人並みの悲しさ、なんてものは当の昔にキャピタルのどこかで捨ててきてしまった。
だが、それでもまだ感じることはできる。
胸ポケットの中のキャップが軽くなり続け、サードレールで買うバーボンの味が忌々しい熱を持ち始めると不安と一緒に悲しみをそんな理由で感じることができる。
別にそれは、誰でもそういうものなのかもしれないが。
傭兵、殺し屋。マクレディ。
この看板はたいしたものだとは思うが、困ったことに最近の巷では少し違う。いわゆる、現実と自己評価の誤差ってやつだ。それに苦しめられている。
だが今日は風がいいほうに吹いた。
「あんたがマクレディ?」
「ああ、だから?」
「このサードレールで雇える傭兵では上のクラスだって聞いた」
「それは間違いない。ただし雇うには前金が必要だ」
最初はわからなかった、自分よりも幼い顔をした少年?
しかし黒髪の東洋人は見た目で年齢がわかりにくい。実際のところ、雇ってもらえるなら年下であろうときっちりと仕事はする覚悟はもっていたので、どうでもよかったが。
「前金かぁ」
「それと値切るのもナシ、自分を安売りはしてないんでね」
もうまったくの嘘だった。
正直今の自分の腕を買ってくれるなら、多少値切ってもいいくらいだ。これ以上安値となると、サードレールを出てバンカーヒルの糞ったれな商人達に頭を下げなくちゃならない。あそこまでおちたら、もうグッドネイバーまでは戻ってこれないだろう。
「わかった」
「ホントに?いますぐ?」
「うん、これでいいだろ」
トラブルまみれの傭兵を相手にこうも簡単にキャップを差し出す相手。冗談かと思ったが、本当にキャップの山を取り出すので、あわてない態度で大仰にうなづいたりしながら、指が震えないようにと力を入れてそれを受け取るのは大変だった。
そしてやっぱり俺はどこか間が抜けていたんだ。
自分が少しグッドネイバーを留守にしている間に、嵐のように登場して話題をさらっている新しいプレイヤーと呼ばれている野郎がいる。そう話には聞いていたが、なぜかそいつは名前ではなく、姿でしか知られていなかった。Vault居住者が着ている、あの青いジャンプスーツ。
そいつを目の前のやつも着ていると理解したのは、そいつがサードレールから俺をあのおかしなレールロードへと涼しい顔をして導いた時のわけで――いや、悪いがこの辺の話は自分ではなかったことにしたい。
とにかくガンナーのおかげで仕事を失いかけていた俺は救われたわけだが。
一方で、そんな俺を哀れんだのか何なのかわからないが、新しいボスは噂以上に頭のネジどころか、配線がおかしい。そういうやつだったのだ。
おかげで退屈はしないが、ここまで刺激的だと――ああ、贅沢ばかりいえないよな。わかってる。
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グッドネイバーで仲間というか、部下というか。
とにかく護衛に傭兵を雇うと、僕にとって旅という体験にも大きな変化が生まれた。
悪党の町、そんな風に言われたところにいた奴だから、実際には口下手で多くを命令したりしない僕の態度にナメ腐ってふざけたことをしだす可能性はあった。
だが、マクレディは本人が口にするようにちゃんとプロの傭兵としての意識を持つ人物のようだ。
バンカーヒルの商人を見習おうと、ちょっとした肉壁程度に考えていた彼は。動くたびにこちらに次の目的地を確認し、自分への指示を求め、それを可能な限り任務として遂行しようとしているようだった。
これは思った以上によい買い物をしたかもしれない。
僕が彼をそう評価し始めるころには、向こうはこちらを厄介な雇い主だと思い始めていることを察していた。まぁ、お互い知り合うのはもっと時間が必要と考えよう。
「ボス、次こそバンカーヒルでいいんだよな?」
「間違いない、そこでちょっと用があるから。その間に旅に必要なものは買っておいてほしい。キャップはちゃんと出すよ」
「それは構わないが……ボスはなにを?」
「ああ、俺はね――」
まぁ、得意になっていうことではないし。かといってどうせばれていたことだろうから、サラッと自然を装ってゲロしてしまうことにした。
「グッドネイバーでサイコ、ジェット、メンタス。ぼかにもX-セルとかデイドリッパーとか。まぁ、軒並み中毒になっててね」
「は!?そんなにっ」
「本当に、本当に貴重な経験をさせてもらったけれども。さすがにこのままだとイライラ、ムカムカしっぱなしでどうにかなりそうだから、ちゃんと治療しようと思ってる」
「……グールにでもなるつもりかよ、ボス。
いや、ちょっと待て!あのバンカーヒルで、治療をするって言うのか?」
「うん、そうだよ」
「そうだよって――あそこに医者はいないだろ」
「正解。あそこには確かに人間専門の医者はいない。
いるのは、商人の使うバラモンをみる動物用の医者だけ」
「じゃ、どうするよ?」
「さすが商人の町だよね。あの医者、もぐりで人間も動物だからって手広く治療をしてくれるらしい」
「――本気かよ」
「ま、使っている薬は他の医者と同じだというから。見立てがおかしくなければ、しゃんとするらしいよ?」
それがまるでなんでもないことのように口にしたのが悪かったのか、マクレディのこちらを見る目がまたひとつ下がってしまったような気がする。なぜだ?
