あの日たすけた少女が強すぎる件   作:生き残れ戦線

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五十話

挟撃される事を恐れ退却した連邦軍が、それから姿を現したのは一時間後の事である。

やはり包囲の一角として周辺に散っていた戦力を結集させたのだろう。

森が震えるほどの大軍を引き連れてきた。その数は目測でも軽く数万を超えていて。

目の前の対岸一帯を数えきれないほどの連邦軍が埋めつくしていた。

 

対するこちらもまた一時間の内に、合流した部隊と本隊を編成した事で二万と成った大軍を、岸に沿うように並ばせた横列陣形で待機させていた。後ろにはアスターテ平原が広がっている。

ライン川を挟んで睨み合うように構える二つの大軍。

どちらも目立った動きはなく、静観の構えを見せている。

両軍の間を緊迫した気配が渦巻いていた。

 

既に戦いは始まっている。

 

始まりは唐突に、幕は連邦軍が切った。

整然と並んだ数百からなる歩兵部隊が橋を渡って来た。同数の部隊が後ろから等間隔で三つ。合わせれば千に届く。どうやら敵の指揮官は先程と同じく正攻法で橋を制圧する気のようだ。先ほど多くの被害を受けたにも関わらず、物量による力攻めを選んだ連邦軍。何か勝算があるのかと思いきや―――

 

悲鳴と怒声が響き渡る。

切り飛ばされた腕が地面に転がり、間欠泉の如く噴き上がる血潮が橋を汚す。

恐慌状態に陥った兵士が混乱のあまり橋から滑落する。死が溢れ、染み出した血溜まりが橋を伝って川に注がれる。

激しい戦闘が繰り広げられている。――が、圧倒的なまでの力の差によって連邦軍は蹂躙されていく。いっそ哀れな程だ。

 

それが出来るのは百人からなる無敵の援軍―――ヴァジュラス・ゲイルをおいて他ならない。彼らは橋の上に陣取っていた。まるで敵を待ち受けるかのように。

そして、こちらに押し寄せ迫り来る連邦軍を―――圧倒的な力で殴り返したのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの程度の橋を制圧するのにいったいどれだけ時間を掛けるつもりだ!前線指揮官は何をしている!敵は小勢ではないか!」

 

橋の上を戦場にして千人の味方が百人の機械兵に蹴散らされていく、その光景を遠くから眺めていた男が居る、第15軍総司令官のヒューズ中将だ――彼は苛立ちの表情で戦場を見ていて、ついに我慢の限界を超えたのか叫び出した。

攻め始めてから情勢は一向に進展していない。それどころか一時は橋の瀬戸際まで追い詰めたかに思ったら、それまでが肩慣らしだったとでも言うように、本気になった敵の巻き返しによってあっさりと橋の半ばまで押し返される始末。遊ばれている、そう思い激怒したヒューズ中将の命令によって新たな制圧部隊が突入していく、殲滅される。先ほどからその繰り返しであった。

隣に立つ参謀兼副官の男が見かねて口を開いた。

 

「やはりあの正体不明の部隊にはこちらの銃弾が効かず、反して予想を超える高火力武装で身を固めているようです、橋の制圧は今しばらく掛かるかと思われます閣下」

「されとて敵も不死身ではあるまい!もっと多くの兵を投入せよ!敵が休む暇もなく何百、何千という兵を叩き付けろ!いかなる常識を超えた敵兵士であろうと数の前には敵うまい!何のために全軍を集結させたと思っているのだ!」

「それでは予想する以上の損耗率となりますが?」

「構わん、何人死のうと兵士の補充は幾らでもいる。損害なんぞ気にするな!」

 

何せこちらには8万の兵だけではない、後方には更に多くの軍隊が控えているのだ。

多少の千や二千なんぞ気にする数字ではない。重要なのは敵指揮官の首を取る事である。

 

「目の前に居るのはあのハイドリヒ伯の軍なのだ。辺境伯を討った戦功ともなれば俺は晴れて大将になれる!......そうだ、本来であれば俺こそが北東戦線における大将となるはずだったのだ。まかり間違ってあんな男がこの軍の総司令官になっているが、それは正しくない.......」

