ですが次の山場まであまり時間がなく、なかなか長く時間を割く事が出来ませんでした(言い訳)
積もる話は沢山ありますが、今は置いておいて、
久しぶりにどうぞ!
翌日、隆の予測した通り、生徒会と差別撤回の有志同盟で討論会を明日催すことになったとを発表された。
それに合わせて、連盟の動きが活発になった。自称活動家達は朝の授業前、休み時間や放課後に賛同者を1人でも多く集めようと廊下で勧誘活動を行なった。
勧誘の対象はやはり二科生徒。率直に同士になろう、一緒に学校を変えよう。などと話しかける連盟員もいれば、同士になったら成績が上がった、霊子放射光過敏症(人間には見えない霊子(プシオン)を光として認識する視覚障害。メガネを普段かけている人の大半はこれ)の症状が改善された。と一部、霊感商法じみたものも。
前者は真っ当に変化を望むものの決まり文句。そして後者は、相手を陥れるための決まり文句。
前者を口にする者は何かを盲信し、それを信じて疑わない狂信者。
後者を口にする者は言葉巧みに人のコンプレックスに付け込み、甘い言葉で人々をある道まで導く先導者。
「風紀委員の司波です。あまり長時間にわたる拘束は迷惑行為とみなされる場合がありますので、お控えください」
三年、司甲。
エガリテのシンボルマークを身に着けた生徒。壬生と同じ剣道部、部長を務める彼の体格は達也を襲撃した人間と一致していた。
美月を捕まえて甘言を並べていたその姿は確実に
そして隆も、司甲を完全な黒ということを理解している。部活動勧誘期間中に、生徒会の仕事片手間に、魔法を使って達也の周囲を飛び回り情報を集めていたのだから。
だが、隆が生徒会に提出した報告書に司の名前は記されていない。報告漏れ、ではなく提出の直前に修正した。今後の行動を観察するため。もちろん友人を襲撃した報いを受けさせることは前提。
正体を晒させるためには、
「(罠に) ハメないと、ね」
授業中の小さなぼやきに、周囲の男子生徒は一斉にお尻を手で押さえた。
◇ ◇ ◇
新しく買った自動二輪(現在は中学卒業から免許取得可能)を階下の駐車場に停める。明朝の階段脇から放たれる微かな気配も、こちらの隙を窺う寺の門徒もいない。灯りのない道にただ微かな林の揺らめきと石階段を踏む二人分の足音がささやくだけ。
ゆっくりと登った先、境内の明かりが二人を出迎えることなく、頭上の月が雲に隠れては照らすを繰り返し、その度にこの寺の、朝には見せない物静かな表情を露わにしている。
2人は現在、とある目的で家から10kmは離れたとある場所に足を運んでいた。
自身の周囲にある大きな問題の内情を知るため。
世界トップシェアの検索サイトにも、不特定多数が愚痴をこぼし、AA職人がはびこる御意見番サイトにも掲載されない、個人や組織の内部の詳細な内容を知るために、達也は此処に足を運んでくる。
今から会う相手は、九重寺の住職で達也と深雪に体術を指導した人物。
そして、忍者である。
創作小説や漫画などで現れるアレ。闇に潜んで時に情報を集め、殺める。
おカネ次第で人を殺す、さすが忍者さすが汚い。
現在は忍術も古式魔法として認識され、忍者もとい忍術使いは魔法師という括りに収められ存在している。
九重八雲は伝統の技術だけでなく寺も九重という姓も、先代より受け継いでいる。
―――
2人が本堂前でどうしたのかと疑問に思う内に暗闇から気配を消し、八雲は背後から近づいた。そっと声をかけると深雪が驚いて振り返ったのでとても満足げ。
その呼びかけに対し回れ右したい気持ちをぐっとこらえて声のする方へと、腕に強く抱きついた主の動きに合わせて歩み寄る。情報をさっさと貰って帰ろう。
お話中・・・
「それにしても、達也君は面白い友人を持ってるね」
