ワイルド&ワンダラー   作:八堀 ユキ

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パワーアーマー着たバージョンだとアイ〇ンマン2になってしまったので、そうじゃないバージョンとなりました。
次回は月末前くらいを予定。


キャプテンズ・ダンス

 夜に入ると少しの間だけ雨が降り、気温も下がり、霧が深くなる。

 男たちはその前に休憩地点にたどり着くと、木々の間に体を寄せ合って焚火の代わりに草や土を集めてそれを燻すことで暖をとる。

 

「時間まではここで待つ。今、ひとり下見に行って様子を見てくる」

「わかった」

 

 朝、港に来た2人がキャプテンズ・ダンスに挑戦すると高らかに宣言した。

 キャプテン・アヴェリーは困った顔で「あんたたち、本気なのかい?」と繰り返し尋ねることであきらめさせようとしたが。騒ぎを聞きつけて集まってきた港の若者、特に武器屋のアレンなどは面白がってやってみるがいいと騒ぎだしてしまい。アヴェリーもついにあきらめた。

 

 かわりにアヴェリーは信用できる男を3人指名し、必ず儀式にのっとって正確に努めるように言い含める。

 これは神聖な儀式であり。だからこそ命がけで、誠実さが必要なのだ。何かの間違いで島の者達が勇者を嗤おう(わらおう)としたとなれば、その恥はこれから永遠に未来に語り継がなくてはいけなくなる。

 

 港の男たちもそれは十分に承知していた。

 しかし同時に、島の外から来ておかしなことを言い出したこの2人――レオとアキラの様子をじっと観察し。いつ逃げ出そうとするのかを期待もしている。

 なのに2人は冷静で、ロボットはただ浮かんでいるばかり。アヴェリーではないが、本当にこれから何をするのかわかっているのだろうか?

 

 不気味な奴らだ――間違いなく明日の朝日を見ることなく死ぬしかないのだが。

 こいつらはまだ本気で自分達ならやり切れると思っているらしいことがもう、信じられない。

 

「――あんたらはわかっていると自分では思ってるだろうが。この儀式について改めて説明させてもらう」

「……」「続けてくれ」

「深夜を過ぎたら移動する。俺たちはそれぞれポイントにわかれてあんたらを見守る。この儀式には制限時間があり、それは明日の朝日が地平線からひょっこり顔を出すまでだ。ここまではいいか?」

「ああ」

「途中でヤバくなれば……間違いなくそうなるだろうが、あんたらには棄権する権利はある。その時は俺たちは物見ポイントからそれぞれ援護してやるが、それしかできない。入り江に入ってまであんたらを助けたりはしない。悪いがこっちも巻き込まれて死にたくはないのでね」

「それで構わない」

「そうか、それじゃ続けるが――」

 

 

 時間は20数時間ほど巻き戻る。

 前日の朝、散歩と見回りを兼ねてロボットたちを連れたコズワースがゴミ拾いから戻ると。パイパーが彼の主人が自分を探していたと聞かされて慌てて会いにいった。

 

 そこは壁で密封された部屋で、中央の机の上にはランプと地図。

 アキラとレオは無言でコズワースを待っていた。

 

「すいません、外に出ておりました。何か話があるとか、お待たせしてしまいましたか?」

「いや、忙しくしていたのにすまないコズワース。来てくれて助かった」

「これが私の役目です、旦那様」

 

 アキラが口を開く。

 

「予定では明日の朝3時に起床、港で宣言して夜にはキャプテンズ・ダンスに僕達は挑戦する」

「それでコズワース。君も今回だけは参加してもらえないかと思ってここに呼んだんだ」

「ああっ!ご主人様っ」

 

 コズワースは歓喜の声をあげる。

 

「わたくしっ、再びこのような日が来ることを望んでおりました。大きな脚も、強力な武器も奪われてこの体に戻されてしまいましたが。ええ、ええ!こうなることをずっと信じておりましたっ」

「ああ、うん。それはよかった、コズワース」

「必ずや皆様をお守りしますっ。それで、今度はどのような装備をいただけるのでしょう?

 いえいえ、ないのならそれでも構いません!この非力な体でも立派に勤めてみせますともっ」

 

 ロボットに感情がないだけでなく、ストレスもないはずなのだが。

 コズワースはゴミ拾いに不満を持っていたらしく、妙に浮かれてるようだ。仕方ない、アキラが困った顔で間違いを正しにいく。

 

「悪いけどコズワース。君の期待していることはおこらないよ」

「どういうことですか?」

「結論から言うよ。君にも来てほしい。ただし3本の腕はもちろん、両脇の2つの目をはずす。あと言語機能も停止させてもらうつもりだ」

「なっ、なんですって!?アキラ、本気なのですか」

「前にも言ったけれど君はもう触れない。新しい機能を増やすと回路に負担がかかる。長くメンテナンスをしてないから、どこで不調をきたすのかわからない。君は人間に例えたら老人なんだ。こうして動いて、正常を保っていることすら驚くべき状態なんだよ」

「だからさらに奪うというのですかっ。ひどすぎるっ」

「今回限りだよ。でも理由はある、話してもいいけど。納得できないなら出て行ったほうがいいと思う」

「そんなっ、残酷すぎます」

 

 冷静にさせたいのだろうがアキラの言い方は冷たすぎた。コズワースは混乱していた。

 

