俺とクーデレ幼馴染の日常   作:ラギアz

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遅れてすみませんでしたあっっ!!!
マジで!すみませんでしたあっっ!!!

テストとか色々あって忙しかったんですごめんなさい!!!!!!!!

そして10万UAありがとうございます!
では、どうぞ!


俺と幼馴染と梅雨のとある日

 季節は、六月の半ば。中間テストも終わり、俺たちを待つのは夏休みだ。

 今は梅雨真っ盛り。今日もまた、しとしとと雨が降っている。そう、それは……

「まるで傘を忘れた俺の心の様に、冷たく悲しい雨だった……!」

「傘を忘れただけだろ。そこまで詩人っぽくならなくていい」

 ぐっと拳を握りしめて、悔しさに打ち震える俺。それを呆れたようにジト目で見る幼馴染。

 平均平凡、俺こと暁結城と、成績優秀容姿端麗才色兼備文武両道の幼馴染、雪柳桜。

 普通ならば接点も何も無いようなステータスだが、俺たちはお互いの家をベランダから行き来できるような関係。親同士も仲が良く、所謂家族がらみの関係というやつだ。

 今日は桜が先生に任せられた仕事を片付けるまで待っていたのだが、それが裏目に出た。天気予報では言われなかった急な雨が降り始め、校門の所で傘を持っていない俺と桜は立往生しているのが現状。

「桜、何かポケットから出せない?」

「ボクはド○えもんじゃないよ」

 渾身のボケも簡単に受け流されて、俺はそれっきり黙ったまま空を見上げた。

 黒い雲が空を覆い尽くしている。降り続ける雨は止む様子も無く、暗い空から目を離して俺はため息を吐いた。

「……そういえば、この学校は傘貸出してたよな」

「うん、そうだね。職員室前だったかな?」

「分かった。取ってくるわ」

「お願いするよ。相合傘はしないからな」

「くっ……!わ、分かった……」

「どれだけ狙ってたんだい」

 呆れた風に息を吐いて、さっさと行ってこいと告げる桜。さりげなくパシリにされているが、俺は直ぐに傘を取りに行った。

 

 ……数分後、戻ってきた俺の手には傘が一本。

「相合傘はしないって言っただろう!?」

「傘が一本しか無かったんだって!信じてくれ!」

「ちょ、ちょっと待っててくれ。ボクが直々に見てくるよ」

 走っていく桜。そして俺と同じように数分後帰ってきた桜の手には、傘は握られておらず肩に掛けるバッグの紐を握りしめていた。

 顔を赤らめつつ、桜は口元をむにゅむにゅさせる。無言で立ち尽くす俺たち。

 やがて口を開いたのは、俺の方だった。

「……あれだ。桜が傘使っていいぞ?俺は頑張って帰るからさ」

「キミが風邪を引いたら看病するのは誰だと思っているんだい?」

「え?いや、俺一人暮らしだぞ?」

「ボクはキミの家に風邪の看病で行った事があるはずなんだけどね!?」

「え?……あー、ああー」

「忘れてたなこのアホ!全く、だから中間テストで赤点をギリギリでしか回避できないんだよ!」

「うっせー!うっせー!桜こそ保健体育だけ満点じゃないじゃん!このムッツリ!」

「んなっ!?あ、あれは度忘れしただけだし!」

「ふーん?お前がバツ付けられた所は文字がぐちゃぐちゃで読めないって先生が言ってませんでした?」

「……知らないね。ああ知らない。覚えてない。今日の夕ご飯はトマトと茄子とゴーヤの炒め物にしようかな」

「悪かった。俺が悪かった」

 桜の実質晩飯抜き発言を聞いて、俺は直ぐに引いた。再び場が静かになり、雨が地面を叩く音だけが聞こえる。その中で、やがて桜は俺をジト目で見上げた。

「……今日だけ、だからね」

「相合傘?」

「言うなアホっ!……そうだよ。ほら、早く帰ろう?」

 桜が赤らんだ頬を俺から隠すようにしてそっぽを向く。ばさっとビニール傘を広げた俺は、桜をその中に入れて自分も入った。

 何も言わずに、殆ど同じタイミングで歩き出す。高校の正門までの道を何も言わずにあるき、雨の音に耳を澄ませて。正門の前に広がる桜並木はもう葉桜に塗り替えられていて、そろそろ完全な緑に染まるだろう。そうなればもう蝉が鳴き始める、夏になる。

