ISアドベンチャー 聖騎士伝説   作:イナビカリ

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今回の作品は『悪維持』さんのリクエストを組み込んでみました。

初めて他の方とのコラボっぽい事をやったので自信はありませんがよければ読んで下さい。



第081話:目覚めた3人

 

 太一と一夏の問答から一夜明け、一日延びた臨海学校も最終日…

 生徒達は学園に戻る為の準備に追われていた

 そんな中…

 

マドカ

「うっ…」

 

 【福音】との戦いで重傷を負ったマドカが目を覚ました

 とは言ってもマドカは3日目の昼頃に一度、意識を取り戻していた

 その時に真耶が束から預かっていたナノマシン入りカプセルを飲ませると再び意識を失ってしまったのだ

 だが、束のナノマシンのお陰で再び目を覚ましたマドカはまだ全快とはいかないが動けるくらいには十分に回復していた

 

マドカ

「…ココは…あれからどうなったんだ…」

 

 そしてマドカが目を覚ました事を聞いた千冬とオータムがやって来ると2人はあの後に何があったのかを説明した

 

マドカ

「…そうか…篠ノ之が【傲慢の魔王】…確かにアイツが一番相応しいだろうな…」

 

 箒が【ルーチェモン】を宿す5人目と知ってもマドカは殆ど驚いていなかった

 他の生徒達同様、箒ならあり得るとマドカも思ったからだった

 一方で兄の一夏が仕出かした事を聞き…

 

マドカ

「…兄さん…私の言葉は届いていなかったのか…」

 

千冬

「残念ながらな…アレを見る限りそうとしか言えん…」

 

マドカ

「…そうか…」

 

 自分のやった事が全て徒労に終わったと知りショックを受けていた

 そして、そんな兄とこれからどう接して行くか考えるのだった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ぐっ…ううっ…コ、コは…」

 

 マドカが目を覚ましたのと同じ頃、箒も目を覚ました

 

「何故こんな所に…!?…そうだ!【福音】!?」

 

 次第に記憶が鮮明になって来ると【福音】の事を思い出した箒は部屋から飛び出そうとした

 だが…

 

保険医

「篠ノ之さん!?まだ安静にしてないと駄目よ!!」

 

 丁度部屋に戻って来た保険医に取り押さえられた

 だが、事件の全てが終わった事を知らない箒は【福音】を倒す事しか頭になく、止めようとする保険医相手に暴れ始めたのだった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

千冬

「…さて…アイツもそろそろ目を覚ます頃か…」

 

オータム

「そうだな…それでアイツをどうする気だ?前の4人と同じで『お咎め無し』にすんのか?」

 

千冬

「う~む…今迄の事を考えるとそうするべきなんだが…」

 

 2人は箒の部屋に向かいながら箒をどう対処するべきか考えていた

 これまでの【七大魔王】の依り代になった4人は『デジモンに憑りつかれていただけ』という事で処罰を与えるような事はしなかった

 その為、箒に関しても同じ事が言えるのだがそれはあくまで『七大魔王が復活し、倒されるまでの間』に限った話であった

 今回の箒は魔王が復活する前に『【打鉄】を無断で持ち出し無断出撃した』という事を仕出かしている

 復活の為にISが必要だとしても、これが【ルーチェモン】による物なのか、それとも箒の意思でやった事なのか…それによっては箒を処罰する事になるからだった

 更に言えば前日の束とのやり取りも問題があった

 あのやり取りは学園とは直接の関係は無いが箒個人としては問題大有りの内容だった

 そんな事を話し合いながら2人は箒の部屋の前にまでやって来た

 すると…

 

『放せ!!私は【福音】を倒すんだ!!!』

 

千冬&オータム

「…ん?」

 

 部屋に入ろうとしたら中から箒の騒ぎ声が聞こえて来た

 だが、聞こえてきた台詞に2人は首を傾げた

 その為、そのまま聞き耳を立てて部屋の中の様子を窺う事にした

 すると…

 

保険医

『だから【福音】は!?』

 

『五月蠅い!!お前達の言う事など信じられるか!!【福音】は私と一夏が倒すんだ!!もう一度出撃するんだ!!!』

 

 どうやら部屋の中では箒が暴れているようで、それを保険医の先生が止めようとしているようだった

 

オータム

「もう一度出撃って…なあ、これってどう考えてもよ?」

 

千冬

「…【打鉄】を持ち出しての無断出撃はアイツの意思か…」

 

オータム

「だな、流石は『世界一の【傲慢】』だな…」

 

