岸波白野の暗殺教室   作:ユイ85Y

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時間巻き戻って二日目夜、烏間先生視点です。
烏間先生が内心でどう殺せんせーを呼んでいるのかが一番の悩みでした。


20.正体の時間

 

「……賢明です烏間先生。いくら旅先でも手足の本数まで聞くのは野暮ですから」

 

 先程から廊下の方で生徒達と大騒ぎしていたこの超生物は、恋愛話を暴露させられるのが嫌だという理由で俺の部屋へと逃げ込んできた。その機会にコイツの過去を聞こうかとも思ったが、手足が二本ずつだった時という言葉を聞いた瞬間に、ゆらゆらと動いていた触手が動きを止め、表情が固まった。上の方から大まかな事情は聞き及んでいるが、何故今の様な状況になったのかは理解できず、聞いてみたくもあったが……この様子では話す意思は無いだろう。

 この子供の落書きとしか思えんような表情をある程度読み解けるようになっている自分が何となく嫌になったが、仕事のためには有効だと言い聞かせる。

 

「ところで、烏間先生」

 

 そんな事を考えていると、普段のおちゃらけた声とは違う、真剣な声で名前を呼ばれた。

 

「少し真面目な話があるのですが」

 

「―――いいだろう。少し待て」

 

 手を付けていた仕事をキリの良い所まで進め、後方の超生物へと向き直る。この存在自体がふざけたような奴が真剣になるのは決まって生徒の事だ。表向きは担任となっている自分にも関係のある話だろう。

 

「それで、話とは?」

 

「えぇ、率直に聞きますが―――烏間先生、貴方は岸波さんの事をどう思いますか?」

 

「岸波さんか?」

 

 奴が口にした名前は、この暗殺教室に通う一人の少女の名前だった。

 

 岸波白野。

 去年の五月に事故に合い、半年後に意識が覚醒した少女。学力の確認テストを受けた際成績が本校の基準値に達しないとされてE組行きが決定したという、他の生徒とは少々違う経緯でE組へと辿り着いた生徒だ。

 

「彼女がどうかしたか?」

 

「どうといいますか、何と言いますか……貴方の目に彼女はどう映ってますか? 具体的には暗殺方面で」

 

「……ふむ」

 

 頭の中に彼女の動きを思い浮かべる。リハビリが必要な身体という事もあり、最初の頃は他の生徒に比べて注視していたが、ナイフの扱いに関しては特に問題が無かったように思う。今では問題無く体を動かせるようになったのか、その動きは他の生徒と比較しても遜色ない。

 特筆する部分があるとすれば目だろうか。動体視力、特に相手の挙動を見切る事に関しては才能があるように思う。今はまだ考えと動きが噛み合っていないが、あとひと月もすれば十分動けるようになるだろう。

 

 射撃に関しても目を見張るものがある。最初は苦戦していたようだったが、千葉君や速水さんといった射撃上位の生徒に教えを乞う事で着実に成果を出している。中でも中距離の命中率が素晴らしい。動く標的にも的確に当てられるのは、これも目の良さが影響しているのだろう。

 

「……優秀ではあると思う。飲み込みは早いし、学習意欲も旺盛だ。他の生徒と比べても何ら劣る事は無い」

 

 自分の見解を口にすれば、私も同意見ですと返事が返ってくる。訓練の横で砂遊びをする傍ら、しっかり観察していたという事か。自分を殺すための訓練なのだから観察してない方が可笑しいのだが。

 

「それで? 何でわざわざそんな事を聞く」

 

 自分も同意見なら俺に聞く必要は無いだろう。そう思って聞き返せば、どこか困惑した様な声が返って来た。

 

「同意見ではあるのですが……少し、違和感がありまして」

 

「違和感?」

 

 同じ教師という立場でこそあるものの、俺とコイツは見ている規模が違う。教えている事が違うという部分も関係しているやもしれん。

 コイツは生徒一人一人としっかり向き合い、その生徒に合わせた教育で、勉強であれ暗殺であれ教え導いている。テスト問題さえ専用のものを全員分用意するほどだ。

 俺も一人一人を見る事は重要だと思っているが、今はまだその時期ではないと考えている。今は全体の基本的な練度を高め、射撃近接を問わずある程度の実力を全員が身につける方が先だと思っている。個人の長所に合わせた指導は来月か再来月くらいからだろう。教師というよりは教官という立ち位置の方が近い。

