※今回は本当にキャラ崩壊注意

 今宵は落語家、新導クロノの晴れ舞台。
 有名な噺、“たらちね”のパク……オマージュでございます。


 不定期更新のクロノとユニットシリーズ、第5弾は番外編。


※ヴァンガードGのネタバレ、キャラ崩壊注意
※この小説はPixivとのマルチ掲載です

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今回は落語の話。
初めてこういう話を書きましたので、自信はありません。

肌に合わない方もいるでしょうが、読んで、苦笑いでも頂けたら幸いです。

あとがきではネタの解説も用意しております。


クロノと落語【ギアクロニクル】

 

 

「クロノの落語が見たい!」

 

 ドランにそう言われた時は思わず頭を抱えた。

 

 

 

 親父が生きていると知った俺にもう隠す必要は無いと言って、ミクルさんが親父の置いていた物を見せてくれたのが言の始まりだ。

 

 ミクルさんのタンスの奥からホコリを被った大きな箱を取り出した

 

 ヴァンガードの大会のトロフィーや着物、他にもアルバムや日記に、古ぼけた本が幾つもその箱に入っていた。

 

 その中で俺が目を惹かれたのは有名な落語の噺、寿限無の本だ。

 

 ミクルさん曰く親父は、

“落語は落語家と聞いているお客さんでお互いのイメージを正しく共有して笑わせる、ヴァンガードに必要なイメージ力を培う物だ”と言っていたそうだ。

 

 そう言われるとファイターとして興味が湧いたのでミクルさんに頼んで貸して貰い、それを読み始めた。

 

 それを読みながら寝たのが原因で俺はギアクロニクルの前で落語をする事になるとは、本当に夢にも思っていなかった。

 

 

「落語、落語!」

 

 両手で拳を握ってせがむドラン。

 

「落語って言ってもな……」

「寿限無以外が良い!」

 

「おま、いきなりハードル上げるなよ」

 

 当然だけど俺に落語の知識や経験なんてない。

 知っているのは寿限無だけで、長い子供の名前は知っていたけど噺の内容はまるで知らなかった。

 

「やってよー!」

「流石にこればかりはどうにもならないって!」

 

 今回は無理難題が過ぎる。

 

 落語の参考資料なんて此処には無いだろうし、何より誰かに話を聞かせるなんて俺には縁のなかった事だ。

 

「【クロノジェット・ドラゴン】! クロノを落語家になった未来に導いて!」

 

「……!」

 

 ドランが叫ぶように頼むと何処からともなくクロノジェットは元気良くサムズアップした。

 

「お、おい!? ちょっと待て、何だその未来!?」

 

「さあ、今こそ示せ! 我が真に望む世界を! ストライド、ジェネレーション!」

 

 クロノジェットは機嫌良さそうに俺の腕を掴むとジェネレーションゾーンを開放した。

 

「いや、待て待て! そんな世界ねぇだろ!?」

 

 叫ぶ俺にクロノジェットは頭を左右に振った後に再びサムズアップした。

 

「……!」

 

「ある! じゃねえよ! 放せクロノジェット!

 俺をそんな未来に導くなぁぁぁ!!」

 

 眩い光に包まれ俺は、今を超越し、掴んではいけない未来を掴まされてしまったのだった。

 

 

 

 着物に着替えて右手に紫色の扇子を持ちます。

 ウルルさんに座布団を用意されまして、笑って礼を言って舞台へと参りました。

 

 竜やら歯車やらが物々しいですが、まあ見慣れたモノですよ。

 

 

 初めまして、ギアクロの皆さん!

 (わたくし)、新導クロノと申します。

 

 数百やら数千やら、結構な年を取られている皆さんに比べれば16歳なんて生まれてもいない赤ん坊の様な若輩者ですが、どうぞ宜しくお願いします。

 

 

 今回私が話すのはカタガナで“タイリプ”なんて落語に相応しくない洒落た題名の噺でございますが、皆さんは自分がどこから来たのか、考えた事はありますか?

 

 私は神様が一から創り出されたのか?

 コウノトリがキャベツ畑から運んできたのか?

 はたまた、“クロノ”なんて名前の種から大事に大事に水や肥料を与えられ育てられたのでしょうか?

 

 種からでしたら私の場合、土から最初に出てきた部分は間違い無く、このグルグル頭の先端でしょう? ね?

 

 え? ネオネクタールは大体そんな感じ?

 

 ……ちょっと国籍をズーに変えてきましょうかね?

