残念イケメンと劣等生   作:ライトフォレスト

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書くの楽しいです。


貯めているわけではありませんが、なんだか調子に乗ってしまいました。
ではどうぞ

17/11/17 修正しました


5話 入学式②

「・・・は?」

俺は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。

この学校に入学した時に一通りパンフレットに書かれていたはず。だが真剣な顔で聞いてくる以上、本人は真面目なのだろうが。いや、これは俺を試そうと思っているのだろうか。

 

 

達也は困惑する。

ここ、第一高校において教師不足による苦肉の策の、生徒を一科生と二科生に分ける制度はこの学校を目指す人間にとって常識のようなものである。この学校だけではなく、第2、第3高校でもこの制度は導入されている。

だが質問する当の本人にとってはその限りではない。

 

 

「だから一科生って何?私はその単語自体を知らないわけでね?今日この学校に来てよく一科生、二科生って単語がよく飛んでくるから、気になっちゃってさ。」

 

今日隆がこの学校で話したのは百山校長先生だけなのだが、流石に校長がさも当然と並べているその言葉に対して『知りません。教えてください』とは言えなかったのだ。他者に遠慮ばかりしている隆にはハードルが高い。

 

 

「あ、ああ。そうか。一科生というのはだな・・・」

 

 

カクカクシカジカ

いあいあ、くとぅるふ

 

 

 

「ーーで、教師不足の学校側の苦肉の策というわけだ。」

 

 

「・・・ふぅん。それで紋章が違うわけか。」

 

 

俺が説明している間に隣に座った靏隆は納得したように頷く。

 

 

「なるほど、疑問が一つ解決したよ。ありがとう。で、司波君。もう一つ質問いいかな?」

 

「なんだ?」

 

 

靏隆とかいう同輩は肩にかけていた淡い桃色の肩掛けバッグを漁る。入学式には大した道具などはいらないはずなのだが・・・それにしてもバッグが気になる。

 

ピンクに花の刺繍までついた凝ったデザイン。男子高校生が肩にかけるのは違和感を覚える。だが世の中変わった趣味を持つ人間は少なくない。しかしてあまり深く考えるのは良くないと達也は思考を一旦区切った。

 

同じタイミングで隆がバッグから取り出したのは大型の端末。最新のスクリーン型端末。達也の持つ折り畳み式とは違って収納にややスペースがいるが、その分性能が高い。

 

 

「これ。インターネットとか使えるらしいんだけど、・・・私は学校のパソコンなら触ったことあるけど、こう言ったのはテレビでしか見たことなくて、だからこれの使い方がよくわからなくてね。一科生っていうワードもこれで検索をかけてみようと思ったんだけど・・・何処か変な所触ったら爆発しそうな気がして。そう思ったら中々手を出せないで、あはは・・・」

 

 

あはは、ってこいつ・・・

そもそも下手に触って爆発する商品など販売するわけがないだろうに。というかこのハイテク社会で端末を使ったことがないというのは少し信じられないな。

 

 

「端末を触ったら爆発するって何処の隣国製だ・・・それにしてもこのご時世に端末を使ったことがないのは驚きだな。」

 

とりあえず思い浮かんだ疑問をぶつけてみる。

 

 

 

「いやあ、私の家、そういうのが買える余裕がなかったからね。少し高価なものに関しては疎いの・・、だよ?」

 

 

「そうか。で、操作方法だったか?それを貸してくれ。」

いい暇つぶしになるかーーー

そう考えながら俺は手を差し出す。隆は やった!と小声で言って端末を笑顔で手渡す。

 

 

俺は借りた端末を片手に使い方を教えていく。隆はそれに食い入るように端末の画面や達也の指を食い入るように見つめる。

 

 

 

少しして今度こそ入学式の準備に駆り出されたであろう生徒2人が俺たちの前を通りすぎる。

 

 

「なんで・・・」

とヒソヒソと顔を顰めて通り過ぎて行ったが、どうやら二科生の俺が一科生の靏に何かを教えている光景を不思議に思ったのだろう。

 

 

 

 

 

 

・・・それにしても距離が異様に近い気がする。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

10分ほどで操作方法を教え終わった2人は簡単な将棋のアプリをインストールして、遊んでいた。

 

 

「王手」

達也は端末に触れて自軍の()()()4()()を使って隆の王将に照準を合わせる。

 

本来は教えたことを復習していたのだが、隆が入れたアプリがボードゲーム数種入った2人でも遊べるものであったので、物は試しとアプリで一度遊んでいたわけなのだが、たっぷり1時間食いつくように2人は将棋にチェスに(特に隆が)熱中していた。

 

 

「にゃぁぁ!打つ手が、打つ手がぁぁぁ!」

絶叫しながら数秒頭を抱えて反撃の一手を考えていた隆だったが、うなだれて「参りました」と口を尖らせる。

途中、通りがかった生徒からは呆れたような目で見られたが・・・

 

