考えに考えて、結局こんな感じの話になりました事を先にお詫びします。そして、いつの間にか15000を超えていました。本当にありがとうございます!
これからも頑張りまする!
あー、劣等生の映画見に行きたいなぁ
それでは、お楽しみくださいませ
女の子達(?)のお出かけ / 試験対策
襲撃騒動が起きた第一高校では割れた窓の取り換えやグレネードによる爆発で黒くなった部分の清掃、および事件に対する隠蔽――主に学校側に責任を取られるような案件――を行った。達也たちの廃工場襲撃も、同行した克人の家柄を利用して警察が介入出来ないようになった。
今回の件は『テロリストが魔法科高校に襲撃。しかし生徒と教師の尽力により鎮静化』という形でまとめられた。世間では3流評論家が「襲撃は学校側に管理責任が――」「敵対せずに警察に――」などとちいさく騒ぐ程度にとどまった。
◇ ◇ ◇
壁に埋め込まれた薄型スクリーンの電源が消える。
週末の昼下がり、窓からは薄いカーテンからこぼれた光が差し込む。夏が準備運動を始めた空は、ほの暗い雲を泳がせながら時折太陽を隠す。窓の光がゆっくりと点滅する部屋の中、足の高いテーブルに湯気を揚げるマグカップが二つ置かれ、コトリと言う音の後、この場を静かに力強く温める。
「最近はエセ評論家が多いのでしょうかね?」
「ありがとう。…さあ、どうでしょう?でもさっきの人はいつもあんな感じ」
「・・・世も末ですね」
隆がため息交じりに放った大げさなセリフに目の前の女性は苦笑する。隆の目の前に座って細長い指でカップを包んでいる女性はその辛辣な言葉に、というよりはブランシュの正体を晒してこなかった行政側の立場として何も言えないからだ。
困った表情の彼女を前にコーヒーを一口飲み、もう一つ息を吐きだす。それにつられるように目の前の女性、
「・・・おいしい」
「よかった。来客用に買った甲斐がありました」
「コーヒーを豆挽きから作るなんて私より女子力高いわね」
「っはは。女性に言われるとうれしいですね」
感心しつつ、どこか悔しそうにコーヒーと隆を見つめる。
松本は関東地区行政の職員。国の政策によって特別推薦生として選ばれた生徒には、通う学校の所在区によってその行政の職員が定期的な面談を行う。加えて隆の様に親元を離れた学生の保護者代理として行政職員が就くことになっている。
本日はその定期の面談日。面談は、私生活――給付金で事足りるか、ご近所トラブル等――や学校生活についての質問を主に行う。
現代の自立を促す風潮が強まったことによって職員は学生への過干渉は控えるように言われているが、松本はお人好しの性格が幸いしてちょくちょく
「はい。質問は以上です。お時間をおかけしました」
「すみません、無理を言ってしまって」
「このくらいなんてことないわよ。」
今日、隆は午後からほのか、雫とショッピングに出かけることになっているが、事前より面談日になっていることをうっかり忘れていたのだ。本来先にした約束を優先するべきだが、この機会を逃すと来週からテスト期間に移るため友人と時間が取れない。加えて本日向かう予定になっている――むしろ本命と言ってもいい――喫茶店の限定スイーツもテストが終わるころには店から姿を消す。悩みに悩みぬいた末に松本に相談すると、
「あぁ、そんなこと?全然オッケー」と快諾してくれた。頭が下がる思いである。
いつもの通り、職務上の会話を終わらせると二人は個人として、ガールズ(?)を始める。松本がつけている小物が可愛い、今気になっている人、今日の遊びプラン等、時に笑い合いながら
「ーーそれよりも、女の子と買い物に行くんでしょ?端から見るとイケメンが女の子侍らせてるように見えるから、変なのに捕まらない様に気をつけたほうがいいわよ?まあ、大丈夫だろうけど」
「ははは、そんな二次創作みたいなことないでしょ」
隆くん、それフラグ。思わず心の中で突っ込んだ松本は、空になったマグを持ち席を立った彼の背中に口を閉じたまま溜息をこっそりついた。
