俺とクーデレ幼馴染の日常   作:ラギアz

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政宗くんのリベンジ、良いですよね。

アニメ見てハマって、コミックス買ってきました。最高です。


俺と幼馴染と少しの過去

 小高い丘の上の病院の白い一室で、僕は笑って話していた。

 話しかけている少女はつまんなそうに窓の外の青空を眺めているけど、それでも僕は話し続ける。

 海と山のあるこの町に、大きな病院は一つしかない。その中でも難病患者が入院するこの一室で、その難病患者の少女へと、僕はずっと身振り手振りを交えて話しかける。

 頷いてくれたりでもしたら良い方。悪い時は、無視。

 それでも僕は毎日この大きな病院の一室に来て、難病患者の血族でも無いのに少女と会い続ける。

 難病は、死ぬ確率が凄く高いらしい。死ぬって言うのは、怖い。

 この黒髪に蒼い瞳の女の子も、死ぬのを少しは怖がっていると思う。

 その怖さを柔らげたいなって思って、僕はここに学校が終わったら毎日通っている。雨の日も風の日も、嵐の日も。雪の日も吹雪の日も、そして今日みたいな晴れの日も。

 友達とは遊ばない。二時間くらいをここで過ごしている。

「ねえ、×××ちゃん。ほかに聞きたいことはある?」

 返事なんて来ないのに、僕は話しかけていた。

 そしたら珍しく、少女は振り返って僕に視線を合わせる。そして、小さな唇を開いた。

「どうして、ボクに構うの?」

 自分を”ボク”と呼ぶ×××ちゃんへと、僕は答えた。

「一人じゃ、寂しいでしょ?」

 両親が共働きだから、僕は寂しい感覚を理解している。

 どこか遠くを見つめて、ぼーっとしてて。

 その姿は、家に一人でいる僕みたいだった。

「だから、×××ちゃんが元気になってもならなくても、僕がずっと一緒に居るよ!」

 無邪気に元気に、僕は声を上げた。

 ×××ちゃんはすると珍しく、困ったように表情を変えた。何時もは無表情なのに。

 でも。

 次に聞いた言葉で、僕は一気にどん底へと突き落とされた。

 

「……ボク、あと少しで死ぬんだって。だから、そろそろ誰とも面会出来なくなるの」

 

 少女は、告げる。

「じゃあね、―――――」

 

☆★☆

 

 頭の後ろが柔らかいです。

 Q、今の俺の状態を答えよ。

 A、アイリスさんの部屋で寝てます。

 

 ……昼飯直前で寝てしまったらしい。まだ寝ぼけている頭を軽く振って、頭の後ろの柔らかい物に深く頭を沈ませる。目元を擦って、ゆっくりと目を開けた。

 飛び込んできたのは、白いワンピースでした。

 状況を良く把握できないまま、視線を右に向けるとそこはアイリスの部屋。左へ向けると、白いワンピースに隠されているお腹。

 もう一度視線を上に向けると、大きな胸の向こう側に、微笑みながら俺を見ているアイリスがいた。

 Q、今の俺の状態を答えよ。

 A、アイリスさんに膝枕されてます。

「おはよう、結城。よく眠れた?」

「え、あ、まあ……。今何時?」

「一時くらい。まだ皆、下でお昼ご飯を食べてるわ」

 三十分くらい寝ていたと言う事らしい。まあまあな時間寝てしまったし、お腹が空いているしで俺は起き上がろうとするが、アイリスに額を押さえつけられて止まった。

「……何ぞや」

「ふふふ、寝てなきゃだーめ。女の子の部屋で寝ちゃうなんて、疲れが溜まりすぎじゃない?」

 有無を言わせず、アイリスはそのまま俺の頭を撫で始める。

 心地いい暖かさとあふれ出る母性に安心しきったのか、欠伸をしそうになるのを俺は堪えた。

 アイリスは、どうも俺を開放する気は無いらしい。二人っきりの時は大抵目からハイライトが消えているアイリスだけど、今は光が宿っている。

 彼女も安心しているんだ、と思い。俺はそのまま寝ころんだまま、さっきの永大との会話を思い出した。

「なあ、アイリス」

「ん?どうしたの?」

「俺とお前ってさ、どこで会ったんだ?」

 その言葉に、アイリスは一瞬考え込んだ。

 唇に人差し指を当てて、首を捻る。その後に、ぽつり、ぽつりとアイリスは話し始めた。

 

