あの日たすけた少女が強すぎる件   作:生き残れ戦線

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二十三話

 

「これが」

 

ガリア公国首都ランドグリーズ。

その門を通り抜けると、

そこには諸外国よりその外観から一角獣の住まう都と称賛される程の景観が広がっていた。

 

帝都と比べれば規模や棟数は少ないが、それでもラインハルトをして感嘆させるには十分だった。特に中央に位置する王城の尖塔が見事だ、あれほどの逸品は帝国でも見たことがない。

流石は一角獣を謳うだけはある。

 

襲撃を潜り抜け、街の難民と共に王都を目指して早くも一週間が経過していた。当初の計画より遅い到着だが、何とか無事に五体満足で目的地に到着する事ができた。

 

これも義勇軍第七小隊のおかげだ。

先の一件以来、彼らとの関係性は更に高まっていた。元より仲は悪くなかったが、今や同僚と同じかそれ以上に仲が深まった。

必死の思いで戦った甲斐があったということか。

 

しかし俺の強さについて根掘り葉掘り聞いて来たのにはまいったが。それはそうだあんな高度な剣士の戦いは中々お目にかかれるものじゃない。どう言い訳をしようか頭を抱えた。イムカは自業自得と言って助けてくれないし。

どうしよう。そんな窮地を救ってくれたのはウェルキンだった。

彼は隊員達に詮索を止めさせ、それどころか他言しない事を厳命してくれた。本来であれは尋問されてもおかしくはない立場の俺を彼は守ってくれた。

 

何故だと聞いたら彼は笑って僕は義勇軍、正規軍じゃないから尋問のやり方は習ってないんだと言った。

そんなはずないのに、そう言って誤魔化してくれたのだ。

甘いなウェルキン・ギュンター。だがその甘さに助けられたのだ。

やはり殺さなくて正解だった。

 

俺は彼の、彼は俺の信頼を勝ち取った。

 

最後に写真を撮ることにした。

旅の別れは早いものだ。皆、別れを惜しんでくれたが各々に使命がある。だからこそ最後に思い出を残すことにした。

 

「は〜い、みんな集まって」

 

従軍記者の言葉に第七小隊の隊員達、俺とイムカが並ぶ。できるだけ端に寄ろうとしたが。

 

「ハルト、イムカ主役がそんな所じゃだめだろ?」

「そうです、どうぞ真ん中に来てくださいイムカさん」

 

ロージーとイサラがそう言って俺たちを真ん中に寄せる。ポジションを変えられて困り顔のイムカにお言葉に甘えようと真ん中に、俺の隣りにはウェルキンが立つ。

ボソリと俺にしか聞こえない声で。

 

「あなたが何者であろうと、貴方達と死地を乗り越えた事は忘れない。これから情勢が変わり、貴方と僕の関係が変わろうとも、共に戦った事だけは変わりません、それだけは忘れないでください例え貴方が帝国の人間であろうとも」

「!?」

 

表情は変えず横目で窺う。

ウェルキンは正面のカメラから目を離さない。

ただ相変わらず穏やかな顔をしている。

 

気づかれていた、俺が帝国の人間である事に。

しかしウェルキンはそれを特に気にしてないようで。

驚く俺を尻目に。

 

「また困った事があれば、いらしてくださいイムカさんと一緒に、イサラも喜ぶ」

「それは、どうだろうな難しい気もするが」

ウェルキンは寂しげに、

「難しいですか、そうですか」

「だけど」

「?」

「また会える、そんな気がするよ」

 

パシャリとフラッシュがたかれる。

現像するまでは分からないが、写真に映る俺の顔はきっと自然に笑えていた事だろう。

 

 

 

 

惜しみつつも、俺たちは首都で別れを告げた。

その際、武器、装備一式を返すと言われたが、追加報酬だと言って断った。むしろ更に10万ダカット程、渡そうとしたら慌てて止められた。

適正報酬の10倍も受け取れないと。

なんて謙虚な奴らだと思っているとイムカに呆れた目で見られた。おかしいのは俺の金銭感覚か?

 

 

 

 

 

ともあれラインハルトは無事に首都にたどり着くことができた。

計画の第三段階である王都潜入が完了する。

残るは第四段階のみ、いよいよ大詰めだ。

そのためにまず俺達は高級ホテルに一室をとった。

 

ここが新たな拠点になる。

 

「この部屋?一階違う」

 

イムカが気づいた。そうこの部屋はチェックインした部屋とは一階違う別の部屋だ。誰かがすでに入室している。

 

ドアを不規則なリズムでノックする。

3・3・1。

反応はない。

すると暫くしてドアが開いた。

 

「お待ちしておりました、どうぞ中へ」

「久しぶりだなギュンター」

 

中から現れたのはギュンターだった。

先の戦争でも活躍した彼がどうしてここに?とイムカは思った。何も知らないイムカと違い、当たり前のようにラインハルトは部屋に入る。その後ろにイムカも続く。

 

その部屋は薄暗く。外から何も見えないようにされていた。防音処理もされているようで怪しげな機械が所狭しと置かれている。

一瞬呆気にとられた。

 

まるでスパイの秘密のアジトだ。

ここでイムカにも理解が及んだ。

なるほど、これなら拠点にうってつけだ。既に準備が整えられている内装にイムカも納得する。

 

そして同時に疑問が浮かぶ。

これほどの下準備をしてラインハルトは何をしようというのだろうか、帝国のガリア侵攻を内側から補助するのだろうか。

 

いいや違う、それだけならこんな危険を冒してまで王都を目指すわけがない。

ずっと疑問だった。

彼が何をしたいのか何のためにここまできたのか。

それがいま明かされる。

 

無線機を受け取ったラインハルトは準備が完了したことを確認して。ダイヤルをとある秘匿周波数に切り替え宣告する。これが作戦開始の合図になる。

 

「獅子は一角獣に降り立った、これより第四フェーズに移行する。オペレーションガーゴイル(ガリア防衛計画)を始動せよ」

 

ラインハルトは不敵に笑みを浮かべた。

 

 

 

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