分かたぬ衣と往く先は   作:白縫綾

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さくさく進みます。
微原作改変要素有り。

3/20:表現等修正
 


第一七話 類は友を呼ぶ

 

 

 不意に「どうした」と、そう声を掛けてきたのを少女は見上げた。

 

 顔を上げてみれば隣に座っている養い親の男が此方を見ていて、何だか見透かされているようだなと、そう思った。何か云いたそうな顔が、顔に出ていたのだろうか。

 この養い親と同様、表情の変化はあまり無いと自分で思っていたのだが──まあ、似ているからこそ判ったのかもしれない。

 

 

 間違ってはいないけれど、かといって態々(わざわざ)口にするようなことでもなく、朧は黙って首を振ることで応えた。

 ふっと見上げていた処から視線をずらし、やって来て迎え入れた二人組を改めて上から下へと眺めて──それから少し眉を下げた。

 

 

 

 

 二十代半ば位の青年。

 それから、その青年と一緒にやって来た、朧よりも年下かといった位の幼い顔の少年。どんなに多く見積もってもせいぜい同年だろう。

 そんな二人組は、かっちりとした衣服に身を包んで目の前に座っている。

 思っていたのと違う、というのがその姿を見た第一印象だった。

 

 

 何と云うか、普通だ。

 もっと専門的(プロフェッショナル)ぽいものを醸し出すような人が来るのだと思っていた。

 少女の心境を理解したのかどうかは判然としないが、隣で相手にも聞こえる程度の声の大きさで「ふん」と呟いている様子からして──院長も同様に思っているらしい。

 

 ……見た目上はあまり変化無しである上に雰囲気もあれ(・・)だが、少女の養い親に悪気は無い筈である。

 多分、きっと、恐らく。

 

 朧はそっと視線を逸らしてから、改めてその二人組の来訪者を物珍しく眺めることにする。

 

 

 

 

 先ず、でこぼこしているなと感じた。

 

 それは気の抜けるような気分にさせる最たる原因であり、ぱっと見ただけなら真逆そういう(・・・・)種類の人たちだとは到底思えまい。

 

 どう見ても彼らは歳の離れた兄弟か、──まあこれは年齢からすれば、あんまり人のことを云える訳では無いのだけれど──或いは親とその子にしか見えなかったのである。

 特に朧からしたら、尚更だ。常より自分より年下の弟妹と触れ合っているから、余計にそう思える……はっきり云うなら、思ったのと違った。

 

 

 こんなことは偏見なのだろうが、妙におどろおどろしいのは彼らが持つ『異能特務課』なる肩書きだけであったらしい。

 何せ──嘗ての話には聞いていたが──こんな自分と同年位の少年も所属していて、然し彼はひどく(・・・)厳しいとか、朧の想像するような恐ろしい環境に曝されているようには見えなかった。

 

 その幼さの残る表情に冷徹さは有っても、人として乾いてはいない。

 

 

「…………」

 

 

 そして同時にもう一つ、その少年の存在は朧にあることを教えた。

 善くも悪くも、年齢なんてものは関係無い、ということだった。

 

 広津の「所謂自己責任、という奴だ」という台詞が頭を()ぎる。

 確かにそうらしい。

 境遇の違いだけで、自分も近い内にその責任とやらを負わなければならないので他人事には出来ない。

 庇護者が自分を放り出した時がそうなる時で、然し未だそうなっていないのは矢張り、遅いのだろう。

 

 

 そこ迄思って、じろじろと眺めるのは失礼だったろうか──と考えた。

 

 いや然し、同じ部屋の中にいて、しかも向かい合っている状態で見るなという方が無理だろう。

 自分でそう思って自分で勝手に結論づけたが、そんなことをせずとも多分、おあいこ(・・・・)だった。

 朧がそうして見詰めているのと同様に、じっと見られるような視線を感じていたからだ。

 

 品定めされているようだな、と思った。同時に凡ゆる全てに倦んでいるような剣呑さを孕む眼で、少年は此方を見詰めていた。

 交差する──似ている、とは思わなかった。

 