 

 自分が見る限りでは岸波さんには特に違和感などは無い。精々が思ったよりも動けているくらいで、違和感を感じるという程ではない。生徒一人と向き合うこの超生物だからこそ気付いた事があるのかもしれん。

 

「えぇまぁ……何と言いますか。どうにも彼女は、()()()()でして」

 

「は?」

 

「事前に聞いていた情報と、直接関わって見知った情報に凄まじい齟齬があると言いますか……何やら隠し事もあるみたいですが、それを隠す気があるのかないのかも微妙ですし……にゅぅ」

 

 暫くもにょもにょと口の中で言葉を咀嚼していたようだったから何かと思えば、蓋を開けてみればそんな言葉が飛び出してきた。

 見ると聞くとは大違いという慣用句があるのだから、事前に得た情報と自分自身が接して得た情報に違いがあるのは当然だろう。隠し事に関しても、あの年代の子供は何かしら隠し事があるものだし、隠すのが上手い下手も人それぞれだ。隠し事の内容にもよるが、別段気にする事の無い普通の事だと言える。

 

 ―――だが。

 

「……とりあえず、先ずはお前が感じた違和感とやらを話せ。話はそれからだ」

 

 普通の事ではあるが、それに対してコイツが妙な引っ掛かりを覚えている。それなら話が変わってくるのだ。

 コイツの危険に対する嗅覚は並大抵のそれとは比べ物にならない。生徒や殺し屋の暗殺を躱し続けている事からもそれは明らかだ。その奴の感覚に引っかかった以上、それは無視できるものではないだろう。

 

「俺も一応は教師だ。生徒の事はなるべく把握しておかねばならん」

 

「ヌルフフフ……烏間先生も中々良い教師になれそうですねぇ」

 

「……さっさと話せ」

 

「にゅやっ」

 

 奇妙な笑い声を上げる超生物にナイフを投げる。何が良い教師になれそう、だ。コイツは生徒だけに飽き足らず、俺にまで教育を施そうというのだろうか。だとすれば大きなお世話だ。

 ふざける場面ではないと珍しく空気を読んだのかそれ以上話を広げる事はせず、それまでの軽薄な声色とは違う真面目な声で奴は語り始める。ちなみに投げたナイフは饅頭の包装紙で受け止められてしまった。

 

「……まず、私が最初に岸波さんに対して違和感を覚えたのは、復学二日目の夕方です」

 

「……二日目?」

 

「あれですよ、私が溶けた日です」

 

「……あれか」

 

 生徒の一人である奥田さんと一緒に制作した自分に効く毒を飲んだこいつが、融解した金属の様な外見になった時の事を思い出す。あの日は確か、防衛省との連絡事項のために授業終了と同時に校舎を出ている。あの日の放課後に、俺の知らない所で何かがあったという事か。

 

「その日の放課後、二人で話す機会がありまして。その時に言われたのですよ、『自分たちの手で絶対に殺してみせる』と」

 

「……特に変わった事ではないと思うが」

 

 その手の発言なら他の生徒でもしている。賞金欲しさから出た言葉だろう。

 

「えぇ、発言自体は何らおかしな事ではありません。

 ……問題なのは、その時一緒に突きつけられた殺意の方でして」

 

「殺意?」

 

「―――とても、清らかだったのですよ」

 

 そう言って語る超生物の顔は普段と同じ、にやけたようなふざけた顔だ。だがその言葉は普段と真逆の真剣そのもの。それだけコイツがその事を大きく受け止めているという事だ。

 

「……殺意が清らか、と言われてもな。今一つ想像出来んが」

 

 殺意というのは文字通り殺す意思だ。そういったものは得てして怒りや恨みと一緒に抱くものだろう。殺したいほど腹立たしい、殺したいほど憎らしい。そういうものだ。おおよそ清らかさとは真逆の感情だと思うが……。

 

「私もそういったものを向けられたのは初めてだったので、上手く説明できないのですが……」

 

 触手をうねらせて暫く唸っていたが、やがて納得のいく例えが見つかったのかぽつぽつと語り出した。

 

「……そうですね、例えるなら騎士の一騎打ちでしょうか?