 

 そんな訳で国籍を変える為に書類がいるので、使わせて頂いている長屋(アパート)に帰ると大家の伊吹の野郎に呼び止められるんですよ。

 

「クロノ、お前、固まってみる気はないか?」

 

 なんて突然言われて私はビックリですよ。

 

「これ以上頭のグルグルが固まったら、ギアクロニクルに所属しなきゃなんないでしょうが!」

 

 って返してやったんですよ。

 

「お前は何を言っている? 結婚する気は無いかと聞いているだ」

 

 この様に、大家の野朗、上から目線で物を言ってくるんですよ?

 

 先に結婚してからと言うもの重力井戸の嫁さんに喧嘩する度に沈められるからどうも人を見下したがる。

 全く捻くれた奴ですよ。

 

「相手は若い娘で器量良し、着替えやらは持参してくるから余計な出費は無しだそうだ」

 

 おやおや中々の好物件。ですが、そんな虫のいい話がこの世にありますか?

 

「何だ、俺を信じていないのか?」

 

「またまた、どうせ何か裏があるんでしょう? ストライドゲート封印の役割を担う巫女とか?」

 

「そんな物は無い。

 ……ただ、娘はどうも伸びをしたがる」

 

「伸び、ですって? 

 もしかしてお相手はキリンでしょうか?」

 

 もしかしてお相手さんもズー国籍の方でしょうか? いやはや、何たる偶然か。

 

「首が伸びるわけ無いだろうが! 相手はギアクロの人型だ」

 

「なるほど、ですが女の伸びなんてカワイイものですよ。

 それ以外問題がなければ今日にでも迎えてやりましょう」

 

「随分急だが……まあ遅くなってしまうより良いか」

 

 そう言うと大家は直ぐに支度をし、娘さんを迎えに行きます。

 

 私も家事全般は得意な方ですので、ササッと部屋をキレイにしてね、出迎えの準備を万全に致しました。

 

「連れてきたぞ」

 

 私の嫁さんを連れて来た大家の野朗、部屋の扉をコンコンと叩くと、扉を開けた私に信じられない一言を呟きました。

 

解呪(アンロック)

 

「バカ野郎! 人の嫁を呪縛(ロック)で連れてくる奴が何処にいる!」

 

 娘さんも可哀想に……

 

 突然変わった景色に驚いている彼女を転ばぬ様に急いで支えてあげましたよ。

 

「た、助かりました」

 

 私はおお、と心の中で歓喜しました。

 健康的な肌に美しい青髪。

 リバースして無くて良かったとホッと一息吐きます。

 

「それでは、俺はこれで失礼する」

 

 大家は無礼なもんで誤りもせずに足早に出て行きました。

 あの足取りは間違いなく、重力井戸の嫁さん絡みだろうね。

 

「あ、そうそう! まだ名前を聞いてなかったな! 俺は新導クロノで、先のアイツは伊吹コウジだ。よろしくな!」

 

「クロノ、クロノ、クロノ様……私の名前は――」

 

 娘さんは軽く私の名前を繰り返すと今度は自分の名前を言い始めました。

 

「そも我が元は(せい)の拳にして、姓はウル、名はワタル、ドローを2枚。

 創生は初手ワープドライブが、光速移動の折、右に構えるアップストリームを見て我を欲するがゆえ、札山の底を出でしときは蒸気乙女と申せしがそれは肩書、登場の後これを改めメラムと申し、銃撃の後にワーカーと成り下がりますると恥を承知で底へと戻りはべるなり……

 と申します」

 

「これはこれは……随分長い名前だな」

 

 私は驚く暇も惜しんで書く物を用意しました。私の貧相な頭ではとても一度で覚えられる名ではございません。

 

「あ、是非フリガナでお願いします」

 

「承知致しました」

 

 しかしこうも嫁の名前が長いと色々大変ですよ。

 

 大家の所は嫁の名前が重力井戸ですので楽なもんですね。

 

 例えば風呂に入る時は……

 

「重力井戸、湯に入るからタオルを」

「了解」

 

 それに比べて我が家は大変ですよ。

 

「そも我が元は醒の拳にして、姓はウル、名はワタル、ドローを2枚。

 創生は初手ワープドライブが、光速移動の折、右に構えるアップストリームを見て我を欲するがゆえ、札山の底を出でしときは蒸気乙女と申せしがそれは肩書、登場の後これを改めメラムと申し、銃撃の後にワーカーと成り下がりますると恥を承知で底へと戻りはべるなり、

 湯に入るからタオルを!」

「はい!」

 

 いかんね、コレは。

 入る前に湯が冷めてしまいます。

 

「仕方が無い。明日には大家と一緒に丁度良い所で名前を切ってしまおう」

 

