連邦の西に向かう方法だが、選択肢はそれほど用意されていないことを私は理解していた。
ダイアモンドシティからそのまま向かうのではなく、一旦チャールズ川を渡って北に進み。そこから南西の方角に降りていくのが一番安全だと考えた。
これが正解だった。
西側のエリアに入って2日、私達は敵の襲撃を受けずに無事に旅を続けていた。
夜、焚き火のそばで眠っていた私は目を覚ます。それに気がついたマクレディが声をかけてくる。
「起きたか?まだ寝ていていいぜ、交代まで時間はある」
「――いや、大丈夫だ」
復讐の相手、妻を殺した男の名前がケロッグと知り。ダイアモンドシティでそいつが少年といた、そう聞いてから私は睡眠中に夢を見ることを恐れていた。
ニックには「その子は俺の息子ではないだろう」とその時の私は口にしたが、本当は不安だった。
もし、もしもの話だ。
やつがショーンと暮らしていて、自分を父親などと呼ばせていたら――私は自分が冷静でいられる自信がない。
あの男を追い詰める、報復心を満たすことに暗い炎を静かに燃やしていた自分が怪物のように息子には見られてしまう……そんなあるかもしれない未来に恐怖を感じ始めているのだ。
だから眠りたくはない、眠らなくてはならないとしても。
夢を見たくはないのだ。
「コーヒーがあるぜ」「一杯頼みたい」「わかった――」
「明日は……どうしたらいいか、君の意見を聞きたいな」
日中、私のピップボーイに突然反応があった。
どこからか発信されている救難信号が入ってきたのである。そうして誘われるようにトレーラーハウスの集合住宅街に近づいていた。朝になれば、そこに到着することになるだろう。
私はすでにして迷走を始めている。
――ケロッグは一人で西に向かった
その情報を頼りにここにいるが、実際の話。このままでは虱潰しにあちこちを訪ね歩かなくてはならない。冷静な意見が、自分以外の知恵が必要なところだ。
マクレディはカップを私に差し出して渡すと、自分の考えを口にした。
「トレーラーハウスとかいったか――俺は行くのをやめたほうがいいと思うぜ。声を出している奴がまだ生きているって保証はないしな。それに、よく考えてみたらあんたの事情を考えると行き先はもっと絞れてくると思う」
私は少しムッとした。
「そんなことは初めて聞いたな」
「そりゃそうさ。あんたは俺の意見を聞かなかった。俺がここにいるのは、ボスに頼まれてあんたの命を助けるためだぜ?あんたの敵討ちをどうこうするのは、約束に入っていない」
指摘されてはじめて気がついた。確かに彼の言うとおりだった。私はケロッグとの決着にあたまがいっていて、冷静さを欠いていた。もっと友人の言葉を必要とするべきだったのだ。そもそもここまで来たのも、私だけではたどり着けなかったのだから。
「すまない、確かにそうだったな。今更だが、君の意見を聞かせてくれ」
「――あんたは依頼人が不明の凄腕の傭兵を探しているんだろう?俺が知る限り、そんなのがこの辺りにうろついているというならひとつを除いて、いくつもないと思う」
「ひとつを除く?」
「ああ。輝きの海って言葉、聞いていないか?」
「知らない。それはなんだ?」
「常に放射能嵐にさらされている死の大地だよ。アボミネーションにとっての天国さ。普通に何の準備もなく入り込む気ならと、あんたも俺もあっという間に奴等の仲間入りしちまうだろうな」
「凄まじいな」
「ああ、そうだろ?だから候補から外せる」
「続けてくれ」
「同じような理由から、水処理場やタンクも外せる。あそこはスーパーミュータントやフェラルがうろついているって噂だ。トレーラー・エステートとやらも、きっと似たような場所だと思うね」
「そうなると、可能性とやらが高いのはなんだ?」
「ひとつはへーゲン砦だろううな。敷地が広大だから、探す場所は多くある」
「ひとつ?まだあるのか?」
「ああ、だが――」
マクレディの言葉の切れが悪くなる。
カップの中の液体をすすりながら、考えた。なにか都合が悪いことでもあるのだろうか?しかし、困惑はしているが。その顔はどちらかというとしくじったときにみせる「しまった」という時の表情に近いと見た。
