一夏
「太一っ!!!」
Bウォーグレイモンの夢を見て冥福を祈っていた太一とコロモンの所に空気を読まず一夏が怒鳴りかけた
太一
「…何の用だ?」
そんな一夏に2人は涙を拭い振り返ったが2人の眼つきは若干鋭くなっていた
だが、それも仕方なかった
Bウォーグレイモンへの祈りを邪魔されたのだから目つきが悪くなるくらいは仕方の無い事だった
一夏
「っ!?」
だが、そんな2人の視線を受けた一夏は怯んだが…
一夏
「な、何で俺の邪魔をした!!!」
太一&コロモン
「…は?」
勢いのまま怒鳴り声をあげた
だが、その内容に太一もコロモンも一夏が何を言っているのか分からず首を傾げた
邪魔と言うが太一もコロモンもそんな事をした覚えはなかった
それは離れた所から様子を見ているセシリア達も同じ考えだった
太一
「…何の事だ?」
だから太一は何を邪魔したのか聞いたのだが…
一夏
「【福音】と【ルーチェモン】だ!!あいつ等は俺が倒す筈だったんだ!!それを横取りしやがって!!!」
太一&コロモン
「はあ?」
理由を聞いて2人は間の抜けた顔になった
何をどうすればあの状況からそんな風に言えるのか分からなかった
太一
「お前本気で言ってるのか?」
一夏
「ああそうだ!!何か違う所があるのかよ!!!」
太一
「いや、違う所って…俺達が駆けつけた時、お前【ルーチェモン】から逃げてたじゃないか?」
一夏
「そ、それは!?」
太一
「それともアレは演技だったとでも言うつもりか?俺には半狂乱になって必死に逃げてるようにしか見えなかったがな?」
一夏
「うっ!?」
太一
「仮に演技だとしても【雪片】をへし折られて丸腰になったお前がどうやってアイツを倒すって言うんだ?まさか殴って倒すつもりだったとか言う気か?」
一夏
「ぐううっ…」
太一
「まあ殴り倒されたのはお前の方だったがな…それに邪魔したと言うが俺達は【ルーチェモン】のトドメの一撃を止めようとしたがそれの事を言ってるのか?」
一夏
「………」
太一の言い分に一夏は遂に呻き声すら出せなくなってしまった
一夏の言ってる事はただの八つ当たり以外の何ものでも無いからだ
一夏
「ぐうっ…だ、だったら【福音】だ!!」
太一
「【福音】?」
一夏
「そ、そうだ!!お前は俺が【福音】と戦っていた途中で口出しして来ただろうが!!あのまま戦っていれば俺が【福音】を倒せていたんだ!!!」
すると、今度は【福音】との戦いの事を持ち出した
確かにあの時、駆け付けた太一は一夏に下がる様に言った
だが…
太一
「…お前本気で言ってるのか?」
一夏
「な、何!?」
太一
「お前自分で戦っていて気づかなかったのか?」
一夏
「何言ってんだ!!」
一夏はあの戦いで【福音】が手を抜いていた事にやはり気付いていなかった
だが、それが分かっていない一夏に…
太一&コロモン
「ハァ~…」
2人は盛大な溜息を吐いた
それは様子を見ていたセシリア達も同じだった
一夏
「な、何だよその溜息は!!!」
だが、そんな2人の態度が気にくわない一夏は怒鳴り声をあげた
太一
「いや、お前は本当に自分に都合がいい様に考えるなと思ってな…」
一夏
「何だと!?」
太一
「お前…『作戦でマドカと一緒に戦った時』と『無断出撃して篠ノ之と一緒に戦った時』…その時の【福音】の違いに気付いていないのか?」
一夏
「…え?」
太一
「なら教えてやるが…2度目の戦いでは【福音】は明らかに『
一夏
「なっ!?」
太一からハッキリと【福音】は手加減していたと聞かされ一夏は目を見開いた
しかし、太一の言う事は本当だった
そもそも【福音】は箒に憑りついていた【ルーチェモン】が裏で操っていた
【ルーチェモン】からすれば【福音】はBウォーグレイモンを復活させる為の大切な依り代ではあったが肝心の太一とコロモンが現れるまでの間、時間潰しも兼ねて一夏を相手に軽く遊ばせていた程度でしかなかったのだ