バンカーヒルでは結局治療とやらで一晩泊まることになり。僕は延々と水を飲み続け。冷や汗と尿意にひっきりなしに襲われるという嫌な経験を味わうと、まっさらな体になってサンクチュアリにむかって旅立った。
そうそう、体験だけではなく。ヒルでは面白い噂も耳にすることができた。「サンクチュアリが新しい居住区として入居者を探している」というものだ。
どうやら、僕が出かける際にしかけた装置は今もちゃんと稼動しているようだ。そしてあそこの連中も、町を作ると口先だけで言っていたわけではないらしい。
「ボス、俺達はこのまま北上して。その新しくできたとかいう居住地にむかう。これでいいんだよな?」
「そうだね」
「だけどボス、その道だとタッカー・メモリアルブリッジの手前はレイダーとスーパーミュータントの天国みたいな場所だぜ?
バンカーヒルの連中が傭兵を従えている理由の一つにあげるくらいだ。俺達もほぼ間違いなく、ここでどちらかの襲撃を受けることになると思う」
こちらに来たときは、人造人間の彼と普通になにもなくバンカーヒルまでこれたのでそこまでのことだとは実感はなかったが。雇った部下が心配してわざわざ警告する場所に、そのときと同じ感覚でいくのは確かに危険ではある。
僕はしげしげとマクレディの装備を見る。
狙撃手を名乗るだけあって、ハンティングライフルを背負っている。だが、それはあまり褒められたものではない。
自分の武器を使いやすくするのではなく、手に入れた武器に自分を合わせる。そんなかなり強引な使い方をしているのは明らかで。こうして遠めに見てもレシーバーとストック、バレルはひどく痛んでいるよう見えて、なんとかしてやりたいと僕の腕がムズムズしてしまうほどだ。
「マクレディ」
「あ?」
僕は「これだ」というと、僕のサブマシンガンを彼に放り投げた。それを落とさぬようにあわてながら受け取る彼に初めてまともな命令をした。
「橋を渡るまでは、そいつを使え。弾は荷物の中にある」
「これっ!?マシンガンだろっ」
「距離はいつもの半分くらいに見ておけ。反動は抑えられているはず、狙って引き金をリズミカルに。それでも十分に戦えるはずだ」
「ボス、俺は狙撃手なんだぜ?」
「ぼ――俺もライフルは得意じゃない。レイダーは群れで来るから、囲まれるのは厄介だ。ま、文句を言わずに使ってみろよ。感想も聞かせてくれ」
「レイダーに殺されたら、感想も何もないんだけどな。ボス、わかってるのか?」
そんな軽口たたきあいながらも、それでも備えていたとはいえどこかで軽く考えていたのは間違いないと認めなくてはならない。
明け方にバンカーヒルを出て順調に進み、昼を目前に橋がもうすぐこの目に見えようとするあたりで。
道の中央がにわかに騒がしくなると、次の瞬間。キノコ雲めいた不穏な爆発に続き、熱風と衝撃が僕達を襲った。
「マクレディ、見えるか?」
「ああ、わかるぜ。戦闘してる、誰かがレイダーに襲われたんだ!」
それだけ聞けば十分だった。
僕は立ち上がると大またで歩き出す。「ボス!?」と驚きの声を上げるマクレディを従え、背中に背負った――この旅ではこれまであまり使うことはなかった――そいつを構え、何者かに襲いかかるそいつらの背中に狙いを合わせる。
発射される弾に当たれば瞬時に氷結させてしまう試作大型ライフル、クライオレーター。
Vaultから持ち出したばかりのときにレイダーに使ったそれとは、今のこいつはまるで別物だ。
銃身の形状を変化させたことで、攻撃範囲は倍になり。一発ごとの反動も可能な限り押さえ込むことができる。おまけにそれらしく照準まで設置した。