しばらくは迷っていたらしい彼は、ようやく意を決したのだろう。
顔を上げると、ゆっくりと話し始めた。
「実は俺は――あんただけじゃなく。ボスにも話していないことがあるんだ。俺、脅迫されているんだ」
「脅迫だって?」
「ああ、そうだ……いきなりだったな、すまない。説明が必要だよな」
そういって語り始めたのは彼の過去の話であった。
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あのB.O.S.に支配されたキャピタル・ウェイストランドでは傭兵家業は難しくなり、マクレディはこの連邦へとやってきた。なんのツテもなかったマクレディは、巨大な組織が狙撃手を探しているという求人に何も考えずに飛びついてしまう。
それが最悪の決断だとわかったのはそれからしばらく時間が必要だった。
ガンナーズ。
連邦の武装組織としては最大級の傭兵団。
だが、その内情はひどいもので、やっていることは傭兵というよりもレイダーと同程度。さらに軍人を気取って奇妙な政治劇のふりをしたリンチを仲間の中でおこなっていた。
そんな姿を見て幻滅すると、マクレディはさっさとそこから立ち去ろうとした。が、今度はガンナーの方がそれを許しはしなかった。
逃げ出した裏切り者になるのかと、ウィンロックとバーンズというリーダー格の2人にしつこく追い回され。見つかってから、ずっと脅迫されていたらしい。
「ボスに雇われる前は、俺を雇わないように雇用主にあいつらが圧力をかけてさ。おかげで金になる契約はまったく望めなかった」
「圧力?アキラは、なにもなかったのか?」
「……それは」
「あったんだな?」
「ああ、正直に言うとあった。奴等の下っ端が来て、ボスに契約を解除するように迫った」
「どうなった?」
「あいつら、ボスをこれまでのキャップを持っているだけで威張っている奴扱いしたんだよ。彼は――まぁ、まったく容赦がなかったな」
「殺したのか?」
「どうかな、グッドネイバーの外に縛り上げて放り出したから――」
「それが、問題か?」
「ああ、レオ。あんたはあそこを知らないんだったな。あそこはボストンコモンに近いから、マジでヤバイ。仲間に発見されたという可能性はあるが、それ以外に見つかったと考えるのが正しいと思うぜ」
「つまりは、死んでいるんだな――」
気分のいい話ではないが、非難するほどのことでもない。
つまりいつものアキラであって、彼はこのマクレディのトラブルに巻き込まれることも計算に入れて引き受けたのかもしれない。
なるほど、ただの傭兵の義理立てにしては妙に強めのつながりをもっていたわけである。
「ということは、そのもうひとつというのが?」
「ああ、そうだ。ウィンロックとバーンズがいる、ガンナーズの拠点のひとつだ。マス・パイク・インターチェンジ、これがその場所の名前だ」
「ケロッグはそこにいると?」
「微妙な話だよ。だが、そいつが腕のいい傭兵だというなら。ガンナーズは避けては通らないはずさ」
「それだけじゃないだろう?」
「――わかっちまうか。ああ、そうだ。
ガンナーズは自分たちの客人を渡したりはしない。ケロッグって奴がそこに用があったとすると、奴らは敵に回る。だったら――」
「最初からこれを襲撃してまとめて処理してしまえばいい、そういうことか?」
「ああ。だが、これは別にやって貰わなくてもかまわないぜ。実際ボスにも話していないことなんだ。あんたのついでに、なんて都合がよすぎるだろう?」
そんなことはない。
むしろそれは私にとって、十分以上に意味のある助けになるとわかった。
「マクレディ、そこまで案内してくれ。私はまずそこから確かめたい」
私は夜にはあまりにもまぶしい輝ける笑顔を彼にむけた。
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夜明けが近いマス・パイク・インターチェンジだが、地上では横になる者や椅子に座って船をこいているのもいたが。申し訳程度に虚空に目を向けているだけの無気力な兵士たちがいた。
私はマクレディを離れにおいて一人、彼らの中へと混ざりに行く。