 確かに同じ異能力者ではあるのだろう。

 けれど初対面の少年にそこ迄思える程自惚れてはいないし、そんな心境に辿り着く位自分の人間性が出来上がっている、なんて思わない。

 

 丸眼鏡の奥の目と暫く見合って…………不意に浮かんで齎されたのは、安心とほんの僅かな喜びだった。

 識らず詰めていた息を吐き出してから、少女はうっすらと、その唇を横に引いて微笑した。

 こんなことを云ったら悪いかもしれないが──否、元々の性格かもしれないが──何だか威嚇されているようで逆に微笑ましく思ったのだ。

 

 

 確かに大人びていたが、それは許容出来る程度のささやかな『異常』であった。

 一般人と少し隔たったような世界でも、なにも一人きりで生きねばならない訳じゃないと。寄り添える人の存在があるかもしれないと、その可能性を自分の目で確認出来たことは善いことだった。

 

 

 一人は怖い。

 一人は寂しい。

 ……でも多分、私はこの場所以外で生きなければならないのだから。

 

 

 それが当たり前のことかもしれなくても、そんな当たり前のことを識れたことがひどく嬉しかったのだ。

 

 ……まあ、その僅かな笑みにすら反応されて眉を寄せられたのは少し予想外だったのだけれど。

 失敗したかなぁ、という心境で、朧は対談が始まるもう直ぐを待つ。

 

 その場所──院長の部屋の中で、少し埃っぽさの感じる本の匂いを吸い込み、すっと表情を戻す。

 

 

 

 朧含める彼らは、そこで一堂に会していたのだった。

 四人が入るにはやや手狭な場所ではあったが、それでも入らないという訳ではない。

 

 部屋は矢張り本で溢れているが以前よりも遥かに足の踏み場は多くなって、どこと無くすっきりとした風でもある。

 少なくとも部屋の中に四人分の椅子を置ける程度には片付いていた。

 

 少女は普段院長が座っている場所の隣で常ならば見ないような視点から部屋を見ていた。少し落ち着かないようにさせられる位置で、自身の養い親はこんな風に景色を眺めていたのだな、と今更そんな新たな発見をする。

 

 

 

 

 

 ……そんな間にも、会話が始まるようだった。

 

 少年の横に居た青年が、その小さな同行者の何かしらの様子に堪え切れていない笑いを漏らす。自然と視線がその方へと向く。

 

 彼はくつくつと笑う間に「お久しぶりですね、『人間兵器庫(マスプロ)』殿?」と口にした。

 

 少女にはその意味する処は把握出来なかったが、院長を揶揄しているのだ、というのは何と無く理解できた。

 その呼び名、というか。それが横浜における男の通り名であるのだろう。

 ……然しそんなことを思う前、それよりも面食らう方が先に来ていた。

 真逆そんな、この養い親をからかえる猛者が居るとは想像出来る筈も無いので。

 

 世の中は本当に識らないことばかりなのだな、と若干見当違いなことを思いつつ、朧は改めて話に耳を傾けることにする。

 久しいな、と云った声は隣から発せられた。

 

 

「その久しぶりがこういう(・・・・)形なのは些か不本意なんですがねぇ。何時から子連れになったか、お伺いしても?」

「……其方は変わってなくて何よりだな」

 

 

 隣から溜め息が聞こえた。

 子連れ……私のことかと思って、もうそんな年齢ではないなんて庇護されている身では云える訳も無いのだけれど。

 

 

「貴様のそういう処は──いや、いい。此処が何処だか云ってみろ」

 

 

 少し思いを馳せるようにして、それから青年はぽん、と手を打って「んあ、そういや此処孤児院だったか。忘れそうになるなぁ」と軽い調子で云う。

 

 

 はっはっは、と一人で勝手に納得して一人で笑う青年に、院長と常より呼ばれる男の眉間に皺が寄った。

 心なしか威圧感が増した気もしたが、誰も反応しない。寧ろ異様なことでもあり、然しそれが現実である。

 きっと慣れとか度胸とかその他諸々の御蔭だろう。軽い戯れ(ジャブ)のようなものだ……繰り返すが悪気がある訳ではないのだ。

 多分。

 

 

