ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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第075話:騎士の問い掛け

 

全員

「………」

 

 昼間海水浴を楽しんでいた砂浜…今ここにはセシリア、鈴、ラウラ、シャルロット、他の生徒達が集まっていた

 太一とエンシェントグレイモンが【ルーチェモン】を倒した事は既に千冬達が知らせており、近隣の住民のパニックも収まって来ていた

 その為、2人を出迎えようと彼女達はココに集まっていた

 そして…

 

全員

「!?」

 

 水平線の向こうから日が昇り始めた時、巨大な影が見えて来た

 

シャルロット

「アレが…」

 

セシリア

「エンシェントグレイモンさん…」

 

 そして全員の目の前に巨大な赤い竜…エンシェントグレイモンが現れた

 その背には箒を抱えた【デュナスモン】を纏った太一がいた

 

 ズシィィィンッ!!

 

 そしてエンシェントグレイモンが全員の目の前に降りて来た

 

「デッカイわね~…」

 

ラウラ

「本当にな…メタルグレイモン以上だ…」

 

 全員がエンシェントグレイモンを見上げていた

 そして太一が下りてくるとそのまま近くにいた教師に気絶した箒を預けた

 それを見て集まっていた生徒達は【ルーチェモン】に憑りつかれていたのが箒だと理解した

 だが、生徒達はそれを知っても余り驚いてはいなかった

 先日の箒を見ていればそれも当然だと全員が思ったからだった

 その一方で太一がISを解除すると…

 

 カッ!

 

 エンシェントグレイモンの体が光り出した

 そのまま見る見る小さくなっていくと…

 

ボタモン

「ミ~~~…」

 

全員

「…え?」

 

 全員の目の前にコロモンと同じく手足の無い一頭身の身体に黒い産毛で覆われた眼が黄色く光っているデジモン…

 幼年期のコロモンどころかその更に前の初期段階、幼年期前期の『ボタモン』にまで戻ってしまっていた

 ボタモンを見て…

 

全員

「か、可愛い~~~♥」///

 

 全員揃って黄色い声をあげた

 だが…

 

太一

「お前等…スマナイが休ませてくれ…俺達はもう限界なんだ…」

 

全員

「…はい…すみません…」

 

 太一にそう言われては彼女達も黙るしかなかった

 周りが静かになると太一はボタモンを抱えて旅館へと戻って行った

 その後を皆も追いかけて行った…

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 太一とボタモンが旅館に戻り、その後に続いて代表候補生達や他の生徒、教師達も戻ると浜辺には千冬と束、オータム、真耶、スコール、クロエの6人だけが残った

 

「じゃあちーちゃん、束さん達はこの辺で帰るよ。」

 

千冬

「そうだな…これ以上ココに居るのは不味いか…」

 

 そろそろ帰ると言う束を千冬も止めなかった

 千冬の言う通りこれ以上この場に留まると今度は束の方に危険が及ぶかもしれないからだった

 

「あ、そう言えばちーちゃん、帰る前に聞きたい事があるんだけど?」

 

千冬

「ん?何だ?」

 

「いっくんってどうなるの?」

 

千冬

「その事か…」

 

 束の質問に千冬は考え込んだ

 今回の一夏の行動はどう見ても見過ごす事は出来ない物ばかりだった

 謹慎を言い渡されていながらの無断出撃…

 現場では避難する様に言う太一の言葉を無視し、【ルーチェモン】に無謀に挑んであっさり返り討ち…

 【ルーチェモン】の攻撃で【白式】は大破、半壊…

 【雪片弐型】もへし折られた…

 誰がどう考えても一夏をお咎め無しにする事は出来なかった

 

千冬

「取り合えずアイツが目を覚まして怪我が治ったら…そうだな、まずは懲罰房に放り込む…反省文は…500枚くらい書かせるか…後は夏休み前に復帰出来れば半分は学園で補習だな…」

 

オータム

「妥当な所じゃねえか?」

 

「う~ん…やっぱりそのくらいの処罰は受ける事になるか~…」

 

千冬

「まあ正式な処罰内容は理事長と話し合ってからになるがな。」

 

 千冬のあげた処分内容にオータムも束も特に異論は無いようだった

 一夏はそれだけの事を仕出かしたのだから仕方の無い事だった

 

「じゃあ【白式】の方はどうするの?【ルーチェモン】にボコボコにされたよね?」

 

 次に束は大破した【白式】をどうするのか聞いて来た

 

千冬

「【白式】か…それもあったな…」

 

「コアは無事みたいだから束さんが直そうか?」

 

 すると束が自分が修理すると言って来たのだが…

 

千冬

「…いや、お前はやらなくていい。」

 

 千冬は束のその提案を断った

 

「え?ちーちゃんがそう言うならそうするけど…本当にいいの?アレってそう簡単に直る様なダメージじゃないよ?」

 

