ではどうぞ
3話 旅立ちの日は
ーーーーーー家族にご飯を作ってあげられる時を指を折って数えていく。弟達や
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日が昇った朝でも冷風が肌を触り、日の高さも少し低めで眩しい。ついに遠くへ旅立つ日。あと2時間で航空機の出発の時間。最寄りの空港までの距離もそこそこあるのだが、当の本人はある建物の前に立っていた。建物の石垣には『靏の宝物』と書かれている。
ーーーー児童養護施設。それは様々な家庭的事情によって親と離れて、貰い手が現れるまで、又は自立可能な年齢まで仮の家で施設職員と同じ境遇の子供達と一緒に生活をする。
"靏"
『靏の宝物』で生活をしている子供達はこの施設に入ると同時に苗字を靏に変更する。
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「「「たか兄〜!」」」
施設に、みんなにお別れを告げないで早々に出て行こう。
そう思った隆は施設の全員に嘘の時間を教えて、気付かれないように出発しようとした。
のだが、
「「「たか兄〜!」」」
施設の扉を勢いよく開けて隆に飛びついてくる。
「気づくの早すぎぃ!」
180はある隆の腰ぐらいの子供達のしがみ付きにタジタジになりながらもその頭を撫でていく。
「たか兄が何も言わないで出ていくのは読めとったけん、朝ごはん食べてからこっそり監視してた」
そう言って出てくる2つ下の弟の波斗。
「そうよ。今日の朝ごはん一緒に作るときにそれとなく聞いたら少しどもってたけんね。
また1人。隆のことを唯一姉と呼ぶこの少女は波斗と同じく2つ下の妹の春香。
「波斗、春香。私の目論見がわかったらどうしてそうするのかも、考えて欲しかったなぁ・・・。」
隆は困ったように笑う。
「たか兄ー」
「たか兄〜」
「たかにぃー」
さっきまでしがみついていた3人のちびっ子は隆から離れる。そのまま3人は一旦玄関に戻って、そしてすぐに隆の前にやってくる。
「・・・せーの「「たか兄!僕たち、お利口さんにするけん、たか兄も頑張ってきてね!!」」」
その手には各々が描いた隆や家族の絵を持っていた。
「陸、弘樹、隼人・・・ありg「まーだ」・・・え?」
「俺たちからはこれ」
波斗がそう言うと、春が手に持ったリボン付きの箱を手渡す。
「・・・これは?」
隆は絵を片手に、その箱を受け取る。リボンの色は水色。箱にはロゴなどはなく、細長い。
「いいから開けてみてよ。」
促されるまま隆はリボンを解き、その箱を開ける。
中にはーーーー
「!!っこれ!」
思わず口を手で押さえ、箱を落としそうになる。
ーーーー中には扇子と髪留めが入っていた。
「2人で小遣いを貯めて買ったんだ。たか兄、大河ドラマ見て・・・「イケメン俳優と同じくらい目輝かせて見てたわよね」・・・そうそれ。」
隆は年相応にしては無欲なほうだ。施設の家事手伝いを率先して行い、自分の誕生日さえも後回しで弟達の面倒を見る。逆に施設の誰かが誕生日になれば1週間前から準備を始め、手作りケーキから、季節や欲しいものに合わせて自分の小遣いでプレゼントを買うか作る。
決して、決して何かを欲しい等、口にしてこなかった。
だが、欲しいと思うものはある。扇子もその1つ、友人が持っていた物を借りて使ってみたときに、コンパクトさや鮮やかな絵が描かれたそれに魅了されたのだ。
「・・・・・・あなたたち・・・。」
「みんな貴方のことを大事にしてるっち、そういうこつよ」
声の方を向くと見た目40台の、相応の肉付きをした女性が微笑んで立っていた。
「ナツミお母さん。」
ナツミお母さん。彼女は『靏の宝物』の管理者にしてこの家の子供達の母。靏 夏恵。
「貴方がみんなを大切に思うように、みんなも貴方を同じくらい大好きと。でもね、隆は自分を抑えすぎてる。波斗も春も隆に贈り物しようと思った時、何を送るか悩みに悩んでいたわ。多分何をあげても喜ぶやろうけど、それじゃあ自分が納得せん。だって、1番の家族だもの。貴方の1番の顔が見たかと。」
「お母さん・・・みんな・・・」
隆は波斗達を見やる。
全員笑っていた。
そして隆はーーーーーーーーーーーーーー
ピーピーピーピー。
「ん・・・・・・」
目覚ましのアラームが鳴った。
一高で優秀な成績でいる限り、国から無償で提供されるマンションの一室。1LDKの一人暮らしには少し広い部屋に朝の光がカーテンの隙間から木洩れ出る。
「・・・ホームシックかしらね。」
今の家族と別れた場面を夢に見るなんて。
隆はそう思いながらも、備え付けのクローゼットから真新しい第一高校の制服を取り出し、着替える。
着替え終わるとガラスのコップに水を一杯持ってリビングの背の低い本棚へ向かう。
目的は本棚の上。
「おはよう。
そこには、夢に出てきた母親とは
隆は九州の家にいる時から毎日欠かさず行っている。
写真の母親に微笑み返す。そして振り返って1人には少し大きいダイニングテーブルに向かう。木製の椅子と床が渇いた音を立てる。腰掛けた隆の前にはHAR(ホーム・オートメーション・ロボット)の作った料理が並ぶ。味噌汁は暖かくもどこか機械的な香りを漂わせている。
「いただきます」
そういえば、ナツエお母さんは私に『自分を抑えすぎてる』って言ってたな・・・。
だったら私はーーーーーー
そう言って制服のポケットに入れていた髪留めで前髪を留めるのだった。
書いているうちにドウシテコウナッタ・・・