「自己完結するなら先ず口に出す台詞を考るんだな。あとその呼び名は止めろ」と云う男に返されたのは「そっすねぇ」という軽い返事とぴんと上に立てられた人差し指である。

 ちょっと黙った方が善いのでは、と朧は要らぬ心配をしたが、「ま、『人間兵器庫(マスプロ)』殿が云うなら考えときましょうかね」とさらっと云っていたので既に手遅れである。

 

 

「んで、確かにコチラとしちゃあさっさと用事済ませたいんですけど、その前に一つ聞かなきゃなんないこともあるっぽいすねぇ」

 

 

 にっ、と歯を見せて笑う青年は、視線の先に居た男の隣──今度はもう一人の、子供の方を見た。

 

 少女──朧だ。

 少し跳ねている栗色の猫っ毛に、普通の町娘のような格好は何処にでも居そうなものである……だが、その養い親たる男が気まぐれに同席させるなんてことはあまり想像出来なかった。

 視線を向けられて、彼女は黒みがかった翠色をぱちりと瞬かせた。

 

 当の本人は、蚊帳の外のままだと思っていたらしい……きょとんとした表情に「お嬢さんはお仲間(異能者)、ってことで善いのかな?」と青年が問うと、僅かの間の後にこくりと頷いた。

 

「そっかそっか」と意味深にふむふむと頷いていたが、青年が思っていることは誰も窺い知ることは出来まい。……まあ彼の向かいの壮年は僅かに胡乱げな表情をしていたのだが、そこは割愛する。

 

 

 

 

 いい目だ──とても、善い。

 未だ世の影に触れていない無垢さは、直ぐに消えてしまいそうなものであっても見ていて気分が善い。

 少女が異能力者であるならば尚更である…………横浜に着いてしまえばそれも無くなってしまうのだろうが、それだけが惜しいことである。

 

 小生意気な少年(こいつ)に、善い刺激かもしれないなぁ、なんて。

 青年の笑みの中にはそんな意味も含まれていた。

 

 

「それは重畳。我々の世界にようこそ、お嬢さん。ああ、僕らは歓迎するともさ……名前をお伺いしても?」

 

 

 至って普通に見える少女が僅か戸惑ったように身じろいだ。促されて口元が紡いだ名を、そうして識ることとなる。

 

 異能特務課に在籍している一人の少年と、それから何処にでも居るような孤児院の──然し異能力者でもある少女が最初に出逢ったのは、この時であった。

 

 

 

 

 

 **

 

 

 

 

 

 朧は、自分が名乗ったので相手の少年の名前も解るのだろうかと、そんなことを考えていた。

 

 大仰に云うならその少年は不遜で退屈そうな雰囲気である。が、同時に、理由も無い勘だけれど──仲良くなれそうな感じにも思ったのだ。

 之まで大勢の家族と少しの大人、それだけとしか関わって来なかった少女にとって、上手くいけば彼は多分初めての『友人』である。

 柄にも無く少し、わくわくした。

 

 

「……そう云う貴様こそ、そんな童子を連れてどうした」

 

 

 隣の院長が云って、青年が「ああ、此奴(こいつ)?」と少年の髪をぐしゃぐしゃと掻き混ぜた。

 何と言うか、めちゃくちゃ厭そうな顔をしているのに気づいていないのだろうか──他人の厭がることをすることが好きな人種が世の中には居るのだと、未だ彼女は識る由も無い──と首を僅かに傾げてその様子を観察する。

 

 

「雑役というか、丁稚(でっち)のようなもんですよ。まだまだ可愛い新入りでさ……()ったぁっ」

「余計な事を云わないでください」

 

 

 まあ、直ぐに同情へと様変わりしたのだが。

 あれは痛い。

 

 ……その当人による報復が起こったのである。

 悶絶する青年を、汚物を見るような目で眺めてから、朧と院長の方を向いた。きっちりと整えられていた髪が乱れて不満そうである。

 

 少年特有のやや高い声が不機嫌そうに、「坂口安吾です」とややぶっきらぼうな調子で自分の名前を告げた。

 

 

「正直何で僕が連れられて来たのか、僕も解ってません」

 

 