千冬

「ああ…」

 

 無断出撃に関しては処罰する事に決めた2人だった

 更に…

 

『【福音】を倒して姉さんに私の力を認めさせるんだ!!私の邪魔をするな!!!』

 

 続けられた箒の言葉を聞き、一連の行動は前日の束が専用機を用意しなかった事から始まったのだという事も分かった

 それはつまり、あの時、束にした事も箒の意思によるものだという事だった

 

『放せええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!』

 

千冬

「…そろそろ行くか?」

 

オータム

「ああ、聞くに堪えねえ…」

 

 そしてこれ以上箒の耳障りな戯言を聞く気になれなくなった2人はさっさと部屋に入る事にした

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

千冬

「五月蠅いぞ!!!」

 

「ち、千冬さん!?」

 

 怒鳴りながら入ってきた千冬を見て漸く箒は大人しくなった

 そして、箒を抑えていた保険医の先生も千冬が来てくれて安堵の溜め息を吐いていた

 

オータム

「後は俺達がやっとくから休んでろ。」

 

保険医

「はい…お願いします………はぁ…疲れた…」

 

 千冬とオータムに後を任せ保険医の先生は凄く疲れた顔をしながら部屋を出て行った

 そして、2人は目を覚ました箒と対面した訳だが…

 

「………」

 

 先程までと違い箒はスッカリ大人しくなっていた

 

千冬

「さて篠ノ之…現状をどの程度理解している?」

 

「…それは…」

 

 そんな箒に今の状況を教える為に千冬が話し始めた

 

千冬

「今出て行った教師からどのくらい話を聞いたと聞いてるんだ。」

 

「…【ふ、福音】の件は終わったと…」

 

千冬

「フム…それは聞いているか…ならさっきまで騒いでいた内容は何だ?」

 

「!?…き、聞いていたんですか!?」

 

千冬

「あれだけ大声で騒いでいれば部屋の外まで聞こえるだろ?」

 

「うっ!?…ち、千冬さん…嘘…ですよね?もう…全部終わった後なんて…嘘ですよね?」

 

 箒は未だに事件が終わった事を信じていなかった

 だが、そんな箒に対して…

 

千冬

「本当だ。」

 

「そ、そんな!?では…私の…」

 

 千冬から事実を伝えられた事で漸く箒も信じた

 だが、今の箒の台詞に気になる言葉がある事に2人は気付いた

 

オータム

「私の何だ?【福音】を倒して束に専用機を造らせようって企みが失敗してショックか?」

 

「!?…な、何でそれを!?」

 

オータム

「あ?お前がさっき口走ってただろうが?束に自分の力を認めさせるってよ?つまりはそう言う事だろ?」

 

「!?」

 

 オータムがそう言うと箒は目を見開いた

 どうやら箒はさっき暴れている時に自分が何を言ったのか分かっていない様だった

 

千冬

「フンッ!専用機欲しさに【打鉄】を無断で持ち出した訳か?流石は『【傲慢の魔王】に選ばれた人間』だな?」

 

「………え?」

 

 そして、千冬の一言に首を傾げた

 

「今…何て?私が…何ですか?」

 

千冬

「聞こえなかったのか?篠ノ之箒…お前は【七大魔王】の1体、【傲慢の魔王ルーチェモン】に選ばれた人間だと言ったんだ。」

 

「わ、私が…【傲慢】の…魔王…う、嘘だ!!!」

 

 自分が【七大魔王】を宿す5人目の依り代と聞かされても箒は信じようとはしなかった

 

「嘘だ嘘だ嘘だ!!!嘘だと言ってくれえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」

 

オータム

「嘘じゃねえよ。これ見りゃ嫌でも分かるだろ?」

 

 縋りついて来る箒にオータムは箒が【ルーチェモン】へと変わっていく映像を見せた

 

「そ、そんな…何故…私が…」

 

 証拠の映像を見せられた事で漸く箒は信じたが、何故自分が【ルーチェモン】に選ばれたのか分かっていなかった

 

オータム

「何故って…お前が選ばれたのは当然の結果だろ?」

 

「と、当然!?」

 

オータム

「ああ、【ルーチェモン】が言ってたぜ?お前は『()()()【傲慢】な人間』だってよ。スゲえな?魔王から世界一認定されるなんてよ?」

 

「!?…せ、世界…一…私が…世界一【傲慢】な人間…」

 

千冬

「そうだ、現にお前がさっきから言ってる事は何だ?【傲慢】さ丸出しの言動だろ?」

 

