俺とクーデレ幼馴染の日常   作:ラギアz

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俺と幼馴染と予兆

 桜がお風呂を使っている中で、俺は一人部屋で本を読んでいた。

 ぐでーっとベッドに横たわっていると、階段からどだどだどだ!と騒がしい音が聞こえて、本から顔を上げると突然強くドアが開かれ。

「君は……ここまでバカだったのかあああああああああ!!!!!」

 そして、顔を真っ赤にさせた桜が部屋の中に突っ込んで来た!

「ふおおっ!?落ち着け、落ち着けって……ふおおおおお!?何その恰好!?ええ!?」

「き、み、が!置いておいたんでしょうが!!」

 今の桜の姿は、俺でも目を見張るレベルの服装だった。……いや、服なのかも疑問である。

 

 裸に、ワイシャツ一枚。

 

 火照ったお風呂上りの体に湿っている長い黒髪、俺のワイシャツだからまだ隠せているものの太ももの付け根のほんの少し下まで見えてしまっている。当然、その下には白く健康的な肉付きの生足。すらっと伸びる足には汚れ一つ無く、ボタンを三つくらい開けているため鎖骨まで見える。

 焦る俺を前に、桜はドアの前で腕を組み俺から顔を逸らした。

「ま、まあ……そのだね、ボクだって君の要望とあらば裸エプロンくらいはやろうと思うk

「いやいやいや、俺が置いておいたのはタンクトップのTシャツに前桜が置いていった短パンですよ?」

「……は?」

 桜がそっぽを向きながら早口で何かを捲し立てているのを、焦った俺は遮った。

「それにそれ俺が着てたワイシャツだからね!?汚いから早く脱ぎな!?」

「結城が、着た、物……?」

 呆然とした桜は頬を赤くしたままシャツの胸元を両手でつまみ、そっと口元まで持っていく。シャツの裾が上がって、太ももの更に上まで見えそうになる。ガン見していたい気持ちを必死に押さえつけて、俺はそっぽを向いた。

「……うん、体をちゃんと洗ってるかい?全く、君の匂いが凄い染みついてるよ……」

「ごめんなさい……今度から二十回くらい洗います」

「いや、良いよ。水の無駄だしね、洗剤の無駄だしね。……ふふふ、じゃあ着替えてくるよ」

「あい」

 視線を戻すと、何故か満面の笑みを浮かべている桜はスキップでもするかの様に部屋を出て、階段を下りて行った。

 ……というか、さっき桜が裸エプロンとか何とか言ってませんでしたっけ……?

 

 数分後、タンクトップのシャツに短パンに着替えた桜が部屋に入ってきた。外は未だに大雨で、空は少しづつ暗くなっていく。ベッドに寝っ転がっている俺の隣に腰を下ろした桜は、蒼い瞳でじっと俺を見下ろした。

「……どした?」

「ん、いや。何でもないよ。何時も通りの変な顔だなって」

「俺今日は何もしてないのに罵倒された!?」

 やれやれと首を振った彼女は寝っ転がっている俺へと四つん這いで這いより、俺の上に乗ってきた。体全体を被せるようにした桜は、俺の胸に顎をこつんと乗せる。顔を赤らめ、俺のシャツをぎゅっと掴んでいる桜は唖然としている俺と目を合わせると、

「……寒いからね。少し、くっ付いてても良いかな……?」

「あ、じゃあ暖房つける?」

「キミ、分かってやってるかな?」

 気を利かせたつもりなのに、桜の視線は何故か厳しくなった。仕方ないのでそのままで居ると、俺の上に居る桜はじいっと俺を見てきた。

 何かを求められているのだろうけど、その何かが分からない。

 困惑して動けないでいると、桜の視線は段々と鋭さを増していった。まるで猫みたいだな、と思いながら、思わず俺は桜の頭を優しく撫でた。

 艶があり、綺麗な黒髪は少し湿っている。すっと気持ちよく手が滑る髪を撫でていると、桜はいつの間にか幸せそうに笑みを浮かべていた。どうやら、これが当たりだったらしい。そのまま撫でて、撫でられての時間が続く。まったりゆったりと、安心するような雰囲気が俺たちを包み込んでいた。

「……ねえ結城」

 しかし。

 

「最近また、机の二重底が厚くなった気がするんだけど……?」

 

 その雰囲気を、桜は木っ端微塵に吹き飛ばした。どっ!と滝のように汗が吹き出し、桜は俺の胸に人差し指でくるくると円を描いている。

「……ねえねえ、どういう事かな?」

「え、えええ永大さんに借りてるんでごわす。間違えた、押し付けられてるんですよ」

「『金髪ヤンデレに愛されすぎて夜も眠れない』……んー?」

「ひいっ!!」

 んー? と首を傾げる桜。動作だけなら、可愛い。

 しかし、彼女の瞳孔は開ききっている。瞬きすらしていない。濁った蒼い瞳で、彼女は俺をじっと見つめた。

「『クーデレの幼馴染との同居生活』……許そう」

 最近購入……げふん、永大から借りている物のタイトルを一通り言われ続ける。時折、俺の胸に桜の人差し指が突き刺さるが彼女は今俺の上に寝っ転がっている。逃げようにも逃げれないのだ。

 

 そして。

 

 解放されたのは、それから二時間後だった。

 

 




色々な事情で、短くしました。

本当にすみません。

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