俺とクーデレ幼馴染の日常   作:ラギアz

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少し遅れました。すみません。

えっと……。

海回です。少しボリュームが足りないかも知れませんが、どうぞ!


俺と幼馴染と海水浴

 さて。

 夏と言えば――――――何だ。

 かき氷? アイス? 冷やし中華? ラーメン? 鍋? こたつ? とうもろこし? それとも私?

 ……いいや、違う。ナンセンス。至って違うそれらの選択肢。夏といえば、花火に夏祭り、更には夏休み等沢山のイベントが盛り上がる季節の代表格だ。

 暑さと青春。蝉時雨の中、好きな女子に思いを馳せる男子も多いだろう。

 そしてここ、俺たちの住む町には山があり、同時に海がある。

 この海はかなり綺麗だが、この町が結構な田舎であり隠れ名所として知る人ぞ知る、絶好の海水浴スポットになっているのはご存じだろうか。知らないよね。うん。言ってない気がするもん。

 さて。

 時は夏休み、俺の周りには美少女四人。

 こう来れば――――。

 

 海に行かない訳、無いだろう?

 

☆★☆

 

「夏だ!」

「海だ!」

「「水着、だあああああああああああああああああああ!!!!」」

 永大、俺が叫んでから透き通った青い海へとダイブする。浅瀬の為に砂へと顔面を突っ込んでしまったが、海水がそれを洗い流してくれ……いった! 塩水! 塩水目にいったあああああああああああ!!!

「ああっ!ああっ!ァアアアアアアアアアアアアアァアアアアアアアア!!!!!!」

「どうしたお前!シャンプーが目に入った様な奇声を上げて!」

「どこの奏撫さんだお前!違うよ、塩水が目にあああああ!!鼻にああああああ!!!」

「テンション押さえろアホ!まずは海水から顔を離して水中メガネを装備するんだ!あと浮輪!」

「ど っ ち も 葵 が 持 っ て る」

「葵ちゃあああああああああんん!!!!」

 やけにテンションの高い俺たち。海水浴場でこんな事をしよう物ならば普通とんでもなく迷惑なのだが、この海には今俺たち以外に人が居ない。勿論、海水浴は許可されている場所だ。人気が少ないため、海の家などは無く、砂浜は汚れていない。

 天気はおあつらえ向きの快晴。照りつける太陽が肌をじりじりと焼き、砂浜は灼熱の熱さだ。

 相乗効果、海はとても気持ちいい。まだ女子たちは着替えているため男子勢で水の掛け合い(本気)をやっていると、一番最初に来たのは凛だった。彼女はビキニでも包みきれない豊満な胸を揺らし、永大へとドロップキックをして海へと吹き飛ばす。

 その流れる様な動きに感動していると、永大と凛は二人で遊び始めた。

 ぼっちになった俺は凛の来た方向へ視線を向ける。するとそこには、これまた赤の扇情的な水着とパレオ……つまり、腰巻をしていた。こう言っては何だが、桜よりもグラマラスなアイリスの水着は授業で見た時もだが目のやり場に困る。

 しかも彼女は迷いなく俺の元へと向かってきて、熱い熱い砂場を小走りで向かってきて、

「えへへ……水着はその、少し恥ずかしいですね……?」

 そんな事を狙ったような前かがみと上目遣いで言うのだ。長い金髪をサイドに纏めて、碧眼を潤ませている。彼女の足跡は波にさらわれて、呼吸を整えたアイリスは俺の手をきゅっと握った。

「その、少しだけ、深い所に行きませんか……?」

「お、おう」

 許せ。抵抗なんて出来る訳無いんだ。

 しかもアイリス(白)。一切の黒いオーラが見えない純粋な彼女に身の危機は感じる事が出来ない。

 生存本能と防衛本能を掻い潜られては、最早抵抗など不可能。優しく、指先だけをつままれたまま海の奥へと引かれる。膝下から、腰の高さ。俺の胸より上に来た時にはもう、アイリスは俺の肩に掴まって浮いていた。彼女の足は地面についてなく、楽しそうに俺から離れない。日焼け止めを塗ったのかどうか、その体は艶艶に輝いていた。

「ん……どうしました?私の体を見て。オイルでも塗りたかったんですか?」

 塗りたく無かった!

 と言えば嘘になる。が、それを言ってしまうと負けな気がするので押し黙ってしまう。

「すみません。頼むつもり満々だったんですが、桜さんが急に全身をぬるぬるに……してしまって……」

 見透かされてたって事だよね!

