ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

80 / 133
機体設定②に【ヴァルキリー・ドランザー】と【メタルクロス・フェンリル】

登場デジモン紹介に【エンシェントグレイモン】【ブラックウォーグレイモン】【ルーチェモン・フォールダウンモード】【ルーチェモン・サタンモード】

追加しました



第076話:一夏への処罰

一夏

「千冬姉えええええぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 部屋を飛び出した一夏は今の状況を知ろうと千冬を探していた

 

千冬

「ん?…なっ!?い、一夏!?」

 

一夏

「いた!!千冬姉!今どうなってんだ!?【福音】は!?【ルーチェモン】は!?」

 

 自分の目の前に現れた一夏の姿に千冬は目を見開いた

 【ルーチェモン】の《パラダイスロスト》でボコボコにされた一夏はどう見ても重傷で当分は目を覚まさないだろうと思っていた

 だが、今の一夏はどう言う訳かピンピンしていた

 

千冬

(一体一夏に何があった?束なら分かるかもしれんがさっき帰ったしな…事情を話せばすぐに戻って来ると思うが…)

 

 その為、千冬は一夏に何が起きたのか分からず束を呼び戻そうと考えた

 だが…

 

千冬

(いや、やめておくか…アイツが戻って来たらコイツがまた馬鹿な事を言いだしかねん…束には後で話を聞く事にするか…)

 

 束を戻すと一夏がまた碌な事をしないと思い至り、その考えを捨てた

 そして気を取り直すと一夏の質問に答えた

 

千冬

「【ルーチェモン】なら八神とアグモンが倒した。箒も助け出されて今は眠っている。【福音】も同様だ。」

 

一夏

「そ、そんな…くそっ…」

 

 全てが終わった後と聞かされ一夏は悔しさから顔を歪めていた

 そんな一夏を千冬は呆れていた

 一夏は自分が仕出かした事をまるで自覚していなかったからだ

 

千冬

「…お前にそんな事を言う資格があるのか?」

 

一夏

「え?」

 

 その為、千冬は今さっき理事長の轡木と話した事を伝える事にした

 

千冬

「一夏…私はお前に『部屋で大人しく謹慎していろ』と言った筈だ。それでお前は何をした?」

 

一夏

「!?」

 

千冬

「誰が出撃していいと言った?私は誰からもお前の出撃を許可したと言う報告を受けていないのだが?」

 

一夏

「そ、それは…その…」

 

 無断出撃の件を問い詰められた一夏は焦りながらも必死に言い訳を考えていた

 そして…

 

一夏

「あっ…そ、そうだ…ほ、箒!箒を追いかけたんだ!!」

 

千冬

「ほぉ…箒をか?」

 

一夏

「そ、そうなんだ!!ISスーツを着た箒がISのある倉庫に行くのを見て気になって追いかけたんだ!!そしたら箒が【打鉄】で飛び出したから俺も…」

 

 言い訳を思い付いた一夏は捲し立てる様に説明した

 確かに一夏の言った事はその通りであるのだが、この言い訳には問題があった

 

千冬

「成程な?箒を見かけたから追いかけたと?…だがお前…『何処』で箒を見かけたんだ?」

 

一夏

「え?」

 

千冬

「謹慎を言い渡されたお前が箒を見つけるとしたら部屋の中からしかない訳だが…お前の部屋の前には見張りの為に教師を一人置いていた…仮にお前が廊下への扉から見たならその教師も当然気づく筈だよな?」

 

一夏

「!?」

 

千冬

「部屋の窓から見つけたとしてもお前のいる部屋から見える位置ではアイツがどっちに向かおうとISの置いてある倉庫に向かうかは分からないんだが?」

 

一夏

「そ、それは…」

 

 千冬の言葉に一夏は冷や汗を流した

 一夏のいた部屋はISのある倉庫とは旅館を挟んで正反対の位置にあった

 窓から箒を見たとしても箒が倉庫に行くかなど分かる筈なかった

 さらに箒がISスーツを着ていたからと言ってもこじ付けにしかならない

 なにより…

 

千冬

「そもそもお前…箒を見つけたのなら何故その事を近くにいた教師に言わなかった?」

 

一夏

「!?」

 

 この事を一夏が誰にも報告しなかった事が一夏が部屋を抜け出したと言う何よりの証拠だった

 つまり一夏は自分で部屋を抜け出したと暴露したのだ

 それ以前に勝手に出撃した時点で見張りの目を盗んで部屋から抜け出た証拠なのだ

 一夏がどんな言い訳を言おうと千冬は信じる気が無かった

 

