残念イケメンと劣等生   作:ライトフォレスト

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お久しぶりです。色々終わりました(目逸らし)
投降が遅くなりまして、大変申し訳ございませんでした。
そして、まったく面白みのない回となっております。
駄文駄文、お付き合いいただければ幸いです。


17話 逆襲

 黄昏(たそがれ)た空。都市部から少し外れた寂れた道に凶暴なエンジン音が響き渡る。

 

 現在、達也と深雪は街はずれの廃工場に向かう車に乗っていた。

 放課後の公開討論会中のテロリスト襲撃を退け、図書館内で拘束された壬生紗耶香への事情聴取を行った後、壬生のカウンセリングのためにやって来た遥からテロリストの居場所を聞き出し、即刻向かったのであった。

 

 

Panzer(パンツァー)!」

 

 

 自分たちの生活領域を侵した集団の殲滅を宣言した達也について来たのは深雪だけではなかった。レオにエリカ、十師族として十文字――そして何故か桐原が――が乗り合わせた。(ちなみに6人が乗っている車は十文字が用意した車だ)

 

 

 レオの掛け声の直後、衝撃が走る。廃工場への立ち入りを阻害していた鉄柵に車が猛スピードで突撃した。猛スピードの車はレオの魔法によって鉄柵を打ち負かし破壊。衝撃で少し浮いた車体は前進する力そのまま工場敷地内で着地して入り口前で停車する。

 

 

「レオ、ご苦労さん」

 

「なんの、チョロいぜ…」

 

「バテてるバテてる」

 

 

「司波、お前が考えた作戦だ。お前が指示を出せ」

 

 十文字の一言に頷いた達也は役割を割り振り、それが終わると次々と車を降りる。それぞれの足取りは緊張を感じさせない様な思いの外、軽い足取りをしていた。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「ようこそ、初めまして、司波達也君」

 

 

 

 見張りやカメラがないと思ったら、まさか整列して出迎えられるとは。犯罪集団の親玉にしてはいささか威勢が足りないが、自己陶酔が口調や態度から滲み出し、狂気的な目つきで武装集団の先頭に立っている姿はふさわしい。まあ、大抵は

 

「お前がブランシュのリーダーか」

 

 そうだった、と言う様に痩せっぽっちの男は両手を掲げる。

 

 

 

 

 

 

 実にわざとらしいわねぇ。

 

 

 

 ・・・。

 

 

 

 

 

「これは失敬した。仰る通り僕がブランシュ日本支部リーダーの司一だ」

 

 

「そうか」

 

 この狂気じみた状況に慣れた自分に何の感情も感じずただ俺は頷く。無駄だとわかってはいるが…。

 達也はショルダーホルスターから取り出した拳銃型のCADを司一に向け、お決まりのセリフを告げる。

 

「一応、投降の勧告をしておく。全員武器を捨てて両手を頭の後ろに組め」

 

「ハハハハハ!君は魔法が苦手なウィードじゃなかったのかな?おっと、これは差別用語だったかな。それにしても君の自信は何処から湧いてくるのかな?魔法が絶対の力だと思ったら大間違いだよ」

 

 そう有頂天気味に言い放った司一は右手を掲げ、それを合図に後ろの兵士がアサルトライフル、軽機関銃(サブマシンガン)、ハンドガンを達也と深雪に向ける。

 そして続けて、達也の勧誘に移る。義理の弟の司甲は、一校で有用な生徒を引き抜くために忍び込ませた駒だと言い、そこでアンティナイトを使わないキャストジャミングを使える達也見つけたのだという。

 生徒の洗脳にかかったコストと、失敗した襲撃の代償としてブランシュに入れと、概ね予想通りの内容に俺は呆れる。

 

 

「やはりそれが狙いか。壬生先輩を使って接触させたのも、弟に襲わせたのも、あのもどきについて探るためだったんだな?」

 

「頭の回る子供は好ましいねぇ!だがそこまで分かっててここにノコノコと乗り込んで来たあたりは所詮、子共か。とは言っても子供は強情なもの。勝ち目がないとわかっていてもおとなしく言うことを聞かないものさ」

 

「だったらどうする」

 

「ではそうだね、・・・・こうしよう!」

 

 

 ゆっくりと考えるように司一は伊達メガネを取り外し、答えと共に真上へと放り投げる。

 

 

「我々の同士になるがいい!司波達也くん!」

 