「!?」

 

千冬

「お前以外の今迄の4人は魔王から解放された後は高まっていたそれぞれの大罪の感情が元に戻って大人しくなっていた。それに引き換えお前は解放されてもまるで変っていない。まあ、世界一なら当然と言えば当然だがな?」

 

「あ、うっ…」

 

千冬

「まあ、お前の【傲慢】さは今に始まった事では無いしな…【ルーチェモン】に憑りつかれる以前の問題だ。それが今回の事で浮き彫りになったと言うだけだ。」

 

「!?」

 

オータム

「で?コイツにはどんな処罰を与えるんだ?」

 

千冬

「そうだな…」

 

「ま、待って下さい!!!」

 

千冬&オータム

「ん?」

 

 箒の処分内容を2人が考えているとその箒が口を挟んで来た

 

「な、何故私が処罰を受けるんですか!?他の4人はされなかったじゃないですか!?」

 

 それは自分が処分を受ける事に対してだった

 確かに箒の言う通り他の4人は処分を受けていなかった

 だが、箒は他の4人とは状況が異なっていた

 

千冬

「お前の場合は【打鉄】を無断で持ち出した件があるだろ?」

 

「!?…そ、それは【ルーチェモン】の仕業で…」

 

千冬

「アレは『お前の意思』でやった事だろ?」

 

「!?」

 

オータム

「ま、そうするまでのお膳立ては奴がしたみたいだが少なくともその後の行動はお前が自分でやった事だろ?現にお前、『もう一度出撃する』ってさっき言ってたよな?つまりその前に出撃したって事だろ?」

 

「あ、う…あ…」

 

 箒は何も言い返せなかった

 箒自身も【打鉄】を無断で持ち出し、無断出撃した事は大問題という事は自覚していた

 だが、一夏と同じで【福音】を倒して手柄を立てればそれも帳消しになると都合のいい事を考えていた

 しかし、目を覚ませば全てが終わっており、自分が【打鉄】を勝手に使ったと言う問題だけが残された状態だった

 そこで箒は咄嗟に【ルーチェモン】を理由にしてお咎め無しにしようと考えた

 だが、そんな箒の思惑も自分自身で口走った事でそれも通らなくなってしまった

 

オータム

「ケッ!お前の考えなんてお見通しなんだよ!バ~カ!!」

 

「ぐっ…」

 

千冬

「【打鉄】の事と無断出撃の事は当然だが、それ以上にお前が束にした事を反省しろ!!!」

 

「…え?」

 

千冬

「お前まさか覚えていないとかふざけた事を言うつもりじゃないよな?臨海学校の2日目にお前がアイツに何をしたのかを!!!」

 

「!?」

 

 千冬に言われ箒は思い出した

 あの日、ラウラとシャルロットのISを持って来た束に箒は自分のISが用意されていなかった事に不満をぶつけた

 そして、束は箒のISは用意しなかったがその日が箒の誕生日という事でプレゼントを用意し、それを渡した

 だが、そのプレゼントを箒は束の目の前で投げ捨てた

 普通に考えれば箒のやった事は人として最低な行為だった

 

「あ…あ…」

 

千冬

「あの時の束の気持ちがお前には分からないのか?しかもあんな事をしておいて手柄を立ててISを用意して貰う?自分の力を認めて貰う?どれだけ自分勝手な奴なんだお前は!!!」

 

「う…ううっ…」

 

千冬

「以前から怪しいと睨んでいたが、あの時のお前を見て確信した!!お前こそが【傲慢の魔王】を宿す人間だとな!!!」

 

「う…あっ…ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 自分がやった事がどれだけ酷い事だったのか、そしてそんな事をした相手に自分がどれだけ身勝手な事をしてきたのか、それを理解した瞬間、箒にとてつもない罪悪感が押し寄せて来た

 【ルーチェモン】から解放された今でも箒の生来の傲慢さは健在だったが、それでも分かりずらいがいくらか軽減していたのだ

 その為、千冬とオータムに散々指摘されたところに姉の束に対して自分が何をやったのかを指摘され、それがどれだけ人として酷い事だったのかを理解する事が出来た

 それによって先程まで好き勝手言っていた箒の【傲慢】丸出しの願望を上回ったのだ

 

「あ、あ、あ…姉さん…私は…私は…」

 

千冬

「(どうやらまだ罪悪感を感じる程度の常識は残っていたか…)理解したようだな?ならしっかり反省しろ!!!」

 

「う…うう…はい…」

 