 相手を全力で打ち倒すという殺意こそあれ、それは憎しみではなく相手の実力に対する敬意から発せられるもの。

 清らかで、透き通っていて、それでいて凄絶さがある……彼女から感じられた殺気は、そんなようなものでした」

 

「……その騎士の様な殺意を、彼女は持っていると?」

 

「近しいものですよ。騎士云々はあくまで例えです」

 

「……ふむ」

 

 正々堂々の立ち合いから発せられる殺意。そう言われてみれば成る程、清らかな殺意という一件矛盾した表現にも納得がいく。俺自身、空挺部隊にいた頃には挑んでくる後輩から似たような意識を向けられる事も多々あった。どちらかというと殺意というよりは熱意に近いものだったが……そういったものを岸波さんもまた内に秘めている、という事か。

 

「そして次。二度目の違和感は全校集会の時でした」

 

 椚ヶ丘で月に一度設けられる全校集会。E組は山から昼休みを返上して向かわねばならず、行われる事は全校生徒から嘲笑の的にされる事。本校舎の生徒にとっては自身の優位性を自覚させる一種のイベント扱いだが、それで訓練以外の疲労が色々と蓄積されるE組にとってはたまったものではない。

 そして今年のE組が始まってからあった全校集会は先日の一回のみ。そこで起きた奴が違和感を覚えるような事……これに関しては俺にも心当たりがある。

 

「全校集会―――アレ(・・)か?」

 

「えぇ、アレ(・・)です……岸波さんが発した殺気ですね」

 

 本校舎の生徒に絡まれた際、岸波さんは殺気を放ってそれをやり込めてしまった。その場面は遠巻きにではあるが、俺とコイツが目撃している。

 

『―――君には、殺せないだろ』

 

 そんな言葉と共に放たれた殺気の効果は非常に強力で、本校舎の生徒達はそれを至近距離から浴びた結果、威勢の良さは完全に消え去り縮こまってしまっていた。遠目で確認していた俺達にも肌を焼くような殺気が伝わって来たくらいだ、真正面からモロに食らってしまえばひとたまりも無いだろう。

 

「アレは確かに子供が放てるレベルのものではなかったが……」

 

 あの殺気が真っ直ぐ自分に向けられたものであれば、身構えるか銃に手を伸ばすかくらいの事はしていたと思う。余波に当てられただけだったからあの場はどうにか堪えられただけだ。

 

「……だが、あの時のお前は随分平然としてたように思うが?」

 

 自分の生徒は殺る気が違う―――

 そんな言葉を口にして、コイツはあの時ヌルヌル笑っていた筈だ。

 

「えぇ―――ま、岸波さんの殺気に少し動揺こそしましたが、殺気を出せる事自体は分かってましたからね」

 

「はぁ?」

 

「あれ程の清らかな殺意を持つ人物が、一月掛けて殺しの技を齧る程度とはいえ学んだ。殺気を纏うのは当然でしょう」

 

「――――――」

 

 言われた内容には今一つピンと来なかったが、その殺意とやらを直接感じたコイツが言うのだ。その辺りは今は脇へと置いておく。

 

「しかし、彼女の殺気には重さがありました。純粋な怒りや恨みから放たれる単純なものではなく、命の重さを知る者が放つ特有の重さが……ね」

 

 自分たちの所まであれ程濃密な殺気が届いたのは、その重さ故にだと目の前の超生物は語った。

 

「――――――」

 

 命の重さを知る、というのは簡単なようでいて実は難しい。知識としては理解していても、それを実体験として感じれば、それがどれだけ分かった気になっていたかを痛感するものだ。

 

「……あまりこういう事は言いたくないが、それは両親の一件ではないのか」

 