 

「達也君!もう一回!」

隆は悔しそうに再戦を申し出る。

以前の隆であれば相手を考慮してこう行った申し出はしないのだが、ムキになっているせいか、元々負けず嫌いな性分なのか・・・

 

 

「待て隆、そろそろ開式30分前だからそろそろ会場に向かわないと」

 

 

「え、もうそんなに?私としたことがつい熱くなっちゃった。」

 

そう言ってさっきまで開いていたアプリを閉じ、端末の電源を落とす。そして2人が腰を持ち上げ、会場に向かおうとした時、

 

 

「新入生ですね。開場の時間ですよ。」

 

2人の進行方向の先から小柄な女子生徒が現れた。

長い黒髪を揺らしながら朗らかに向かってくる彼女の腕にはCADが装着されていた。

 

CAD、術式補助演算機(Casting Assistant Device)とは何処かのゲームにあるようなメラやヒャド、ヨシズミやブラズーレの様に魔法の発動を一言の詠唱で行う技術が現状確立されていない。発動のために最短で数十秒、最大で数分の詠唱を行わなければならない。それでは折角の技術も宝の持ち腐れ。

 

そこで開発されたのがCAD。魔法式を機械が読み込み、術式を展開。発動時間を数秒にまで縮めることに成功した。強力な古式魔法に対して大きな優位性を示した。しかし、CADは精密機械であるためこまめなメンテナンス、さらに自身が保有するサイオンと呼ばれる情報粒子の波超特性に合わせたチューニングなどを必要とするため、発動媒体としては古式魔法の道具などに劣っている部分がある。

 

 

第一高校において生徒は登校の際に自分のCADを学校側に預ける校則となっており、校内で装備できる生徒は風紀委員と生徒会役員だけ。

 

 

「ありがとうございます。すぐ行きます。」

取りあえず返答をした達也の顔は微妙である。それを聞いてか否か、その女生徒は視線を落とす。そしてふと口を開く。

 

 

「スクリーン型とは感心ですね。」

俺は隆に端末の使い方を教えていたから端末はポケットの中。だとすればその言葉を指すのは隣にいるヘアピンで前髪を止めた隆になるわけだが・・・

 

 

「はい、支給されたのがこれだったので。仮想型?と言うのも興味があったんですけどね・・・。」

支給された・・・俺はその言葉が気になった。

 

 

「登校では仮想型ディスプレイの使用は禁止されています。・・・守っている生徒はそう多くはありませんが」

 

 

目の前にいる生徒会役員の女子生徒は少し困った様な笑みを浮かべて2人を見つめる。

俺もどちらかといえば字を読むのに適したスクリーン型を使っているわけだが、

 

 

「そういえば私に魔法の知識を教えてくれた人も、スクリーン型の方が読書に向いてるって言ってました。」

 

 

「へぇ、最近は読書より動画の方が好まれるのですが」

この生徒会役員の生徒も笑顔を絶やさず、顎に手を当てて感心した様な表情を見せる。

 

 

「その人は『実際に見てやるよりも本の内容を再現しながら試行錯誤するのが楽しい』なんて言ってましたね。まあ私も3○クッキングよりもレシピ本を眺めている方が好きですが」

そう語る隆の表情も明るく、何処か楽しそうだ。

 

 

「そうなの?私も映像資料より書類資料の方が好きな方だからなんだか嬉しいわね」

 

 

徐々に目の前にいる女子生徒の言葉が砕けているな。

人懐こい性格なようだ。

 

 

「あ、申し遅れました。私はこの学校で生徒会長を務めている、七草真由美です。ななくさと書いてさえぐさと読みます。」

 

 

自己紹介の後に よろしくね。とウィンクされても違和感のない雰囲気を漂わせる七草真由美と名乗った美少女は小柄ながらスタイルがいい。もし周囲に男子生徒がいればそのうちの何人かは一目惚れしそうな気がする。

 

 

 

まあ、深雪には遠く及ばないが。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「(ナンバーズね。七草って確か十氏族でも力の強い家だったかしら)」

 

 

「俺、自分は司波達也と言います。」

 

 

魔法の適性は血統で決まる。なんて言われてるけど、私には関係ないわね。(よく知らないけど)

隆はそう心の中で一蹴して自己紹介をする。

 

 

「私は靏隆です。」

と軽く会釈して見せる。

 

2人の名前を聞いた七草真由美は驚愕の表情を浮かべる。

 

 

「司波達也君に靏隆君・・・そうあなたたちがあの」

 

 

あの、と呼ばれるのは達也には皆目検討もつかなかった。妹よりも魔法の才能の劣った二科生の自分を、と。さらにその隣にいる靏隆にも注目が置かれているのにも少し驚く。

 

一方の隆は頭にはてなマークを浮かべている様であった。

 