どうやら誰かが誰かに襲う背後から、さらに襲う役目が自分に与えられているらしい。たった2人の乱入者が、手馴れたやり方で襲撃者達の背後を襲い、容赦なく簡単にこれを押しつぶしてしまった。
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TVやラジオのドラマなどでは、こうしたヒーローの誕生に喜びと感謝をのべる救助者のシーンというのがあるものだ。実際にそれを期待していたわけではなかったが、自分達が倒した相手が奇怪なロボットだらけで、それに襲われていた集団がほとんど全滅していたという最後は想定していなかった。
ただ一台、傷つき。頭部から火花を散らし、壊れた左腕をそのままにしたロボットがひょこひょこと進み出ると、ショックで呆然としている僕達に礼儀正しく話しかけてきた。
「友人達はこの攻撃を生き延びることができませんでした。ご協力ありがとうございます。自分もここまでかと覚悟しました。追撃を受ける中、あの救難信号が届くとは、正直思いませんでした」
「だ、大丈夫なのか?それと救難信号って?」
「これでもダメージはわずかです。それより友人達をなくしたことへの悲しみと怒りを感じています……。
あなたたちは、ジャクソンと私の救難信号を受信して駆けつけてくれたわけではないのですか?」
「実は――そうなんだ。
近くを通りがかって、銃撃音が聞こえた。次に爆発、それで慌てて駆けつけたんだ」
「ロボットの発言としては奇妙かもしれませんが。彼らは…家族でした。もう一度、お礼を言います。彼らも同様にお二人に感謝しているはずです」
「お前は――どういうロボットなんだ?随分と、かわっている。見たことがない」
「改良されています。根本的にはアサルトロンです」
いつになく奇妙な自分の脳が言葉に反応し、すぐにどこで学んだのかわからない知識が浮かび上がってくる。
人型でありながら戦闘用のロボット。最も人間を破壊することに特化したプログラムを持つ。
このタイプの上位モデルは高速移動と絶対の接近戦で確実に敵を殺しにかかることを謳っていたはずだ。だが、目の前のロボットはその肝心の足が別のものにかえられており、おそらく運動性能は普通以下であると推測された。
「私の名前はエイダ。ジャクソンがアップグレードしてくれましたが、彼らを守りきることはできませんでした」
「さっきから出てくる、ジャクソンって?」
「このキャラバンのリーダーでした。ロボットの技術に詳しく、色々な意味で、私の製造者でもありました」
「ロボットをアップグレードだっけ?そんなことできるんだな」
「はい、プロトタイプ設計図をもとにして、作業台を使い改良されています。様々なことができますが、オリジナルよりも優れた部分も生み出せますが、劣ってしまうこともあります」
「ということは、お前もやろうと思えばセントリーボットのような大型で重装甲、重装備のロボットに作り変えることも可能ということか?」
「はい、その通りです」
明らかにそれは自分の知らない新しい技術と出会ってしまったのだと僕は理解した。
正直心の奥底では、悪い自分が「これ、ほしいなー」などと口に出し始めている。
「この襲撃は予想できた危険でした。連邦から離れるよう、彼らにもっと強く言うべきでした」
「――もう終わってしまったことだよ。取り返しがつかない、前に進まないと駄目だ」
「仰るとおりです。私は償いとして、友人達のために正義を求めます。あのロボット達がさらなる被害を生むのを阻止したいと思います」
「な、なに!?なんだって?」
なんだかおかしな話になってきた。
ロボットがロボットに襲撃され、さらにロボットは正義を求めてロボットを阻止するだって?