 中学生という時期でその命の重さを理解しているのであれば、最も考えられる理由は身内の死だ。事実、彼女は交通事故で両親を亡くしている。リハビリが終わって家に戻った後、今まで家族で暮らしていた空間に一人取り残された事になるのだ。その空虚さから命の重さを理解していても何ら不思議ではない。

 

「えぇ、その事についてはそうかもしれません―――ですが」

 

「ッ―――」

 

 目の前の生物が発する声の質が変わる。

 

 ―――ここからか。

 

 恐らくここから先に語られるのは、今回こんな事を言いだした一番の理由。彼女の隠している事が年相応の可愛らしいものではない、岸波さんには無視できない何かがあると確信したであろう決定的な出来事だ。今までの違和感とは比べ物にならない異常があったに違いない。

 何が来ても大丈夫なように、姿勢を整え深呼吸を一つ。気休め以外の何物でもないが、しないよりはマシだろう。

 

「……最大の違和感。それは今日彼女たちが誘拐された一件でした」

 

 再び視線を奴に向けると、待っていたかのように話し始めた。

 コイツ曰く、裏で国が雇った殺し屋とは別の殺し屋が動いていたが故に起きた一件。高校生を間に挟んで自分の痕跡を隠蔽して行われた暗殺計画。その鎮圧に駆け付けた時の事らしい。

 

「私が現場の廃ビルに駆け付けた時、相手の増援と殺し屋を処理(手入れ)して突入した時に目に飛び込んできた光景は……

 自分の脚で立ってこそいましたが、拘束されていた神崎さんと茅野さん。倒れ伏す数名の高校生……十人前後でしたかねぇ。そして―――二人を背に庇う、拘束を解いた岸波さんでした」

 

「な―――」

 

「更に事が終わって事後処理をするついでに調べたのですが……高校生が倒れている理由は気絶、もしくは痛みによる戦闘不能状態。

 気付かれないようにマッハで触診しましたが、基本的に傷は殴打によるもので武器の類ではありません。中には骨折している者や、外傷が一切見当たらないのに気絶している人までいました。

 ……それに対して、岸波さんが外傷を負っている様子は見受けられませんでした」

 

「……それ、は」

 

「あの状況で高校生が仲間割れする理由は無いでしょう。状況から考えて、その光景を作り出したのは間違いなく岸波さんです。

 ……つまり岸波さんは、神崎さんと茅野さんを庇いながら、力も体格も勝り凶器まで持った高校生十数人と渡り合い、あまつさえ一方的に戦闘不能へと追い込める程の肉弾戦能力を有しているという事に他ならない」

 

「――――――」

 

 語られた内容は正直言って到底信じられるものではない。しかし実際に現場を検分したコイツが言うのなら事実なのだろう。そしてそれが全て本当だとすれば、岸波さんの戦闘能力は桁外れだ。

 守りながら戦うというのは非常に難しく、一対一でも苦戦を強いられる状況だ。何しろ目に見える弱点を抱える事になる以上、全力で戦うという事が出来ない。行動は著しく制限され、庇う行為で負傷が増える。ましてやそれが一対二、一対多ともなれば格段に難易度が上昇していく。しかも庇う対象は二人だ。相手次第では俺でも守り切るのは不可能だろう。

 

 その場合によっては不可能な戦果を、どんな手を使ったにせよ彼女はやってのけたのだ。

 

「……成る程。お前が考え込むわけだ」

 

「でしょう?」

 

「あぁ。その話を聞く限りだと、事前の情報とまるで違うと困惑するのも頷ける」

 

 この暗殺教室を計画するにあたって、在籍する生徒の事は軽くではあるがざっと調べ上げてある。一介の中学生に超生物相手とは言え殺しを経験させるのだ、どうしても慎重になるが故にそれは当然だった。そしてそれは当然病室で一人リハビリに励む岸波さんも例外ではない。

 情報通りなら、岸波さんの運動能力は平均程度。体育の成績もこれといって可もなく不可もなくと言った所だ。更に言うなら半年間の昏睡状態で身体機能は衰え切っていた。リハビリがあったとはいえ、それでようやくかつてと同じ所に戻って来たというレベルだ。

 その筈が、高校生相手に人質を庇いながらの一方的な戦闘。あまりにも情報と違いすぎている。

 