「コズワース、今回は危険な任務なんだ。それでも誰か連れていけないかと考えたら、君しかいなかった」

「旦那様っ!」

「今の状態に不満をもっていることは知ってる。でも君を苦しめたいわけじゃない。必要なことを頼んでいるだけなんだ。

 今回もそうだ。私はアキラと行く――だが正直に言えば友人たち、家族の助けも欲しいくらい危険な任務だ。だから私は君に来てほしい。でもそれには君の協力が必要で、それができないなら、ただ断ってくれたらいいんだ」

「わたくしが間違っておりました、旦那様。

 そこがどれほど危険な場所であったとしても、私に出来ることがあると言ってくださるならこのコズワース。力を尽くさせていただきます」

「ありがとう。いつも言っていることだけど、本当にありがとう」

「やめてください、オホホホ。では早速計画を聞かせてください」

 

 こうしてキャプテンズ・ダンスに挑戦するのは2人と1台のロボット。

 レオ、アキラ、コズワースに決定した。

 

 地図を囲んで作戦会議は始まった。

 

「どうやら実際につれていかれるのはこのレイバーンポイントの近くにある入り江というか、湿地帯らしい」

「レイバーンポイント?」

「元は小さな町で廃墟だ。今はトラッパーが住んでいて誰も近づかない。

 おそらく騒げばここまで聞こえるだろうが、ここの連中は出てこないだろうとロングフェローは言っていた」

「この島には危険な場所しかないのでしょうかねェ」

 

 コズワースは呆れている。

 

「朝に港で宣言すれば、午後には案内されて入り江に向かうことになると思う。ロングフェローの話じゃ入り江への安全なルートは2つ。島の外周に残っている旧道で北回りにむかうか。島の中央にあるアカディアから山林を抜けて反対側へ降りていくか」

「どちらも危険そうです。あんまり変わらない気がしますけど」

「私もそう思う。だがロングフェローのような島の人間にはそうではないようだ。今の時期だとおそらく北回りにいく旧道だろうと言っていた。夜に来る霧の濃さから、山道だと動けなくなるそうだ」

「ということはここを朝出ても、また戻ってきて前を通り過ぎるわけですか」

「パイパーたちは怒っていたからそんな私たちを見送ってはくれないだろうな」

 

 結局、強引に進める形になってしまったがしょうがなかった。いくつかの可能性を探ったが、最終的にアキラが「港の奴らを排除して、連邦から人を連れてくるでもいいですかね?」などと怖い目で言い始めたのであきらめた。

 私がここでやりたかったことは、カスミやニックを失望させたくてやっていることではないのだから。

 

「時間まで近くで待機した後、深夜に入り江に入ると言っていた。

 そこが今回の戦場となるんだが問題がたくさんある。まず、隠れる場所がなにもないらしい。アポミネーションはどこからやってくるのか霧が深くてよくわからず。中に入った後で逃げようとしてもぬかるみに足がとらわれて逃げ切れない」

「棄権しても戻ってこれない理由がそれでしょうね。

 マイアラークは獲物を見つけると追跡モードに入る。そんな奴らに背中を見せたら、確かにマズい」

「それだけじゃない。持っていける武器も多くてはいけないことになる。

 持っていけるならミニガンでもヌカ・ランチャーでも欲しいところだが、それだと身動きが取れないし取り回しが悪すぎる。入り江では使い物になるとは思えない。だが武器を厳選するということは――私たちが戦える時間は短い」

「なんだか聞いていると不安になる事ばかり。おふたりとも、本当にこれでもやるのですか?」

 

――やる

 

 答えは変わらない。

 

「だから君に力を貸してほしいんだ、コズワース」

「それはかまわないのですが。わたくしはしゃべることもできず、装備も許されてないのでしょう?」

「その代わりに偽装を施して君を改造したEDユニットに見えるようにする」

「ロブコ社製アイボットですね……」

「あくまでも偽装だから音声装置を封印する。無口で無感情なアイボットを演じてもらいたいんだ」

「それだけなのですか?」

「まさか!君は僕らのワイルドカード(切り札)さ」

 

 一瞬だがアキラの口にしたワイルドカードの言葉にうっとりする。

 お手伝いロボットではなかなか感じることのない野蛮な響きと誇りのある言葉だった。

 

 

――――――――――

 

 

 サカモトは港から戻ると自身の隠れ家にあるハンモックに横になっていた。

 今、この島の中で動き始める大きなうねりを彼は俯瞰するように心がけながら観察を続けている。

 

 キャプテンズ・ダンス。

 なるほどアキラは面白いものを見つけてきたようだ。頑固で融通の利かない石頭たちを従えるには彼らのレベルで理解できることを証明してやればいい。それは簡単ではないが、効果的にやり切ることで最大の利益となって手元に戻ってくる。

 

 まさに自分たち”小さな宝物”が選ぶやり方ではないか。

 

 我ら無敵集団もおかしなことになってしまった。互いへの疑心、嫉妬、信用のなさを理由に貶めたりしなければこんなやっかいな事態にはならなかったのに。

 そのミスは今も続いていて、盤石なはずの組織を壊しかねない危機を近づけようとしている。

 

「アキラの人的資産、フランク・J・パターソン Jrは探偵助手としてダイアモンドシティのニック・バレンタインと組み。アカディアのカスミ・ナカノの奪還の任務に行き詰った。

 その打開策として……んふふっふふっ。島の環境から変化させる計画を立て。アキラはそれを承認した。なんですかこれは、まるで狂ってる」

 