 何も聞かされずに来たらしく、「でも貴方のことは前に聞いたことがあります」と院長の方をちらっと見て──そう口にした。

 

 

 この養い親は有名らしかった。

 ただ、異能力者という少人数間の限定的なものなのか、本当に色々と識られているのか、その台詞からだけでは定かでは無かった。

 

 院長はその詞に応えるようなことは云わず「単純に引き止め役(ストッパー)だろう」と呟いた。

 痛がっている割に直ぐに復活した青年が蹴られた部分を摩り乍ら顔を上げて「一応組織では信用されてますよ」という口を挟む。

 

 

「いや、最初は普通に親愛なる(・・・・)人間兵器庫(マスプロ)』殿に逢わせようと思っただけなんだが……安吾お前ェ、一応僕お前の教育係なんだけど?」

 

 

 教育係……つまるところ、どれだけ腐っても上司だ。逆らう訳にもいくまい。

 

「但し、かといって抗議をしないという訳でも無いです」と素っ気なく云った彼は凄いな、と素直に朧は感心した。

 

 だが抗議(物理)だ。

 見習う可きじゃない、それでも──そんなこと、中々云えるものではない。

 

 

 安吾は鼻を鳴らして、「あんたが余計な事云うから話が進まないんでしょう」と又脛をげしげしと蹴り付けようとして、今度は避けられていた。

 何だかんだで仲は良さそうだなと、朧は淡く微笑む。幸いなことに今度は気付かれることは無かった。

 

 

「で、話だが」

 

 

 さっさとするのには同感だな、と院長が云って、顎で話の先を促す。

 

 

「貴様のとった約束(アポイントメント)は今日だけだ。それ以降は相手せんぞ、異能特務課」

「えー……はいはい、解ってますよっと。『人間兵器庫(マスプロ)』、そんなに短気だと頭の血管ぷっつんしますよ?」

 

 

「もう結構いい年なんですから」というその詞にこそぷっつんしそうだった……未だ四十路である。

 

 

「識ったことじゃない。あとその呼び名は止めろ」

 

 

 苛立った調子で──そのくせ無表情なのが恐ろしい──机を指でとんとんと叩く男に肩を竦めて、「じゃあ本題入りましょうかね。会話に入ってないお嬢さんがそろそろかわいそうだ」と朧へ向けて片目を瞑って見せた。

 割と黙って聞いていても楽しかったので問題無い。少女は一度だけ首を振った。

 

 

 青年はそれから、肩に提げる形で持っていた鞄を開けて書類だろう紙を数枚、取出した。

 

 

「じゃあ異能特務課の仕事をしますよっと」

「…………」

「解ったから安吾、睨まないで怖いから」

 

 

 ごほん、と一つ咳ばらいをして。

 

 

「────はい、貴方に辞令が出ているのを届けに参りました。まあ、正確にはちょっと圧力掛けて出させたんですが! そこは省略でね!」

 

 

 ひらりと投げ渡された数枚は上手い具合に机に着地して、院長が手に取ったのに朧もそれを覗き込んだ。「ふむ」と唸ってさらっと内容を検分する脇でちょっと眉を顰める。

 

 色々と書かれていたが、所々の単語を見るに、簡単に要約すると内容はこうだ──院長は、孤児院を統括する機関から辞職を要請されているらしい。

 そのことを理解してから思わず養い親の顔を窺っても、その表情は変わっていなかった。「寧ろ遅すぎる」という、聞き覚えのある台詞を吐いた。

 

 予期、していたのだろうか。

 

 

「遅すぎる、或いは早過ぎた。こうして時間を置いた癖にやって来るには……御蔭で此処で少々金を遣い過ぎた」

「いや、あんたなら金なんて普通に造れるでしょう。本物から寸分違わぬ本物を作り出す人が」

 

 

 ああ似たようなことを最近云った気がする、と朧は遠い目をした。

 隣で溜め息をつかれて、流石に少し申し訳なく思った。

 

 

「朧にも云ったことがあるが、貴様らが(おれ)のことをどう思っているかがよく解る詞だな」

 

 

 抑も辞令の出た理由の見当をつけられない彼女からすると、その後に続く「己は直接自身の益になるような犯罪はしないと決めている」という台詞に、まあ性格的に無さそう、と頷けるのだが、