 

......この戦いで勝利をおさめてそれを証明してやる。

恰好の獲物を前にしてヒューズ中将の燻っていた野心に火が点いた。

自身の功績の為であれば何人の部下が戦死しようと構わない。本気でそう思っていた。

だからこそ無謀としか思えない戦い方も許容する。

それが最も味方に被害の出る作戦であったとしても微塵も気にしない。

 

だが、一見無謀とも思えるその作戦もあながち的外れな訳ではなかった。無謀だが無駄ではない。

彼ら――ヴァジュラス・ゲイルの使用する弾薬とて無限ではない、いつか打ち止めになる。現にあの暴虐を振るっていた対戦車用重機関銃は既に弾が尽きている。残りの銃火器等の弾薬を消費しながら近接戦を行っているのがその証拠だ。

そして、彼らには時間という制限があった。無敵と思える彼らと言えど長時間戦える訳ではないのだ。もちろん現時点で連邦軍がその情報を知りえる事はないが、それでも結果的に見れば彼らを相手に物量戦は悪い判断ではなかった。むしろ効果的とも言える程だ。

 

それに加え―――

 

「河川の調査に行っていた部隊からの報告です!調べて見たところ明らかに河川の水位は低く、あの深さであれば軍を渡川するのは難しくないとの事でした!中将閣下の見立て通りです!」

「そうか、やはりそうか!.....帝国軍も運がない、どうやら勝利の女神は俺に微笑んだらしい!......待機させていた軍は全て前進せよ!戦場の第二幕を上げるぞ!」

 

中央の大橋の上で激しい攻防戦が行われている中、左右の部隊を無駄に遊ばせているはずもない。新たに部隊を投入できる場所がないか調べさせていた。そして時期的によるものかは知らないが、川の水位が下がっている事が判明する。

好機と見たヒューズ中将の命令の下に、動き出す左右の軍勢。

石の橋という条件ゆえに戸惑われていた戦車の投入も川ならば問題ないと云う事でようやく行われる。次々と川に入っていく連邦の中戦車群。その上に何人もの兵士が乗り込んでいるのが見える。タンクデサントというやつだ。乗り切れなかった歩兵達は川底を歩いて対岸の上陸を試みていて、水が胸元辺りまできているのも気にせず前だけを見ている。

 

対するハイドリヒ軍もまた指を咥えて見ているだけなはずがなく、連邦軍を上陸させまいと防衛線を展開している。放たれる偵察銃の弾雨が連邦軍に降り注ぎ、バタバタと川の中で息絶える兵士達。流れる血で川が赤く染まっていく。時間が経つにつれその量は増え、色は鮮明になっていき、川全体が真っ赤になるのもそう先の事ではなかった。

 

両軍ともに多少の血が流れるのは当たり前の事だが、明らかに連邦軍の流す血の方が多い。

それでも退く事を忘れたかのように進み続ける連邦軍。少しづつだが着実に距離を詰めていく。

そして――ついに榴弾の雨を潜り抜けた連邦製の重戦車が川岸に乗り込んだ!

 

瞬間―――それを待ち受けていた帝国の重戦車が上陸した直後の無防備な重戦車の顔面目掛けて砲弾を撃ち放った。音速で迫る砲弾をまともに受けてしまう重戦車。しかし、ダメージは軽傷に留まった。驚く事にその分厚い装甲版が重戦車の砲弾をものともせずに撥ね返したのだ。

それを見たハイドリヒ軍にどよめきが走る。

 

帝国の重戦車ですらあの距離からの着弾は甚大なダメージを受けるのは避けられないからだ。だが、連邦の戦車はほぼ無傷、それは連邦製の戦車の特徴によるものだった。そも戦車というのは三つの要素から成り立つ。攻撃火力・装甲耐久力・走行機動力の三点だ。これらのパラメーターを上げる事によって強い戦車は出来上がる。だが全てを万能に上げる事は難しい。帝国のように火力と機動力を上げればその代わり、速度を上げる為に装甲板は薄くなり耐久力が下がる。そう言った風にどちらかを長所にすればどこかに短所が生まれる。