「もう、激しくって乱暴で……顔を赤くして……少し、感じてしまいました……」

 顔を赤くして言うアイリス。その煽情的な動きに、声音に、胸が一瞬高鳴って―――――。

 

「……憤りを」

「怖いよアイリス!?抑えて、気持ちを静めるんだゴールドクレス・トアイリス!!」

 

 その直後に溢れ出たヤンデレオーラに、夏ながら寒気を感じてしまった。

 何時の間にか俺の肩から手を離していたアイリスは、立ち泳ぎのまま水面を両手で叩くという器用な事をしてのけている。自分の世界に入ってしまったアイリスからそおっと距離を取る様に砂浜へ。熱い砂には行かず、波打ち際に胡坐で座り込む。

 海に居るのは、三人だけ。

 永大と凛、アイリスだ。永大と凛は今も沖の方で水かけ合戦をしている。若干永大が劣勢だ。理由はきっと、凛の水着による視覚的精神攻撃だろうか。

 因みにアイリスの黒いオーラによってそこだけ雷雨が降っている様に見えてしまう。怖い。

 そうしてぼけーっとしていながら、徐に俺は後ろへと倒れた。空を見上げる形になった俺の視界に、影が差し込む。それは何故か腰元を抑えて見下ろしてくる葵の姿。

 先に言うと、兄は妹の裸を見ても興奮しません。ソースは俺。

 と言う事で、アイリスや桜だったら爆発しそうになっていた俺でも平然としていた。

「おー、葵。それ何て水着?」

「……あれですね。女性の水着を見て、何の感想も無しに最初にそれを聞いてくるあたりマジで本気でガチで……はあ。顔面踏みつぶして良いですか?」

「何で妹に踏まれなきゃ行けないんだよ!」

「兄さんが……そう言う事を、無理やりやれって言うから……!」

「言ってねえし!?」

「ウルサイですよこのドM。黙りなさい」

「葵がドSすぎんだよ!」

「はいはい。この水着はオフショルビキニ。体のラインと露出で勝負する水着ですね」

「胸無いもんなー。お前」

「………」

「悪かった。悪かったからその目と拳を止めろ」

「実は私、中学校で護身術習ってるんです。喰らいます?金的」

「死ぬぞ!というか、将来使えなくなるからマジでやるなよ!」

「使う相手なんて……ああ、居ましたね。ええ。というか妹に何て話をしてるんです、かっ!」

「ふごおっ!」

 話を振ってきたのはお前だろ! と叫ぶ間もなく、鳩尾に突き刺さった蹴り。大した腹筋も無い俺の腹部へと激痛が走り、そのまま悶え転がる。

 葵は浮き輪に体を通し、倒れている俺の上に水中眼鏡を叩き付けた。

「……変態兄さん。後少しで桜さんが来るので、しっかり感想を言うんですよ。良いですか?」

「感想?」

「可愛い、ムラムラした、ちょっと岩陰行こうか。とかですね」

「三分の二がアウトなんですけど!?」

「いつも言ってるじゃないですか。まあ、それでは。私はぷかぷかしてるので」

 嵐の様な妹だな。

 浮き輪を使って、海の上をぷかぷかしていく葵。アイリスがやっと我に返ったらしく、葵とアイリスはそのまま二人で遊び始めた。ビーチボールを後で膨らますか、とか思いながら起き上がろうと体に力を込める。

 瞬間、再度影が差す。上に現れたのは、長い黒髪を耳に掛けて俺を見下ろす幼馴染の姿。

「……やあ」

「……っ!?」

 着替えが終わったのか、じゃあ遊ぶか!

 と言おうとした。言おうとしたのだが、直前で言葉に詰まる。蒼い瞳と目が合い、吸い込まれそうになる。

 見慣れていたはずだった。もう何年間も見てきたから、桜の水着がどんな物かも熟知しているのだ。これだけ言うと変態みたいだけど、桜の水着は今までワンパターンだったのだからしょうがないだろう。

 しかし、今年は外してきた。

 水色のビキニに、前を開けた白いパーカー。

 簡素ながら、それは俺の好みのど真ん中を貫いてきた。剛速球で。

 以前まで桜の水着と言えば露出の少ない薄ピンクの水着だったのだが、今年は肌色多めである。スタイルの良い体の魅力は、水着では隠しきれておらず。寧ろ増幅させていると言っても過言ではない。

「何だい、そんなにぼーっとして。そんなに似合ってないかな?」

 白いパーカーのポケットに両手を突っ込み、少し不満気味に呟く桜。真っ白な肌と、艶やかな肢体に目を奪われつつも俺は全力で首を横に振る。似合ってない、なんて事は絶対にない。

「……ちょっと見ない間に、言語機能も失ったかな。ボクの幼馴染がこんなのになってしまうなんて」

「喋れる!喋れるから!」

 ようやく口が動くも、焦って早口になる。

 やばい。

 長年ずっと一緒に居て、ここまで耐性が付いていないとは思わなかったぞ……!