 そうだ、狂ってる――。

 アキラは怒り狂っている、自分たちに対し憎悪をはっきりと向けてきている。

 

 確かに組織は間違った決断を下した。

 アキラの名を持つものとは思えず、キンジョウのおもちゃとして様子見といいながら廃棄しようとした。

 邪魔なハンコックの右腕は彼とは親しい間だったが、彼の手で殺させた。

 コンドウはアキラの人的資産であり彼は自分の友人と思っているフランク・J・パターソン Jrを襲撃し、失敗したが。間接的にこのことがアキラの怒りをさらに煽ったはずだ。

 

 もはや両者に和解の道はなく、対決するしかないと思う。

 だがそれをすることはできないだろう。この道を進めば、間違いなくこちらがアキラに”倒されてしまう”から。

 

 今のアキラとフランク・J・パターソン Jrの連邦での存在感は、巨大な怪物のそれに近い。

 おそらくだがケロッグのことからあのインスティチュートも注目し始めているだろう。アキラの周りにはまだ彼らの影が見えてはいないが、インスティチュートが彼に興味を持って接触など始めればどうなるかわかったものではない。

 

「なのにこちらときたらひどいものです」

 

 クロダ、キジマはコンドウの敵討ち、報復、メンツを保つと言いながら。

 しかし彼らの願いはあのアキラが本物なら手合わせしたいという願望から来ていることをすでに隠せていない。気質的に仕方がないこととはいえ、彼らは彼らで理知的と思われたコンドウに出し抜かれたと感じていて。自分たちの感情を制御しきれてないことを気にしていない。

 

 そしてもうひとり――観測者だ。

 

 あの表情わからぬ性別不明のマスクマン。

 だがその行動は怪しすぎて全く信用ができなくなっている。

 

 アキラの回収には特に興味を見せず、その扱いにも口出しはしなかったのに。

 彼が自我を取り戻して離脱を試みると最後はキンジョウと組んで追いかける執念を見せたが、逃した後はまたもや興味を失ったようになにもしようとはしない。

 だが実際には捜索は密かに続けていて、アキラが自分たちにとって危険な存在へと変わろうとしていることをちゃんと理解していた。

 

 その観測者はこの島にはいない。

 アレはまたもや興味を失ったようにふるまい。連邦で”組織のため”の仕事をひとり黙々と続けている。

 自分のようにクロダやキジマを止めることにも積極的ではなかった。あれは最低限の仕事として自分につきあったにすぎなかった。

 

 やはりまた興味を失ったというわけか?

 それとも偏執病(パラノイア)だったとでも?

 

 それは違う、サカモトはそう考えている。

 観測者は”小さな宝物”のバランスを見守る役目を担っている。アキラがいない時代は、誰かが頭一つ抜きんでることで優れていると示し。アキラという空席と名前を奪って座ろうと野心を持つことを許さなかった。誰よりも早くそれを知り、手段を択ばずに邪魔をして誰よりも叩き潰して回った。

 

 結局その野心を捨てられずに観測者を敵とした愚か者は過去にはいたが。

 当然のように思惑のすべてを破壊され、劣った存在だったと言い訳もできずに名前と力、姿さえも奪われ。侮辱として与えられた黄色のコートと帽子で隠れるようにして連邦から去らねばならなくなった。

 

「……そういえばその愚か者は戻ってきましたね。なぜかアキラを外に出そうとした、そんなことができるはずもないのに”あれは成功するかもしれない”ところまでやれていた」

 

 連邦のことを気にしすぎていて、アキラのことを半ば放任していた過去の自分をしかりつけてやりたい。

 あの一件もあまりにも突飛なことだったので深く考えずに処理してしまったが、フランク・J・パターソン Jrによるケロッグ殺害も含めて違和感の残る事件ではなかったのか?

 

――捜査をする?

 

 それは無理だ、残り時間があまりにも少なく。リソースが足りていない。

 サカモトの仲間はいまや”小さな宝物”ではなく、彼ひとりだけ。コンドウを失い、観測者から無視され、クロダらに期待しても無駄だ。

 

 今日はもう、夢を見ずに眠りたい。

 どうせ明日の朝が来た時、あのアキラが死んでくれればトイレに詰まった糞尿を大量の水で押し流すようにすっきりした気分で連邦に帰れるのだが。

 

 

――――――――――

 

 

 作戦会議で想像した通り、見届け人の男たちは入り江の端に位置する高台や草むらにひとりで隠れ。アキラとレオ、無言のコズワースには入り江の中央目指して進むように指示して去った。いよいよ戦闘開始の時刻が迫ってきている――。

 

「霧は思った以上に濃い、ここで暴れても彼らには見えないんじゃないか?」

「実際の僕らの戦闘を見る必要はないのでしょう。騒ぎが終わって戻った後で、彼らが証言するものは霧の中に見えた幻影ってことです。でもそのほうがいい、話を勝手に盛ってくれるでしょうしね」

「我々の目的と一致するというわけか、なるほど」

「それじゃ、そろそろコズワースに働いてもらいましょうか」

 

 私たちは歩くのをやめるとその場にしゃがみ込み。アキラはピップボーイになにがしかのコマンドを入力する。

 するとこれまで無言のままついてきたコズワースがフラフラと近くを行ったり来たりを始めた。

 