相手を舐めているわけではないが、この程度の防衛体制なら静かに匍匐前進など必要はなく。ある程度は大胆に動くくらいが丁度いいのである。
私は好き勝手に寝ている彼らのそばに近づくと地雷をプレゼントして回る。その場から立ち去ろうとすれば、たちまちこいつのせいで大騒ぎになるだろう。
準備は完了した。
私は自分をスコープで追っていたはずのマクレディにむけて”ハジメロ”と合図を出しながら、私は壁の反対側へ隠れて待つ。
背中のライフルを構え、片手にマガジンを取り出してすぐに装填できるようにしている。
そうやって待機して数秒、離れから潰れたライフルの発射音が聞こえてくると。
寝ていた連中は目を覚まし、派手に立ち上がって「なんだ!?」と声を上げー―る前に、破裂音とともに次々と吹き飛ばされ、四散していった。
私の耳はその音を確認すると、素早くマガジンを突っ込み、装填してから腰だめに壁の裏からゆっくりと出て行く。すでに状況はこちらの圧倒的な有利に進んでいる――。
夜襲とはいえ、あっさりと敵を壊滅させてしまったことにマクレディは興奮を抑え切れなかった。
「本当かよ、本当にやっちまったんだな」
「マクレディ、残りは全て片付けたぞ」
「ああ――そうだな、わかってる。そうなんだよな」
この場所にいる兵力の半分――は言いすぎだが、少なくない数の地上の戦力をすでに倒してしまったのだ。
「お前を脅迫していた2人は、やはりここにはいないのか?」
「ああ、あの糞野郎共はここのリーダーだからな。この上の、高架橋に陣取っているはずさ」
「なるほど。ところで、上の連中はこっちに下りてくる気配がないな?」
「気がついてはいると思うぜ?でも、助けに来ることはしないんだ」
「なぜだ?」
「ああ、それはだな。ガンナーは基本、組織を大きくするのに新人をいちいち雇ったりしないんだ。すでにある小さな傭兵集団や、レイダーたちを取り込む。だから――」
「なるほど、仲間意識は低いというわけか」
「そうだ。ここにはすでに十分な装備をもった兵士がいるし、まだ夜明け前だ。
下で何か騒ぎがあるとわかっても、様子を見にすぐに降りてきたりはしない。明るくなって、状況がはっきりと確認できるまでは動かないんじゃないかと思うぜ」
「しかしそうなると、今度はこっちが上に行く必要があるということか」
レオの言葉にマクレディは慌てた。
「おい、それはさすがに無茶だろう。エレベーターはあるが――」
「だが、2人がここのリーダーなのだろう?彼らに会わないと、ケロッグのことはわからない」
話していると、ここの連中の荷物の中から物を探してきたらしい。カールが浄化された水や、人形をくわえてきて、振り回して遊んでいる。
どうするのか決まったら教えてくれ、そう言いたいらしい。
私は手元のピップボーイで地図を確認する。
エレベーターで昇るにしても、場所を考える必要があった。
マクレディが言うように、傭兵集団とはいっても装備だけで、お世辞にも兵士の質はたいしたことはない。
しかしだからといって、弱兵ばかりとなめてかかるわけにもいかない。実際、このマクレディですら、待遇の良さにひかれて一度は参加してしまったといっている。腕がよくて、彼とは違った考えを持つ用兵がいたとしても不思議はないだろう。
「なぁ、ここまでやっといてなんだが」
「ん?」
「あんたは凄いよ、だけどよ。レオ、あんたの事に付き合っているはずの俺のほうが、上手いこと話が進んでいるっていうのは――」
「悪い気がする、か?」
「ああ……脅迫のことはボスには言えなかったんだ。俺は傭兵で、殺し屋だ。その看板を出している以上は、『どこかの傭兵部隊と避けられないトラブルがあって困ってる』なんて弱音は口に出せなかった。
おかしな話だが、どうも俺はあんたに話すように仕向けられているんじゃないかって。そんな勝手なことすら考え始めているんだ」
「マクレディ、気にしなくていいんだ。言ってみればこれは、Win-Winの関係という奴さ。君はここにいるボスに死んで欲しい。私はここに来ているかもしれないケロッグを見つけたい。そうだろ?」
「そ、そうか。うぃんーうぃん、の関係だな」
