ワイルド&ワンダラー   作:鷹雪

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次回の投稿は来月1日を予定。


マッドネス (Akira)

 ヌカ・ワールド交通センターは惨劇の跡地へと成り果てた。

 

 ガンナーたちはその圧倒的な火力と兵力を有していたはずなのに、アキラは――イエローマンとなった彼にはまったく相手となり得なかった。

 衣服は何度も攻撃にさらされたはずなのに、彼の真っ赤な血がそれを汚すこともなかったし。彼らが壊滅の危険を察して、ついに助けを求めろと口にする前に、その機会は完全に費えてしまった。

 

 すべてが終わり、物言わぬ死体となったそれらを見てもイエローマンの怒りは収まるではなくピークに向けてあがっていく一方であった。その表れなのだろう、ガンナー達が彼の死体でやるといったことを、逆に指揮官の千切れ落ちた頭部にやってやる。

 

 ボスッとくぐもった音を立てて宙を少し飛んだそれは、道路脇のポールに当たって地面に落ちた。

 その不気味な光景を目にしたことで少し落ち着こうという気になったようだ。冷静さを取り戻そうと息を整える。

 そして首元へと下がっていた星条旗柄のバンダナを再び口元にもとぢて表情を隠すと、その場でなにかにむけて呼びかけはじめた。

 

「フライヤー、フライヤー?いるんだろ?」

 

 答える声はなかったが、イエローマンの言葉に反応するように。どこからか装置が切り替わる重い起動音が聞こえ。地上から15メートルほどの場所に忽然とそれは姿をあらわす。

 

 小さな円盤が宙に浮かんでいた。

 

 土色に濃いグリーンが混ざり合った、潰れた円柱状のそれだがよく見るといくつかに特徴があるのがわかる。

 円盤の上に人が立てるように、そこから落ちないようにと囲いのようなものが立っている。そして徐々に今の呼びかけに反応して地面に降りてこようともしていた。

 

 フライヤー、個人用の移動装置。

 あの理解不能の怪集団”小さな宝物”からイエローマンにあてがわられた彼専用の”相棒”である。

 

 降りてきた円盤は唐突に機械にしかわからない言葉でなにやらいいわけめいたものを口にした。内容はわからないが、この場所に敵がいたこと。それを黙っていたことなどなのだろうか。。

 イエローマンは冷酷に「黙れ、臆病者」と吐き捨ててから円盤の上に乗って立つ。

 

「次は?」

 

 イエローマンの問いは短く、そして余分な会話もない。

 フライヤーと名づけられたそれは、再びなにかを伝えると、イエローマンは鼻で笑ってつぶやいた。

 

「ダイアモンドシティ――そこでグールと会え、ね」

 

 腕につけたピップボーイからコードを引き出し、それをフライヤーの囲いにとりつけられたコネクターに差し込んでみせた。

 ピップボーイの画面をマップへと変更し、行き先の指定をダイアモンドシティとした。命令も追加され『鼻なしのボッビと会え』と表示してある。

 

 イエローマンを乗せたフライヤーは再びズンズンと重い駆動音を響かせつつも、静かに上昇を始め。

 しかしそのうち地上から見上げても、まったくわからないよう。その姿は煙のようにふっと掻き消えていく。フライヤーは搭載された高度なステルス装置を作動させたのだろう。

 

 こうやって誰の目にも写らない怪しげな飛行物体は、連邦の空をかなりの速さでもって飛び去っていくのであった。

 

 

==========

 

 

 サンクチュアリの夜はまだなお、暗い――。

 そしてロン夫婦にとって、世界はあの日からずっとこのままであった。

 

 何かが大きく、ずれていくのを感じていて。それがお互いの顔を見合わせないことにつながっていた。

 周囲の人々――隣人たちの顔は怯えるものがずいぶんと和らぎ、時折明るい顔で挨拶を交わす。

 

 かつて彼らは橋の向こう側に新生ミニッツメン達がいるからと、この場所で襲撃を受けても勇敢に戦ってこれを生き延びることができた。

 しかしそれも何度も繰り返すと、ここが自分たちのいるべき場所に思えるようになってくる。愛着は執着心への道しるべとなり、彼らはここで平和に暮らすのだと夢見るようになっていく。

 

 だが、この夫婦だけは違った――。

 

「――待って!昨日の夜も、叫んでいたろ?」

 

 すでに明かりのつけられたランプ灯の下で夫婦は久しぶりに向かいあっていた。

 サンクチュアリの電力はまだ十分とはいえない状況で、それでもこうしてか細くとも闇に沈んでいく周囲とは別に、町の中に明かりがあるのはめぐまれていることの証のようなものだった。

 そしてそんな時間に発生したすれ違いざまに――亭主のほうから勇気を振り絞って妻に声をかけたのだ。

 

 今日はどうしても足を止めて聞いてほしかったから、つい気を使った「大丈夫?」を抜けてしまうが。そんなことにも気がつかないほど、この夫婦の関係はガタガタになっていた。

 

「ああ、ごめんなさい」

「あやまらないで。ただ僕は――君のことが心配なんだ、マーシー」

 