 

そして連邦軍の戦車は攻撃力と耐久力に重きを置いていた。帝国の戦車と比べて1.8倍もの厚さを誇る鋼鉄の鎧はあらゆる攻撃を撥ね退ける。重量によって機動力は落ちるが、このような制圧戦の場合であれば適役と言えるだろう。

 

長い砲塔を備える連邦軍の重戦車が狙いを定め――先程の恨みを返すかのように徹甲弾を撃ち放つ。

耐久力が低いといっても他国に比べれば十分に厚い装甲板を、徹甲弾は一瞬で突き穿った!

耐えられない程のダメージを受けた重戦車は噴炎と共に大破する。

 

上陸を果たした重戦車を基点に兵士達が川岸に上がっていく。遂に防衛線が破られた瞬間である。

こうなれば数で圧倒的に勝る連邦軍の勝利は揺らがない。

ライン川を挟んでの攻防戦は連邦軍の勝利によって終わるかに思われた。

 

――――その時である、アルキメデスの大橋が震える程の爆発が橋の中心で起きたのは!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頑強なる石の大橋がその半ばから大きな音を立てて崩落する。

激しい音と噴煙を上げて、無数の悲鳴が川の中に落ちていく光景を見ていたアイスは、隣に気配を感じ視線はそのままに言った。

 

「ご苦労だったね、時間稼ぎありがとう。君達には無理を言ってしまった。仲間は大丈夫だったかい」

蒼い全身甲冑を身に纏う娘が横合いに立つ。

先ほど後退を済ませたのを見ていたので大丈夫だと思うが、橋を解体するための爆破に巻き込まれなかったか心配だったが、

 

「ん、問題ない....。みんな無事、心配しなくていい。あれくらいで死ぬほど弱くない」

どうやら杞憂に終わったらしい。10倍の敵を前にして繰り広げていたあの戦いを()()()()()で済ませる彼女の豪胆さに何と言っていいやら。言っている感じからして嘘ではないのだろう。まだまだ余裕がありそうだ。末恐ろしい。

 

「そうなんだ。凄いな......確かイムカさんだったよね」

「.....あまり名前を呼ばせるのは好きじゃない。だけど貴方の事はハルトから聞いている、友達だって言っていた。だから......イムカでいい」

 

その言葉を聞いて苦笑を覚える。もしかしなくても殿下に認められているから呼び捨てでも構わないと言っているのだこの娘は。そうじゃなかったら名前さえ教えてくれなかっただろう。警戒心が強い、まるで主人にしか懐かない猫のようである。というか、殿下がハルトの愛称で呼ばせていると云う事はかなり親しい間柄のはずだ。いったいどんな関係なのだろうか。恐らく聞いても教えてくれないだろう。

気にはなったが余計な詮索は控える事にした。

 

「そうか、じゃあ教えてほしいイムカ、君達はあとどれくらい戦える?」

「私達が持って来た高火力武装の弾薬は全て使い果たした、でも通常の火器兵装を貸してもらえればまだ戦える。でも、もって一時間とちょっとくらい......その後は拠点で整備しなければならない」

「戦うたびに稼働熱が溜まっていくんだったね。あまり無理をさせる訳にはいかないか......」

「?.....何かあるなら言えばいい」

首を傾げたイムカが聞いてくる。

「いや、君達だけに負担は掛けられないから......分かった言うよ。僕の軍には今、殿を任せられる部隊が居なくてね、本当なら唯一の精鋭部隊に頼むつもりだったんだけど残念ながらその部隊はある事情があって使えないんだ。他の副官達は左右の部隊を指揮しているから頼むわけにもいかない」

渋るアイスだったが、イムカはイイから聞かせろとばかりに詰め寄った。無言の威圧感にたまらず教えてしまう。

それを聞いたイムカは、

 

