ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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第111話:最強決定戦!!ジエスモンVS霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)

 放課後の第4アリーナ…

 太一に果たし状を突き付けた楯無は自身の専用機【霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)】を纏って太一が来るのを待っていた

 だが…

 

楯無

「…何でこんなに観客がいるの?」

 

 観客席はマドカ達の他に大勢の生徒達によって埋め尽くされていた

 今朝の1組の話があっと言う間に学園全体に広まり太一と楯無の決闘を見ようと生徒達が集まったのだ

 呆然とする楯無の前に太一がISを纏わずにアリーナに入って来た

 

楯無

「来たわね…待ってたわよ!!」

 

太一

「はぁ…面倒臭い…」

 

 やる気に満ちている楯無と違って太一はやる気が全くなかった

 

楯無

「早速始めましょうか!!ISを展開しなさい!!」

 

太一

「分かったが…始める前に一つ条件を出させて貰うぞ。俺はお前の決闘を受けたからそのくらいはいいだろ?」

 

楯無

「いいわよ。それで条件って何?」

 

太一

「俺が勝ったら付きまとうな。」

 

楯無

「…どう言う意味かしら?」

 

太一

「別に話しかけるなとかそう言う意味じゃない。この決闘みたいな『下らない事』で近づいて来るなと言ってるんだ。」

 

楯無

「!?…く、下らないですって!!」

 

 自分のプライドを賭けて挑んだ決闘を太一は下らないと言って来た

 それを聞いた楯無は一気に怒りの感情が高まったがそれを何とか抑え込んだ

 

太一

「俺にとってこの勝負は受ける必要は無いんだが…お前の知り合いから話を聞いたら無視すると余計絡んでくると言われてな…仕方なく受ける事にしたんだ。」

 

楯無

「(私の知り合い…本音ちゃんね!)…いいわ…その条件を吞むわ!」

 

太一

「その言葉に嘘は無いな?」

 

楯無

「ええ!」

 

太一

「いいだろう…まあ、はぐらかそうとしてもこれだけ証人がいればそれも出来ないだろうがな?」

 

 太一はそう言って観客席に視線を移した

 

楯無

「くっ!!」

 

太一

「さてやるか…<デジタル・セレクト>…【モード:ジエスモン】!!

 

 太一は【ロイヤルナイツ】を展開し、今回は【ジエスモン】を選択した

 

 ザワザワ…

 

楯無

「何それ!?そんな機体のデータは無いわよ!!」

 

 【ジエスモン】の姿に楯無だけでなく観客席までも騒ぎ出した

 

太一

「さっさと始めるぞ。」

 

 周囲が騒ぐ中、太一は気にもせず試合を始めようとするのだった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

セシリア

「アレが【ジエスモン】…【デュナスモン】と同じ白い竜を模した聖騎士ですわね…」

 

シャルロット

「うん、でも戦闘方法は違うみたいだね…手足だけじゃなく尻尾にまで剣が装備されてる。」

 

ラウラ

「格闘戦を主体にしていた【デュナスモン】と違い【ジエスモン】は剣を用いた戦闘が得意のようだな。」

 

 始めて見る【ジエスモン】にセシリア、ラウラ、シャルロットは思い思いの感想を述べていた

 

「言っとくけど【ジエスモン】の武器はあれで全部じゃないわよ。」

 

セシリア&ラウラ&シャルロット

「え?」

 

マドカ

「本当だ。まあ、あの生徒会長が兄さんから【ジエスモン】の力を全て出す事が出来なければ見る事も出来んがな?」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

楯無

「…そう言う事ね…確か貴方の機体は複数の姿を持つ特殊な機体だと聞いたわね…データが無いって事はそれは初めて使った機体って事ね?…フフッ…嬉しいわね…」

 

太一

「嬉しい?何がだ?」

 

 【ジエスモン】の姿に楯無は驚いていたが、太一の【ロイヤルナイツ】がどう言うISなのかを思い出すと納得したように落ち着いた

 それと同時に何故か笑いが込み上げて来ていたのだが、太一は何が嬉しいのか分からずにいた

 