「ああ、その通りだ」
「ここにケロッグがいれば、見つけてやる。あんたとの約束だ」
喜びを隠し切れないでいる若者の肩をたたくと、私は最後の一押しをすることにする。
「ところでマクレディ、君はプレストンと狙撃で勝負したって聞いたよ」
「え?ああ、まぁな」
「上に行ったら、今回は私が挑戦しよう。一勝負、どうだい?」
「俺が?あんたと?」
アキラの手によって強化プラスチック製のボディとなった私の狙撃ライフルを持ち出すと、むこうはすでにやる気になっていた。
私は――少しだけ彼に罪悪感を抱く。
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マクレディにとって、笑いが止まらないとはこのことだろう。
さわやかに朝日の昇る中、高架橋の上で右往左往している奴らをほとんど一方的に蹂躙してやったことが、どれほど痛快であったか。マクレディの語彙力では、とうていあらわせない爽快感があった。
特に2人の――ウィンロックとバーンズの最後は最高だった。
グッドネイバーの酒場じゃ、いつも不機嫌そうな顔で不愉快な言葉を投げつけてきたあいつらが。裸同然の姿で、恐怖に顔を引きつらせながら必死に武器をこちらに向けていた。
自然とマクレディは声を上げていた。
「それだけか!?ウィンロック、いいぞ。地獄に落ちてしまえ!」
「もしもーし、俺を怒らせるつもりか?バーンズ、ちゃんと狙って来い!」
片方はライフル弾を正面から受けてしまい、後頭部が破壊されてすごいことになり。もう片方は標準のT45パワーアーマーに乗り込んだことで多少は頑張ってはいたものの。
何の強化もされていないノーマル品では、かつての時代でも旧型とよばれただけあって装甲は次々に剥がれ落ちると、フレームの中で絶命してしまった。
マクレディにとって、これ以上ない吉日に思えた。
脅迫におびえていた相手は死に、それだけではない。これによってガンナーとの関係は切れ、この場所を襲撃した相手が誰なのかを探り出そうとする彼らは、たった一人の元狙撃兵のことなど忘れてくれるだろう。
さらにここにはガンナーのひとつの拠点が生み出した財産もあった。
こいつを綺麗に奪い去ったとしても、誰もそのことを問題とはしないはずだ。
「やぁ。こりゃもう、笑いが止まらないよな。なぁ、そうだろ――レオ?」
これから忙しくなる、そう思っていた。
奪った財産、死人から装備を回収し、それをどうやって抱えて町に行くか?
脅迫者が死に、彼らと彼らの部下が残した財産に目がくらんで傭兵は気がつくのが遅れてしまった。
レオとカールは、いつの間にかその場から消えていた。
高架橋の下にじかに降りれるクレーンはここにはなく、作動してもいなかった。
つまりマクレディが浮かれすぎて目を離した数分の間に、あそこから地上へと下りてここから立ち去ってしまったということになる。
(ヤバイ、ヤバイぞ!これはっ)
マクレディの顔が真っ青になっていた。
今思うと、あの男が地図をやたらと気にしていたのも。確率は高くないと言っていたのにもかかわらず、ここに来たのも。全てはこうするためだったのだと思えてきた。
そして自分は、もはやあの男に追いつくことはできない。マクレディもそれはわかっていた。
レオは最初からへーゲン砦と聞いて、そこが本命だと考えていたのだ。
あとは数分だけで良かったのだ。。
この馬鹿野郎の頭の中から任務を忘れさせれば、それで消える自信が向こうにはあったのだ。――完璧に性格から読まれ、行動が見抜かれていた。
「畜生……チクショウ!クソ、汚いぞ。こんな滅茶苦茶な――ああっ、チクショウ!」
レオへの怒りというよりも、それは自分への情けなさ、不甲斐なさへの怒りであった。
彼は完璧に正しかった。
義理人情で引き受けた護衛だったが、こうして大きなミスをしたと知った後でも。マクレディは目の前のキャップの山を無視は出来ない。
「大馬鹿野郎だ、チクショウが――」
それは自分か、それとも自を間抜けにしてくれたレオに対してのものか。
結局、マクレディはここにあったパワーアーマーを回収すると、待てるだけの金目のものをかき集めてからその場を離れた。
