俺とクーデレ幼馴染の日常   作:ラギアz

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もう、言葉は要らないですね。
ちょっとマグマに浸かってきます。それでは。


……更新滅茶苦茶遅れて真面目に本当にすみませんでしたああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!
本当に、本当にごめんなさい!!!
はい!!次話をもう書き始めますごめんなさい逝ってきます!!!!


俺と幼馴染と買い出しデート

 文化祭の準備は滞りなく進んでいる。教室の飾り付けや飲食物の手配、メインである和風メイド服も作られ始めていた。中心に居るのは永大と凛にイケメン、そして我が幼馴染。

 今日もまた、放課後なのにも関わらず殆ど全員がクラスに残っている。

 そんな中、俺は――平均平凡、生徒会なのにも関わらず殆ど空気の暁結城は準備を抜け出し、一人休憩に来ていた。

 いや、許してくれ。偶々作業がひと段落した所を女子に見つかり、重たい段ボール×3を持たされたのだ。そのまま一階から五階の教室まで登り、更にもう一往復。永大は目ざとく「作業に没頭してます」感を出ていた。あいつは後で殴る。

 とまあそんな事もあり、約十五分間の重労働を終え。

 俺は今、校内に設置されている自販機の前で一息吐いていたところだ。手には三ツ矢サイダー。美味しいよねこれ。

 窓の外は曇り模様。しかしそんな空模様は露知らず、学校中が文化祭へボルテージを高めている。

「……そろそろ戻らないと怒られるかなあ……」

 誰に言う訳でも無く呟き、残りを全て口に流し込む。空になったペットボトルをゴミ箱に入れて、俺はぐーっと体を伸ばしながら教室へと戻った。

 

 ☆★☆

「あ、暁ー。暇だよね? 買い出しよろ!」

「お前は俺に対しての優しさは無いのか?」

 教室のドアを開けて、開口一番そう告げたのはさっきも俺に雑用を押し付けた女子。栗色の髪を肩辺りで切り揃えている女子は、カッターナイフを持つ手を止めて。

「……無いね」

「そこはあるって言って良えや!」

「きゃーこわーい! 桜ちゃーん助けてー!」

 しっかりとカッターの刃はしまい、背後で皆に指示を出していた少女へと飛びつく女子。少し小柄な少女は勢いに体を縮ませるも、直ぐに態勢を立て直した。

「もう、危ないなあ……。で? どうしたんだい?」

「暁が虐めてくるのー!」

「……ほう?」

「デマだからな!! それ、全くのウソだからな信じるなよ!?」

 女子の言葉に目の色を変え、俺を見据える少女。心なしか、長い黒髪が揺らめきだった様にも感じられる。

 その少女の名前は、雪柳桜。やなぎなぎでは無い。笑いー合えるってー凄く~幸せなことー。

 艶やかな黒髪ロングストレート。青空の様に透き通っている蒼い瞳。特別胸が大きいわけでも無いが、細身でありながら黄金比を思わせるスタイルの良さ。成績優秀容姿端麗文武両道才色兼備美人薄命……最後のは止めろ。マジで止めろ俺。

 ……とまあ、四字熟語がズラッと並んだ上に何一つ嘘ではない桜は、俺の幼馴染だ。

 ベランダ一つで行き来できる距離に住んでいる俺たちは、ようやく彼氏彼女の関係になれた。が、対して恋人的な事はしていないのがネックである。

「で? 結城、何か?」

「いや、特には。強いて言うなら雑用は他の奴にも押し付けてくらさい」

「……む。ボクは別に君に雑用を押し付けてないよ。頭が腐ってるのかな」

「そーだそーだ! 私も暁以外にも(一割くらい)任せてるもーん!」

「そのかっこいちわりくらいかっことじって口に出すな口に! 普通に聞こえてるんだよ!」

「いやだって暁使いやすいし」

「それは同意かな」

「桜まで!」

 何とも言えない表情で頷く桜。ブルータスお前もか!

