あの日たすけた少女が強すぎる件   作:生き残れ戦線

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四十一話

 

「……と言うわけで正規軍には盾としての役割を持たせ帝国軍の攻勢を受けて貰い、義勇軍には矛として帝国軍の撃破に専念してもらう。これによって効率良く戦いを進めていく、これが俺の考える攻守戦術の概要だ」

 

説明は以上だ。

そう言うとラインハルトは朗々と進んだ説明会を終える。見れば昼を完全に回っていた。

長々と話を続けたが要は戦車をどう運用するかについてだ。

今後の作戦の要には義勇軍を用いて反攻すること。

正規軍には依然として防戦に専念してもらうこと。

 

それを話した。なぜ話したかというと。

 

これによって上と下の意識統一を図りたかった。

アマトリアンで働く彼ら整備士は、この戦争において影の英雄達だ。彼らの助けがなければこの戦争で勝つことは出来ない。

できるだけ齟齬を無くす事で円滑に働いてもらいたい。

それが結果に繋がると思ったからだ。

 

だから包み隠さず彼らにも話す。

 

「これから先の戦いは君達一人一人の働きが結果を変える。文字通りの意味でな。勝つか負けるかは君達次第だ。無論俺は負けるつもりはないがな。共に戦ってくれると嬉しい」

 

話を聞き終えた整備士達は成程と理解を示す。

そう言うことかと。

彼らの目にはある種の輝きが点っていた。決意の眼差しと言っても良い。事の重大さを理解したからだ。

 

リオンもまたやる気に満ちていた。

 

…オイラ達の今後の働き次第で戦場の勝敗の有無が変わる。今までもそう考えて働いてきたつもりだ。だけど兄貴の話を聞いてより重い実感を感じた。今回の新型戦車の開発がどれほど重要かも。

震えるほど強く理解する。

武者震いだ。

 

「やってやるっす……!」

 

イサラさんも真剣な顔で頷いている。リオンは笑みを浮かべて班長の方を向いた。早速新型戦車開発に取り掛かりましょう。そう言いかけたところで気づいた。

 

班長が苦虫を噛み潰したような顔をしている事に。

 

え?何でっ…すか?

ベテランの彼がそんな顔をしている理由が分からず何も言えずに彼を見ているしか出来ない。リオンと視線が合うとバツが悪そうに目線を逸らした。

結局その日は最後までその理由に思い当たることはなかった。

 

それが分かるのは数日後、彼が貴族お抱えの戦車整備兵である事に思い至った時の事である。

まさかあんな事になるなんて、その時のリオンには想像する事もできなかった。

 

脱線したが話を戻そう。

新型戦車開発プロジェクトは直ぐに開始された。

リオンと同僚のクライスも開発を手伝う。まずは技師達が設計図を引くところから始まる。それは一昼夜を超える仕事となった。

これまでの一部兵器の開発とは異なりゼロからのスタートとなる。大変な作業となった。

開発中、一時挫折しかけた程だ。

そんな折に兄貴がまた訪れた。その後ろにゾロゾロと新たな味方を引き連れて。

 

兄貴の部下だと言う人達だ。

詳細は聞けなかったが彼らが持ち込んだのはオイラ達の知らないパーツ設計図だった。どれもこれも高度な代物だ。中にはどう見てもそれは帝国軍の戦車設計図では?という物まであった。

 

いったいこれはどう言う事だろう。疑問に思いもしたが直ぐに霧散した。そんな事はどうでもいい、今コレを最も必要としているのはオイラ達だ。

これを基に作った部品でなら造れる新たな戦車を。

次世代のエーデルワイス号を。

 

 

 

そして三日三晩の徹夜の後に。

ようやくそれは完成した。

 

「で、出来たっす……!」

 

そう言ってリオン達が見詰める先には一枚の設計図がある。その姿はエーデルワイス号に似ている。だがそのサイズは一回り小さいものになっている。中戦車と重戦車の中間といったところだ。重量もその分、軽量化している。だが攻撃力はエーデルワイス号の1.5倍だ。

軽量化と量産化の為に非複雑化させたパーツで組み上げるにも関わらず性能が上がっている。正に次世代戦車に相応しい戦車となっている。

あくまで理論上は。

これから試作品(プロトタイプ)を作って試行錯誤の末に完成するのだ。まだまだ道のりは遠い。

 

それでもリオン達の目に灯る火は微塵も衰えていない。

それどころかますます勢いにのっていた。

このまま開発に移行しかねなかった。少し休ませなければならない。クライスがそう考えた時である。

一人の整備士が駆け込んで来た。

 

「た、大変だー!」

 

血相を変えている。何事かと視線が集まる。リオンも机に突っ伏していた顔を上げる。

 

「どうしたんすか?そんなに慌てて」

吐き出されたのは驚きの言葉だった。

 

「…じ、ジークさんが貴族の連中に連れていかれた!」

「なんだって!?」

「何でジークさんが?」

誰もが驚くしかない中、リオンは立ち上がる。

 

「どこっすか!?兄貴はどこに!」

「演習場だっ…だが、あ、まて」

「リオン!」

 

呼び止める声を無視してリオンは走り出していた。

思い当たる節がリオンにはあった。

ジークから聞いた開発資金についてだ。やっぱり奴らが大人しく引き下がる訳がなかったんだ。心配した通りの事がおきてしまった。

これはきっと貴族の報復だ。

 

待っていてください兄貴、いま助けに行きます!

 

 

 

 

そして隣接する演習場に着いて目撃したのは。

大勢のギャラリーが見守る中、貴族の男女と対峙する兄貴の姿だった。かたわらには倒れる軍服姿の男達。あの数を相手にして無傷。

臆する事なく兄貴は貴族達を睨め付けていた。

そして何事かを話すと貴族の男女は去って行った。

 

「ジークの兄貴!大丈夫っすか!」

「リオンか……ああ、問題ない」

 

本当に問題なさそうに言う。

だけどあんな光景を見たら黙っていられる訳がない。何かされたなら本当の事を言って欲しいっす。

その思いが伝わったのか。

 

「……いや、問題ない事はないな。君達にも関わる問題だ」

「どういう事っすか?」

 

兄貴は思いっきりでかいため息を吐いた。

何でこんな事にという感じだろうか。サングラス越しにも面倒臭さが伝わってくる。

 

「奴らの言うところの決闘を申し込まれた。俺が胡散臭いとか身分を明かせとか、コーデリア姫を守る力がお前にあるか試させてもらうとか好き放題言って帰っていきやがった」

「ただの言いがかりっす!」

「そうだな普通なら俺も即断る。だが、この場にいる他の軍人達をも同調させやがった。これで逃げたら俺の評判は地に落ちる。受けざるをえない俺が怪しいのは俺が一番分かってるからな」

「それで決闘方法は?」

「明日、ここで模擬演習をする。一個小隊を率いての陣取り合戦だ、その戦闘で勝った方が……」

 

そこで言い淀む。

貴族達は何を言ったのだろうか。リオンはジークの言葉を待った。

 

「勝った方が新型戦車の設計図を手に入れる。正規軍は独占する気だ。新型戦車を」

 

唖然とするリオン。

やれやれ、こんな事をしてる場合じゃないんだがなと天を仰いで愚痴るジークの声が演習場に空しく響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回正規軍vs義勇軍
新型戦車の設計図を手に入れろ。
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