 脳内でそんな事を苦し気に唸る。その様子を見ていた桜は口角を上げると、やや挑戦的に言葉を発した。

「ボクが可愛くて見惚れてたとか、じゃないだろうね?」

「んな訳ねえだろおおおおおおおおおおおお↑↑↑↑!?!???!??」

 発狂。

 本心を言い当てられてか、声が裏返って裏返った。とんでもなく跳ね上がった声に桜は体を震わせ、更ににやりとする。パーカーを少し緩めに脱いで、肘で引っ掛ける形に。肩と二の腕、胸元が大きく露出した。その姿のまま被さるように前かがみになる桜は、蒼い瞳をすっと細める。

「やあ結城。ん?どうしたんだい?そんなに顔を赤くして。え?何?口をパクパクさせてるだけじゃ何も分からないよ?……んふふ、ゆ、う、きいー。どーうしたのかなー?ねえねえ、言ってくれなきゃ分かんないぞ?」

 猫なで声で、楽しむように声を出す桜。にやにやと、あからさまに俺をからかっていた。とは言え、悲しいかなそれが分かっていても何もできない。ぐぐぐと言葉に詰まるだけのまま、桜は更に調子に乗る。

「おいおい、一緒にお風呂にも入ったじゃないか。キスも何も済ませたじゃないか。今更ボクの水着で、何を思う事があるんだい?ほらほら、何時も通りに接してみなよ」

「水着……可愛いぞ……っ!」

「ありがとう。ほらほら結城、おいでおいでー」

 華麗にスルーされた俺の感想は空しく散った。桜は俺の後ろから顔を覗き込ませていたが、今度は回り込んで足の方から俺を見下ろす。何だろう、このゾクゾク感。

 直後、桜は波打ち際の水にぬれた地面に手と膝を付いた。

 所謂四つん這いと言う姿勢でずいずいと前進し、まるで押し倒されているかの様な状況に。心臓がバクバクして何も言えなくなるが、桜も頬を朱色に染めて恥ずかしそうにしていた。

「ほらほら、ほらほら。話せ言語を交わそう言葉を。キミが最近見ている女性が話している生放送みたいに好きな台詞を言ってあげるよ。ロリ声で悶えてたキミは実に滑稽だったね」

「どうして知ってるんですかっ!?」

「ベランダで行き来できる……つまりは深夜でもカーテン空いてたら見えるんだよばーか」

「嘘だろ!?うっそ、うっそ!俺の最近の癒しなのに!!」

「言ってくれればボクがするのに」

「顔がわからないからこその妄想があるんだよ」

「……理想の顔を正直に答えてみろ。怒んないから」

 理想の顔……?

「目が大きくて蒼くて、白めの肌で黒髪ロングストレートで顔立ちがしっかりとしてれば」

「どこの誰の紹介をしてるんだい」

 

 ☆★☆

 アイリスのスパイク。膨らませたビーチボールを鮮やかなトスで上げた凛に合わせて跳び、振り切られる右手。ボールの威力もかなり高いが、注目すべきはその、胸。

 女子vs男子で別れ、今は適当な高さを決めての軽い試合中である。

 俺と永大は欲望に振り回されながらも、一瞬反応が遅れてボールを上げる。二人なので、基本的に最初に触れた人が最後返す形だ。

 アイリス、凛、桜のスパイクは反応が一瞬遅れる。苦戦しつつも、俺たちは何とか繋いでいた。

「葵ちゃーん、ほれっ!」

 ドンッ!

「よいしょ」

 ドカッ!

 ただし葵への反応は通常と変わらない。欲を刺激するものが無いからね。

「うっしゃ暁、とーう!」

「てーいっ!」

 上がったトスを、ジャンプ力の無さとテニス部の癖で手首のみで打つ。それでもある程度の速度を出した打球は桜の元へと飛んでいき、普通に上げられた。きれいに。

 凛のトス。跳ぶのは葵。

 そして。

 

「私の時だけ普通なのは真に遺憾です!!!」

「お前の全力スパイクとか痛いだろグハウス!!!!!!」

 

 顔面に突き刺さったボールは放物線を描き、海へと消え去っていった。


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