「コズワースには外装と一緒に拡張センサーをつけました。これで半径50メートル内の地形を把握できます。その外側にいる見届け人からもこちらが視認されているかどうかも(わかります)」

「どれくらいかかる?」

「数分で終わります」

「ではその間に準備をしておこう」

「ですね」

 

 私は当然のようにまずR-91アサルトライフルからチェックする。

 アキラから受け取ったそのままではあるが、使う弾倉だけは大きなものに変えて増やした。

 

 つづいてM79グレネードランチャー。

 40ミリグレネードを発射でき、複数の目標にダメージを与えることはできるだろうが。今夜相手にするマイアラークは甲羅が固く、やわらかい部分に当てないと効果は薄いし。爆発の威力がありすぎるので距離が離れてないと使いにくいが、派手さがあるので騒げるという利点がある。

 

 予備として切り詰めたショットガン。

 だが2発しか装填できない。あくまでサブウェポン。接近戦用のガントレットもあるので多用することはないだろう。

 

 アーマーは身動きがとりやすくなるようスターディ・コンバットアーマーを中心に揃えたがヘルメットはない。

 軽装ではないが、マイアラークの巣の中心で騒ぐには少し心もとない防御力なのは認める。だが、兵士時代の経験から動けないまま死ぬ兵士を見てきたせいで、重装備にはあまり魅力を感じないのだ。

 

 アキラは今回、腰の後ろにあるホルスターにクライオピストル。刀というか、シシケバブと呼ばれるものも腰に下げていた。

 驚くのは次のコンパウンドボウと11本の専用の矢。使えるのかと聞いたら、本人は飛ばすだけでいい矢なんですとだけ答えたので何か仕掛けがあるのだろう。

 

 ポンプアクションのショットガンもそういう意味では珍しいだろう。

 アキラはずっとハイテクや重武器を好んでいると思っていた。

 

 だが最後の取り出したものはテスラライフル。

 これについては私は顔を曇らせざるを得ない。

 

「フム」

「やっぱり、これを使うのはダメですか?」

「難しいところさ。有用性は認めるけどね、そいつは範囲攻撃用の武器で、私が君と背中合わせにでもなっていないと攻撃されてしまう」

「ええ、ですから――」

「帯電仕様の装備にしてある、わかってるよ。

 ただやっぱり、完全には威力は殺せないということもわかっているだろう?君に撃たれるのは想像したくないし気分も良くない」

「わかってます。考えて使うようにします、むやみには使いません。約束します」

 

 戦闘中の混乱と興奮の中でその約束を守り続けることがどれほど困難なことか――嫌、彼はもう誰かに守られる子供ではないし。私よりもずっと賢い若者なのだ。信じなくては。

 

 2人のピップボーイからピピっと電子音でコールが入る。

 周囲をふらついていたコズワースも戻ってきた。

 

「周囲の環境情報の収集が終了しました。ピップボーイの地図から確認できるはずです」

「色で表示されるんだね……これによると今夜は気温は低め、土の状態は悪くなさそうだ。でも水たまりは多いし、走り回るのはつらいな」

「地形情報はV.A.T.Sの起動からも確認できます。こまめに発動させてください」

「了解だ」

 

 アキラはコズワースに近づき、彼の”中”から大量のスティムパックやグレネードなどを取り出した。

 

「持ってきてくれてありがと。これは僕が使わせてもらう。

 ああ、レオさんは地図から地雷設置場所を決めてください。コズワースは情報を受け取ったらすぐにその場所に向かって残っている地雷をばらまいて。マクレディに指示された時みたいにやればいいだけだから。

 

 改めて言っておくけれど、始まったらレオさんのそばにいるように。情報を更新してピップボーイに送るのが君の仕事だよ。

 目はひとつしかないから視野が狭くなってる。センサーの情報を利用するんだ。戦いが終わる合図となるフレアは指示を受けたら使うんだ。どうなるかわからないから、ちゃんと逃げ回って」

 

 コズワースに返事することはできなかったが、わかっておりますというように一瞬だけ動きを止めると。

 再び2人から距離をとって離れていく。

 

「さて、それじゃ最後の準備だ」

「狼の肉があったのでこれを餌に誘い出します。誘い出しはしますが――」

「なにかある?」

「もちろんですよ。僕らの装備では朝まで持ちません。夜明けには死にます。でもルールにある通り、僕らは大物を釣り上げて倒せればそこでやめてもいい」

「短期決戦――戦場でこのセリフが出ると、大抵はひどい目にあわされることが多かったな」

「キュリーがマイアラークの感覚を狂わせて共食いを促進させる方法を見つけてくれました。餌を食べさせると興奮状態にさせますが、倒すと体内から別の匂いを放つ仕掛けです。これで効率よく大型のアポミネーションを呼び出します。ですが2つ問題が」

「たったそれだけかい?もっとあってもおかしくない酷いミッションなんだけどね」

「餌の匂いにかなりの数のマイアラークがやってくるはずです。でも、すぐには攻撃しないで。用意した餌を食べ終わってから倒さないと意味がありませんし。こちらに気づかれると餌に興味を失うかもしれない」

「それは確かにマズいな。気を付けるよ」

「もうひとつは――釣り上げる大物が問題です。

 何が釣れるのかは僕たちの運によります。最悪、先日戦ったフォグ・クロウラーってこともあるかもしれない」

「地雷を用意するのはそのためだ。とはいえ、確かにあれがここに姿を見せないことを祈っておいた方がよさそうだ」

 