 

 

「──へぇ、そんな事云うんですか。どちらにせよ犯罪だろうが」

 

 

 けらけらと笑う青年の、然し少し周囲の気温が下がるような感覚に陥った。

 

 空気が薄い。

 何の詞が彼をそんなにさせたのか。

 

 

 ぽんぽん飛び交う軽い会話が無くなり、声だけ笑い乍ら、然し少し眼を眇めて青年は男を見た──殺気には最早慣れていたけれど、それでも自分にそれが向いていないということに少し、ほっとする。

 薄情だと解っているが、この男には彼女が年下の弟妹たちにやるような気遣いをすることこそが失礼だと、今ならそう思っている故に。

 

 少年の方はどうだろうと見れば、初めて見たのだろうか、鋭かった目を丸くさせて驚いているようだった。きっと珍しい光景、なのだろう……態度の落差が凄まじい。

 何でも卒無く熟す養い親は、この時ばかりは逆鱗たる何かを踏み抜いたのか。

 

 

 青年は「犯罪、ねぇ」と呟いた。

 今迄が騒がしかっただけに、部屋は妙に静かであるように思えた。

 

 そりゃあ色々忙しくて対応が遅れたのは此方の落ち度だけどさ、と云って溜め息をつく。

 

 

「ただね、その新しい盾が犯罪を蔓延らせている原因の一つである、ってぇのは感心しないと僕は思うんだよね──ポートマフィアの手の者が」

 

 

 その最後の詞で気付いた……そうだった。

 

 そういう意味でも男は識られていたのかもしれない。

 何れ無くなるとはいえ、その盾を失う前にそれを自ら棄ててポートマフィアに参入した男。

 丁度自身が異能力を開花させた時期であり──とどのつまりは、私のせいだ。

 

 

 男が唇を僅かに歪めて「庇護されている、と云え」と吐き棄てるのにはっとさせられる。

 

 

「戦時中も、そして戦後も己に『人間兵器庫』以外の有用性が存在しない以上、政府の盾が消え失せるのは自明に決まっていよう。それ故に云った、遅すぎると」

 

 

 一度詞を切って、その瞳が今度は少年の方を向いて「小僧」と呼んだ。

 

 

「貴様もこれ(・・)の補佐なら内容は識っていよう。此奴は暫く使い物にならん、続きを話せ」

 

 

 朧は、院長をじっと見上げた。

 それから……少年と顔を見合わせて、目を伏せた。

 

 頭を、掴まれる。

 無理矢理養い親の方を向かされる──素直に、その力に従った。

 

 

「自惚れるなよ。(おれ)()ったことだ」

「…………一端は私の責任です」

 

 

 黒目が少し細められて、然しそれを真っ向から見据えた。

 お互い目を逸らさず、養い親はその手に力を込めた……頭が、痛かった。

 

 

「ああそうだろうな。然しその上で選んだのは己だ」

 

 

 その瞳が此方の心の奥底を覗き込むようで、その事に何故だか妙に泣きたいような心持ちになって、朧はぱちぱちと瞬きをした。

 涙は零れなかったし、流すこともなかった。

 

 

 

 

 

 

 




院長の通り名:『人間兵器庫(マスプロ)』。mass production。理由はお察し。

本物を作り出す異能が金銭の偽造という点で犯罪であるかどうか。まあ金銭ではしてないようです。他は、ね。
武器の製造()という面に於いても、嘗て政府が院長にさせていたことであり、それを今更犯罪というのも……まあ、グレーゾーンでしょうか。




安吾少年がいつ特務課に入ったのか分からないため、それ故の微原作改変です。捏造とした方が良かったでしょうか。安吾少年はあんな感じにツンツンしてると信じてる。


※月詠之人さん、高評価ありがとうございました! 励みにさせていただいております。
また、総合評価がどうも200ptを超えていたらしく、嬉しい限りです。
矢張り同志はたくさん居るようで(´・ω・`)


※※十万字超えたようです。この時点で主人公の片割れたる織田作が何故出てきていないのか……おかしいですね(困惑)







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