「そんなに大層な事じゃなくて、はっきり言って小さい事なんだけどね」

 

☆★☆

 

 数年前。

 ゴールドクレイス・トアイリスは大財閥の一人娘で、公園の砂場で遊ぶだなんて以ての外。遊びと言えば、着せ替え人形やぬいぐるみ、絵本を読んでいるくらいだった。

 が。

 残念なことに、トアイリスはお転婆だった。純粋だった。

 なので、豪邸を抜け出し、住んでいた町を着ていた水色のツーピースと共に駆け回り、目を輝かせながら町中を練り歩き。

 豪邸の中では母親と父親、使用人が血相を変えて叫んでいる中でトアイリスは公園へと辿り着く。

 勿論興味の沸いたトアイリスは真っすぐに公園へと入り、そのまま滑り台やブランコ等を他の子の見よう見まねで遊び、砂場で城を作り、遊んでいた。

 しかし、彼女は一人。

 他の子が全員友達と遊んでいる中で独りぼっちだったのはトアイリスのみ。

 金髪碧眼の美少女。人形の様な女の子に興味は持っても、話しかける様な子供は居なかった。

 ただ一人を除いて。

「ねえねえ、一人?僕と遊ばない?」

 はっきり言って文面だけ見ればかなりヤバい奴かナンパ男の台詞なのだが、言ってるのは子供。

 しかもトアイリスと殆ど変わらない、平均平凡な特徴の無い少年だった。

 無垢で純粋なトアイリスは笑顔で頷いて、そのまま少年と遊び、何事も無かったかのように帰った。

 家では父と母に怒られかけて――――――両親を論破して―――――翌日も、少年と遊びに公園へ行っていたが、ある日を境に少年は公園に姿を現さず、まだかまだかと待っている間にヤンデレて、そのままトアイリスは親の仕事によって引っ越す事になる。

 

☆★☆

 

「……それだけよ。私が貴方の事を好きになった理由は」

「へ、へえ。そうなのか」

 やっべえ全然覚えてないでござる。

 俺が僕と言っていて、公園で一人ということは小2くらいだろう。はっきり言ってその年は大変だったからそっちの事しか覚えてない。

 寧ろアイリスと会っていたのか!っていうレベル。記憶からすっ飛んでましたしね!

「覚えてないでしょ?」

「マサカーハハハー」

「正直に答えないとホルマリン漬k

「覚えてませんすみませんっ!!」

 すっと光が消えたのを察知した俺は勢いよく叫んだ。アイリスは直ぐに目に光を宿すと、優しい笑みを浮かべて俺の額を撫でる。

「結城に取っては忘れるような事だったとしても、私にとっては忘れる事が出来ないくらいの事だったの」

 アイリスはそう言うと、俺の頭を膝から下して立ち上がった。

「じゃ、お昼ご飯食べに行きましょ?そろそろ行かないと、桜さんが拗ねちゃうしね」

 

 ご飯を食べに下に降りると、もう皆は半分以上食べ終わっていた。

 そのリビングというよりは食堂に見える場所の一角に固まっている皆の処へ行って、桜の横に座る。

 すると桜は不機嫌そうにもしゃもしゃと肉を頬張りつつ、低い声で呟いた。

「……随分遅かったじゃないか」

「うん、まあすまん」

「何してたの?」

「寝ちゃってな。アイリスが起こしに来てくれたんだ」

 膝枕云々のところを言えば桜が不機嫌度マックスになるのは目に見えているため、嘘は付かずにそこは答えない。席の前に置いてあったフォークとナイフを取って、俺は早速用意された昼食を食べ始める。

 少し冷めていたけど、美味しかった。

 途中、アイリスのあーん攻撃や桜の蹴り、永大が(何時も通り)凛に吹き飛ばされる等の事はあったものの、一時半くらいにはもう勉強に戻っていて、やはり桜とアイリスに教えを乞う時間が続いていた。

 英語と数学、マジで爆ぜろと脳内で念じつつ公式と単語を頭に叩き込んで、気づけばもう六時。

 合宿と言う事で、今日は泊まります。どこに?女の子の家に!