 

 

「あなた達、いま先生の間じゃ話題沸騰なのよ。」

 

 

「2人とも筆記試験位おいて大変な成績を出しているわ。100点満点のテストで合格者平均70点に対して達也君は平均96点。靏君もテストの問題は違うけど平均94点。特筆すべきは魔法理論と魔法工学。2人とも同じ点数、歴代最高の記録を叩き出していたわ。」

テストの問題が違う・・・達也は先ほどの気になった点と照合してある到達点に達する。

 

 

「紙の上だけですよ。・・・それよりも隆。お前」

 

もしかして、そう言おうと口を動かした達也を遮る様に隆は答える。

 

「イヤですねー。特別推薦枠だから問題が簡単だっただけですよ。」

 

 

やはり、達也は自分の中で合点がいった。

達也は隆を横目で注視する。なるほど、一科生の話を知らなかったのも、端末の事も。

 

そんなことを考える達也の隣で隆は苦笑している。

 

「そんな事ないわ。たとえ問題が違ったとしてもね。理論に関しては私も得意だけど、あなた達と同じ問題を出されてそんな点数を取れる自信ないわぁ。」

 

 

真由美は一層2人に興味を抱いた目で見てくる。

何かを話しかけようとするも、達也の「そろそろ時間だから」という旨を伝えると渋々ながら手を引いた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「この辺でいいか。」

 

入学式に会場である行動に入った隆と達也だったが、一科生と二科生は別々に座らなければならないらしく、隆は残念だと思いつつも席を適当に探して座る。

 

席の間を通る途中になんだかキャーキャー言われた気がしたけど、彼女達には興味ないし、いつもの事だからと無視して座った。・・・ちょっと後ろがうるさいわね。

 

私は後ろを振り返って喋っている女子達を見て片手をトゥース(古い)の形にしてを口の前に添え、静かにする様に示す。無表情でやると怖がられることがあるから少し微笑んでおこう。

 

 

・・・なんかさっきより周りがうるさくなった気がする。なんだか殺気の視線も感じる。どうやらこういうのには向かないな。

 

 

「あっあの、隣いいですか!」

 

 

開式を待っている間に端末の電源を落としておこうとした時に隣から声が聞こえた。声の方を振り向くといつの間にか女子生徒が2人話しかけてきた。1人は顔を少し赤らめて意を決して、といった面持ちのポニーテールの女子。もう1人はショートヘアにクールな表情で同伴することは真逆なタイプの女子。

 

 

「ええ、構わないよ。」

私がそういうとツインテールの女子は目を輝かせてショートの子を引っ張って私の隣に座る。

 

「あの、私。光井 ほのかっていいます!こっちが」

 

「北山 雫。よろしく〜。」

 

 

「フフッ。私は靏隆。今日から同じ学び舎で学ぶ同士として、よろしくね。」

 

と軽くウィンクする。

 

光井ほのかと名乗った少女はその仕草に顔を赤らめ、もう1人の北山雫という彼女は

 

「靏さん。もしかしてコレ?」

 

と口を覆う仕草に隠された右手を立てて左頬につける仕草。それを見た私は少し驚いた。よもや早速気づく人間がいるとは。

 

ほのかは一瞬何をいったのかわからなかったが、すぐに察して雫に近づき、「何いってるの!?」と小声で言っている。

 

 

数秒目を見開いて雫を見つめたのち、隆はフッ、と笑って制服の内ポケットから妹にもらった扇子を取り出して勢いよく開く。黒い背景に桜の花びらが散る絵の描かれた扇子を同じく右側の頰につける。

 

 

そして、

 

「みんなには内緒ね。」ーーーー。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その後入学式では、新入生総代の司波深雪というとても綺麗な女の子がスピーチをしていた。司波ってもしかすると達也君とは親戚なのかしら?そう思いつつもさっき知り合ったほのかと雫と一緒にIDを取りに行ってそのまま帰宅した。

 

 

 

ーーーーー隆の部屋

たった1日が、こんなにも色濃いものに成るなんて思いもしなかった。さってと、夕食を作らなきゃ。今日は何にしようかな?そうだ、昨日のシチューが残ってたから今日はグラタンにでもしましょうかね。冷蔵庫を開け、鍋に火をかける。その間にマカロニを収納から、冷蔵庫からシチューの入ったタッパーを。

 

 

 

 

ーーーとある山中のお屋敷の一室。

 

弾力の深い椅子に座る女性は紅茶を片手に空の月を見る。

 

 

それを覆う様に山桜が風に乗せられて舞う。

 

 

 

「無事に3人とも顔合わせをしたかしら。」

妖艶な女性は考える。これから何が起こるのか、自分の蒔いた種がどう絡み合っていくのかを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ーーーーフフッ、あぁ楽しい。』」

 

 

 

 

今宵の満月は赤く染まっていたーーーー




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