 私は終始軽口で応じ、アキラは不敵な笑みを浮かべてる。どちらも失敗するとは考えてない。強がってるだけかもしれないがそれでいい。

 

「大物を仕留めたらコズワースに合図を。彼がフレアを発射して見届け人たちを呼び寄せます」

「そして彼らが解体し、ここから退却する――では開始だ」

 

 アキラは背負っていたバックの中から大きめの袋を取り出した。中身は見えないが厳重に口をとじられているところから餌につかう狼の肉だとわかる。

 

「前方に少し行ったところにばらまいてきてください。匂いも強烈なんで、服に匂いがつかないようにお願いします」

「わかった」

 

 ライフルを地面立てたまま、レオは袋をもって駆け足で離れていく。

 代わりにアキラはテスラライフルをもってそれを起動させた。レオが指示通りに出来なければ、おそらくいつぞやよりも多くのマイアラークたちが列をなしてここに姿を見せることになるはず。

 

 そうなったらさっそくレオさんには悪いがこいつを使うことになる。

 

 

――――――――――

 

 

 

 港から来た見届け人たちはそれぞれ別れた場所から入り江の様子を探って待っていた。

 

(さっさと始めちまえよ。どうせ死ぬんだからさァ)

 

 霧の中で安全に隠れているとはいえやはり不安なのだ。しかも最悪、明日の朝まで隠れ続けなくてはいけない。

 さっさと始めてさっさと死んでもらう。それこそが一番の――。

 

 スンッ

 

 霧に変化はなかったが、空気がきしむような違和感ある音がした気がして何かが変わった。

 そして静かでも聞こえてきたのだ。あの固い物が激しくこすりあうとともに貪られる血肉が貪られている音、離れているはずなのにこの音が聞こえるなんて。あの入り江にはどれだけいるというのか。

 

 いや、まさかっ!?

 もう殺されてしまったのか。

 そんなことはないだろう。だって一発も撃ってない、何の抵抗もしなかった。ふたりで仲良く自殺したというわけか?

 

 

 困惑する彼らの視線の先に青白い光が――生まれたての新星の輝きが見え始めたのはそんな時だった。

 なにかが上昇していく駆動音。輝きもさらに強くなっていく。

 

 次に霧の中で輝く星から青いエネルギーの奔流が迸ると、その前方で蛇のように一帯に広がり、のたうち回る。その動きにあわせるようにしてマイアラークと思われる悲鳴のような、ギリギリ、キーキーという音が複数聞こえてきた。

 

――始まったんだ

 

 続いてタタン、タタンと断続的な射撃音が続く。

 

 

 入り江にマイアラークを誘う匂い、彼らのあげる悲鳴、彼らを苦しめる武器の音。

 静かな闇の中で静かに活動するアポミネーション達の興味を引いた。

 

 潜っていた地面から姿を現すのはエビの姿をしたマイアラークハンター。

 舗装された道路から投げ出されてきたような、半分を引きちぎられたような大きな車体の中からにょろりと出てくる爪や足。ヤドカリを思わせる巨大なハーミット・クラブ。

 そして入り江よりもさらに深い水の底で動き始める巨大な影――。

 

 だがそれらは全て、2人の計算の中にあったもの。

 でも時に戦場は気まぐれに計画を狂わせ、ピンチを招く。

 

――ミロ!人間ダッタゾ

 

 地元に住むロングフェローは近くにいるトラッパーは近づきゃしないだろうと太鼓判を押していた。

 だが、恐れを知らぬスーパーミュータントまでがここにくるとは想像もしていなかった。

 

 最初のマイアラークが餌を食し、変化する匂いに気が付いたスーパーミュータントは。そんな”おかしなこと”をするのは弱い人間たちだろうと予想してここまで様子を見に来てしまったのだ。

 

 ひとつの餌が多くの獲物を一カ所に集め、入り江を舞台に生死をかけたサバイバルトーナメントが始まった。

 

 

 スーパーミュータントたちにとってもこの遭遇には期待していなかったのだろう。

 地形を利用して地面に半身を隠すだけで、奴らが撃つ弾はまったくかすりもしない。しかしだからといって安心して反撃することもできない。援護する今も互いの距離を潰し、相手は接近戦に持ち込もうとしてくるからだ。

 

 とりあえず近づく奴から片付けなくてはならないが、全員は無理だろう――と考えていると、アキラが止める暇なく飛び出していってしまった。

 同時に、ピップボーイにコズワースから送られてきた警告音が鳴り。私はすぐにV.A.T.Sを起動する。

 

――なるほど、餌の効果は抜群だったわけか

 

 こちらとスーパーミュータントらを半包囲するように近づいてくる存在が複数感知した。

 私たち2人だけでこのすべてと戦うことはできない。なのでこの状況を利用し、効率よく立ち回って生き残らなくてはならないわけだ。

 

 こちらはたった2人と1台。そして武器は少なく、どちらも倒れては意味がない。

 そんなことが可能か?できるわけがない。そんな寝言は戦場を知らない元気な子供の妄想だ。戦場には暴力しかなく、血は必ず流れる。

 

――ブルー、今度こそ死んじゃうよ?

――お前さんを止められないんだな。死ねば止まれると、そう考えてはいないかね?