無地の白シャツの上から空色の七分袖、黒ジーンズ。明るい青が少年の清涼さを、ジーンズが足の長さを強調する。姿勢良く背筋が伸び、両肩からヘソまでの逆三角形の大きさは男性としての頼もしさやをチラつかせる。普段より露出が控えられた肌は光を跳ね返し自らを輝かせるような白さをもち、その乳白色の海の中にある黒点は昼の月の様に時折、人の目を惹きつける。
(これでふつーに女の子が好きだったらねぇ・・・)
松本は目の前の魅力的な男性に本日二度目の溜息を漏らした。
「あら、どうしたんですか?何だか不満げですね」
キッチンから戻ってきた目の前の少年(?)は手に持ったマグを再び松本の前に置きながら、首をかしげる。
「いえ?ただちょっとねー…熱っ!」
◇ ◇ ◇
「サンドイッチ」
「えっと、ペペロンチーノお願いします」
「あとラザニア。それと食後に限定のとコーヒーをそれぞれ3つでお願いします」
大型ショッピングセンターを存分に買い回った隆、ほのか、雫は最後の目的地である喫茶店に足を運んだ。店内は昼時を過ぎて客が少なく、3人がうっすら望んでいた窓際のテーブルに腰を落ち着けることができた。
注文を店員に伝えると頬を薄紅色に染めながら下がったのを見届ける。
「やっぱり入る時間をずらして正解だったわね」
「うん、おかげでいい席取れた」
「ほんとね!お昼前のお店、すごい列できてたもんね」
「20分待ちだった」
木装の室内にジャズとまばらな喧騒が広がり、ゆったりとした時間を流していく。窓を振り向くと一面の青に薄灰色が彷徨っている。戻ってきた空腹感に意識が食われ、会話の合間に見た穏やかな世界に隆は微笑みを浮かべた。
ーーーーーーーーーー
「雫・・・」
ー10分前
お目当の甘味を堪能した3人は最後に、3人とも行ったことがないという理由でゲームセンターに向かった。携帯端末のアプリゲームが主流となった時期から少しずつその数を減らしたアミューズメント施設であったが、VR等の技術の応用によって業界が息を吹き返した。現在でもさらに進化し続けている。
そして今回3人が立ち寄った施設はなんでも"昔懐かしのあのゲーム"を集めたと言うことで20〜21世紀初頭までのゲームを揃えているとのことだった。店内の様々な音が織り混ざった混沌に多少の混乱を覚えたが、いざゲームを始めると、簡単な連打系のゲームで一枚のコインが増える、儲けることに楽しさを覚えた3人は10枚のコインをゲームで増やし、途中から競争することにした。10分間で10枚からどれだけ稼ぐことができるのか、新しくコインを買うのは禁止。そして1番はお菓子かジュースをおごって貰えると制約を決めて解散した。
「最初は慣れたゲームで稼ぎましょう」
隆は開始直後はボタンゲームにコインを複数枚入れて一攫千金を狙うがすぐに1枚まで減ってしまい、慌てて一枚から2枚を作る作業を繰り返すことになった。そうしてじっくり20枚貯めたところで目を付けたのは、競馬。
「あ、やった!4枚当たった!」
一方、ほのかは隆の隣で着々と集めていった。隣で隆が失敗して悲鳴をあげる姿を見て、1枚のコインから着々と増やしていった。
「・・・む?」
じゃらじゃらじゃら・・・・
そして10分後、
集合地点には珍しく肩を落としている隆とそれを励ますほのかの姿があった。結局隆の狙った馬は尽く負け、手持ちはゼロ。ほのかは手堅く攻めて70枚ぐらいまで増やしていた。
「今日はついてないわ・・・」
「ほ、ほら!今日が初めてだったし、元気出して!ね?」
「あなたも雫も一緒じゃないの・・・」
「アハハ・・・そ、それにしても雫、遅いね!」
「うん?・・・そういえばそうね」
ほのかの露骨な話題転換に乗った隆は項垂れた頭をゆっくりと持ち上げる。そういえば、ほのかとはすれ違うことがあったが雫とはこの10分間は見かけていない。背の高い隆の目に見える範囲にはそれらしき姿は見つけられなかったが、ある一角に人がたくさん集まっているのを発見した。
「あの辺り、結構人がいるみたい。もしかしたら雫もそこかも」
ほのかと頷きあってその群衆に近づくと、とあるゲーム機を食い入るように見つけているようだ。隆を先頭に人混みをかき分けていくとやはりそこには雫の姿があった。・・・コイン入れのタワーを脇に添えて。