急な事に達也は唖然とする。司甲とブランシュの関係、それと美月の目について情報をもらった達也は、自分と縁を持った人間の周囲を調べるという九重の行為はあまりいい気分がしないな、と心の中で頷いていたため、不意の発言に驚いたのだ。
「そうですか」
「その中でも靏隆君って子がとても興味深い。むしろ、こっちを警戒したほうがいいかもしれないね」
達也は目を見開く。
入学して既に2週間は過ぎたが、友人、と呼ばれて思い浮かぶのは今の所、両手で足りるほどしかいない。その中でこの人が興味を持ちそうなのは1人、そこまでは予想できたがその先の言葉まではさすがに予想ができなかった。美月の目を警戒していたが、今日をもってそれを解消されたことに安心したのもつかの間、である。
「どう言う事でしょうか?」
八雲は首を傾げ質問する深雪とその隣で、達也の少なくも普段より大きな表情の変化にニカりと笑って言葉を続ける。
「今日連絡があった時、達也君の事だから彼についても聞いてくるだろうと予想をしていたけど、ちょっと意外かな~」
おどけて見せる八雲に対し達也は早く本題を、と視線で訴えかける。一体何が危険なのか、早く聞きたかった。深雪も同様に、この意地の悪い先生を目で催促する。
無言の要求に笑みを絶やさず顎に手をあてたまま答える。
「靏隆君、旧姓は弓削で、古式魔法の大家として21世紀初頭までは名が通ってた家でね。昔は僕らとも交流があったようだ。そしてこちらも司甲と同じで両親、祖父母共に魔法が使えなかったよ。だから本人の才能は先祖返りだね。」
先生、プライバシーというものを知っていますか?と少し前の質問を心の中で再びボヤきながら続きに耳を傾ける。
「両親含め親族は彼が10歳になる頃には皆他界してしまって、施設に引き取られることになったよ。そこで弓削から靏に苗字も変わり、以後施設の人間と仲良く暮らしていたそうだよ。中学に上がってからは専ら家で家事ばかりして魔法とは全く無縁な生活を送って、そして去年からまた魔法を学び始めた。地元の塾などには通わず、ある古式魔法研究家に、入試に必要な理論と工学を教わった」
そして聞き入っている2人に向き直る。
「それで、此処からが本題。実は昔、と言っても僕の何代も前だけどね。弓削の縁者と一戦交えたことがあってね、その時の事をこう残していたんだよ『弓削の目は
自分たちの秘密を看破されるかもしれない。
「お兄様・・・。」
見上げる深雪は眉をひそめ、声音も弱い。
達也と同じ結論に達したかはわからないが、自分たちの脅威になる人物が近くにいることに不安を感じている。
「ところで、」
又も達也の思考が唐突に遮られる。前触れもなく別の話を始めようとしている八雲に二人は再び視線を向ける。
「今年から特別推薦制度が導入されたのは知ってると思うけど、あれの条件に『ライセンスを持った魔法師の推薦状』が必要、と言うのがあったよね。彼の推薦状を書いたのは誰だと思う?」
「先ほどあった古式魔法研究家の方、でしょうか?」
深雪の回答に八雲はにんまりと笑う。
「正解、でも違うよ」
正解と言いながらも対局の発言をする八雲に、二人の頭上にはてなマークが浮かび上がる。
「それは一体…?」
「靏君に魔法の知識を教えた魔法師には、裏で糸を引く人物がいたってことさ。それでーーー」
◇ ◇ ◇
とある地域の一角。
そこは地図には乗っていない小さな村。
地元の人間にも知られることのない、たとえ遭難したとしても誰として迷い込むことのできない謎の土地。
旧県境に位置する村の中央には伝統的な、巨大な、日本家屋が存在している。
外見とは打って変わって絨毯を敷き、深みのある家具が壁際に、部屋の中央に。
木の梁が内側から持ち上げ、和と洋が互いに肩を並べる大きな屋敷には使用人と女性がいる。
使用人は割り振られた仕事をこなし、女性は資料に目を通し、書類にペンを走らせ、一人個室に籠って仕事をこなす。