「ああ、ボス?もしかしたらこれのことじゃないか?」
マクレディはそういいながら、地面に転がるアイボットとよばれている一台を蹴飛ばしてくると。ガシガシと手荒く踏みつけた。
『注目せよ、連邦の人々!私はメカニスト、平和の時代をもたらしに――』
何者かのメッセージらしい、僕は素早くそいつを解体するとなかにあったホロテープを取り出した。
「私の敵です。彼らの信号元を暴き、メカニストと対決する時がきました」
「メカニスト?メカニストって誰だ?」
「ボス――俺、そいつ知っているかも」
「誰だ?」
「えっとな、その……笑わないでくれよ?」
「?」
「グッドネイバーで、ラジオに出てた。誰かに殺されたみたいだったぜ」
「はいっ!?」
死人がロボットをロボットに戦わせてた?まったく意味がわからなかった。
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僕が混乱したのは、別に僕がおかしかったわけじゃなかった。
整理されると実は簡単な話だったことがわかった。
グッドネイバーで流されている過去のラジオ番組にメカニストというキャラクターがいて。その名前を名乗る変な奴が、こうしてロボットを使って連邦のキャラバンを襲っている。
そう、こういうことだ。
「その正体はアイボットの放送から得た情報しかありません。あの歪んだ平和と正義の主張……ロボット使って死をふりまく。許しはしません」
アサルトロンというロボットのスペックを知っていると、このエイダと名乗る彼女の人格にはとても興味深いものを感じる。
「あなたは他者を助ける意思を見せました。唐突ではありますが、どうか私と一緒にメカニストを止めるために協力してくれませんか?」
「なにいってんだ、このポンコツ」
「おいっ、マクレディ!」
「だけどボス、こんなやばそうな相手。なんで俺達が巻き込まれなくちゃならないんだよ」
「その考えは理解します。そのかわり、この仕事用に追加の資源を得られるよう、ロボットを改造できるノウハウとそのために必要な作業台の設計図も譲渡します」
なかなか面白い話になってきた。
それにさらに面白いことに、このロボットはこちらに対して交渉を求めてきている。今から豹変して、すべてを奪いつくすかもしれない人間を相手にして。
「そんなもん、どんな価値が…」
「黙れ、マクレディ。エイダ、一つ質問がある」
「はい」
「本当はただ、復讐したいだけなんだろ?」
質問の瞬間、なぜか僕はアドレナリンが吹き出るのを感じ。口元に歪んだ笑みが浮かんでいた。
好意に値する人格を持つロボットだった。だがその根本はただの殺人機械にすぎず、敵を容赦なく破壊することこそを至上の行為と考える存在だ。
言葉の裏に隠れた――そう、人で言うところの欲望が見れるかもと期待して、その問いを口にしていた。
エイダに躊躇いはなかった。
「私の目的が2つあることは認めます。メカニストの野望を阻止すれば、連邦を守ることも倒れた友人達の敵を討つ事もできます。脅威が去るまで休むつもりはありません、彼らの借りは返さなくてはならないのです」
「エイダ。わかったよ」
マクレディはこの時、自分の雇い主がどれだけおかしいのかまたひとつ理解した。
口元に浮かぶ歪んだ笑みは、今は満面のそれとなり。どんなときでも普段は穏やかなその目は大きく見開いて爛々と輝いている。
「だが技術だけでは足りない。もうひとつ、お前も俺はほしい。俺をお前の新しい主人にしてくれ。
そのかわり、お前の友人達の記憶。お前の願いと目的、そしておまえ自身の体をすべて引き受けたい。どうだろう?」
「それで構いません。契約は成立です、いいですか?」
「ああ、いいとも」
正義を理解し、報復心と併用させようとするロボットを手に入れ、アキラはそれを喜んでいた。
互いの合意は得たものの、残念ながらエイダに感傷的な時間はそれほど残されてはいなかった。