 キザったらしいセリフと共に前髪を掻き上げ、達也へと目を合わせる。司一の目から強い光が放たれる。

 

 

 

 伊達メガネを放り投げると一緒に手元に隠しておいたCADを操作。発動したのは光波振動系、催眠効果のある光の点滅パターンを人間の認識速度を超える速度で相手の網膜に投射する一種の催眠魔法。達也の脳は瞬時にそう判断するが()()()()()。そのまま敵の術中に嵌った様にうなだれて見せる。

 

「ハハハハハっ!これで君も僕らの仲間だ!では手始めに君の愛する妹君をその手で始末してもらおうか。アッハハハハハハハ!」

 

 

 コンクリート造りの室内に下卑た笑いが反響する。達也は目の前の阿呆に付き合ったことにいささか後悔した。余りにも馬鹿馬鹿しい。これまでこの一発芸だけで人心を掌握してきたのだろう。犯罪組織のボスが持つ様なカリスマ性はどうやら検討間違いのようだ。そして壬生の記憶の捩れもこれで納得がいった。

 

 

「いい加減、猿芝居はやめたらどうだ?見ていてこっちが恥ずかしくなる。ついでにお前らも、いい加減姿を現したらどうだ?」

 

 

「・・・・は?」

 

 自分の元に堕ちたと思っていた相手から冷たい視線と言葉を贈られ、今まで湧き上がっていた司一はあっけらかんとして間抜けな声を出す。コイツは何を言っているんだ?魔法は発動されたはず。それに何を言っているんだ?ここには物陰もない。何人も隠れることはできないはず。

 そのはずだった。が司含めこの場の兵士の認識は大きく覆される。

 

 

「あらいやだ。やっぱり気づかれてたのねぇ。やっぱり達也君は侮れないわぁ」

 

「・・・お前のさっきの小言が聞こえてたんだろ」

 

 そこには誰もいない、隠れる場所もないただ茜色の光が入る足元、ある意味灯台下暗しの場所。

 しかし発せられた声に、加えて部屋の中央に向かって聞こえてくる足音に歪んだ空気。大きな絨毯の下を小動物が動いているように、空間が、視界の一部が人間二人分盛り上がる。この場にいる人間全員が見ている異様な盛り上がりはピタリと二つの集団――片一方は二人しかいないが――と少し離れた場所で止まる。他愛のない会話を丁度止めた二つの透明人間――と言うよりは周囲の風景に擬態したカメレオン人間――は、片腕を動かして自身の顔に手を添え、()()()()()

 

 

 

 

「そうねぇ…まだまだ試作段階だからちょっと違和感があったからかもしれない」

 

 

 

 何もない空間からフェードインするように色を取り戻し、現れたのは顎に手を添えて首を傾げ、片手に狐の面をぶら下げる隆、同じく片手に狐のお面を持ち、隣で呆れている森崎。

 達也はこの部屋に入る前から中央の集団と部屋の壁際に気が付いていた。達也の『精霊の眼』は一定範囲内の存在を認識する知覚魔法。認識するのは存在だけ、個々を推測することはできるが特定はできない。しかし、先ほどの催眠魔法の際、達也が解析した起動式が書き換わった。

 見覚えのある現象、しかもついこの間の出来事。使用者を違えるはずがない。

 

 

「ななな、なんだ貴様ラァ!?」

 

「何って、通りすがりの高校生。ただちょっと魔法が扱えるだけのね」

 

 

 動揺で語尾が裏返った司に対して隆はやれやれ、と言った様に答える。

 

 

「それもそれでどうかと思うぞ?」

 

「あら、そうかしら?」

 

 

 達也のツッコミに森崎が首を縦に振って肯定する。

 さらに呆れ声が続く。

 

 

「そもそも、どうしてこんなところにいるんだ?」

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 遡ること数時間前。

 

「これで最後っと」

 

 図書館前のテロリストを掃討した隆は周囲を見渡してホゥ、と息を漏らす。乱戦状態だった場所は緑色の作業服を着た男性多数と何名かの在校生が地面に倒れ、伸びていた。だれもが怪我を負っていたが大抵は軽傷、重くても骨折。軽い魔法の撃ち合いや殴り合い、相手の魔法熟練度が低かったが故、大抵の生徒がCADを持っていなかったが故の被害をもたらした。

 

「おっす、お疲れさん」

 