最後の書類を処理した女性は嘆息をこぼすと照明を消し、柔らかな椅子から腰を持ち上げる。
灯りを失った部屋に欠けた月の光がゆっくりと女性の影を床から机へと作り出す。夜を思わせる至極色のベルスリーブを身に纏った女性、四葉 真夜はそっと目を閉じる。
彼女は本日、同じ学校に入学した姉の子供達の身近に、テロリストが忍んでいるという報告を受けた。決して小さくはない過激組織だと言うことも。
だが彼女は何もしない。
3人はそこらのアンブッシュ程度、軽く払いのける力を持っている。
テロリストを悪と定めて率先して手を出すような正義感も持ってはいない。
だがもし、学校が襲撃されれば、殲滅に動くだろう。
正義感でも一時の情動でもかたき討ちでもなく、自らの日常を守るために。
彼女は口の端を持ち上げる。
影よりも暗い笑みをここにはいない者に向けながら、背後の月を顧みることもないまま彼女は部屋を後にした。
◇ ◇ ◇
討論会当日の昼休み。今日は生徒会室で食べず、ほのかと雫と共に食堂で快食を取っていた。いつもは大きな賑わいを見せるこの場も、昨日今日に限ってイレギュラーな賑わいを見せる学校もここでは変化はない様だ。
むしろこんなところでまで活動をしようものなら、楽しい雰囲気が殺伐としたものに、というか活動家は
そんなこんなでいつもとーー隆はこれで2回目なのだがーー変わらない風景が流れている(意識的に二科生徒と一科生徒の列に分かれているのも含む)。
一科生徒の列の中にドヤ顔で紛れ込んでいる
「隆さん、今日は随分と機嫌がいいね」
「何か面白いことでもあった?」
食事を持って来たほのかは頭にはてなマークを浮かべ、雫は目を少し細めて何がおかしいのか推察する。入学して数週間でようやくほのかも隆を下の名前で、比較的同性に接する様に話す様になった。そして段々お互いのことを理解し始めた。ほのかはほんわかしているようで、達也に尊敬と恋慕の感情を抱いている。雫は物静かな様子に見えて負けず嫌いな所がある。二人も、手間暇をかけるのが好きで、オーバーに心配性だということを知っている。
突然だが、
昨日から隆はおかしい。
口調や動きがおかしいのはいつものことだから置いておくとして、どこか浮かれているのだ。
1人で歩く時のステップは普段よりもワンテンポ早く、実技の張り切りようは、発動速度に関して深雪を上回るスピードを叩き出す様になった。さらに放課後は僅か10秒足らずで準備を済ませ廊下に飛び出していく始末。どうしたのかと聞いてみても、
「いやぁ、ちょっとね?」
と言ってはぐらかす。
仮にも討論会前、誰が自分を見られいるのかわからない。ここでの不用意な行為で後々揚げ足を取られる可能性があるため、致し方ないのだが、そんな事は知らない2人は肩をすくめてゆっくりと座る。
だが2人は知っている、隆の何かあるときの口癖は「ちょっとね?」と言うことを。
テーブルに二つの膳と小さな二段弁当が並ぶ。
味噌汁の香りが微かに漂う。いつの間にか魔法瓶が机に置かれていたのだ。
「あー、いい香り…いつも味噌汁も持ってきてるの?」
「いーえ、家にあったのを思い出したから試しに使ってみただけなの。食べる?」
「え、いいの?」
「ほのか、うどんに味噌汁まで食べたらお腹がたっぷたぷになる」
あ、そうだった、と言って少し残念がるほのかに、うどんのお汁を少し残せばいいんじゃないかしら。と隆は解決策を思い浮かべたが、面白いから言葉をそっとタンスにしまい込んだ。
―――
「そういえば、今日の討論会はどうなるの?」
3人の食事もある程度、箸が進んだ所で今日のメインイベントの話に移った。
「そうねぇ、正直、生徒会長vs同盟員って感じだからなぁ。私は舞台裏で待機だし」
「え?そうなの!」