 この町は山と海がどっちもあり、両方がかなり綺麗だ。知る人ぞ知る名スポット。

 夏になると、少しだけ観光客が来てここら辺が賑わう。『染井吉野稲荷神社』での夏祭りも名物だ。

 さて、今の状態はと言うと。

 俺の左半身がぐっちょりでやんす。ええ。

 右側に桜が居て、俺は桜を濡らさない為に全力で傘を桜の上に持って行っている。そろそろ右腕が死にそうだけど、そのおかげもあって桜は少ししか濡れていない。

 そうして何も言わずに歩いていると、桜が突然立ち止まり、バス停の屋根がある所へすっと入った。

 俺もそれに付いて行って屋根の下に入るやいなや、桜が俺へ背を向けたまま呟く。

「……随分左っかわが濡れてるみたいだね」

「え?ああ、しょうがないよ。傘は狭いからさ」

「その、もう少しボクに近づいても良いんだよ?多少胸に触っても許すから……」

「いや、良いよ。帰って直ぐに風呂入れば風邪も引かないだろうしさ。ほら、行こう?」

 そう言うと、桜は素直に傘の下に入ってきた。桜がしっかりと傘の下に居る事を確認して、俺は歩き始める。

 直後。俺の右腕に、柔らかくて暖かいものが押し付けられた。

「っ!?」

 慌てて右側を見れば、桜が自分の全身を俺の右腕に密着させている。胸も形を変えて、傘にも空きスペースが出来ていた。

 隙間から見える桜の顔は真っ赤で、耳も熱くなっている。

 俺自身も鼓動が早まるのを感じながら、そっと傘を俺と桜の中心に持ってきた。今度は、俺も全身入る事が出来た。

 ……のは良いが。

 いつも通り、俺の脳がオーバーヒートしそうである。二人揃ってそっぽを向いていて、傘で跳ねる雨音が絶え間なく続いている。地面で跳ねる水滴をズボンの裾に浴びながら俺と桜は角を曲がって。

 急にトラックが至近距離を駆け抜けた。

 驚き、立ち止まる俺と桜。そこへ、トラックが駆け抜けた水溜まりの水が跳ねて、

「うおっ!?」

「ひうっ!」

 予想通りに、俺と桜の全身を濡らした。ぐっしょりと滴るシャツが肌に張り付いて、髪からも水が滴っている。

「桜、大丈夫?」

「大丈夫なのかどうか。……うう、全身ぐっしょりだよ」

 桜の方を向き、そして俺はそのまま固まった。

 ビニール傘の下、俺の直ぐ隣の桜は夏服。薄いシャツが肌に張り付いて、濡れて透けている。うっすらと見えるのは、水色の下着と淡い肌色。白い二の腕を、水滴が滴っている。

 長く綺麗な黒髪からも水を滴らせ、桜は蒼い瞳で自身の体を見回し、そのままシャツの裾をスカートから引き抜き、ぎゅうっと強く絞った。

 水が地面へと落ちる。それと同時に、真っ白な臍がちらりと見え、くびれの付いている腰が覗いた。

 濡れた服が張り付いているせいで、桜の体のラインがくっきりと浮かび上がっていて、その体のラインが綺麗すぎて、俺はそっと顔をそらした。

「……ふう。おーい、結城。行こ?」

 隣の桜から声が掛かる。もう準備できたのかな、と思いそっちを向くと、桜は少しだけ顔を斜めに傾けて俺の顔を覗き込むように上目遣いで見ていた。

 濡れている髪を、耳に乗せるように手で軽く流す。何時もは黒髪に覆われていて見えない耳と、うなじ。そしてうなじに張り付いている髪を視界に捉えて、自分の心臓がひと際高鳴ったのを感じる。綺麗な桜の、その儚い姿を見て、俺は半ば衝動的に傘を深く俺たちの上に被せた。