楯無

「今迄の機体を使わずに新しいので来たって事はそれだけ私を警戒してるって事でしょ?」

 

太一

「…は?」

 

楯無

「え?」

 

太一

「何を言ってるんだ?俺が【ジエスモン】にしたのは気分で選んだだけだ。それに夏休みの時にコイツは既に使用している。お前が初めての相手にはならんぞ?」

 

楯無

「!?…き、気分で選んだだけですって!!」

 

太一

「当り前だろ?何で俺が一々そんな事を気にしないといけないんだ…全く…何を言い出すかと思えば…随分自意識過剰だな?」

 

楯無

「あ、ぐっ…だ、黙りなさい!!」///

 

 自分が勘違いしていた事に楯無は顔を赤らめた

 そのまま自分の失言を掻き消す様に太一に向かっていった

 楯無は手に持った槍【蒼流旋】で攻撃を仕掛けたが…

 

太一

「はぁ…」

 

 太一は溜め息を一つ付くと赤いマントを全身に纏い、楯無の槍を軽々と躱した

 

楯無

「!?…ならこれはどうよ!!」

 

 ガガガガガガガガガガガガガッ!!!!

 

 自分の槍が躱された事に驚くがすぐに気持ちを切り替え【蒼流旋】に装備された4門のガトリングで攻撃を仕掛けた

 

太一

「………」

 

 一方の太一はその場を動かず楯無の攻撃を受けるだけだった

 弾幕によって土煙が太一を覆いつくすと楯無は射撃を止めた

 

楯無

「私の槍を躱したのは褒めてあげるけどこの槍がそれだけだと思ったら大違いよ?」

 

 楯無は【蒼流旋】のガトリングを太一が避けられなかったと思った

 だが、煙が晴れるとそこには…

 

楯無

「!?」

 

 太一の周囲に《アト》《ルネ》《ポル》の3体が呼び出されていた

 楯無の射撃はこの3体の張ったバリアによって防がれていたのだ

 

楯無

「な、何それ!?」

 

太一

「………《アト》…行け!」

 

 驚く楯無を他所に太一は《アト》だけを楯無に向かわせた

 

楯無

「!?」

 

 ガキィィィンッ!!

 

 向かって来た《アト》の剣を楯無は咄嗟に【蒼流旋】で防いだ

 

楯無

「ぐうっ!?(な、何これ!?攻撃が凄く重い!?)」

 

太一

「ほぉ?伊達に国家代表では無いな?《アト》の剣を防ぐとは思わなかったぞ?」

 

 太一は《アト》と戦う楯無の感想を述べていた

 その姿は完全に観戦状態となっていた

 

楯無

「クッ!貴方!!真面目に戦う気が有るの!!」

 

 そんな太一の態度に楯無は怒鳴り声をあげるが…

 

太一

「真面目に相手をして欲しいならまずは《アト》を突破して見ろ。それが出来たら俺自身が相手をしてやる。」

 

 《アト》1体を越えられない様では自分が戦う価値もないと言って来た

 

楯無

「グッ!やってやるわよ!!!」

 

 その太一の挑発に乗った楯無は《アト》に向かって行った…

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

シャルロット

「マドカと鈴の言ってた他の武装ってあの3体の事だね?」

 

マドカ

「そうだ。あの3体は《アト》《ルネ》《ポル》と言ってな…独立稼働する支援ユニットだ。」

 

 楯無と戦う《アト》を見て、試合前にマドカと鈴が言っていた【ジエスモン】の他の武装が《アト》《ルネ》《ポル》の事だと理解した

 

セシリア

「独立稼働…わたくしの使う【BT兵器】みたいなものでしょうか?」

 

「それが一番近いわね。でも、見ての通りアレ単体でも恐ろしく強いわよ。平行世界から戻った後【ジエスモン】で訓練をして貰ったけどあの3体の内の1体にも敵わなかったわ。」

 

ラウラ

「そのようだな…国家代表が手玉に取られている…あれでは太一と戦う以前の問題だな…」

 

 ラウラの言う通り楯無は《アト》相手に押されていた

 今のままでは楯無が太一と直接交えるのは無理なのをこの場にいる全員が分かっていた…

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 ガキィンッ!キンキンッ!ギャリィンッ!