 こうして多少無理矢理ではあったが箒は千冬達からの処罰を甘んじて受ける気になった

 尤も、今迄の事からすぐに元の【傲慢】さが出て来る事も考えられるので千冬とオータムは油断出来ずにいた

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 最後に千冬とオータムは今回の事件の一番の被害者…『ナターシャ・ファイルス』に会いに行った

 彼女も先程目を覚ましたと連絡を受けたので2人は現状の説明も兼ねて様子を見に来た

 

千冬

「久しぶりだなナターシャ。」

 

ナターシャ

「千冬…ええ、久しぶり…」

 

 ナターシャは千冬達の受け答え出来るくらいには回復していた

 

千冬

「自分の今の状況をどの程度まで理解している?」

 

ナターシャ

「…私の看病をしてくれていた学園の教師から聞いた事くらいだけど…あの子を…【福音】を暴走させたのがデジモンの仕業って言うのは本当なの?」

 

千冬

「本当だ…お前とお前のISは【七大魔王】の1体【傲慢の魔王ルーチェモン】があるデジモンを復活させる為の依り代として目を付けられた。」

 

ナターシャ

「【ルーチェモン】…篠ノ之博士の公表は私も聞いたけど…何処か他人事のように感じていたのよね…まさか自分が巻き込まれるなんてね…でも何で私達だったの?」

 

 ナターシャのその質問を聞いて千冬とオータムは答えずらそうな顔になった

 だが、答えない訳にもいかないので…

 

千冬

「…奴が…お前のISを選んだのは…【銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)】と言う『名前』だ…」

 

ナターシャ

「………え?…な、名前?それ、だけの理由で…」

 

 理由を教えると案の定ナターシャはショックを受けていた

 

千冬

「【ルーチェモン】はそう言う奴だ…【傲慢の魔王】の二つ名の通り自分の思い通りに行動する…最低の外道だ!!!」

 

ナターシャ

「…そうみたいね…でも、それで納得しろと言われて納得出来る訳無いけど…分かったわ………それと千冬…私を助けてくれた人は誰?お礼を言いたいんだけど…」

 

千冬&オータム

「………」

 

 自分が巻き込まれた理由を聞いてナターシャな半ば無理矢理納得すると今度は誰に助けられたか聞いて来た

 すると、千冬もオータムも顔を俯かせてしまった

 それを見てナターシャは首を傾げた

 

ナターシャ

「…どうしたの?助けてくれたのってデジモンと一緒で別世界から来たって言う八神太一って言う子なんでしょ?」

 

 ナターシャのその言葉に2人は首を横に振った

 そして…

 

千冬

「…お前を助けてくれたのは…八神では無い…」

 

ナターシャ

「…え?じゃあ、貴方の弟さん?」

 

千冬

「アイツでも無い…お前を救ってくれたのは…お前と【福音】を依り代にして復活したデジモン…Bウォーグレイモンだ…」

 

ナターシャ

「B…ウォーグレイモン…」

 

 千冬はあの戦いの顛末を語った…

 そしてナターシャはどうやって自分が助け出されたのか…自分を助けてくれたBウォーグレイモンがどうなったのかを知った…

 

ナターシャ

「………一言…ありがとうって…言いたかった…」

 

千冬

「…そうだな…私も…アイツとは一度言葉を交わして見たかったよ…」

 

ナターシャ

「…ええ…」

 

オータム

「…ああ…」

 

 ナターシャは心の底からBウォーグレイモンへの感謝の言葉を口にしていた

 そして、千冬もオータムもBウォーグレイモンと話をしたかったと思うのだった

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

千冬

「…それからナターシャ…コレはお前のISを思いやる気持ちを信用して伝えておく…決して他の奴には話すな!!」

 

ナターシャ

「え、ええ…分かったわ…」

 

 全員が一頻り落ち着くと千冬はナターシャに【福音】に起こっているであろう変化について説明した

 これまで【七大魔王】に取り込まれたISのコアはその能力が数倍にまで上がっていた

 その事から考えて【七大魔王】では無いとは言えデジモンの依り代となり、取り込まれた【福音】のコアも同じような変化が起きている可能性が非常に高い事を説明した

 

ナターシャ

「そんな副次効果があったのね…確かにこの事が上層部に知られると後々厄介な事になるかもしれないわ…下手をすればデジモンを利用してコアを無理矢理強くしようと考える連中が現れるかも…」

 

千冬

「私達も同じ意見だ。」

 