「岸波さんが何か武道を習っていたという情報はありませんでしたし、退院後に始めたという話も聞きません。部活動についてもずっと帰宅部です。

 そもそも、一月そこらの鍛錬でこれだけの事が出来る実力を身につけられる才能があったなら、もう少し体育の成績に反映されていたでしょう」

 

「確かに、そうだな」

 

 本当に、考えれば考えるほどに謎が出てくる。これだけ巨大な違和感の塊が出て来た以上、それまではそういうものなのだろうとスルーしていた他の違和感が再び浮上してくる。

 他の生徒とは一線を画する殺意に、年齢からは考えられないような殺気。これらの違和感が戦闘能力に引きずられるようにして、表側に再登場する。これらの違和感についても、見えていないだけで隠し事があるのではないかと自然と疑ってしまうのは仕方ない。

 

 しかしいざ岸波さんの違和感について考えるとなると、それまでの情報が頼りに出来ないせいで、今度は判断材料の乏しさに頭を抱える事になる。目の前の超生物が通った道と同じ道を歩いているという訳だ。

 運動能力に関する情報は当てに出来ず、彼女の事を他者から聞き出そうにも交友関係が狭い。しかもそれは一年以上前のもので、彼女の事を正確に覚えている人物の方が少ないだろう。本人から聞くという手もあるにはあるが、肝心の本人が記憶障害と診断されているせいで、惚けられても追及できない。いっそ部下を使って監視するという手もあるが、それこそ問題だろう。正に八方塞がりだ。

 

「ハァ……」

 

 自然と口からため息が漏れる。何故こうまでして情報が違うのか。まるで別人では―――

 

「――――――」

 

 考えていた事が一瞬で止まった。

 頭の中に浮かび、愚痴の様に流れていくはずだったその単語を逃がさず捕まえる。

 

 ―――別、人? 岸波さんが別人かもしれない?

 

「…………」

 

 何を馬鹿なと、何も知らなければ一蹴していた考えだ。だが彼女が身に纏う違和感を知った上で考えると、これ以上にしっくりくる答えが無い。

 

 そもそも情報が違えば本人かどうかを疑うのは普通の事だが、彼女の場合は記憶障害という診断結果が煙幕になっていた。記憶が定かでないのなら、本人としてはあり得ない言動が目立っても不思議ではない。更にそれを指摘されれば、「過去の自分を知る」というもっともらしい理由で岸波白野という存在を知る事が出来る。

 そうなると、普段の言動も途端に違和感を帯びてくる。昼休みに激辛の麻婆豆腐を笑顔で食している姿や、初日のふざけた自己紹介さえも、わかり易い奇異な所を作りそこに目を向けさせた上で記憶障害を利用して「実はこういう人だったんだ」と思わせる事で、別人であるという事から意識を逸らさせる役割なのではという考えさえ浮かんでくる。

 

「……烏間先生も、()()に辿り着きましたか」

 

 かけられた声にハッとして顔を上げれば、超生物がその黒い眼をこちらへと向けていた。

 

「その、岸波さんは―――」

 

「えぇ。恐らくそうでしょう。それが一番可能性が高い」

 

 俺の言葉を遮って、目の前の教師は言葉を紡ぐ。普段のふざけた声色は、もはや名残すら聞こえてこなかった。

 

「何時からかは知りません。入院していた時には既にそうだったのかも……とにかく」

 

 下を向いていたコイツと俺の視線がかち合い、それと同時にこれまでの違和感について話し合い、辿り着いた結果が語られる。

 軽さなど微塵も感じさせない、ずしりとした声だった。

 

「―――岸波さんは、別人と入れ替わっている。

 その可能性は非常に高い。ほぼ確実と言って良いでしょう」




今回の一件ではくのんの異常性をはっきりと確認した殺せんせー。真相は憑依転生的なファンタジーなのですが、流石にそこまでは辿りつけなかった模様。

次回で修学旅行編は終了です。



延長のお陰でどうにか姫路城をクリアできました……

天草PUが怖い。終わった後で何が来るのか超怖い。
考えられるのは贋作イベ復刻とかかなぁ

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