俺とクーデレ幼馴染の日常   作:ラギアz

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俺と幼馴染と林間学校#2

 今回の林間学校は他校との合同である。宿泊施設で落ち合い、交流を深めるために班を二つくっ付けてのレクや活動を二日間行う。その学校は決して遠いところではなく、頑張れば行ける場所にあるのだが。

 まあ、俺の班には永大が居る。あいつのコミュニケーション能力ならば、他校との関係も持ってくれるだろう。不快な事をされなければ桜もアイリスも基本的に美少女、で済むので心配は要らない。寧ろ班の合併によるイケメン介入は爆ぜろ。ギルガメッシュに滅多打ちにされた時くらいに爆発しろ。

 ……まあ、そんなこんなでも楽しみな俺が居る。

 何時も桜関連でフルボッコされたりアイリス関連でフルボッコされたりしている様な連中でも……イラッとするなあ……クラスメイト。大事な知り合いだ。

 そいつ等と二泊三日居れるのだから、楽しい行事と言って差し支えは無い。

 トランプやUNOは持ってきてオーケー。宿泊施設は高速道路に乗って二時間くらいの場所にあり、バスに降りてからまず開会式、その後に班の顔合わせをして各自昼食を食べると言った予定だ。勿論と言うか、お弁当は桜のお手製。

 ……何故か葵が作ってくれた分もある。うん、お腹破裂するぞ俺。

 こういう行きのバスに良い思い出はあまり無い。蘇る告白予行。あれは本当に恥ずかしかった。

 バスの中ではそんな思いを他所に賑やか。隣の人や、近くの人と夏休みの事についてしきりに話している。宿題終わったー? や夏イベント終わったー? など。他愛も無い話し声に包まれる中で、無言の俺と桜。ちらりと横を見ると、桜も此方を見ていた。

 視線が合う。無表情のまま、こてんと首を傾げる桜。

 意味は「どうしたの?」だ。直ぐに分かる。

 ここで言葉を発するのはそこはかとなくルール違反の様な気がしたので、笑みを含ませつつ首を振る。すると彼女は蒼い瞳をすっと細め、不満そうに頬を膨らませた。

 これは恐らく「暇だから何か話題出せ」的なニュアンスだろうか。

 と、言われても。そんな直ぐに会話のタネを出せるなら苦労はしていないし、出せていたらもう少し友達は居た筈だ。結構友人の少ない俺は、狭く深くのタイプである。永大みたいに使い分けは出来ない。

 ここで無難なのは、しりとりだろうか。

 ……いや、考えろ俺。桜にしりとりで勝てるか? 卑猥な言葉を並べれば勝てそうだけど、そんな事をしたら徐々に形成されてきている桜親衛隊(非公認)に殺される。

 そうなると、自然に会話はこれからの夏休みの予定になっていく。

 やがて高速道路にのるバス。広大な海と、広がる自然。その中に作られた高速道路は空いていて、バス三台しか無い。全て俺の高校のバスである。

 堂々と青空の下を駆け抜け、時間は過ぎていく。クーラーの効いた車内では、涼しさとは裏腹に林間学校への熱はどんどん上がっていく。

 

☆★☆

 

 俺、紅月雄一は友達が多いとは言えない。

 何となく何時も話しているメンバーとしては、幼稚園から何気に一緒だけど記憶の無い奴。

 小5から一緒の奴。小学校から一緒の奴。等だ。

 高校からの人間に仲の良い人は居ない。まあまあ泣ける。

 彼女居ない歴=年齢の寂しい俺は、今回の林間学校に希望を抱いていた。

 何せ今回は合同だ。他校との共同宿泊行事。つまりは、まだ見た事の無い女の子と出会える確率が高い!

 ……とまあ、そんな事を隣の女子(友人)に話したら「紅月さん変態!」と言われたのだが。まことに遺憾である。俺はただ、目の前のロマンを追い求めているだけなのに!

 

 それに、だ。

 

 聞けば、どうやら合併相手の学校にはずば抜けての美少女が二人も居るらしい。これは俺の友達の一人、小学校から一緒で視聴覚委員の変態……じゃねえ、男子のツテだ。確かである。

 更に更に、その子達は現在フリー。俺にもチャンスはあるんじゃなかろうか!

 

 まあ! こんな平均平凡DT野郎が彼女作るとかハードル高すぎるんだけどね!

 

 ……。

 ………ああ、どっかに黒髪ロングストレートの美少女居ないかな。

 ………金髪碧眼の美少女でも良いや。胸大き目の。

 

☆★☆

 

 着いた。

 途中、得体のしれない悪寒に襲われる事数回。バスから降りた俺たちは先生の元へと集合し、班の合併先を記した紙を配られる。そこには他にも今後の予定が簡単に書かれていた。

「……じゃあ、夏休み中にドラクエクリアね」

「分かった。準備しとく」

 桜の囁きに頷き、両校の校長先生の話を軽く聞き流す。暑い気温、時々吹く風が汗を冷やす。大空から照り付ける太陽は木の葉の隙間から落ちて、見上げれば木漏れ日の先に快晴の空。

 首筋を流れる汗を手の甲で拭うと、俺たち五人は立ち上がる。近くにあった川へと歩を進め、そこから大声で相手校の合併班を呼んだ。

 すると、相手は直ぐにやってきた。眼鏡の奴を中心に、ぞろぞろと六人組が歩いてくる。

「初めまして。雪柳桜です。今日から二日間、短い間ですがよろしくお願いします」

「初めまして。塩谷栄と言います。よろしくお願いしますね」

 班長二人の挨拶につられて、俺たちは向かい合うようにそっと歩み寄る。俺の目の前に来たのは赤いバッグを背負い、俺と同じくらいの身長の平均平凡な男。

 同時に手を出した俺たちは、これまた同時に口を開いた。

「紅月雄一です。よろしくお願いします」

「暁結城です。此方こそ、よろしくお願いします」

 奇しくも同じ苗字。

 ……そしてその目は、最早俺と同じ目――――――

 

 こいつ、桜に惚れてやがるッッッ!!!

 

 視線の向き、同種の瞳。

 それはまるで、俺の生き写しだった。

 

☆★☆

 

 見つけた。神様、心から感謝しますぜ。

 黒髪ロングストレートの美少女が。金髪碧眼の美少女が。

 そこには、居た――――――!!

 

 というか何だこいつ。暁だっけ。

 平均平凡な奴だな。……おい、それまんま俺じゃねえか……?




紅月君はですね。
結城君のライバルさんです。モチーフとしては、桜の居ない結城、ですね。

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