 千冬の説明を聞いてナターシャはそれによって起こる最悪の事態を予想した

 こんな話をすれば欲の突っ張った奴ならやりかねない事だからだった

 尤も、それをする為にはデジモンが必要なので実行出来るかと言えば不可能な事ではあった

 

ナターシャ

「ならどうすればいいの?コアを篠ノ之博士に預けるって言うのが一番いいんだけど…あの子と離れ離れになるのは…」

 

千冬

「分かっている。後でお前に束の方から連絡が行く筈だ。コアの変化を誤魔化す為のプログラムを用意するそうだからそれを入れておけば誰も気づく事は無いそうだ。後は真相を知るお前が黙っていれば大丈夫だ。」

 

ナターシャ

「そ、そう…良かった…でも何で篠ノ之博士がそこまでしてくれるの?」

 

千冬

「お前もISの本来の目的は知ってるだろ?」

 

ナターシャ

「え?ええ、宇宙に行く事でしょ?素敵な夢よね♪」

 

千冬

「フッ…お前がそう言う奴だからアイツはお前の事を気に入ったんだよ。それに自分のISに対する愛情もアイツは評価している。【福音】の偽装プログラムはそんなお前へのアイツからの細やかなお礼のつもりのようだ。」

 

ナターシャ

「な、なんだか照れるわね…」///

 

 顔を若干赤くしながらナターシャは照れていた

 それを千冬とオータムは微笑みながら見ていた

 そして、伝える事を全て伝え終わると千冬はオータム、ナターシャと共に他愛の無い話で盛り上がるのだった…

 その後、千冬達が学園に戻る時にナターシャもアメリカ本国へと帰国して行った…

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 こうして【福音】の暴走から【七大魔王】との戦いへと発展し、1日延びた臨海学校は終了しIS学園への帰路に就いた…

 この日から太一とコロモンに一時の平穏が訪れたのだった…

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「………」

 

 太一達がIS学園への帰路についた頃…

 一夏が【ルーチェモンFD】の《パラダイスロスト》で叩きつけられた小さな小島に1人の青年が立っていた

 青年は左目を白髪で隠したセミロングヘア、黒のズボンと白のワイシャツ、その上から学ランをボタンを留めずに羽織ると言う一見すると髪を染めた不良学生の様な出で立ちだった

 そして、青年は腕に黒と紫のゲームパッドのような道具を持っており、それを翳すと…

 

「…【傲慢の魔王ルーチェモン】…その【傲慢】の力…僕が貰い受けるよ。」

 

 周囲に僅かに漂っていた【ルーチェモン】の残留データがその道具に吸い込まれて行った

 

「フフフ…【嫉妬のリヴァイアモン】…【憤怒のデーモン】…【強欲のバルバモン】…【怠惰のベルフェモン】…そして【傲慢のルーチェモン】…これで5つ揃ったね…」

 

 どうやらこの青年は今まで太一が倒して来た他の魔王の残留データも集めているようだった

 

「さて、【ガシャコンバグヴァイザー】のパワーアップアイテムを作る為の必要なデータに【色欲】はいらないからコレでいいけど…早く出てこないかな…【暴食の魔王ベルゼブモン】…」

 

 そして、この青年は【ベルゼブモン】のデータも狙っているようだった

 

「まあ、焦ってもしょうがないか…残りは後2体だしのんびり待つ事にしよう。…それにしてもあの織斑一夏って言う男…アレで本当にこの世界の『主人公』なのかな?あそこまで自分勝手な人間は僕も屑転生者以外見た事が無いけど…もしかして【補正】が無いせいであんな風になったのかな?もしそうだとしたら完全に【補正】頼みの主人公だったわけか…あんな男がいるんじゃ彼等と残りの【七大魔王】の戦いもそう簡単には終わらないだろうな…」

 

 すると、突然話題を一夏の事に変えた

 そう言うと青年の姿が突然霞がかかった様に薄くなっていった

 

「頑張ってね八神太一君、そしてアグモン君…僕は君達を応援してるよ♪」

 

 最後にそう言うと青年は完全にその場から消えた

 青年の名は『鬼崎陽太郎』…太一とアグモン同様、別の世界からの来訪者だった

 一体彼はこの世界で何をしようとしているのか…

 それは誰にも分からなかった…

 

 




 <予告>

 臨海学校から戻った太一達はゆっくり寛いでいた

 だが、IS学園には夏休みに向けて避けては通れない戦いが残っていた

 果たして、太一は生き残れるのか



 次回!!

 ISアドベンチャー 聖騎士伝説

 平穏な日常と期末テスト

 今、冒険が進化する!


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