「とは言えども、流石に結城だけじゃ可哀想だし。ボクも行ってくるよ。何を買ってくればいい?」

「おお、ありがとー! えとね、養生テープと、後は紙コップと……」

 桜の問いかけに、女子は指を折りながら答えていく。特にメモを取るでも無く、ただ聞いているだけの桜。やがて聞き終えた彼女は、一回頷くと俺の元へ。

「覚えたよ。じゃ、行こうか」

「おう。……お前、本当にハイスペックだよなあ……」

「別に? 出来ない事も沢山あるから、そんなにハイスペックでは無いよ」

「例えば?」

 教室を出ながら、そんな会話を交わす。他愛の無い日常風景は、しかし確実に熱気を纏っていた。

 

「……助走無しの「シライ」とかクロックアップとか双天破神焔魔炎撃拳(ツインバスターフランベルジュ)とか」

「お前は体操選手になりたいのか仮面ライダーになりたいのか双星の陰陽師になりたいのかどれなんだ」

「キミのお嫁さんに永久就職の予定だけど」

「……お、おう」

 きっぱりと目を合わせてから言い切り、少し歩調を早める桜。

 黒髪の隙間から覗いた耳は、ほんの少し赤く染まっていた。

 

 学校前、桜並木の坂の下。

 そこには通学に使われるバス停がある。『学校前』と書かれているバス停の時刻表を見れば、後三分くらいでバスが来るらしい。ポケットに財布があることを確認し、ベンチに腰掛けた桜の横に立った。

 スーパーやコンビニは高校の近くにもある。

 が、養生テープやビニールテープ、紙コップとかはなるべく安い所で買いたい。食材なら大量購入出来る場所があるが、教室を飾るだけなら業者に頼む必要はない。百均で済ませられる。

 まあ、百均があるのは少し開けている所だ。

 海と山があり、それなりに大きな町もあるこの地域。しかし、少し高台にあるここは市街地から遠い。

 多少の不便さを感じながら、スマホを開く。課金はしていないものの、全く来てくれない某沖田を求めてガチャを引くこと一回。バスが到着すると同時に、俺の元には某燕返しさんが参ったのだった。

 バスに乗り込むと、中には誰も居なかった。

 教室を出てから無言だった桜はそそくさと奥の方に行き、二人掛けの席に座る。窓側に陣取った彼女は、外を眺めながら隣のシートを叩いた。ぽすぽす、と音を立てた右手。何をしてるのかなーと眺めていると、やっと桜は俺の方を見た。

「座りなよ。……空いてるよ」

 やっと意図を理解し、俺はシートに腰掛ける。真ん中に置いた左手に、そっと右手が重ねられ。そのまま会話は無く、俺たちは市街地へとたどりついた。

 バスを降りて、百均に向かう。

 かごを俺に押し付けた桜は、そのまま真っすぐに目的の場所へ。文具の所に来た桜は、全種類を吟味しつつかごに物を入れていく。一応後で買った分のお金は貰えるが、安い物でも良い物は使いたい。そんな感じだろうか。

 俺は何もせずに見ているだけだが、それはまるで。

「……何かこれ、夫婦の買い物みたいだな」

「っ!?」

 思わず呟いた言葉に、しゃがんでペンを選んでいた桜が全力で振り返った。黒髪が舞い上がり、蒼い瞳は大きく見開かれている。

「……別にボクはキミと夫婦では無いんだけど?」

 ほんの少しだけ、速くて震えている声。

 怖いとか羞恥とかではなく、焦りからの口調であることは明確である。

「いやその、例えだよ例え。こうやって二人で何か見て、買ったりするのってなんか良いなって」

「そんなもんなのかい? 男子から見ると、女子の買い物はメンドクサイと感じるそうだけど」

「別に、俺は気にしないぞ。まあ、桜だからってのもあるけど……お前が何かを選んだりしてるのは可愛いし。見てて飽きないし」

「ふーーん。そう。別に気にしてないけど。別に気にしないけど、そっかへーふーん」

「……何でお前はペンのパッケージを顔に押し当てているんだ?」

「別に。ほら、行くよ」

 かごに物を入れてから、桜はさっさと立ち上がり次のコーナーへ。置かれたままのかごを持ち、俺は桜の後を着いていった。途中、おもちゃコーナーのコスプレをがん見しつつ。そこで桜に平手打ちを食らいながら、百均での買い物を終えた。

