、
「ぜぇ、ぜぇ・・・それで、壬生を言葉攻めにしたと言うのは本当か?」
結局、話が原点に戻って来たことにため息をつく達也。
そしてニコニコ笑っている真由美。その隣でアワアワしていたあずさ。我関せずと傍観していた達也と深雪。
そして騒乱が始まってからすぐ資料作成に戻った
「ですから『言葉攻め』という表現は止めてください。深雪の教育によろしくありません」
深雪の不満げな視線に目で謝りながら達也は続ける。
「・・・そんな事実ありませんよ」
「そうかね?壬生が顔を真っ赤にして恥じらっているところを目撃した者がいるのだが」
徐々に調子を取り戻す。が、変化しているのはそれだけではなかった。
「ま、魔法・・・!?」
室内に冷気が漂う。
達也は隣を振り向く。深雪の周囲は凍りつきさらに広く伝染していく。
「深雪さん、事象干渉能力がよっぽど強いのね・・・」
達也は真由美の呟きに苦笑いを浮かべる。
「落ち着け深雪。ちゃんと説明するから」
はっと頬を赤らめて俯く深雪。
それと同時に室内の温度が徐々に戻っていく。
「申し訳ありません」
そして達也は壬生との会話を正確に再現した。
「どうも風紀委員会の活動は生徒の反感を買っている様ですね」
「・・・点数稼ぎに強引な摘発などと言うことが本当にあるんですか?少なくともこの1週間のうちにその様な事例は見聞きしておりませんが」
「私も、モニター越しではありますが、あの無秩序ぶりを見ればむしろ寛容だったと思われますが・・・」
摩利と真由美は苦々しい笑みを浮かべて言うには、
風紀委員会は全くの名誉職。メリットはほとんどなく対抗戦の成績の様に演習の評価が加算されると言う様なことはない。風紀委員を務めたと言うことで校内での多少の評価が得られる可能性はあるが、生徒会の様に卒後も高評価の要因になることもない。
だが、校内で高い権力を持っているのも事実。特に学校の現体制に不満を持っている生徒から見れば警察と検察を合わせた風紀委員会は学校の犬。
「正確には、そう印象操作している人がいるんだけどね」
達也も深雪も驚きを隠せない。
その隣で俯いて資料作成していた隆の手もいつの間にか止まり、見上げている。
「・・・正体のほどは?」
答えは否。だが達也の質問は2人には意外だった様だ。特に真由美は普段見せることのない大きな動揺の色が見えた。
「俺が聞いているのは、印象を操作している人ではなく大元の事です」
深雪は達也の袖を静かに引っ張る。出過ぎたことだと言っている。だが、ここにある組織が絡んでいるのは明白。赤と青のラインで縁取られた白のリストバンドの生徒が接触をしてきたのがいい証拠。
「例えば、『ブランシュ』とか」
「どうしてその名前を・・・」
あずさは驚く2人に目を丸め、隆はキョロキョロと両者を見回す。この2人はどういうことかよく知らないらしい。
「別に極秘情報というわけではないのでしょう。報道規制はかかっている様ですが噂の出所を塞ぐなんて完全にはできませんから」
反魔法国際政治団体『ブランシュ』
「魔法師が政治的に優遇されている。だから魔法能力での社会差別を根絶をしよう。」
と言って活動する団体。
実際にそのような事実はない。それに魔法師を兵器として使いつぶす軍や行政機関に、非人道的だと浴びせられているのが実情。
そもそも、他国(主に爆発する隣国)より圧倒的に魔法師の数が少ない日本は量より質を求められる状況にある。ライセンスを持ち、実用的な魔法を使えるとなると日本人口0.01%程度。
その貴重とされる存在一人一人に割り当てられる労働と見返りは大きくなるのは自然な話。
(
就任しただけで月100万を4年間貰えるおいしいどこかの公務機関員とはわけが違う。
反魔法組織は、独自の――現実を歪曲したといってもいい――批判をもとに反対運動をしている組織であり、ブランシュは中でも頭一つ出た活動を行っている組織に挙げられる。
公安にマークされて表立った行動はしていないものの、下部組織を使って今も活動を行っている。
それが赤と青の縁の入った白をシンボルマークとして掲げる組織『エガリテ』。
表向きは無関係の、政治色を嫌った若年層を吸収するための表向きの看板組織。
「こういうのは中途半端に隠すと、悪化を招くのですがねぇ。いや会長を非難しているのではなく、政府のやり方が拙劣だと言ってるのですが」
達也の言い訳交じりの慰めも、今の真由美にはあまり効果がなかった。
「いいえ、達也君の言う通りよ。魔法師を目の敵にする集団が事実いるのだから、彼らがいかに理不尽なのか、正しい情報を含めて報道したほうがすべてを覆い隠すよりも効果的な手段が取れるのに、私たちは正面から対決することを避け・・・・いえ、逃げてしまっている」
「それは仕方のないことでしょう」
自責気味な真由美には冷たく聞こえた言葉。
しかし、
「国営の学校ですから、俺たち生徒は身分上、まだ公務員ではありませんが、学校運営にかかわる生徒会役員が国の方針に縛られるのは仕方のないことです」
「えっ?」
「・・・会長の立場では、秘密にしておくのもやむを得ないということですよ」
「達也君、なかなか優しいところがあるのねぇ」
「でも、追い詰めたのも司波君なんですよね・・・」
隆とあずさの呟きにすかさず摩利がいたずらな笑みを浮かべて付け加える。
「自分で追い込んで自分でフォローするとはまるでジゴロだね。真由美もすっかり篭絡されているようだし凄腕なようだ」
今一度、室内の温度が急速に下がったのは言うまでもない。
達也と深雪が退出した後、隆はそっと真由美に出来上がった資料を差し出す。
「隆君、これは?」
問われた本人は満面の笑みでこう答える。
「部活動勧誘期間中、司波達也に向けて不正な魔法使用を行った人のリストです。」
「え?」
真由美は一瞬固まり、資料を漁り始める。摩利も後ろから覗く。
報告書の内容は日時から現場、使用の終始から利用の妥当性の無さ。
まるで現場で見ていたかのようなこと細かさ。
真由美も摩利も簡単と驚愕を浮かべる。
「これ、どうやって調べたの?」
「はい、放課後にでも」
隆は笑顔。
もっとも、黒いと付けが方が良い下衆な笑みではあったが。
『そうだな「ね」』
室内の3人に深々と礼をして生徒会室を後にした。
はい。
今、新年初投稿で1万字超したことに驚きと喜びを感じております。
そんなことよりも駄文をどうにかしてほしい?最もでございます。私の力はペーペーのペーでございますから。うまく話を切って繋ぐことも、差し込むことも未熟で見るも無残なものになっていますよね。わかります。ですがこれは年月を待って下さればその内きっと多分改善されると思いますので長にお待ちいただければ幸いです。
いつでもコメントをお待ちしております(ゴマすり)。