「しずっっはいぃぃぃぃ!?」
ーーーーーーーーーーーー
隆の驚愕の声に続いてほのかも目を丸くする。自分たちとは桁が恐らく二桁以上違うのではないかと思えるほどの光景を目の当たりにした二人を見て雫は首をかしげるのみだった。
「雫、これ・・・」
「ここに座ってコイン入れてたらいつの間にか溜まってた」
「いつの間にかって・・・」
「二人はどう?」
「・・・ゼロ」
「7〜80枚くらい」
「雫の勝ちね。圧倒的に」
「うん、それよりこれどうしよう」
『知らないわよ!』
と、隆は一瞬やけ気味に答えたくなったがそのまま飲み込み、お店に返すか、周りの人にあげるかの2つを提案する。せっかく稼いだコインをそのままお店に返すのも気がひけると言うことで、雫はその場に集まっていた子供達にあげた。一人一人にカゴを渡していき、「ありがとう!」と返される言葉に頰を緩ませていたが、最後の男の子の、
「ありがとう!ぺったんこのお姉ちゃん!」
に一瞬に周囲の視線は雫、ほのか、雫の順に向けられてそっと目を逸らされた。雫は硬直し、見比べられていると理解すると
なぜか隆だけはすっきりした気分になったのは内緒。
その後はアーケードゲームや音ゲーを楽しみ、日は傾いていった。
◇ ◇ ◇
「いやだからー・・・」
定期試験とは、生徒の修学具合を確かめ、それを成績に落とすための1つの手段である。0〜100までの数字が生徒に様々な影響を及ぼし、場所によっては優秀者には栄誉や特典が贈られ、一定のボーダーを超えられなければ補修や追加の課題を突き出される。
それは魔法科高校でも同じこと。長期休暇前の試験の結果次第では追加の課題を提出させられる羽目になる。そして魔法実技試験の結果が夏休み中に行われる九校戦(全国魔法科高校親善魔法競技大会)に出場する選手を選ぶ際の資料に使われる。
ちなみに、第一高校の定期試験は魔法理論と魔法実技のみであり、他の国数理英などは日頃の提出課題によって成績が付けられる。
その一週間前ともなると、生徒は放課後は図書館や実技棟に残り、試験に備える。現在、森崎は実技棟でデバイステクニックを教えている。
「うまくいかねぇな」
「あらぁ?あたしは順調だけど?」
「おめぇもあんま変わらねぇじゃねえか」
「ちょっとは上がってるからいーのよ」
レオとエリカのやりとりを見る通りうまくいっていない。元々実技の苦手な二人が追加課題回避のために達也に頼み、そこで隆が「どうせなら森崎にデバイス技術を教えてもらいましょ」と言って当日、森崎を
「夫婦漫才はその辺に聞いてくれないか?」
「「誰が夫婦だ!」よ!」
「お、おう」
噛み付いてくる二人に冷や汗をかいている森崎を少し離れた場所から美月、達也、深雪は感慨深くその光景を眺めている。隆は今お手洗いから戻ってきた。
「悪戦苦闘中ね。まあ、俊ちゃんの技術も一朝一夕でマスターできるものじゃないから仕方ないかしらねぇ」
「そうですね。でもエリカちゃんは少し速くなったって言ってましたよ?」
「あらホント?それで教え方とかどう?」
「とても丁寧です。ただ、二人の会話にどう対応するか戸惑ってるみたい」
「慣れないとあのじゃれ合いは口喧嘩してるように見えるもんねぇ」
目の前の光景を暖かく見つめつつ達也に話を振る。
「教え方に問題はないんだが、どこか遠慮がちだな」
「あれから数日しか経ってないから仕方がないわねぇ」
「入学初期はこうなるなんて全く思いもよらなかったわ」
「そうだな、全く何をしたのやら」
達也の発言に合わせるように3人は隆に視線を向けるが、隆はそっと目を逸らして「何もしていないわよ」と答えた。全く説得力のない回答に思わず苦笑いを零す3人だった。
「だーかーらー!計測のたびに言い争わないでくれー!」
この後、森崎の指導を受けた二人の記録は若干縮まり、また次の定期試験の時には元の数値に戻って再び森崎が指導をしたそうな。
え〜、最後の
おまけでしたが、次回からいよいよ九校戦に入ります。ここからバーサク隆くんの独壇場ですよ!