 

 

楯無

「グゥッ!?」

 

 観戦するマドカ達の推測通り楯無は《アト》1体に苦戦を強いられていた

 

楯無

(何なのよコイツ!?この私がここまで手古摺るなんて!?でもね…)

 

 だが、楯無には秘策があった

 《アト》と戦いながら楯無はその準備を進めていた

 しかし…

 

太一

「…《アト》…下がれ。」

 

楯無

「!?」

 

 突然太一は《アト》を下げた

 

楯無

「あら?その子を下げるなんて漸く私の力が分かったのかしら?」

 

 太一の突然の行動に楯無は自分の強さを太一が認めたと思った

 だが…

 

太一

「何を言ってるんだか…」

 

楯無

「…何ですって?」

 

 そう言う訳では無かった

 楯無はまたも勘違いしていた

 

太一

「…『水蒸気爆発』か?」

 

楯無

「!?」

 

 その一言に楯無は目を見開いた

 太一は楯無が準備していた秘策を見抜いていた

 楯無のIS【ミステリアス・レイディ】にはナノマシンを生成する【アクア・クリスタル】と呼ばれる装備が搭載されている

 この【アクア・クリスタル】によって造り出されたナノマシンは水を自在に制御する事が出来る

 更にこのナノマシンにはISのエネルギーを熱エネルギーに変換する機能も組み込まれていた

 楯無が準備していたのはナノマシンの二つの機能を用いた戦術

 ナノマシンを霧に変化させ周囲に散布する事で熱エネルギーを一気に高めて大爆発を引き起こす技…【清き熱情(クリア・パッション)】だった

 この【清き熱情(クリア・パッション)】を太一は初見でそれも準備段階で見破ったのだ

 

楯無

「くっ!?(【清き熱情(クリア・パッション)】を見抜いた!?一体いつの間に!?あの支援機に戦いを任せてサボってたわけじゃなかったの!?)」

 

 一方、奥の手を見破られた楯無は激しく動揺していた

 

楯無

(今まで【清き熱情(クリア・パッション)】を見抜いた人なんて一人もいなかったのに…どんな洞察力してるのよ!?…けど…)

 

 だが、驚きも一瞬で楯無はすぐに持ち直した

 何故なら…

 

楯無

「…私の奥の手を見抜いたのは褒めてあげるわ!!」

 

太一

「別に褒められるほど大した事では無いんだがな?」

 

楯無

「ヌグッ!?そう…ならその大した事の無い技の威力を思い知りなさい!!!」

 

 【清き熱情(クリア・パッション)】の準備が今終わったからだ

 

楯無

(でも、問題は彼があの《アト》って言うのを戻した事ね…私の攻撃を防いだ事から考えてかなり強力なバリアを張れるみたいだけど…)

 

 だが、楯無は序盤でガトリングを防いだバリアを警戒していた

 しかし…

 

楯無

(けど、どんなに強力でも全方位の爆発を防ぐ事は不可能な筈…そうじゃなきゃ《アト》って言うのを戻す筈無いわ!!)

 

 楯無は今迄の状況を分析した一に【清き熱情(クリア・パッション)】を防ぐのは無理と結論を出した

 確かに楯無の推測通り《アト》《ルネ》《ポル》のバリアは一方向にしか張れない

 だが、楯無は大きな間違いをしていた

 そもそも太一にそんな小手先の攻撃が通用しない事に未だに気付いていなかった

 

太一

「ハァ…下らん…コレがお前の奥の手とはな…」

 

楯無

「何ですって!?」

 

 ブンッ!!