クロエ

「そうですね…あの状態ではISの自己修復でも完全には直りません。専門の工場に出すしかないですよ?」

 

真耶

「確かに…それなら篠ノ之博士に直して貰った方が早いんじゃないですか?」

 

 束の修理を断った千冬に真耶やクロエは束の修理して貰った方がいいと言うが千冬は首を横に振るだけだった

 

千冬

「お前達の言いたい事も分かる。だが仮に束が【白式】を修理して元に戻したとしよう?それを一夏が受け取って…素直に礼を言うと思うか?」

 

全員

「え?」

 

 千冬の言う事に束達は首を傾げるが…

 

オータム

「あ~そう言う事か…」

 

 オータムが千冬が何を言いたいのか気付いた

 

スコール

「どう言う事?」

 

オータム

「簡単だ。アイツの事だからそのままで返って来た事に不満を言うって事だ。『何で【Dシリーズ】にしてくれなかったんだ!』とかな?」

 

束&真耶&スコール&クロエ

「あ~~~…」

 

 オータムの言う事に全員納得した

 確かに一夏なら確実に言いそうな台詞だったからだ

 

千冬

「という訳で束、お前は手を出すな。」

 

「分かったよ…」

 

 その為、束も納得してを引く事にした

 

スコール

「なら【白式】の修理はどうするの?」

 

千冬

「【白式】を開発した倉持技研に頼むつもりだ。だが、向こうにも都合があるだろうから後回しになるだろうな。」

 

真耶

「いいんですかそれで?」

 

千冬

「ああ、それに一夏の処分に関してだが…アイツにはISを持たせるのは危険と判断して【白式】は授業、訓練、外出の時以外はこちらで預かる事にする。これに関しては理事長に報告はするが決定だ!」

 

 今回の一件から千冬は以前オータムの言っていた『一夏から必要な時以外は【白式】を取り上げる』と言う案を実行する事に決めていた

 

千冬

「それにアイツはどちらにしろ目を覚ましても当分の間は懲罰房の中だ。夏休みも半分は補習漬けになる。倉持に最優先で修理させたところでISは使えん。それなら【白式】の修理は向こうの手の空いた時でいい。それに…」

 

「それに?」

 

千冬

「…あそこで【白式】の修理を最優先でやらせる事が出来んのだ…倉持には【白式】の件でかなりの迷惑をかけたからな…(いや、一番被害を被ったのは『アイツ』か…)」

 

 そう言いながら千冬は【白式】を開発する為に最も被害を受けた人間の事を考えていた

 

真耶

「え?倉持と何かあったんですか?」

 

千冬

「ああ…実はな………」

 

 真耶の質問に千冬は簡単に説明した

 

千冬

「………と言う訳だ…」

 

真耶

「そう言う訳ですか…それならこれ以上の無理は言えませんね…」

 

 すると真耶は納得した

 

「へ~…そんな事があったんだ?」

 

千冬

「ああ、そう言う訳でこれ以上【白式】…と言うか一夏関連の事であそこに我儘を言う訳にはいかん…まあ、早くても2学期が始まる頃には直して欲しいくらいは言うつもりだがな。遅くなるならそれはそれで仕方ないで諦める。」

 

スコール

「そうね、そのくらいでいいと思うわよ?」

 

オータム

「だな、それによ~…【白式】と…後は【雪片】もだな…アレのせいであの馬鹿は自分が強くなったと勘違いしてんだろ?必要な時以外取り上げるだけじゃなくて当分は修理中って事にして量産機で一から鍛え直した方がいいんじゃねえか?アイツは太一と違って【白式】しか使えない訳じゃねえんだろ?」

 

真耶

「はい、試験の時は【打鉄】を使ってましたから量産機も使えますよ。」

 

 オータムの質問に今度は真耶が答えた

 異世界から来た太一は【イグドラシル】の造った【ロイヤルナイツ】しかISを使えないが、一夏はそう言う訳では無い

 現に一夏は試験の時に真耶を相手に【打鉄】で模擬試験を受けていたので量産機で訓練する事も出来るのだ

 

千冬

「それも一つの手か…まあその辺りは追々考えればいいな…束、取り合えずそう言う感じで進めるつもりだ。」

 

「うん、分かったよ!」

 

 千冬がそう締めくくると束も納得した

 

「じゃあ束さん達帰るね~♪」

 

千冬

「ああ…」

 

真耶

「お達者で!」

 

 互いに軽く挨拶をすると束はクロエとスコールを連れて拡張領域(バススロット)から人参ロケットを出し、それに乗って飛んで行った

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 太一とコロモンが戻って来た頃…

 【ルーチェモン】にボコボコにされ、意識を失っている一夏は…

 

一夏

『………何処だココ?』

 