「ほのか、声大きい」
ほのかが驚いて挙げた声に少なからず周囲の注目が集まった。雫の指摘でそのことに気が付いたほのかは顔を赤らめて縮こまった。
いい子ね。隆はその姿を見て微笑ましい気持ちになる。が質問の答えを探しにすぐ今日の討論会に思いを巡らせる
本日の討論会は急に決まったから、どちらも準備期間が短い。打ち合わせ不足で回答者間の発言に食い違いが発生し、揚げ足を取られることを防ぐための判断なのだが、それを会長が提案、自身を推薦したというのだ。よくそんな事を考えつくわねぇ、と思いながら2人を待つ。
少しして周囲の視線が収まった所で話が再開される。
「会長さん大丈夫なの?」
頬を赤らめて辺りをキョロキョロ見回すほのかは意識して、そのせいかヒソヒソという環境音が似合うほどの小声で質問をする。
「そういうの、得意らしいわよ。感情論に持ち込まれない限りは大丈夫だって言ってたし。それよりも、今日はもしかしたら荒れるかもしれないわよ?」
ほのかの調子に合わせて机に身を乗り出し、隆もひそひそと話し始める。はたから見ると少し不可解な光景だが、本人たちには関係ない。
「荒れるってどういう意味?」
雫も二人に合わせる。ほのかも雫の質問に頷いて隆をじっと見つめる。
「詳しくは言えないけど、学校が火薬臭くなる可能性があるわね・・・・」
隆はおどけた笑みを、しかし笑っていない目で2人に告げる。微かに紅い物を秘めた目が2人の不安を駆り立てる。
いつかの怒られた時とは違ったもの。自分の顎の下のある冷めた料理から冷たい湯気が漂う感覚を覚える。目の前の人物が何に対して怒りを覚えているのか、困惑する。
「ウッフフフ」
周囲の温度が戻ってくる。隆の紅が赤色に変わり、2人の耳に食堂の賑わいがフェードインする。加えて魔法瓶から液体が容器に着地する不規則な音と懐かしい味噌の香りが2人を包む。
「大丈夫、核弾頭の直撃程度ならどうとでもなるし、そんな偶然、あるわけないじゃない、もう」
今日二人は知る。
隆のフラグは、回収率100%だということを。
◇ ◇ ◇
会場に大きな轟音と衝撃が走る。
たった今まで執り行われていた同盟と生徒会(長)の討論会も会長の圧勝(誤解が少し生じるが)に終わった。ステージ中央で言いたい事、思っていた事を言い並べ、"差別"の撤廃ではなく、"差別意識"の撤廃を宣言した真由美に向けられた盛大な拍手も、ステージ脇で
轟音を合図として一般生徒に紛れた同盟員達は一斉に行動を開始する。しかし、客席脇の通路に出た所で念のためと、同じく近くで紛れ監視していた風紀委員が何かを始める前に取り押さえる。
全員取り押さえ、生徒が落ち着きを取り戻しかけた建物内の窓を割って何かが飛び込んでくる。ペットボトル1Lサイズに近い大きさの金属塊から白煙が発生し、建物内の一角を染めかかる。が、それも服部の収束系、移動系のマルチキャスト(複数発動)で煙を一点に集め、発煙筒ごと投げ込まれた窓から外へと放り出される。
達也が服部を見ると、本人はプイッとそっぽを向いた。
「小学生みたいですよ、もy・・・副会長」
「いま何か言いかけなかったか!?」
それを服部の後ろで見ていた隆が冷やかす。ムキになって思わず言い返す服部をさらにクスクス笑って顔についた火に油を注いでいく。ハッ!となって真由美の方を見るとクスクス笑っている。今度は紅がピンクに変わって俯いてしまった。さすがの達也も苦笑せざるを得ない。
今度は会場の扉が勢いよく開かれる。
入ってきたのはガスマスクを被った3人の黒ずくめ。両手銃、片手銃を手、脇に構えて入り込んできた"テロリスト"も、急に首を抑えてその場に倒れこむ。
達也が魔法の発生源を辿ると、摩利にたどり着く。
ガスマスク内の空気を窒素で満たし酸素欠乏状態を作り出した様だ。
「さすが渡辺先輩。」