 

 太一は右腕を振り上げた

 

楯無

「!?」

 

 それにより凄まじい剣圧が巻き起こった

 すると…

 

 バシャッ!!

 

楯無

「………え?」

 

 周囲に『水』が降り注いだ

 いきなり現れたその『大量の水』が何なのか楯無はすぐに理解した

 

楯無

「う、嘘よ!?あり得ない!?こんな事…う、腕の…一振りで…」

 

 だが、それは楯無にとってとても信じられない出来事だった

 何故ならその水は楯無が周囲に霧に変えて散布したアクア・ナノマシンだった

 太一が剣を振り上げた時に生じた剣圧が霧となってアリーナに充満していたアクア・ナノマシンを霧から水へと強制的に戻されてしまったのだ

 

楯無

「あ…あ…」

 

 剣の一振りでそんなとんでもない事を仕出かした太一に楯無は勿論、客席の生徒や教師達も驚きの余り言葉を失ってしまった

 そして…

 

太一

「…コレ以上付き合うのも面倒だ…終わらせるぞ…」

 

楯無

「!?」

 

太一

《アン・ポア・トゥールス!!!》

 

 太一がそう言うと《アト》《ルネ》《ポル》の3体が三角形のエネルギーの陣を作り出した

 それは平行世界で戦った時に太一が使った技…《アン・ポア・トゥールス》の体勢だった

 だが、あの時と違い陣のサイズは遥かに小さかった

 《アン・ポア・トゥールス》の発射体勢に入った太一に対して楯無は…

 

楯無

「私を…舐めるなあああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 楯無は【蒼流旋】に残った全ナノマシンを集中させた

 

楯無

「喰らいなさい!!【ミストルティンの槍】!!

 

 太一に対して楯無も【ミステリアス・レイディ】最大の攻撃…【ミストルティンの槍】で突っ込んでいった

 だが…

 

太一

《アン・ポア・トゥールス!!!》

 

 ドギュゥゥゥゥゥンッ!!!

 

 最大の攻撃を仕掛けた楯無に対して太一は《アン・ポア・トゥールス》の威力を最低出力で真下に向かって放った

 

 ドガァァァァァンッ!!!

 

 二人の技は激しく激突したが…

 

楯無

「うっ…うああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 【ミストルティンの槍】では《アン・ポア・トゥールス》に敵う筈も無く楯無ごと呑み込まれていった

 

 チュドオオオオオォォォォォンッ!!!

 

 《アン・ポア・トゥールス》が着弾すると巨大な爆発が起きた

 だが、観客席のマドカと鈴は最大出力の《アン・ポア・トゥールス》を知っているので太一が手加減した事が目に見えて分かっていた

 煙が晴れるとそこには…

 

楯無

「ぁ…ぁぁ…」

 

 気絶した楯無が倒れていた

 当然ながら【ミステリアス・レイディ】のSEは0になっており、強制解除されていた

 太一は倒れている楯無を一瞥するとISを解除し楯無を担いでアリーナから出て行った

 その後、楯無を医務室に放り込むと自分の部屋に戻って行った

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 一方で観客席の生徒達は【ジエスモン】の力と国家代表でありながら手も足も出せず敗れ去った楯無の姿に言葉を失っていた

 その中に、楯無と同じ水色の髪と赤い眼をした眼鏡をかけた少女がいた

 

「…聖騎士【ロイヤルナイツ】…デジモンと同じ力を持ったIS…やっぱりお姉ちゃんでも…デジモンには勝てないんだ…」

 

 楯無を姉と呼ぶ少女は他の生徒以上に複雑な表情をしていたのだった

 

「…私も…アレくらいの力があれば…」

 

 




 <予告>

 楯無との決闘に勝利した太一

 だが、太一はここ最近の出来事からある疑問が生まれていた

 それは一体何なのか?



 次回!!

 ISアドベンチャー 聖騎士伝説

 新たな疑惑

 今、冒険が進化する!


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