 気が付くと見知らぬ場所に立っていた

 辺り一面は海の様になっているが普通に立つ事が出来、枯れ木が数本立っていた

 周囲を見渡す一夏の前に…

 

?1

『………』

 

一夏

『誰だ?』

 

 白い帽子とワンピースの白い髪の少女がいた

 だが、少女の顔は帽子でよくは見えないが一夏を悲しげな表情で見ていた

 

白い少女

『………』

 

一夏

『な、なあ…此処は何処だ?君は誰なんだ?』

 

白い少女

『………』

 

 口を開こうとしない少女に一夏は問いかけるが少女は頑なに喋ろうとはしなかった

 その時…

 

?2

『力を…欲しますか?』

 

一夏

『!?』

 

 後ろから声が聞こえた

 一夏が後ろを振り返るとそこには剣を携えた白いISを纏った女性が立っていた

 それはまるで騎士の様な姿だった

 だが、女性の顔は口元以外は兜で覆われていて全体を見る事は出来なかった

 

白いISの女性

『貴方は力を欲しますか?』

 

 すると女性はさっきと同じ事を聞いて来た

 女性の問いに対して一夏は…

 

一夏

『欲しい…俺は力が…強い力が欲しい!!!!』

 

 欲しいと答えた

 

白いISの女性

『それは何故ですか?』

 

 女性の更なる質問に対して…

 

一夏

『力があれば…もうアイツにデカい顔される事は無い…千冬姉も…鈴も…皆俺を見直す…』

 

白いISの女性

『………』

 

一夏

『だから俺は力が欲しい…デジモン何て化け物…俺が全部ぶった切ってやるんだ!!!俺がこの世界を守ってやるんだ!!!』

 

 やはり今迄と同じように自分の見栄とプライドしか考えていなかった

 更にデカい顔と言うが、アイツ…つまり太一は今迄大きな顔をした事は一度も無かったのだが、どうやら一夏にはそう見えていたようだった

 

白いISの女性

『それが貴方の答えなのですか?』

 

一夏

『ああそうだ!!俺はこんな所で終わるような男じゃない!!!』

 

 女性の確認の質問に一夏はハッキリと答えた

 だが、それを聞いて…

 

白い少女

『………』

 

 少女は何も言わず姿を消した

 

一夏

『どうしたんだあの子?なあ…』

 

 少女が消えた事に一夏は理由も分からず女性に問いかけるが、女性の方も一夏に背を向けていた

 

白いISの女性

『…どうやら貴方がココに来るのはまだ早すぎたようですね…今の貴方に『』は必要無いのかもしれません…』

 

一夏

『…え?』

 

 女性の言葉の一部が聞き取れなかったが、背中を向けた女性が一夏の答えに失望した事だけは確かだった

 女性はそのまま一夏に振り返る事も無く歩きだした

 

一夏

『オ、オイ!!待ってくれよ!!力をくれるんじゃなかったのかよ!?』

 

 自分に力をくれるものだと思っていた一夏は自分から離れていく女性を追いかけた

 だが、一夏がいくら必死に『走って』も目の前を『歩く』女性に追い付けなかった

 それどころか距離が開いて行くだけだった

 そして次第に少女の時の様に姿も消え始めていた

 だが、消える直前…

 

白いISの女性

『………これはせめてもの情けです…』

 

 最後にそう言って女性も完全に消えた

 

一夏

『待ってくれ!!何処行ったんだ!!』

 

 誰もいなくなり1人となった一夏が大声で呼びかけるが返事が返って来る事は無かった

 やがて、周囲の景色が暗くなっていくと一夏の意識も闇に沈んでいった…

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

一夏

「はっ!?」

 

 次に意識を取り戻した一夏がパッと目を開けると旅館の天井が視界に映った

 そのまま起き上がるとすぐに自分の身体を確認した

 身体には点滴や複数の管が繋がっており、周りには医療用機材が並んでいた

 一夏はさっきまでの白い少女と女性とのやり取りを覚えてはいなかったが【ルーチェモン】の攻撃でボコボコにされ重傷を負ったと言うのは辛うじて覚えていた

 だが、今の一夏の身体は怪我一つ無い状態になっていた

 自分の身に起きた不可思議な現象が理解出来ずにいたが…

 

一夏

「………そうだ!!…【ルーチェモン】は!?」

 

 一夏は【ルーチェモン】との戦いの事を思い出し、布団から飛び起きるとそのまま部屋を飛び出したのだった

 

 




 <予告>

 何故か全快した一夏は現状の確認をする為、千冬に問い詰めた

 そんな一夏に千冬は今回の件で問題を起こした一夏に処分を言い渡す

 一体一夏にはどんな処罰が下されるのか?



 次回!!

 ISアドベンチャー 聖騎士伝説

 一夏への処罰

 今、冒険が進化する!


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