ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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第114話:奪われた少女

 

 

 一夏が楯無から今の世界の現状を聞かされてから数日後…

 

一夏

「あ、あの…」

 

 一夏は再び1年4組に来ていた

 

「………」

 

 カタカタ…

 

 一夏はそこにいる一人の少女に話しかけるが少女は一夏を完全に無視してパソコンを弄っていた

 

一夏

「さ、更識…簪さん…」

 

「!?」

 

 一夏が少女の名前を呼ぶと手が止まった

 一夏が話しかけた少女こそ、先日楯無から文句を言われる理由となった少女…

 楯無の妹…『更識簪』だった

 名前を呼ばれた簪だったが…

 

「………」

 

 カタカタ…

 

 何事も無かったかのように作業を再開した

 しかし…

 

一夏

「オ、オイ!!」

 

 ここまで無視され続けた一夏は声を荒らげた

 すると…

 

「…五月蠅い…」

 

一夏

「!?」

 

 漸く簪が口を開いた

 

「…私…貴方を無視してるんだけど?分からないの?」

 

一夏

「うっ…」

 

 ハッキリと無視していると言う簪に一夏は顔を顰めるが簪のこの態度は当然と言えば当然だった

 簪にとって一夏は初めからいい印象など無く、【白式】が没収された事を知った今では最も嫌悪する人間となっていた

 その為、簪は一夏と話す事すら嫌だったのだが…

 

「…まあいい…所で…何で私の名前を知ってるの?」

 

 簪は一夏が自分の事を知っている理由を聞いて来た

 

一夏

「それは…『君のお姉さん』から…」

 

(やっぱりお姉ちゃんの仕業か!?いつもいつも私の邪魔ばかりして!!!)

 

 一夏の答えは簪の予想通りだった

 だが、それは当たって欲しくない予想だった

 楯無が余計な事をしたせいでこの学園で一番関わりたくない人間が目の前にやって来てしまったからだ

 

「…お姉ちゃんから私の事を聞いたなら分かるでしょ?私は貴方と話したくない…顔も見たくない…だから今すぐ私の前から消えて!!」

 

 その為、簪は一夏を追い出そうとした

 しかし…

 

一夏

「ま、待ってくれ!?君の手伝いがしたいんだ!!」

 

 何をトチ狂ったのか一夏は簪の手伝いに来たと言い出した

 

「…は?何言ってるの?」

 

 それには流石の簪も驚いてしまった

 

一夏

「お、俺の【白式】のせいで君の専用機は放棄されたんだろ?だからその責任を取ろうと…」

 

 と、それらしい事を言うが、一夏はいつもの癖で自分が何を言ってるのか分かってなかった

 何故なら…

 

「ふ~ん…じゃあこの【山嵐】のシステムを組めるの?」

 

一夏

「え!?え~っと…コレは…その…(ぜ、全然分からねえ!?)」

 

 一夏にISのOSやプログラムを組む事など出来る筈無いからだ

 

「ISのモーションプログラムは?機体制御のOSは?」

 

一夏

「あ…うっ…」

 

 簪は次々に自分がしている作業を見せてそれが出来るか聞いて来た

 本来、簪が一夏に見せているものは機密情報に相当する為、見せてはいけないものなのだが、一夏には見せた所で到底理解出来ないので問題無いと簪は考えていた

 それはその通りで一夏は簪がしている作業内容を1つも『出来る』とは言わなかった

 

「…出来ないの?じゃあ何を手伝うの?」

 

一夏

「………」

 

「…お茶くみ?それともマッサージ?」

 

一夏

「ぐっ…」

 

「…そんな事して欲しくないし、そんな事しか出来ない男の手伝いなんか始めからいらない。ねえ、さっき『責任を取る』って言ったけど貴方の言う責任の取り方って何なの?」

 

一夏

「ううっ…」

 

「もう一度言う…今すぐ私の前から消えて!!それが貴方に出来る唯一つの『手伝い』よ!!!」

 

一夏

「!?」

 

 再び簪から出て行くように言われた一夏は顔を俯かせた

 だが、簪の言う通り何も出来ない一夏にはそれが唯一出来る『手伝い』と言えた

 

「二度と私の前に顔を出さないで!!私から専用機を『奪った男』の顔なんか見たくない!!!」

 

一夏

「………」

 

 簪から完全に拒絶された一夏は何も言えずそのまま4組の教室から出て行った

 そして…

 

全員

「………」

 

 一夏が出て行った後、教室内は静まり返っていた

 普段から口数が少なく大人しい簪の剣幕に他の生徒達は黙り込んでしまっていたのだ

 

「…何?」

 

全員

「!?」

 

 簪が周囲に目を向けると全員が慌てて目を逸らし、何事もなかったように動き始めた

 

「………」

 

 そして、簪も中断していた作業を再開したのだが…

 

「………ハァ~…」

 

 パソコンに目を戻すと簪は笑みを浮かべていた

 そこに映っていたのは…

 

「やっぱり何度見てもカッコいいな~…聖騎士…【ロイヤルナイツ】…」

 

 太一の【ロイヤルナイツ】だった

 

「…彼こそ本物のヒーロー…あんな顔と口だけのクズとは違う…」

 

 そう言って太一の映像を見つめる簪の眼はとても輝いていた…

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 1年4組のこの騒動はあっと言う間に学園中に広まり…

 

千冬

「よりにもよって更識妹の所に乗り込むとは…あの馬鹿また余計な事をしたな…」

 

 千冬達の耳にも入った

 

オータム

「【白式】関連の話はお前から聞いていたけどよ…更識簪だったか?アイツどうやってそいつの事知ったんだ?」

 

千冬

「更識妹の姉だろ…一夏と更識妹の関係を知っててその事を教えるとしたらアイツしかいないだろうからな…」

 

オータム

「あの生徒会長か…アイツも余計な事をしてくれたもんだ…」

 

千冬

「全くだ…恐らく本人は妹の事を想って一夏に文句を言っただけのつもりなんだろうがそれが余計な事だという事が分かってない…更識妹にとって一夏はこの学園で一番会いたくない人間だ…今迄アイツは一夏と会わないようにしていたのにその切っ掛けを作ってしまったんだからな…恐らく更識妹の腸は煮えくりかえっているぞ…」

 

 この騒動の原因が楯無であると千冬は見抜いていた

 そして、実の姉の楯無よりも他人の千冬の方が簪の心情を正確に理解していた

 

オータム

「…太一の部屋に不法侵入した時もそうだけどよ…アイツもアイツで碌な事しねえな?ワザとなのか無自覚なのか知らねえけどお前の弟とは違う意味で相当面倒な奴だぞ?」

 

千冬

「否定出来んな…」

 

 楯無が今後も騒動を起こさないか不安になる千冬だった…

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 一方で…

 

楯無

「あの男…簪ちゃんに近づくなんて!!」

 

 当然の様に楯無の耳にも入っていた

 話を聞いた楯無は簪に近づいた一夏に怒りを露わにしていたが、原因が自分だと言う事に気付いていなかった…

 

 




 <予告>

 楯無と一夏が立て続けに騒動を起こす中、IS学園で次の行事が始まろうとしていた

 二学期最初の行事は一体何なのか?

 そして、太一達は何をする事になるのか?



 次回!!

 ISアドベンチャー 聖騎士伝説

 二学期の催し物

 今、冒険が進化する!


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