 ビニール傘が、俺たちを完全に覆う。

「……結城?ねえ、どうしたの……っ!」

 怪訝そうに俺を伺う桜の言葉を遮るように、俺は桜の頬に傘を持っていない左手を添えた。そのまま顎まで滑らせると、それにつれて桜の顔がどんどん赤くなり、蒼い瞳の焦点が合わなくなってきている。

「ちょ、ちょっと?結城、ねえ結城……あ、あの……どうしたのさ……」

 顎を左手で支えて、少し上に持ち上げる。そのまま顔を近づけていくと、桜の言葉からは力が無くなっていく。やがて、桜の吐息だけが聞こえて、もう触れ合う寸前まで来たところで。

 桜は目を閉じて、俺を受け入れた。

「ゆうき……んっ、あっ………っふ……」

 衝動に任せての、数秒のキス。ビニール傘を深く被っての行為を終えて顔を離し、桜と俺は同時に息を吐いて、そのまま。

 

 俺は、傘を投げ捨てて全力で額を地面に打ち付けたッッ!!

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!!!!」

 引かれた嫌われたヤバい死ぬ死ぬ!!

 脳内で勢いよく叫び続けること数十秒。何も言わない桜を不審に思い、恐る恐る俺は上をちらりと見て。

 桜は、唇を自身の腕で覆っていた。雨に濡れる彼女は、耳まで真っ赤にしていた。俺の視線に気づいたのか、桜は小さくか細い声で、告げる。

 

「………ボクは……その、い、嫌とは……言ってないよ?」

 俺とは絶対に目を合わせず、聞こえるかどうかも分からない大きさの声。

 雨に打たれて、濡れながら、彼女は胸元を抑えて俯く。そのまま一、二分が経った後に桜は地面に落ちていた傘を拾うと、俺の上にかざしてそのまま俺の腕を取り、そのまま歩き始めた。

 自然な流れで桜と腕を組んだまま、さっきよりも密着しながら家への桜並木を通り、家の前へ。

「じゃ、じゃあね?その……着替えたら、キミの家に行くから」

「お、おう」

 お互いにそれぞれの家に行き、バッグから鍵を取り出して家のドアを開ける。

 ぐしょぐしょの靴下を玄関で脱ぎ、手に持って廊下に踏み出した所で、突然俺の家のドアが強く開かれた。

「結城……」

 そこに居たのは、桜。

 涙目のまま、彼女は呟く。

「……家の鍵忘れたあ……!」

「ほえっ」

「ちょっと着替え貸して……!後出来ればシャワーも貸して……!お願い……!」

「わ、分かった!シャワーの位置わかるよね?今すぐお風呂沸かすから、服脱いだら洗濯機に入れておいて!」

「うう……ありがとう」

 勝手知ったる俺の家。桜は俺に言われたとおりに廊下を進み、お風呂場へと入っていく。そのまましゅるしゅると服を脱ぐ音が聞こえて、なるべく気にしないようにしながら上へ。

 桜の着れそうな物を探しているも。

「……今朝、全部洗ったんだよなあ」

 Tシャツもパジャマも今朝洗ったため、まだ乾いていない。あるのはただ一つで、勿論桜の下着も無いわけだが、これしかないから着て貰うしかないだろう。

 じっとそれを見つめて、俺はお風呂場へ。ガラスの向こうの水音と湯気をちらりと伺いながら、そっと俺は着替えを置き、そのまま自室へと戻った。




受け身な桜さんでした。
次回に続く!

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