いつの間にかステージから降りて達也と深雪の下までやってきた隆が無駄口を叩いていた。敵は予想外の過激さだったが、予定通り鎮圧した。ここまで余裕を持てているのはこのおかげか、性分か。
「では俺は実技棟を見てきます」
「お供します、お兄様」
「私も行くわ」
「ああ、気をつけろよ!」
摩利に送り出された3人は騒動の中心へと足を運んだ。
◇ ◇ ◇
音の発生源にたどり着くと建物の外壁が黒く焦げ、その周辺が燃えていた。勢いが強く、教師が2人がかりで消火していた。その前では見覚えのある男子生徒がテロリスト3人を相手取って消火の邪魔させまいと
達也の一件で3体1は大したことない様に見えるが、本来は大した事ある。
達也?規格外だから基準にしてはいけない。
深雪が携帯型端末CADに指を走らせる。
コードを打ち終わると魔法式が一瞬にして展開、構成、発動する。
「なんの騒ぎだこりゃ」
駆け寄ってくる3人に気づいたレオは、こなしながら問いかける。その瞬間、取り囲んでいた3人は遥か上空へと吹き飛ばされたーーというよりは急加速で空中に浮いていった。
「テロリストが侵入した」
「ずいぶん物騒だな、おい」
「今のでよく話飲み込めたわね。ん?」
説明を一切端折った達也の言葉を理解したレオに軽いツッコミを入れた隆は何かを察知する。
振り返ると校門近くに止まっていた車からこちらに向かって照準を合わせ、発射してきたのだ。
誰よりも早く察知した隆は駆け出した。遅れて気がついたレオは目を剥く。それもそうだろう、爆弾に自ら突っ込んで行くのは普通、自殺行為に他ならない。しかし、魔法師はそれぞれ特異な魔法を有することも多い。対して達也は落ち着いていた。
隆は砲弾の直前で停止の魔法と慣性強化の魔法をかける。そして速度の下がった砲弾を掴んだ。
そして片足を軸として回転する。砲弾にかかる2つの慣性の力を利用してそのまま発射元に投げ返す。
「停止魔法と慣性強化のマルチキャストか。直接触れずに魔法陣を書き込んだ紙を間に間接的に掴んだぞ。紙の熱伝導率を小さくして火傷を防いでる。一瞬で3つの魔法を同時展開かーーー」
弾は元の砲手の手前で地面に着弾して爆発する。悲鳴は轟音にかき消され、爆風で電子工の様な格好をしたテロリストは吹き飛ばされていった。
「ただいま〜」
陽気な声をあげ、手をブンブン振りながら戻ってきた。
驚いた顔のレオは口をあんぐり開けたまま、達也はどこか関心した様に顎に手を当てて、見つめていた。
「加速魔法を砲弾にかけるのはわかるが、どうして地面に硬化魔法をかけたんだ?」
「いやぁねぇ、修理費払いたくないからよ。私、国のお金で生きてるんだから」
「いやテロリストが大胆にぶっ壊してんだからそっちになすりつけりゃいいだろ」
ようやく我に帰ったレオが隆に疑問を向ける。それに対して隆は目を丸くしてレオを振り返る。
「その発想はなかったわ・・・」
「おいおい・・・と言うかこんな状況でそんな事を考えるやつなんてお前くらいじゃねえか?」
「そうかしら?単純にレオ君が破壊神なだけだったり」
「しねぇよ」
レオの即座の返しに隆はクスクスと笑いだす。そしていつから持っていたのか 、テレビのリモコンにしか見えないCADをあらぬ方向に向けてスイッチを押す。
その直後、植え込みから銃を構えた男が現れた。が、宙を浮いて直進してくる。絶叫は隆の構えた膝にゴールして途絶えた。
「容赦ねぇ・・・」
「よく気がついたな」
「そういうのに敏感だから♡それに達也君も気づいてたでしょ?」
「レオ!」
ちょうど火消しの手伝いをしていた深雪も合流したところでエリカが自身の――見た目伸縮警棒の――CADとガントレット型のCADを抱きかかえて駆け寄ってきた。
足の速いエリカが事務室からCADを受け取りに戻り、その間レオが守る、という役割分担を行なったのだろう。
