あの日たすけた少女が強すぎる件   作:生き残れ戦線

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五十一話

 

あれから何とか小隊を説得した俺は紆余曲折ありながらも、どうにかこうにかファウゼンに辿り着く事が出来た。到着した途端ここからでも砲撃音が聞こえてくる。

どうやら既に義勇軍の包囲作戦は始まっているようだ。僅かに遅れてしまったか。

 

「もたもたしてられないな、これより俺たちも義勇軍と合流して作戦行動を開始する!」

「了解!」

「前もって決めた通り分隊を二手に分ける、一つは俺に、もう一つは装甲車に付け」

 

ここに来るまでに決めておいた通り編成を二つに分ける。言わずもがな装甲車にはコーデリア姫がいる。その護衛を任せる。

 

「いいかよく聞け装甲車部隊!姫様を死ぬ気で守れ!いや……死んでも逃がせ俺の所に!いいな!」

「はい!」

 

死んでも守り通して見せる。その思いで兵士達は頷く。それを見て俺も頷いて見せる。武器を手に声を張り上げた。

 

「ジークハルト小隊出るぞ!」

「おおおー!」

 

 

作戦開始時間に遅れたおかげというべきか既に山門は開いていた。戦いは坑道戦に移っていた。

思った以上に帝国軍は動揺しているようだ。

この作戦の要は内と外からの同時攻撃にある。

それが功を奏したのだろう。

 

まず俺達は先行して潜入した義勇軍と合流する。

その為に必要なのはまず第一に突破力だ。

山道からそのまま市内に入れる。だが、

 

「ガリア軍を入れるな!押し返せ!」

「……っク!」

 

市内に入らせまいと必死の抵抗をする帝国兵。中々前に出られず苦戦するガリア軍。戦闘が膠着する中それらを薙ぎ倒す、その先頭に立つのはやはり彼女だった。蒼い鎧に身を包んだイムカが山道内を駆け抜ける。帝国兵を見つければ。

 

「やれイムカ」

 

ジークの命令の下に切り捨てる。その行動に一切の躊躇なし。血に濡れたヴァールの刃を振り払うと血糊が舞う。そこには数多の帝国兵の屍が残る。ジークはそれを見て。

 

「……行くぞ」

 

誰にも見えないよう深くサングラスを掛け直す。覚悟していたつもりだったがキツイな。

 

……すまない。

こんなこと言えた義理ではない。外道と罵られても仕方ない事だ。だが、それでも俺は前に進まなければならない。

これで最後にする。彼らに対する懺悔は、死後に地獄でする事にしよう。

ーーだから。

 

「攻め上がれ!進むぞ更に先へ!」

「おおっ」

 

ジークハルトという仮面に心を隠して。

俺は先に進むことができた。

 

 

戦闘は終始、順調に進んでいった。

イムカが斬り込んでレオン達にその援護をさせた。戦鬼の如く暴れ回るイムカに恐慌した帝国兵を討ち取るのは簡単だった。おかげで一人の負傷者を出す事もなく進むことが出来ている。

 

狭い山間を通ってようやく市内に入る事が出来た。

 

「これがファウゼン市内か」

 

見渡す限り山肌に乱立する工場群がもくもくと黒煙を上げる街が映る。鉄工場という名が相応しい正に鉄の街だ。

ここの何処かに先に潜入した義勇軍部隊が居るはずだ。彼らと合流してこの街を奪還する。

 

「見つけたあそこ」

 

イムカが指差す先に確かに彼らは居た。

鉄橋を挟んだ向こう側だ。ちょうど彼らのいる反対側から来たのだ。なぜ橋を渡って来ない。その理由は直ぐに判明した。狙撃だ。橋を渡ろうとした兵士が突然、雷に打たれたかのようにバタリと倒れる。

 

「全員建物の影に隠れろ!」

 

俺の指示で全員が近くの建物に隠れる。

どこにいる狙撃兵は。直ぐに見つかった。真向かいにある鉄道橋の土台付近の岩山の上だ。距離にして250、いや300mか。エース級だな。レオン達に処理させても良いが危険な橋は渡れない。俺が処理する。静かに狙撃銃を構えて撃つ。

 