騒ぎのあった場所はバンカーヒルと橋の手前、レイダーやスーパーミュータントがなにがあったのか様子を探りに来る可能性は高かった。
アキラは礼儀として、エイダの以前の持ち主であり友人達を葬ってやれないかと口にしたが。エイダとマクレディはその提案に反対した。
ジャクソンたちのキャラバンから持ち出せるものはすべて持ち出し、ロボット達からもパーツを取り出していくべきだとエイダは主張した。
こうして2人と一台の奇妙な集団が旅をすることになる。
予定通りタッカー・メモリアルブリッジを渡って北上を続け、そうやってついにコンコードをも通り過ぎた。理由はわからないが、橋を渡った後は特に人とすれ違うことも、レイダーのような襲撃にあうこともなく通り過ぎてしまった。
だが、サンクチュアリを前にしていきなりアキラは足を止める。
「マクレディ、悪いけどあそこサンクチュアリに行ってプレストンとかいうのを連れてきてくれ――」
「俺が?誰だよ、そいつ」
「頼んだ」
我侭じみた命令を下すと、アキラは黙ってなにやら橋向こうの住人達に危ない目つきをしたまま黙ってしまった。
その様子があまりに普通ではないので、仕方なくマクレディは一人で橋を渡る。
彼が戻ったのは3時間後、疲れきった表情の彼の後ろには。アキラの姿を確認して喜んでいるらしいプレストンとスタージェスがいた。
「つれてきたぜ、ボス」
「――武器を取り上げられたか、マクレディ?」
「ああ、その通りだ」
マクレディの返事を聞くと、アキラの表情にはっきりと嫌悪のそれが浮かんでくる。
「すまない、傭兵というから。念のためだった」
「町から消えた若造の名前を出したから、レイダーを引き連れて戻ってきたと思ったんだよね。わかってる」
「そうじゃない、そうじゃないんだ。アキラ、プレストンは君が誰かに捕まっているんじゃないかって心配して――」
「いいんだ、スタージェス。アキラ、確かにそういうこともあるかもとは考えた。否定はしない」
アキラはただ鼻を鳴らしただけだった。
一月をこえる時間がたち、多くの出会いと経験をして戻ってくれば。あのときの感情は少しは癒されているかとも考えていた。まったくそんなことはなかった。
そのかわりに、半端に手を貸した自分の行為の上でのほほんと日常生活というものを平和に過ごしている連中があそこにいるのだと考えると、いまからあそこに乗り込んでいって皆殺しにでもしてやりたいなどと、わずかにその欲望を自分の中に感じていた。
「レオさんは?」
「まだ戻っていない。彼を、追っていったわけじゃないんだな」
「そうだよ。知ってると思うけど、彼はパパじゃないんでね――」
「なぁ、アキラ。君の怒りは今なら少しは僕らも理解している。わるかったよ。
以前とおんなじことにはならないようにするし、どうだろう?せめて仲直りのしるしに、サンクチュアリに入ってくれないか?プレストンも、それを望んでる」
「その通りだ、アキラ。もう一度、やり直せないだろうか?」
(顔を合わせりゃ、お前等がそういうだろうと思ってたさ!)
僕にとって忌々しいとはこのことだ。
弱って、転がり込んできて、勝手に居座って、何もできないくせにこっちの頭を押さえつけ、何もかも支配できると思い込んで踏みにじった。
あの怒りと屈辱を忘れることなどできるわけがない。
こいつらへの返答はちゃんとこっちも用意してあったさ。
「あそこには戻らない。馬鹿共の相手はしたくない、勝手にしていろ。僕はこっちで、レオさんの帰りを待たせてもらう」
「こっち?」
ああ、あそこさ。
そういって僕は背後の寂れたレッドロケット・トラックストップを指差した。
(設定)
・医者はいない
実はこれは正確ではない。
バンカーヒルにはゲームでもちゃんと旅をする人間用の医者というのが存在している。だが、言ったようにしょっちゅう旅をして留守になっているわけで――。
このときはいなかった、タダそれだけのことである。