――どっちにせよ、だ。あんたのやってることは俺にはわからんよ、若いの。

 

 パイパー、ニック、ロングフェロー。

 彼らの言葉がこの土壇場でより苦みを増して味をかみしめる。

 

 後悔はしていない。だが進むなら、この道しか私にはない。

 いや、”私たち”にはないのだ。

 

 

 走り出すとアキラの脳裏にあるのはただ「殺す」という2文字だけ。

 その前に考えたことはもう消えていた。ただ殺し、ただ守り、ただ生き残るだけ。

 

 向かいあう形となったことで両者の距離はすぐに狭まり、スーパーミュータントらは持ち替えた殴り殺すための木材や危険なハンマーを振り上げ歓喜の声をあげる。どうでもいい。

 ショットガン最初の2発で、片方の頭は吹き飛び。もう片方は上半身を真っ赤に染めると「ガァ」とうめきながら足が止まった。構わずその後ろから出てくる相手の足を次に狙っていく。とはいえ頭では狙うと考えていても射線の角度もあってただの勘撃ちになってしまうが。こういう時こそV.A.T.Sが生きてくる。

 

 大木の幹のようだった片足が3発の銃声が鳴り響くたびに皮膚が吹き飛び、肉がそげ、骨が砕かれてついにはちぎれて水たまりにぼちゃりと落ちる。何をされたか一瞬理解できなかったか、倒れてからイタイ、イタイと泣きわめき始めた。

 

 もちろんそんなこと知ったこっちゃない。

 すれ違いざま、そいつにもう変に動いてほしくないので後頭部に銃口を向け一発。これでやかましいのは静かになった。

 

 とりあえず先発組で残ったのは最初に仕留めそこなった上半身を真っ赤に染めた奴だけ。

 狙いがうまくいかずに下にそれていた。片目は潰したが、口元、首、胸元と散らばって傷をつけることしかできなかった。

 残弾はまだ2発残ってはいたが、僕はショットガンのストックで数回殴りつけることで相手の戦意をくじかせ、武器をその手から落とさせた。

 

 さらに相手の前に立ち、その頭を乱暴につかむ。

 手に持ったショットガンをくるりと反転させ、呆然として半開きになった相手の口の中に銃口を突っ込んだ。

 

――ガガァッ!?

 

 痛かっただろうし驚いたろ?でもそれが目的じゃないんだよ。

 ジャケットに手を突っ込み、新しいシェルを5本の指の間に挟んで取り出すと。上向きに露出したチューブマガジンに装填していく。

 

 その姿があまりに情けなく映ったのだろうか。背後から撃っていたスーパーミュータントらが怒りの声をあげ、殺せと叫んでこっちに撃ってきた。

 だがそのほとんどすべては、僕の前に立つ哀れな肉盾の背中をえぐるだけで僕は無傷だ。

 

 最後の一発を装填し終わると、口から引っこ抜いてやるためにムカつくそいつに礼がわりに思いっきり前蹴りを食らわせてやる。

 よろよろと後ずさりした後、まだいいマトだと思われているのか背中を撃たれ続けているそいつはうなだれ、膝をついてから倒れ伏した。

 

 僕は少しだけ後退しながら、クライオ銃に持ち替えてその時を待った。

 DIAの技術で防御に問題はないとはいえ、レーザーもライフル弾も当たればダメージがある。耳元をかすめる弾も多いが、数発は腕や足に当たって少しだけよろける。

 

 変化した餌の匂い、死肉、そして新しい戦いと流れる血。

 自分たちの支配地でそんなことを勝手にやられて怒らない奴がどこにいる?

 

 霧の向こうから第2波が到着したのはまさにこの瞬間だった。

 さらに多くのマイアラークとマイアラークハンターの混合軍。

 

 そして怒り狂ったスーパーミュータントはたいして考えずに新しい敵にも攻撃を仕掛けてくれる。

 群れは大きな群れと小さな群れに分かれた。

 片方はアポミネーション同士でやりあってくれるが、僕らが高みの見物することはない。

 

 

 こういう時、M76グレネードランチャーが単発式であることが恨めしく思えてしまうがそれは贅沢というものだ。

 私は別れてこちらにむかってくる小さな群れの、一番密集していると思われる場所に向けてグレネードを放っていく。

 

――命中率:62%

 

 2分の1は悪くない数値のはずだが、今はもっと高くあってほしい。

 何体かは粉々にして宙に吹き飛ばしてくれたが、全部の足を止められはしなかった。

 

 離れていたアキラはさっそく複数のマイアラークに囲まれている。

 そして私は霧の向こうから何かが飛んできて近くの地面にばらまかれたことを確認した。

 

――マイアラークハンターはな、少し厄介だ

――あいつらはカニどもと違って目がいいらしい。こっちが遠くでも見つけてくる

――そして攻撃してくるのさ。体内から液体を吐き出す

――そいつを浴びようなんて考えるな、お若いの。楽しいことにはならん

 

 これがそうなのか。

 なら、アキラを守るためにもハンターたちの視線を私に向けさせなければ。彼がひとりで攻撃にさらされてしまう。

 

 

――――――――――

 

 

 見届け人全員の体が震えていた。

 恐怖もあるが、興奮もしていたのだ。

 

 ただの伝統、無謀な度胸試しのはずのそれは。

 入り江のちょっとした大戦争として彼らの目の前で、彼らの存在を知らずに続いていた。覇気を失い、絶望を冷笑しながら楽しむ堕落した日々しか知らない海の男たちには、それは戦争ではなく。サバイバルトーナメントでもなく、2人の人間が命を燃やして勝利をつかもうとあがいている姿として映っていた。