「っと、援軍が到着していたか」
「気にすんな、十分間に合ったタイミングだぜ」
「気にするわけないじゃない、あんた殺したって死にゃしないくせに」
「んだとコラ!・・・じゃねえ、さっさとCADよこせ」
ポーイ
「――って投げんなよ!」
「これ達也君、それとも深雪?」
エリカはこれを無視した。元々CADは頑丈に作られているため、落とした程度では壊れることはあまりない。まあ、壊れたとしても無視はしただろうが。
エリカは無情な目で3人のテロリストを見下ろしながら問いかけた。
「深雪だ。俺ではこうも手際よくは行かない」
「私よ。この程度の雑魚に、お兄さまのお手を煩わせるわけにはいかないわ」
全く同時に発言した二人にエリカは呆れる。
「はいはい、麗しい兄弟愛ですことで」
そして少し離れた位置で倒れている人間にも一瞥を送り、
「それでこいつらは問答無用でぶっ飛ばしてもいいのよね?」
と、どこか興奮気味に言う。
「生徒でなければ手加減無用だ」
達也は冷やかしを無視し、その後の質問に答えた。
◇ ◇ ◇
「
レオのガントレット型のCADにサイオンの煌めきが纏われる。
エリカの集合後、さらにその場にカウンセラーの小野遥が現れ、達也たちにブランシュが本当に狙っている場所を告げる。加えて、壬生紗耶香に機会を与えてほしいと頼むがバッサリ断られる。
現在、小野遥に教えられた通り魔法大学の機密文献が収められている図書館に向かい、建物の前でテロリストとCAD未所持で対応している3年生がぶつかり合い、混戦状態になっている。
レオはそれを見て、グループから離れて戦場に突っ込んでいったのであった。
「音声認識とはまたレアな物を」
エリカが呆れた声を上げる。
「お兄さま、展開と構成が同時に」
「あぁ、逐次展開だ。10年前にはやった奴だな」
「魔法までアナログなのね、アイツ」
レオのCADと振り下ろされた棍棒がぶつかり合う。
硬化魔法の特性――分子の相対座標を狭いエリアに固定する魔法――によってCADと服の強度を跳ね上げている。
レオが駆けていった方角と逆側から大勢の足音が聞こえる。その方向を見ると、黒いつなぎを着た連中がぞろぞろと現れたのだ。対応に当たっている3年生やレオがいくら実力者であっても数で来られてはひとたまりもない。
「私が片づけるわ」
隆は足を止め、まだ距離のある敵に相対する。
「そうか。2人とも先に行ってるぞ!」
「おうよ!」
「ええ!」
達也は二人にこの場を任せて図書館に駆けて行った。
それを横目で見送った隆は視線を目の前の敵に戻す。隆はズボンのポケットから
そして端末型CADには日常用に加えてその他多数の魔法が登録されている。
ちなみにこの端末型CADは最新機種で国から支給されたもの。制度の条件を満たされなければ剥奪されるものの一つに含まれている。
隆は端末の上で指を弾ませる。キーの高い入力音が周囲に放たれ、サイオンの煌めきが隆の周囲に舞う。通常扱うCADの発動速度を超える速度で魔法式が構築、展開される。エイドスが書き換えられる。
隆の地点まで後、数メートルといったところで喉を抑え倒れこむ。
端末にコードが打ち込まれる。すると黒い波が起こる様にテロリストは立ち上がる。が、すぐにまたその場に倒れ、今度は白目を剥く。口から涎を垂らし、ある者は自分の吐瀉物に片頬を埋め、次第に痙攣を始める。
「これ以上は
隆は最後にもう一度操作した後、端末をポケットに収める。そして後ろの混戦に消えていった。
どうも八雲のシーンと食事のシーンが薄いんですよねぇ・・・。どうにかして会話を厚くしないと、これだからコミュ障は(鏡を見ながら)
次回で入学編は終わりです。予定では、小話を挟んで九校戦に踏み込みます。
よければこれからもよろしくお願いします!