「はい、我が君」

 

「わ、我が君? クロノで良いぞ?」

 

「我が君は、我が君で御座います」

 

 何せ背伸びしたがるお年頃。何と言われようとお姫様の様な言葉遣いはやめません。

 

「さて、もう寝ようか。

 ……そ、そも我が元は❘醒《せい》の拳にして……姓はウル、名はワタル……ドローを2枚。

 創生は初手ワープドライブがぁ、光速移動の折ぃ、右に構えるアップストリームをぉ……見て我を欲するがゆえ、札山の底を出でしときは蒸気乙女と申せしがぁ……それは肩書……登場の後これを改めメラムと申し、銃撃の後にワーカーと成り下がりますると恥を承知で底へと戻りはべるなりぃ……? 

 今日はもう休みなさい」

 

 

「……我が君、もうお早うで御座います」

 

 あらら、名前を言っている間に朝になってしまいましたよ。

 

 気の早いニワトリ共はもう鳴いておりました。

 

「…………ぃくわは如何でしょうかぁ?」

 

 早朝はすっかり商人共のお勤め時でございます。

 声の大きなネギ屋の後に家の前を粋の良いちくわ屋が通ります。

 

「ちくわぁ、ちくわは如何でしょうかぁ! 1本200円! 1本200円!」

 

「我が君! チクワが大変お安いですよ! 4本買いましょう!」

 

 そう嫁にせがまれるですけど私からしたらたまったもんじゃありません。

 

「ダメダメ! そんなモン買ったら夜が開ける処か、夜の帳が降りちまう!」

 

 

 

 

 

「っはぁ!?」

 

 俺は何か嫌な夢を見ていた気がして悲鳴染みた声を上げて飛び起きた。

 何故か内容はまるで思い出せない。

 

「……んー? 何なんだ、今の?」 

 

 一体夢で何が有ったのか。後でドランに聞いてみよう。

 

 一旦考えるのを止めて急いで朝食を作り始めた。

 昆布ダシに玉ねぎ、大根を入れて味噌をかき入れます。

 

 出来上がった味噌汁をお玉で掬って味見をした。

 

「んー……やっぱり朝食は、ちくわの入った味噌汁に限るな」

 

 

 

 

 

「ま、マイヴァンガード……わ、私と結婚して……して頂けるんですか……?」

 

 涙目で俺に問いかける【スチームメイデン メラム】。

 

「マイヴァンガード……ロリコン、犯罪」

 

 逆に冷たい眼差しを向け機械的な口調になってしまった【スチームメイデン エルル】。

 

「今日も落語してね、クロノ!」

 

 2人は対象的に、明るい笑顔でまるで身に覚えの無い事を頼んでくる【クロノ・ドラン】。

 

「……な、何がどうなってるんだ、コレ?」

 

「何? 何も覚えとらんのか?」

 

 【スチームスカラー カー・ランマ】が録音機を取り出すとボタンを押した。

 

 そこから俺が知らない俺の声が発せられた。

 

『――お後が宜しいようで……』




タイリプで御座いました……

この噺はかの有名な落語、たらちねを元にした、自分の出生がそのまま長い名前になっている嫁さんの噺です。

たらちねでは嫁さんは京都で偉い人に奉公して言葉遣いが丁寧過ぎるお方でしたが、今回はヴァンガードにてタイムリープ能力を駆使した連続攻撃を得意とする【スチームメイデン メラム】の動きをそのまま名前にしました。

名前の意味は、
 元々はグレード0の【スチームバトラー ウル・ワタル】でしたがバインドされて2枚ドロー、最初にストライドした【時空竜 ワープドライブ・ドラゴン】の能力でタイムリープされて【アップストリーム・ドラゴン】とは別のサークルに登場、スキルを使って攻撃した後にワーカーの名を持つユニットと交換し、山札の下に戻りました……と言う意味です。

最後にちくわをチクワと言ってましたが、これ現在は公式ルールによりファーストヴァンガードに出来ず、デッキに1枚しか入れられない【チクタク・ワーカー】の略称ですね。

【チクタク・ワーカー】とメラムが揃うと、メラムがアタックした後にデッキからグレード2とレスト状態でグレード0が出ますので、更に【ヒストリーメーカー・ドラゴン】とウル・ワタルやらアップストリームと【チクタク・ワーカー】で攻撃を続けるので、彼女の名前が更に長くなる事間違い無し。

名前を呼んでいる間に夜明け処か夕方が来てしまう、と言ったオチです。

感想や誤字報告、落語として修正すべき点などあればお教え下さい。

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