「……暁、俺少し勉強頑張ろうと思う」

「奇遇だな、俺もだ」

 確かに俺と永大は変態だ。いつも脳内ピンクだ。

 しかしチキンである。

 女の子の家にお泊り、しかも男子二人に女子三人という状況から現実逃避するために、俺と永大はさっきまで恨んでいた英語と数学を快く迎え入れ、勉強を続ける。ひたすら手を動かし、文字の羅列を頭に叩き込む。

 テスト範囲が終わったら、次は国語と理科。理科も覚える単語が多くて泣きそう。

 だが今の俺たちは現実逃避真っ只中。その程度の事は障害にも入らず、ひたすらノートと教科書に向かい続ける。

 時刻は七時。凛が俺たちを現実に引き戻した所で、夕食。

 ハンバーグでした。美味しかったです。

 そして部屋に戻って、お風呂に入るまでに再び現実逃避。無我の境地へ、賢者タイムへと手を伸ばす。

 その様子に度肝を抜かれたのか、凛はいつも雑に扱っている永大の体調を心配したり桜は俺へと普段は殆ど見せない優しい笑みを浮かべたり、アイリスは俺を胸元に抱き寄せる(後で桜に俺が蹴られました)等、男子勢へと優しさを見せて、お風呂タイムである。

「じゃあ、結城さん、私と一緒に入りませんか?」

「べ、勉強頑張ってたしね。偶にはその、ぼ、ボクが背中を流してあげようか?」

 アイリスと桜の誘い。

 大変に魅力的だが、今の俺達には通用しない。それらを丁重にお断りし、血涙を流しつつ男二人で浴場へ。

「……ひっろ」

「女の子と一緒に来たかったよ」

「暁、ちょっと性転換して?」

「今時TS物!?」

 白く濁っているお湯に肩まで漬かり、男二人で他愛の無い話をする。

 やれ誰が可愛いやら、次のテストの話やら、夏休みの話やら。

 永大とはかれこれ10年以上の長い付き合いで、こうして話していると話題は殆ど尽きない。そろそろ出るか、と言う事になって出て、その後女子が全員で入った。

「悪霊退散煩悩退散………!!」

 二人で唱え続けてたのは別の話。

 

 翌日―――――。

 朝早く帰路に付いた俺と桜は、勉強のし過ぎで疲れ切った脳を癒すためにコンビニで甘い物を購入し(俺のみ)家に入った。一度桜は家に帰るらしく、自分の部屋へ行った俺はベランダのカギが開いている事を確認して、コンビニのビニール袋を床に置くや否やベッドにダイブした。

 昨日の夜はアイリスが乗っかってきて柔らかくて大変だった。桜の蹴りで起こされるし。

 まあ、これで中間テストの赤点は回避できただろう。袋からポッキーを取り出して口に含んだ処で、ベランダの窓が開いてぶかぶかのパーカーにショートパンツの桜が入ってきた。

「……ポッキー……か……」

「どうした、そんな神妙な顔して」

 入ってきた瞬間に表情を険しくした桜はポッキーを一本取ると、そのまま固まって先っちょを口に入れた。

 そして、もう片方の先っちょを俺に突き出してくる。ふりふりとポッキーを揺らす桜をじーっと眺めつつポッキーを食べていると、やがて桜はサクサクサク!とポッキーを食べて、

「何で反対側咥えないんだよ!」

「ええ!?寧ろなんで咥えるのさ!?」

「……トアイリスとは……その、し、舌まで入れたのに……!ボクとはキスもしたくないって言うのかそうなのか!」

 顔を真っ赤にさせて叫び、ポッキーを高速で食べ始めた桜。

 数秒経って、ああ、拗ねてるのかと俺は気づく。俺にしては早く気付けたのだけれど、何をしたら良いのか分からずそのままベッドに横たわっていると。

「この………っ!!」

 桜が言葉を溜めてから、

「アホチキン野郎がああああああ!!!!」

 ぴょーんと飛んで、空中で一回転。そのまま華麗な飛び蹴りを叩き込んで来て、俺の持っていたポッキーが全部木っ端微塵になった。

 




次回は桜さんのターンです

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