「レオ君、お疲れー、常に2、3人を相手にしてたのに案外ピンピンしてるじゃない」

 

「まぁな・・・そういやさっきの魔法はなんだったんだ?」

 

 内心、お前が言うな、と愚痴をこぼしたレオは先ほどの隆の規模の大きい魔法について疑問を投じた。

 

「あれはね、酸素を抜いたり入れたり圧縮したの♪」

 

 隆は3度魔法を発動した。始めは一定空間内を空気の膜で覆い、内部の酸素を空気の膜に収束させ、無酸素空間を作り出した。そして次いで膜に含まれた酸素、および外部の酸素を内部へと発散、およそ酸素と窒素の対比8:2の割合に調節、徐々に膜にかかる重力を強化して、膜内を高圧高酸素空間にした。この状況下に置かれたテロリストは急性酸素中毒に陥り、痙攣や嘔吐と共に視界を次第に暗がらせたのだ。そして最後、内部の酸素濃度、気圧調整のための重力制御を元の値に時間をかけて戻した。一応、最後の魔法は念のための保険であったりする。

 

 隆はそれをかいつまんで説明し、レオは納得したように頷く。

 

 

「たまげたぜ、あの規模の魔法を即座に展開するなんて・・・ん?どうした?・・・・・おおぅ」

 

 

 

 

 

 

 2人、もといその場に意識のある全員が図書館から出てくる達也達に集中していた。図書館から2科生の達也が出てきたことに驚いたのだろうか、部活動勧誘期間で有名になっているから違う。では、彼の両隣を歩いている絶世の美少女の深雪とエリカを見て息をのんだのだろうか?息をのんだのは正解だろうが違う。

 

 では一体何があったのだろうか。それは達也が抱えているモノに原因があった。現在達也は気絶した壬生紗耶香を背中と両膝を下から抱えて移動していた。いわゆる、お姫様抱っことよばれる方法で抱きかかえていたからであった。

 それを見ていた男子生徒は美少女剣士を抱え、美女に挟まれている達也に忌々しい感情の視線と歯ぎしり音を、女子生徒は羨ましそうな、憂うような視線と濃厚な嘆息を向けていた。

 

 

「一体全体どうなってんだありゃ、なあ?・・・おろ?」

 

 2種類の赤の混じった空間で唯一加わっていないレオはいるはずの隣に話しかける。しかし、そこには1枚の紙が落ちているだけだった。

 

 

 

 足元の折り畳まれた紙には、多数の野菜の名前とよく名前を聞く商品などが書き留められていた。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 ―――1時間前

 

 

 

 スーパーマーケット。

 それは、日夜お財布と戦う戦士たちが特売品(ボス)手に入れる(討伐する)為に訪れる伝統的な戦場。昼頃には家を守る細君が、夕方には仕事帰りの独り身が多く集い、その時間帯に合わせて売る品を変える店もあるほど。現在はネット販売が主流となっているが、生鮮品を直に吟味したいと足を運ぶものも多く、戦いはこの21世紀末においても続いている。

 

 現在は夕刻、戦場が最も活発になる時間帯。

 手に持つカゴには彩り関係なく、重いものを下に軽く脆いものを上に積んだ理想的な内容になっている。そしてもう片手には白を基調とした女性の顔面をかたどったお面、おたふくを手にしている

 

「ふぅん・・・これがいいかしら。弄りやすそうだし」

 

「一体何をしてるんだ・・・」

 

「お面、選んでるのよ」

 

「そういうことじゃなくて、付き合えってまさか()()のことか?」

 

 片眉を痙攣させてお面に想いをはせる隆に呆れを含んだ視線を送る森崎は現在、隆と共に中型スーパーで一つカゴを持たされ、普段赴かない場所にいる不安感で落ち着かないでいる。

 風紀委員の仕事中を緊急だと強引に連れてきたくせに、まさか私用に付き合わされるとは・・・はぁ、こいつは何をやってるんだよ。・・・風紀委員サボってこんな所にいるなんて知れたらどう言い訳すればいいんだ・・・。

 

 

「そうよ?まあ、コレ買う以外はオマケなんだけどね」

 

「おい!ふざけんなよ!」

 

「どうどう、周囲のお客さんが見てるわよ?」

 

「・・・」

 