「ん、そういう事なら問題ない。最後まで私達が面倒を見る。早く撤退を進めるといい」

「簡単に言うけど一番危険な役割だよ。消耗している君達に頼むのはやはりどうかなと....ここは僕の本隊を使おうかと思うんだ」

「それこそ危険過ぎる。大丈夫、私達はそう簡単にやられはしない。ハルトに貰った鎧がある」

「だが、僕にも意地がある、守ってもらうだけの存在じゃないんだ。その程度の存在だったら、はなっから殿下の友人を名乗る資格もないからね。だから......」

僕が戦うしかないんだ――と言おうとした所で、

 

「―――ならばその任、どうか儂らに御命じ下さい」

 

背後から掛けられた男の声に正直驚きを隠せなかった。

いきなり掛けられた言葉にではなく――その声が誰の者か分かったからだ。

まさか、この人が来るなんて......。

 

「......ユリウス」

 

振り返れば眼下にハイドリヒ軽騎兵団長ユリウスが跪き頭を垂れていた。その後ろには老練な副団長や年若い千人騎兵長達も一様に跪いていて。

その姿はまるで主に忠誠を誓う騎士の如く。

 

「.....いったい何のつもりだ、お前達には後方で待機しているように言っていたはずだが」

「はっ、申し訳ございませぬ!度重なる命令違反、もはや自死の覚悟で此処に居りまする。ゆえに!最後の御奉公のつもりで、恥を忍んで貴方様の下に参りました!どうかこの愚か者に最初で最後の命令をお与えください、友軍を救う機会を!それをもって我が騎兵団は解散させて頂きます!」

信じられないとアイスの目が語る。

 

「騎兵団を解散するだと?あれほど騎兵団存続に固執していた貴方がなぜ今それを言う」

「時代に遅れた老いた者達の妄執を先のある者達に背負わせる事の愚かさに気付いたのです、我々も変わるべき時が来た、ただそれだけの事に気づかされました」

「そうか.......面を上げてくれユリウス団長」

 

顔を上げるユリウス。その目は先代ハイドリヒ伯の残した栄光に縋る老人の目ではなく、最後のハイドリヒ騎兵団長ユリウスとしての曇りなき武人の眼差しであった。よほど先の戦いで心境の変化があったらしい。

それならば、とアイスは言う。

 

「これからは僕の為に戦えると誓えるか、先代ではない、ハイドリヒ伯としても未熟なこの僕に」

「現在のハイドリヒ伯は貴方様です、我が主よ.......」

「......そうか。ならばこの戦いで汚名を濯ぐがいい、見事殿(しんがり)を果たした暁には、先の件である独断専行の罪は問わない事とする、役目を果たせ我がハイドリヒ軍最強の将よ.......!」

「っ!ありがたきお言葉!この身命を賭して果たさせて頂きまする!!」

「いや、命を懸けてもらっては困るよ。貴方達には今後も僕の元で働いてもらう予定ですからね。勿論、未熟な我が軍に軽騎兵団を遊ばせている暇も解体する余裕もない、こき使わせてもらいますので覚悟しておいてください」

「な、なんと.....!!」

 

その言葉に感極まったのかユリウスは涙を流すほどの喜びを露わにする。

彼らがハイドリヒ軍で最強の部隊である事は疑いようのない事実だ。

元々は彼らにこの任務を任せるつもりであったのだから。

だが、ユリウス達には悪いが今の彼らの部隊の状況では不安な点がある。

先の戦いで既に彼らの軽騎兵団は半壊するほどの被害を受けていた。

そんな状況で最も消耗の激しい撤退戦を行えば今度こそ全滅もありうるだろう。

なぜなら、

 

「この撤退戦はただの撤退ではない、次の作戦の為の戦略的後退だ。敵を出来るだけ引きつけながら撤退する事になる。攻撃を受けるギリギリの距離を保って逃げるんだ、現在の騎兵団の残存戦力ではハッキリと言って難しい」

「......っ!」

 