「さて。次はどこに行くんだ?」

「んと、買って無い物は特に無い気がするけど。念のため、電話でもしてみる?」

「おっそうだな。ちょい待ち、永大に掛けるわ」

 ポケットからスマホを取り出し、プリズマ士郎の赤銅色のカバーを開く。手早く電話帳へと行き、永大へと電話。

 何回かのコール。やがて、奴は出た。

『おーう暁! デートは楽しんでるか?』

「これはデートなのか? ……というか、他に買うものは?」

『んあー、ちょっと待ってな』

 遠くで、永大が皆に呼びかける声が聞こえた。10秒程待つと、永大がやっと声を掛けてくる。

『大して無いみたいだ。後、和風メイド服が一着完成したらしい。桜さんにサイズ合わせてあるらしいから、なるべく早く帰ってきてくれー』

「ん。じゃあなー」

『おう』

 スマホをポケットにしまい、一息吐く。両手で一つの袋を抱えていた桜に言われた事を話し、それとなく袋を受け取る。

 学校に戻れば、桜の和風メイド服。

 心が高鳴るのはどうも抑えきれない。メイドと言えば、最近はレムとラムが人気である。和風メイドと言えばごちうさの映画公開だ。やったぜ。

 停留所に着くと、運よく丁度バスが来た。高校の前まではおよそ20分。

 中には誰も座っていない。エンジン音を響かせて、ゆっくりとバスは出発した。

 

 ☆★☆

 

 教室に入り、買って来た物を渡して費用から代金を受け取る。そこで桜と一旦別れると、俺は一個だけ用意されている椅子に座った。前には机が置かれ、なけなしのテーブルクロスが掛けられる。簡易的な店内を作った教室の中で、俺以外の全員は皆壁へと寄り添う。

「じゃあ暁。今から桜さんが作ったマニュアル通りに接客するから、お客さん役頼む」

「分かった。えっと、感想とか言うの?」

「んあー、そうだな」

「おけ。最高だったよ」

「まだやってないのに過去形なのかよ……まあ、納得はするぜ!」

 元気よく頷いた永大。隣では凛がメモ用紙に何かを書き込み、それを持って扉の外へ。

 それから一分くらいが経ち、教室のドアが開いた。数名の女子……服を作る係がぞろぞろと入ってきてから、少しだけ間を置いて、

「入ってくるのにいらっしゃいませなのか。……いらっしゃいませ、ご主人様」

 桜が、中に入ってきた。

 着ているのは、深い緑色を主とした和風のメイド服。スカートは膝上のため、白いハイソックスが良く映えている。髪にはフリルを付けており、和と洋が上手くマッチしていた。

 というか誰だ。緑色ー、としか言ってなかった和風メイド服の色を深い緑にしたのは。

 桜の長い黒髪と絶妙に合っている。神だろ。このクラスには大分分かっている奴が居る。最高だ。

「ご注文はお決まりになりましたか?」

 うさぎでお願いします。

「えっと……?」

「あ、コーヒーならあるぞ」

「インスタントか」

「残念ブレンドだ」

 永大に目配せし、すかさずネタを挟む。コーヒーの他にも簡単なお茶菓子ならあるらしく、桜はぺこりとお辞儀をした後に取りに行く。簡素なお盆に全部を載せて帰ってきた彼女は、それらを丁寧に卓上へと並べた。

「ご注文は以上でよろしいですか?」

「えっと、はい」

 にっこりと、良い笑顔を浮かべる桜。さらりと揺れる黒髪が、良い匂いを浮かべる。

 紙コップの中にはコーヒー。当日は手作りらしいが、可愛らしい小皿に置いてあるお茶菓子。テーブルクロスを引いた机や、見渡せば半分以上飾りつけの終わっている店内。

 完成はしていない。しかし、まだ日にちはある。

 何よりも接客をしている桜が、しっかりと雰囲気を作り上げていた。

 決して目立たない場所にある訳では無い、1-2の教室。これならば本番でも、かなり賑わうだろう。

 ……どうしよう。やる前に永大に言った感想と、今俺が抱いている感想はなんら変わらねえぞ……。

 

 その時だった。

 

「では、ご主人様。最後にボ……私から、一つお言葉を……」

「え?」

 突然の桜の言葉に、素っ頓狂な声で聴き返す。

 お言葉とは何だろうか。初めて聞いたぞそんな繋ぎ方。

 そんな風に思っていると、桜はお盆を小脇に挟んでから髪を耳に掛けて。一つ息を吐き、ほんの少し赤らんでいる頬を緩めると、

 

「美味しくな~れ、萌え萌えきゅんっ♡」

 

 と。

 何時もより何段階か高い声色で、甘々な声で告げた。

 ――そのまま硬直する教室内。男子は皆心臓に大ダメージを喰らい、メモに何かを書き込んでいた凛は、恐らく原因の人間は全力で笑っていた。清々しいくらいに、笑っていた。

 女子は皆スマホを取り出してぱしゃぱしゃしている。

 その中心で、桜の満面の笑みを一身に受けた俺は―――――、

 

exquisite

「おい待て!!!!戻ってこい日本人!!!!!」

 

 日本語を忘れ、思わず英語で感情を表していたのだった。


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