太陽はすでに高く、正午を過ぎていた。
へーゲン砦にはもちろん行く、だがもう間に合わないだろう。レオのような男が、探していた敵を前にしておじけづくはずがないのだ。
(せめて、生きていてくれよ。ボスにあんたの死体を届ける役にだけはなりたくないからな)
もはやマクレディには祈ることしかできることは残されていなかった。
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ソニーはグッドネイバーの路地の暗がりにおっかなびっくり腰が引けたまま、進んでいく。
最大級の危機が感じられる呼び出しを受けたのだ、こういうのは普通は逃げたほうがいいのだが。今回のそれはむしろさらに自分の首を絞める――そんな勘のようなものが働くので、素直に指示に従ったわけだが。
(逃げるな、逃げるな。逃げたら、死ぬぞ)
命の危険なんていつものことじゃないか。
そうは思っても、最近は社に戻っていないせいで、編集長に泣きつくことも出来ない。でも、まぁおかげで今年はくだらない殺し屋ランキングなんて記事を書かずにすんだが。
「……ここよ、さっさと来なさい」
「こりゃ、驚いたな」
そこにいたのは”鼻なし”のボッビと呼ばれるグールであった。
彼女はちょっとした有名人だが、最近なにやらハンコックと対立してしまい、落ち目だという噂があった。
「変な呼び出しされるんですね。逃げるとは思わなかったので?」
「そこまで腰抜けなら、あんたの噂もとんだまがい物だった。そういうことだよ」
女性だが、やけに偉そうなのが彼女だ。
仕事において、相手を決して自分の上に置かないというのは本当らしい。
「約束は守りました、こうしてね。それでなんでしょう?あなたと話すことはないんですがね」
「あんたのところの上司が、探してたよ。別に辞めるつもりはないんだろう?でも、戻るにしてもそれなりに手土産がないとね。そうだろう?」
「よくご存知で」
「協力してやるよ。それどころか、あんたをあたしも雇ってやろうじゃないか」
悪い話じゃない。それどころか、願ったりかなったりで飛びつくのがためらわれるくらいだ。
ソニーは実際にためらって見せた。
「あなたの噂は聞いてますよ。良くないでしょう?何に巻き込むつもりです?」
「別にぃ、そんなに悪い話が流れてるの?嫌だわ」
「だから素直に飛びつくなんて思われちゃ迷惑です。正直、あんたにおかしな呼び出しを受けたって市長のところに駆け込むことだって考えてるところです」
「へぇ」
グールの目が、嫌な輝きを放つのを見た。
やりすぎたか!ソニーは慌てて取り繕う。
「もちろん!――あなたが全てを話してくれるなら、引き受けることも考えますがね」
「それこそもちろんよォ、あなたの得意なことをしてもらいたいの」
「はぁ」
「聞いたことがあるはずよ。最近、急に出てきた若い奴。さっそくハンコックのお気に入りの、お気に入り」
「それって、あの――」
噂は聞いていた。
だが、その姿をまだソニーは見たことがない。
「黒髪の元、洞穴暮らしのボウヤ。それをしばらく監視してほしいのよ」
「え、監視!?」
「声が大きいぃ……そうよ、ばれないでちょうだいよ。しっかり隠れて、張り付いておいて」
尾行か、悪くない。それに少しばかり得意でもある。
だが、この話に乗ってトラブルには巻き込まれたくはなかった。
「それならこっちも正直に言いますが。当人の噂は聞いてますが、会ったことはないです。最近はグッドネイバーにはいないようで、それらしい話も聞きません」
「それなら大丈夫。心当たりがある、バンカーヒルの商人を調べなさい」
「バンカーヒル?あそこは商人が多い、誰です?」
「そんなこと知らない。でもそいつは近いうちに、そこにあらわれるはずよ」
「――尾行して、どうするんです?なにをすれば?」
ボッビは笑ったのだろうか?
暗がりの中で表情は変わり、物騒な言葉を吐き捨てる。
「最近お気に入りになったハンコックのところのボウヤにトラブルが近づいているの、それがもうすぐ。そうしたら、あたしにそのことをちゃんと知らせなさい」
アキラへの不吉な予言であった。