その為、あの時は一夏でも【福音】を相手に善戦する事が出来ていた
だが…
一夏
「そ、そんな筈あるか!?俺は【福音】を追い詰めていたんだ!!」
手加減されていただけと言われて一夏が信じる筈無かった
それもその筈、太一の言いう事は事実なのだが、それを認めてしまえば一夏は正しく【ルーチェモン】の言う通り『道化』にしかならないからだ
実際、【福音】が手加減している事にも気づかず優位に立っていると思っていた一夏は『道化』でしかないのだが、それを認めようとはしなかった
その為…
太一
「ハァ…これで3回目だが…もう一度聞くぞ?本気で言ってるのか?」
一夏
「当り前だ!!!」
やはり一夏は目の前の現実を受け入れようとはしなかった
太一
「なら聞くがお前は【福音】と2度戦った。1度目はマドカと…2度目は篠ノ之とだな?」
一夏
「ああそうだ!!それがどうしたんだ!!」
太一
「…マドカと篠ノ之…どっちが『強い』と思ってるんだ?」
一夏
「…え?」
太一
「束の造った最新鋭の【Dシリーズ】を使い、成績も優秀なマドカ…リミッターの掛けられた【打鉄】を無断で持ち出し、成績も最底辺の篠ノ之…どっちの実力が上だと聞いてるんだ?まさかそれすら分からない程の馬鹿とは言わないよな?」
一夏
「それは…分かる…」
太一のこの問いには一夏も素直に頷いた
マドカと箒を比べてどっちが上かと聞かれれば全員がマドカと答えるからだ
だが、一夏は何故太一がこんな事を聞いたのか分からなかった
太一
「なら、マドカと組んだにもかかわらず手も足も出なかったお前が何故篠ノ之と組んで優位に立てたんだ?」
一夏
「!?」
太一がそう言うと漸く一夏も彼が何を言いたいのか分かった
これこそが【福音】が手を抜いていたと言う証拠だったからだ
そして、それは戦っていた一夏が一番分かる事だからだ
太一
「それでもお前は【福音】に勝てたと言うのか?それとも1度目と2度目の戦いの間の僅かな時間でお前が一気に強くなったとか言う気か?そんな方法あるのか?」
一夏
「ぐうっ…くううっ…」
一夏は呻き声を上げるだけで何も言い返せなかった
一夏の言い分は全て論破されてしまったからだ
太一
「そもそもの話…お前何故無断出撃なんて事をしたんだ?」
一夏
「な、何!?」
太一
「分からないのか?あの時の自分の身を挺してお前と船を守ったマドカの姿にお前は何も感じなかったのかと聞いてるんだ。マドカのあの姿こそが『
一夏
「!?」
太一
「以前の鈴とラウラが戦っていた時もそうだ。あの時の鈴の行動も『
一夏
「うっ…」
太一
「だがお前は自分で『皆を守る』と言いながらこれまでそう言った行動をした事が一度も無い。誰かを守っている姿を俺は見た事が無い。今回の無断出撃の時もお前は【ルーチェモン】と【福音】を倒して手柄を立てる事しか考えていなかっただろ?現にお前はそう言うセリフしか口にしていなかった。」
一夏
「ううっ…」
一夏は何も言い返せなかった
千冬だけでなく太一にも同じ事を言われたのだ
しかも、今度は具体的な例まで出され反論が一切出来なかったのだ
そんな一夏には引き続き太一を睨み続けるしか出来なかったのだが、そんな一夏の視線など太一とコロモンは全く相手にしていなかった
太一
「ハァ…俺を睨む暇があるなら少しは自分を見つめ直したらどうなんだ?」
一夏
「何!?」
太一
「一夏…お前、俺が前に言った『悪癖』の事…ちゃんと考えたか?」
すると太一は以前の決闘の時に言った一夏の『悪癖』について聞いて来た…
<予告>
これまでの自分の行動をまるで反省しない一夏
そんな一夏に業を煮やした太一は一夏に自分自身の本質を突き付ける
果たして一夏の根幹にあるものは何なのか?
次回!!
ISアドベンチャー 聖騎士伝説
心の奥底に潜む本質
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