冷静な言葉にユリウスの顔が悔しげに歪む。武人の誇りを傷つけたアイスに対しての怒りではなく、自分達の行った過ちで味方を助けられない自らに対しての悔しさだ。

.....やはりここは儂らの命に賭けてでも味方を逃せるなら本望。

何かを言おうとユリウスが口を開いた時だ。

 

「私達が援護する.....。そうするのが一番効率が良い」

それまでジッと成り行きを眺めていたイムカが唐突にそう言った。

一瞬は驚いたアイスだったが言われて考える。彼女の提案は正しく正鵠を得ていた。

精鋭の軽騎兵団に殿を任せ、ヴァジュラス・ゲイルにはその援護に回って貰えば彼女達の負担も少なく、かつユリウス達の被害を最小に抑えながら撤退する事が出来る。

これが現状においての最善なはずだ。

 

「......分かりました。最後まで面倒をかけてしまいますがよろしく頼みます、ユリウスもそれで良いですね?」

「勿論です!彼らの尋常ならざる強さは既に周知でありますれば、これ以上ない援護となりましょう!」

「.......よろしく」

「ははっ!かたじけないイムカ殿!礼を言いますぞ!」

 

立ち上がるとイムカに向かって深々と頭を下げる騎士達。当の本人は関心なさそうな所が相まってその構図はどこか面白い。アイスは視線を川縁に移した。

橋を落したいま、悠長にしている暇はない。川岸では既に激しい戦闘が行われている。じきに河川一帯は大勢の連邦軍に制圧される事だろう。

 

――計画通りである。敵に川を渡らせるのが目的だった。そして此処から敵を引き付けながら後退する。獲物に食いつかせる前の魚の様に、僕という存在を餌にして。

連邦軍の指揮官にとっては悪名高いハイドリヒ伯という名の餌は実に魅力的に移る事だろう。大軍で押し寄せてきたのも好都合だ。

そう思っていると、

 

「.....うん、だからそういう手筈で。.....分かった、直ぐに私も戻る」

 

何やらイムカがぶつぶつと呟いているのに気付く。近くに居る僕たちを見ておらず、どこか遠くを見ている様で。まるで誰かと交信をしているようだが、通信機の類は見られない。いったい何をしているのか気になって見ていれば、イムカもこちらを見て.......。

 

「隊長と連絡を取った、いつでもイケるって」

「通信機械はないようだけど.....っまさか、鎧に内蔵されているのか」

「ん、基本的に隊長からの送信でしか繋がらないけど、そう。ヴァジュラには内蔵型の無線機が組み込まれていて、隊長や司令塔の命令によって動く事で状況把握できない戦闘時の場合でも命令に従う事で安全に行動する事が出来る.....というかこの機能がないと戦闘が出来ない、ヴァジュラの耐久性は外部からの情報をほとんど遮断するから」

 

全身を守ってくれるヴァジュラの耐久力は折り紙付きだが、それゆえに装甲が厚い。それこそあらゆる銃弾を跳ね返すほどに(ある専門家は戦車の砲弾すら防ぐと豪語する)そのため外気に触れる場所は限りなく埋められていて一点の隙間もない程だ。おかげで外部からの音すら遮断する程のモノになってしまい、これでは戦闘に支障が出てしまう事を危惧した開発班は部隊内で情報を共有できるよう無線機を埋め込む事にしたのである。

 

一兵士でしかないイムカが代理として来たのも直ぐに情報を送れる為だった。

 

それを聞いて深く感心する。兵士一人一人と無線で交信できる事の利便性についてだ。より緻密な戦術を立てる事も出来る、画期的な発明といえるだろう。

だが、ふと疑問に思う。

知れば知る程ヴァジュラという兵器の規格外さが良く分かる。

軍事先進国の帝国軍においても聞いた事のない兵器だ。

帝国の技術の粋を集めてもはたして同等の物が出来るだろうか。

いや、実際こうして目の前に在るのだから、その物言いは実に可笑しな事だろう。

 

だが、何故かこう思ってしまう。

 

これは本当に現在の帝国の技術で作れる物なのだろうか......?

 

 

 

 

 

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