 

 感動していた、歓喜していた。

 思わず声をあげて応援したくなって、必死に自分の口を両手で塞がなくてはならなかった。

 彼らは島の外から来た、面倒な奴らなんかではなかったのだ。人が人に想う、優しく、決断力があり、希望を持ち、そしてなにより強かったのだ。

 

 そうじゃない、まだ証明は終わっていない。だから今度は彼らには強くあってほしいと願い始めた。

 彼らこそがキャプテンにふさわしい。外の人間?そんなものはどうでも良いじゃないか。

 

 自分たちはここで見ていることしかできないが、彼らには勝ってほしい。

 彼らの勝利は、もしかしたらこの島に大きな変革が訪れたという知らせであるかもしれないと、そう信じることもできるかもしれないのだから。

 

 絶望したくなかった。

 海の男らしく、堂々と生きていたかった。

 だがそれをとりもどすのにはもう、自分たちの力だけではもう無理だ。

 

 レオもアキラも戦場に混沌を呼び込むことで生存率を高めようとしている。彼らは連邦という恐怖のルールの中でもそれで生き延びてきたが。

 だからといって混沌は常に彼らの味方をするとは限らない――。

 

 

 ショットガンは投げ捨てた。振りぬいてくる固い拳骨の嵐でふたつにおられたら使い物にならない。

 囲まれてタコ殴りにされたせいで、肋骨は何本かいったし。内臓はひっくりかえってダメージを伝えてきてる。

 でもこの程度で終わって驚きだ。手足は引きちぎられず、骨にヒビすらはいることなくそこに残っている。そしてまだ動かせるのだから!

 

 腰の獅子樺武(シシケバブ)を抜きざま一撃、片足を引いて上段から一撃。

 マイアラークはそれを受け止めようとしたわけではないだろうが、爪の間に刃を挟みこむ。そのまま握りつぶそうとでもいうのだろうが、そうはいくものか。

 

 火を噴かせ、力を加えるとメキメキと音を立てて刃が爪の間へわけいっていく。

 感じているであろう激痛に口から泡を吹き、残る片手で狂ったように打ってきたし。周りもそれを助けようと殴ってくるが関係ない。

 

 邪魔だぁ!

 

 その叫びと共に相手の右腕を文字通り半分にスライス。

 怒りに任せ、返す刀で左の奴の顔に突き刺し。手を放してピストルを抜くと反対側の奴の眼前から撃ちまくってやった。

 

 ハァと息を吸おうとしたが、代わりにこらえていた喉の奥から血があふれ出て口から塊を噴き出し。せき込んだ。

 この時、自分が今感じている怒りが普通のものではないことを理解した。あの感覚が――怒りに震える手の中から変化を促すなにかが動き出している気がした。

 

 慌ててスティムパックを投与する。

 とりあえず感情を押さえつけ、出血に気を付ければ大丈夫なはずなのだ。

 もしも万が一、正気を失って自分が化け物になったとしても。コズワースやレオさんにはあの秘密兵器のことを伝えてある。あれなら例え自分が制御できなくなったとしても――。

 

 動きが見るからに遅くなったマイアラークの腕を払いのけ。

 反対側で顔に刺したままだった刃を引き抜くと、またも同じ顔に突っ込んでから乱暴にひねるようにして引っこ抜く。マイアラークはぶるぶる震え続け、2つに割られた顔がポロリと地面に落ちると中身を眼前にさらけ出した。

 

 再び燃料が投下されたエンジンのように僕の体が熱くなり、咆哮をあげると空いた方の手を顔のないマイアラークの中へと突っ込み。やわらかいものをつかんでから引きずり出して、確認もせずにそれにかぶりついた。

 歯の間にあふれる苦味、汁、マイアラークの血の味。どれもマズいが、心は少し穏やかになる。のまれるな、まだまだ戦える。

 

 

 状況は終息へと向かいつつあるように思えた。

 マイアラークとハンターの群れは人とスーパーミュータントによってあらかた狩りつくされようとしている。ハーミット・クラブは傷つくことを嫌ってその場で車体の中に戻ってしまった。残るのは人間とスーパーミュータントだけ?

 

 ところがいきなりスーパーミュータントたちは悲鳴を上げると粉々に砕け散って全滅してしまう。

 霧の中から現れた巨大な2つの影、マイアラークのクイーン達。ハンターよりも凶悪な毒が大量にふりまかれ、弱っていたスーパーミュータントらにとどめを刺したのだ。続いて最後のマイアラークを倒したレオとアキラもそれに気が付く。

 

 このまま両者が正面からぶつかり合えば、先ほどの光景が繰り返すことになるだろう。

 

「アキラ!!」

「レオさん、アレを使ってください。片方づつやるしかない」

 

 最悪の敵だが、これをこそ待っていたとも言える。

 

 

 夜明けが迫る入り江に太陽が2つも生まれ、闇に消えていった。

 見届け人たちは確かにそれを見た。地上より立ち上る赤い炎に彩られたキノコ雲。そして苦しむ巨大なモンスターたちの影を。

 

 真っ赤に輝くフレアが霧の中で燃え、夜空から地上を照らす。

 挑戦者たちから終了を意味酢する合図のはずだったが、まだそこには戦いは残っていた。島の男たちにとっての夢のような光景は一転して悪夢へと転じたのか。

 武者震いは恐怖のそれにかわり、すぐには誰も動くことはできなかった。

 