「ーーっ!?」

 

狙いは見事に的中。

眉間を貫通する。脳漿を湖に撒き散らした。

その光景を見届けスコープを切る。

ほっとする。射程ギリギリだった。

これ以上は俺でも難しいだろう。

 

「ジーク?ジークじゃないか!」

「この声はウェルキンか……?」

 

目を向けるとちょうど鉄橋から歩いて来る見慣れた部隊がいた。義勇第七小隊だ。先頭に立つのはやはりウェルキンだった。呑気にこちらに手を振っている。

 

「やあ、こんな所で会えるとは思わなかったよ。君は色んな所に現れるんだな」

「君も相変わらずだな、先に潜入したという部隊は君達だったか」

「うん、他にも何部隊かいるけどね」

 

俺とウェルキンは手短に作戦内容を共有した。

成程そうか、現地人と協力してあの鉄道橋を破壊する目論見か。中々大胆な事をする。

 

「君が協力者か?」

「ああ。俺はザカってもんだよろしく頼む」

「成程ダルクス人か」

 

うってつけの人材だな。そう思っての発言だったがザカは別の事を考えたようだ。はっとした表情になり直ぐに俺を説得し始める。

 

「すまねえなダルクス人で。心配だと思う、だが必ずやり遂げて見せる。だから協力してくれねぇか軍人さん」

「いや?心配なんてしてないが?頼んだぞ俺達の命をお前に預ける」

 

そう言って肩を叩くと自分の部隊に指示を出す。

それを少々呆気に取られた様子で見ているザカ。まさかである。そんな簡単に信頼されるとは思わなかった。

 

「あれは誰だ」

「……変わり者さ」

 

いつのまにか隣にいたロージーが答える。

変わり者?と戸惑うザカにああと頷く。事情を知るロージーから見たらそう評するしかない。

 

「ま、ただの変わり者じゃないのは確かさ」

 

でも後で一発殴るけどね。

フフフと怖い笑みを浮かべるロージーにザカはたじろぐ。歩き去っていくのを見て。

 

「……なんだあ?」

 

と首を捻るのだった。

何だか分からないが話の分かる人間のようだ。

初めての事だ。普通はもっと疑われるもんだがな。

なら話は早い。今は好都合だ。

この爆弾を鉄道橋に設置する、それが俺の役目だ。

目的地に急ごうそう思った時にアレは現れた。

 

ガタンゴトン……と。

どこからか列車の走る音が聞こえて来る。まさかと思って見上げた次の瞬間にソレは姿を現した。

装甲列車だ。鉄道橋に陣取る。

見紛う事なき鉄の大蛇が俺達を見下ろす。

 

「市外のガリア軍の迎撃を諦めて内に戻ってきたか」

 

あの装甲列車こそがファウゼンを支配する象徴だ。

自然と体が強張ってしまう。

……ああ、くそ体の震えが止まらねえ。

しっかりしろってんだ。こんな所で震える為に来たんじゃねえだろう。思い出せあの男の顔を。あの冷徹な将校を。

俺はあいつを倒しに来たんだ。もう誰も苦しまなくて良いように。

 

必死に己を鼓舞するザカを尻目に装甲列車に動きがあった。後部に位置する砲門が可動し始めたのだ。それを見てウェルキンとジークが訝しむ。

 

「市内の防衛を優先した?俺達が狙いか?」

「それはまずいね、皆建物の影に隠れるんだ」

 

ウェルキンの指示でアリシア達が遮蔽物の影に隠れる。

これでひとまず安心だね。

そう言うウェルキンの言葉に俺は同意できなかった。

本当にそうなのか?

装甲列車の狙いは俺達の排除。そう考えるのが妥当だろう。だがこんな市内で装甲列車に何ができる。俺達を攻撃すれば必ず工場に被害が及ぶだろう。それが分からない敵ではないはずだ。

待てよ。……まさか。

 

「ーーっウェルキン!部隊を建物から離れさせろ!」

「え?」

 

もう遅かった。

俺が伝えるよりも早く砲門が火を吹いた。俺達は見ている事しか出来なかった。目の前で工場が吹き飛ぶその瞬間を。

敵はファウゼン市内に攻撃を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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