千冬

「それで?他に何か言いたい事はあるか?」

 

一夏

「………」

 

 一夏は何も言わなかった

 と言うより言い訳がアレしか思いつかなかった

 それも千冬によって論破され更に追い詰められてしまった

 

千冬

「無い様だな?…では一夏…この際だから学園で決定したお前の処罰内容を教えておく。」

 

一夏

「しょ、処罰!?」

 

 自分が処罰の対象となったと聞かされ一夏は青褪めた

 だがこれは当然の決定だった

 一夏はそれだけの事を仕出かしたのだから

 

一夏

「くっ…(せめて【福音】を倒せていれば…)」

 

 だが一夏はまだ自分に都合のいい事を考えていた

 勝手に出撃した時と同じように【福音】を倒せれば無断出撃も咎められる事も無かったと思ったままだったのだ

 そしてそんな一夏の考えに千冬は気付いた

 その為…

 

千冬

「お前…【福音】を倒せていればお咎め無しになるとでも思っていたのか?」

 

一夏

「!?」

 

 一夏の考えている事を言い当てた

 自分の考えが見透かされた一夏は動揺していた

 

千冬

「言っておくが例え【福音】をお前が倒していたとしてもお前が命令違反を犯した事に変わりはない!手柄を立てれば処罰が無くなる訳では無い!!」

 

一夏

「そ、そんな…」

 

千冬

「やはりそう考えていたな…愚か者が!!普通に考えれば当然の事だろうが!!」

 

一夏

「ううっ…」

 

 自分に都合のいい様に考えていた一夏の妄想を千冬は真っ向から否定した

 千冬に怒鳴られた一夏はすっかり縮こまってしまった

 

千冬

「話を戻すぞ!先ず学園に戻り次第お前は懲罰房行きだ!そこで反省文500枚を書き終わるまで外には出られんからな!!」

 

 そしてそのままの勢いで千冬は一夏へ処罰を伝え始めた

 

一夏

「懲罰房で…500枚!?」

 

千冬

「次に夏休みの前半は学園で補習だ!それと今度の期末テストで一つでも赤点を取れば補習はさらに伸びる事になる!そうなったら休みは1週間も無いからな!!」

 

一夏

「1週間!?たったそれだけ…」

 

千冬

「それが嫌ならしっかり勉強する事だ!!(今までのコイツを見る限り赤点は確実だろうな…)」

 

 これまでの一夏を見ていて千冬はテストで合格点を出せるとはとても思えなかった

 

千冬

「そして最後に…」

 

一夏

「ま、まだあるのか!?」

 

千冬

「お前の【白式】を授業、訓練、外出の時を除いてこちらで『預かる』!!」

 

一夏

「………え?」

 

 千冬が最後に言った内容に一夏は理解が出来なかった

 言葉の意味が分からなかったのだ

 

一夏

「今…何て?」

 

千冬

「聞こえなかったのか?お前から【白式】を取り上げると言ったんだ!」

 

一夏

「そ、そんな…な、何でだよ!?何で俺から【白式】を取り上げるんだよ!?」

 

 千冬が同じ事をもう一度言うと今度は理解した

 だが一夏は何故自分がそこまでされなければならないのかは理解していなかった

 

千冬

「何でだと?今回の件から今までのお前を見ていればこれは当然の決定だろ?」

 

一夏

「と、当然!?」

 

千冬

「お前が専用機を持っていた為に今回だけでもお前は謹慎中にも関わらず無断出撃をした…退避する様に言う八神達の言葉を無視し【ルーチェモン】にアッサリ返り討ちにあった…その結果、お前は重傷、【白式】は大破…」

 

一夏

「うっ…」

 

千冬

「【福音】の時もそうだな?お前どれだけあの作戦を『楽観視』していたんだ?」

 

 

一夏

「…お、俺は楽観視なんて…」

 

千冬

瞬時加速(イグニッション・ブースト)すら使えない奴が任せろ等と言う事を楽観視していないと言うのか?」

 

一夏

「うっ…」

 

千冬

「私達はお前では無理だと止めた…だがお前は自分に任せろと言って押し通した…その結果はどうなった?」

 

一夏

「………」

 

 一夏は何も答えられなかった

 【福音】との戦いは完全な敗北

 それもマドカが重傷を負うと言う最悪の結果だった

 そしてそんな結果を出したのは他でも無い自分の実力も分からない一夏の身勝手さから出たものだった

 

千冬

「そんなお前にこれ以上専用機を持たせるのは危険と判断した!専用機を持っていれば今回みたいに勝手な事をする可能性が非常に高い!流石に完全に取り上げるのは不味いから必要最低限の時以外にしたんだ!!!」