 

 朝、太陽はいつものように地平線から顔をのぞかせたはずだが。この島は今日も雲がそれを隠している。

 だが港には早朝から落ち着かない空気が流れていた。

 

 キャプテンズ・ダンス

 

 その成功の可否について、誰もが知りたがっていたが。誰もそれを口にすることはなかった。

 ニックとロングフェローはそんな空気の中、パラソル付きのテーブルに向かい合い。沈黙を続けている。キュリーとケイトは昨夜、あの若い友人が気になってるのだろう。この港で騒ぐことなく小島の砦で体を休め、すぐに北の新しい居住地へ戻ると言っていた。

 

「……おかしな話なんだがな」

「ん?」

「俺はあのおかしなふたりはもうとっくに死んじまったと信じている。これまでもみんながそうだったんだ、あのふたりだけは特別なんてことはない。だから今頃はもう、クソったれの腹の中で消化されちまったことを悼まなくちゃならん」

「その通りだ。彼らは間違った決断をした。あんたは正しいと思う」

「ふん、本気でそう思ってるのか?気が付いたんだが、お前さんはプラスチックの顔でもよく表情を変える。

 実は俺はそれとはまったく別に、あのふたりならもしかしたらと考えて困っているのもわかっているんだろ?」

「――ああ、その通りだ。それもあんたが正しい。

 俺の新しい友人たちはああいうことを平然とやる。そしてやりきってしまう。でもそれだけじゃ足りないと次のことを探し始める。どちらもまるで兄弟みたいに口をそろえてな。その繰り返しだ、まさに今回はその最たるものでただの狂気だよ」

「だが?」

「そう、だが今回も彼らは帰ってくる気がする。素直に死んでくれるような奴らじゃない」

「嬉しくはないのか?」

「嬉しいよ。だが、あんたらにはご愁傷様ですと言わなくちゃならん」

「なぜだ?」

「あんた達が本土とよぶ連邦は、もう去年の連邦とは全く違うからだよ。別世界だ。そうなった原因の多くは、俺はあのふたりだとずっと考えてきた。おそらくここの連中はそうはおもわないかもしれないが。俺の見るところ、あんたもそう考えるようになりつつあるように見える」

「それはどうかな」

「ビビることはないさ。あんたも俺と同じようにレオを気に入っているんだろ?彼もそう思ってる、そういう魅力が彼にはあるんだ。彼が理由をつけて始めたあんたが呆れていることだって。おそらくはあんたのためにやってる」

「この死にかけの爺イのためだって?そりゃおかしな話だ」

「そうでもない。だが別に俺の考えを押し付けたいわけじゃない。あんたの好きに考えたらいい」

「ふんっ」

 

 ふたりはそうやって再び無言となるが。港の門の方角が騒がしくなってきた。

 しかし老人たちは動こうとしない。彼らにとってはその必要はないとわかっていたから。

 

 

 見届け人たちは全員が真っ青の顔で帰ってきた。

 ただし彼らは持ち切れないほどの肉を抱えて。

 

「キャプテン・アヴェリー。信じられない話だけどな、これでも全部は持ち帰れなかったんだ」

「まさか、嘘でしょ?」

「自分も見てきておいてなんだけど、信じられない。そうだ、あいつらやりやがったんだ」

 

――新たなキャプテンたちの誕生だ!

 

 歓喜の笑い声に雄たけびが、曇り空でも港は激しく揺れていた。

 




(設定・人物紹介)
・コズワース
最初は犬のカールとストロングを連れていくつもりであったが。どちらも頼もしすぎて無双しそうだったのでダルトン・ファームで留守番してもらうことに。
そこで戦えない縛り中のコズワースに来てもらうことになった。

NVのED-Eぐらいに騒がしくするのかと思ったが、戦闘中は本当に黙り込んでしまって書いててちょっと驚いた。

・センサー
現在のコズワースの体は球状ではなく正方体である。
ゆえにサイコロがぷかぷか浮いていると思ってほしい。

・テスラライフル
レーザーのように敵を灰に変え、攻撃相手の周辺一帯を攻撃するチートウェポン。
個人で使う分にはお手軽な強さしかない武器ではあるが。性能的にそばに味方がいると誤爆する可能性が高すぎて、使ってほしくない武器。

・マイアラークハンター
カニと組んで戦うと遠距離攻撃しつつ近づいても来る面倒な大型エビ。ザリガニ?

・ポンプアクションショットガン
原作では登場しないショットガンである。8発装填、レミントンM870が元ネタ。レジェンダリーは爆発。ゆえにすぐに退場してもらった。

最初は以前に登場させたレバーアクションライフルをショットガンにしてここでアキラに使わせるつもりであったが。ジョンなにがしサンのように「カッコよくクアッドリロードさせてー」という妄想に負けて登場させてしまった。
なお、クアッドリロードさせるのはあきらめた模様。

・シェル
ショットガンの弾

・V.A.T.Sが生きてくる
アキラはパーク『Concentrated Fire』を習得している模様。

・M76グレネードランチャー
レオが使っているのはストックのないものなので命中率がよくはない。

・マイアラーククイーン
クイーン戦はこの先の展開の都合と、文字数削減からカット。
ちなみに原作では”伝説級の”一体とだけ戦うことになる。
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