 思わず出た大声で注目を集めてしまった森崎は周囲をチラチラと伺った後、赤面して隣を睨み付ける。頬を赤らめる森崎の視線はやや上目気味になっているため、駄々をこねた子供の様だと隆は温かい目で微笑む。それがかえって彼を怒らせているとも知らずに。

 

「そう怒らないの。はい笑ってー」

 

「うわっ、何人の顔に面かぶせてんだ!・・・ってこれ、さっきお前が持ってたやつじゃねえか!」

 

 不意打ち気味に仮面をかぶせられた森崎はすぐに外し、何をつけていたのか確認し、一層の憤慨する。そして思いっきり振りかぶって床にたたきつけようとする・・・が、店の商品であることを振り上げた後に気づき、やり場のない怒りにプルプルと震える。

 こんの野郎・・・。

 

 そうプルプルと震えている内に隆はどの面にするか決め、バイブレーシュンを促すと恐ろしい形相で睨み付けられ、背中を冷たく濡らしながら店を出た。その後も睨み付けられ、今更ながらちょっと不憫に思う隆であった。隆が敵組織に潜入すると言うまで無言の圧力が続いたのだった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「まあ、達也君たちと目的は一緒。まず中を見て回ってから建物ごとPON☆と」

 

 

 達也の元に移動しながら当時の出来事を瞬間的に巡らせた隆はこめかみに汗を一粒たらす。そこで部屋の中央でカシャカシャと音が連続して響いた。司一がパニック状態になりながらも部下に銃口を再び向かせた。

 

「舐めやがって!クソガキどもがァ!!!」

 

「舐めるわけないじゃない!貴方なんて好みじゃないわよ!」

 

「いや何に反応してんだよ」

 

「ふざけやがって貴様ら!・・・!?」

 

 とことんおちょくられていると思った司はさらに沸騰し、隆たちを怒気の視線を送ると一つの視線に心臓に冷たいものを刺されたように錯覚した。

 その目は何の感情も含まれていない。まるで自分を見ているようで何も見ていない様な、うすら寒い感覚を覚える。そして直感が、このままだと殺されると警鐘を鳴らす。

 

「う、う、うっ撃て、撃てェェェェェェ!!!!」

 

 司の号令が室内を木霊する。呆れながらも警戒をしていた森崎は咄嗟に達也に半分隠れた深雪の前に立つ。隆も取り出していたCADを集団にかざす。

 

「な、なんだどうなってるんだ」

 

「これ・・・は・・・」

 

 テロリストは混乱し、隆と森崎は愕然とする。今まで持っていた、向けられていた銃がバラバラになったからだ。自分も森崎も何もしていない。では・・・。二人は一人に視線を集中する。

その直後、司一は情けない声と共に施設の奥へと一目散に逃げだした。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「テメェのせいで壬生がぁぁぁぁ!!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁ!腕がっ僕の腕がぁぁぁぁァァ!!!」

 

 

桐原の怒りが司の腕に一筋の線を、赤く染まった楕円を作り出す。

深雪にあの場を任せて司を追った3人はさらに奥で待ち構えた部下を(ほとんど達也が)軽くひねって追い詰めた。そこに裏口から侵攻していた十文字と桐原がやって来てこの始末、である。

 

「うるさいわねぇ、腕の一本や二本斬られたくらいで」

 

「フム」

 

「あ、十文字会頭ちょっと待ってください」

 

 

隆の無茶ぶりにまともに反応できない司を十文字が一瞥し、応急的な処置をしようとするが、隆が引き止める。止められた十文字は首をひねって隆を見つめる。

 

 

「どうしたんだ?」

 

「私にやらせてください」

 

「ふむ・・・いいだろう」

 

許可を得た隆は一礼してその場に転がっている腕を拾い、その切断面と切断面を形状から軽く調整して合わせ始める。血がぼたぼたと落ちる司はマヒした腕と隆を一瞥すると再び腕に意識を向けたからか、苦悶の声が大きくなった。

 

「はーい、ちょっと痛いからねぇ」

 

隆は断面を正確に密着させるとCADを操作する。起動式が展開、隆の魔法演算領域に転写し、魔法式を即時構築する。膨大なサイオンの輝きと共に司の腕が書き換えられる。一瞬の煌めきが収まった後には何事もなかったように繋がった腕と、ズボンを濡らして白目をむいている司の姿があった。




隆君は病院にお見舞いに行くことはありません。
これで入学片は終了。小話を挟んで九校戦編へと話を進めていきます。



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