 

一夏

「くっ…」

 

千冬

「そもそも【白式】は【ルーチェモン】にスクラップ寸前にまでされている。修理に出さなければ使い物にならんぞ?」

 

一夏

「だ、だったらすぐに修理してくれよ!!」

 

千冬

「勿論そのつもりだ。だが、先方にも都合があるからな、【白式】の修理はかなり後になるだろうな?」

 

一夏

「そ、そんな!?何でだよ!!【白式】を優先してくれよ!!」

 

 【白式】の修理が後回しとされた一夏は憤慨した

 だが、そんな一夏に対して千冬は…

 

千冬

「優先してどうする?」

 

一夏

「え?」

 

千冬

「さっき言っただろ?お前は帰ったら謹慎と補習だ。少なくとも1学期の残りの期間はお前は懲罰房の中だ。専用機を使う機会は当分無いぞ?」

 

一夏

「!?」

 

 平然とそう答えた

 千冬の言う通り学園に戻った一夏が【白式】を使う事など当分は無かった

 

千冬

「それにいい機会だ!お前は私が忠告したのにあれから何も成長していない!【零落白夜】に頼って自分が強くなったと思い込んだままだ!!だから補習の時は【打鉄】でやれ!!量産機で一から基礎を学び直せ!!!」

 

一夏

「………」

 

千冬

「そう言う訳だから【白式】を修理に出すから渡せ!」

 

 一頻り一夏の処罰内容を話し終えると千冬は【白式】を渡すように言った

 だがその時…

 

一夏

「………束さん…千冬姉!束さんは!!」

 

千冬

「束?(コイツ…【白式】を束に直させる事を思い付いたか…)」

 

 一夏は束の名前を出した

 千冬の予想通り束に修理させようと思い付いたのが

 だが、一夏がそう言うだろうと千冬は既に予想していた

 その為…

 

千冬

「アイツならもう帰ったぞ?」

 

一夏

「か、帰った!?」

 

 束が帰ると言った時、こうなる事も考えて千冬は引き止める事をしなかったし、【白式】を直すと言う束の提案を断っていた

 

千冬

「ココにはもう用は無いらしいから帰ったぞ。それに束に何を頼む気だ?【白式】の修理か?さっきお前は当分使う事は無いと言っただろ?(それに束に修理させたら一緒に【Dシリーズ】にしろとか言うだろうしな…まあそんな事言っても許可はしないがな…)」

 

一夏

「ぐっ…」

 

 一夏の姉だけあって千冬は弟が言いそうな事、考えそうな事を全て分かっていた

 だが、そのどれもが今の一夏には余計な事になる様な事ばかりなので千冬は初めから取り合うつもりが無かった

 

千冬

「ほら!分かったら早く渡せ!それともお前が修理出来るのか!」

 

一夏

「くぅぅぅ…」

 

 すると一夏は漸く観念したのか苦い顔をしながら待機状態の【白式】を渡した

 

千冬

「うむ…確かに預かった…ではお前も()()()()()()()()()()()()()…『()()』学園に戻るからな。」

 

一夏

「…え?」

 

 だが、【白式】を受け取った千冬はおかしな事を口にした

 臨海学校は2泊3日の行程、そして今日は3日目の最終日だった

 

一夏

「戻るのは今日じゃ…」

 

千冬

「ああ、理事長からの指示で臨海学校を1日伸ばすように言われた。【七大魔王】がココにまで現れたからな…今日1日は息抜きの為にゆっくり休めだそうだ。」

 

一夏

「…そう…なんだ…」

 

千冬

「お前は懲罰房で謹慎と言ったがそれは学園に戻ってからだ。それまでは普段通りにしていても構わん。…だが、また何か問題を起こせば、その時はそのまま拘束する…分かったな!!!」

 

 最後にそう言って千冬は【白式】を持って行ってしまった

 残された一夏は…

 

一夏

「チクショオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォッ!!!!!」

 

 叫び声を上げる事しか出来なかった

 自分が処罰された事に対して何も言い訳を思い付かなかった

 だが、それも本人が認めたくなくてもこれは一夏自身の自業自得…

 その為、一夏にはこれくらいしか出来る事が無かった…

 

 




 <予告>

 一日延びた臨海学校

 ルーチェモンの恐怖を忘れる様に思い思いにする生徒達

 そんな時、ラウラは太一に頼んでいたデジモンの事を教えて欲しいと頼んで来た



 次回!!

 ISアドベンチャー 聖騎士伝説

 太一のデジモン講座

 今、冒険が進化する!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。