 2人が最後に共に肩を並べて歩いたのは、もう去年の話だ。

 あの日、激怒した若者によって無遠慮に無残なその亀裂を剥き出しにされ。さらには心の奥底で苦しむ中で囁いている、口にしてはいけない禁句を彼は2人に敵意にかえて叩きつけると足音荒くここから出て行ってしまった。

 

 あれはそう、猛毒だったのだ。

 

 年が明ける前に、マーシーはジュンと寝起きしていた部屋を出ると。

 ママ・マーフィの部屋にあった余ったベットに移動していた。話し合いは沈黙を生み、ジュンは妻に戻ってもらう力もなくて。

 今は夫は妻が使っていたベットを新しくきた独身の中年男性に使わせ、悲しくも気を使いながらの共同生活している。

 

 それでも2人はまだ、夫婦なのである。

 

「ありがとう。でも、大丈夫だから」

「僕も――僕もあの日のことを夢に見ることがある。あの子のことを、僕たちの息子のこと。だから……」

 

 この難しい状況を2人で乗り越えよう、それは何度も心の中で彼女に伝えたかった言葉だった。

 つらい過去はかわらないかもしれないが、僕達は夫婦じゃないか。

 

 だがその言葉は最後まで続くことはなかった。

 

 そしてこの2人の問題は、徐々にサンクチュアリの問題にまで膨れ上がろうとしている。

 ヒステリーを起こしては人間関係でトラブルを起こすマーシーと、作業をしていても時に魂が抜けたかのように駄目になってしまうジュンに周囲は苛立たされることが多くなっていた。

 

 夫婦も離れて寝起きしていることも問題視され始めていて、町の住人たちからも浮いた存在になりかけていた。

 代表を務めるマーヴィンはその解決として2人を町の警備へと回し、夫婦が揃って仕事に出ないように時間は常にずらされていた。

 

 まさに悪循環。

 

「あなた疲れているでしょ?私はこれからだから、今日は大丈夫。見張りの交代は朝までだから」

「そういうことじゃなくて……」

「いいの、心配しないで」

「マーシー」

「やめて!」

 

 強い声を上げ、手を伸ばそうとしてきた夫から妻は飛びのいて距離を作った。

 

「今はその話はしたくないの。わからないの!?」

 

 ヒステリーを起こすまいとして声は抑えていたが、その様子は近くの住居に寝起きする住人の目に留まり。すでに眉をひそめられていた。

 

(あの若者の言ったことは、本心だったのかい。マーシー?)

 

 彼は、あの青年はここを立ち去る直前に吐き捨てた。

 あの妻は息子を守れぬ父親など、必要ないと”見下げ果てている”のだと。

 そして彼女はそれを、そのことを自分に話そうとしてくれない。

 

 ジュンは妻の後姿を見送ると静かに肩を落とした。

 この夫婦の凍ってしまった時間は、まだなお続く――。

 

 

==========

 

 

 旧街道を歩くディーコンは、顔を上げる。

 「見えてきたな」遠くに、陸地を見て見ぬふりすれば、そこはまさに孤島という言葉がぴったりだ。

 

 真っ青な海、崩壊しかけた旧街道のさきにいきなり存在している町。

 レールロードの今回の任務はあのサレムの現状の様子を確認すること――このために新しい変装も用意させた。

 

 以前もやったことがあるが、冬用のジャケット姿の旅商人だ。

 この間だけの相棒、荷物持ちのバラモンにはトレマーと名づけた。

 

 

 連邦の北東部、海岸線にあるその場所はあまりにも辺鄙であると以前も何度か隠れ家の候補にも上がったこともあった。

 だが、レールロードは方針をかえることにした。

 今回はそれほどの辺鄙な場所なら、インスティチュートはいないだろうということでさっそく調査にエージェントをおくることになったのだ。

 

 と、いう話だった。

 ディーコンは知っている、もちろんそれは違うということを。

 

 アキラに入れ込んでいたディーコンが信じられるかどうか。

 デズデモーナやキャリントンではないと思うが、彼の存在を嫌がる仲間の顔がいくつか浮かび。連中がデズデモーナの耳に色々と吹き込んだ結果だろうと想像がついた。

 

 組織に属すると、こういうパワーゲームに必ず巻き込まれる。

 自分の能力を発揮しようとすると、それで思い通りに行かなくなると、必ずどこかおかしなところから非難の声が聞こえてくる。

 ボスたちはそれを聞きながら、的確に対応する力が求められるわけだが。ディーコンの見るところ、今のボスたちは完璧ではないかもしれないが、十分に有能だと知っていた。

 

 だからいつものように感情を切り離して必要なものを要求し、それが揃えられると素直に命令に従った。

 

(サレムか――俺のことを覚えている奴が残っているといいが)

 

 あのあたりの情報は僻地ということもあって、ボストン辺りをうろついてもなにもわからない。

 普段ならそれでも「いけばわかるさ」と軽口もたたけるが。例の霧の影響があそこになかったとは考えにくく、以前のような気軽さを装って訪問するのは正しいのか、考えるところだ。

 

 アキラと彼のロボットたちのことは今は胸の奥へと押しやっている。

 ディーコンという男はそういう奴だった。レールロードのエージェント、嘘をつき本心を明らかにしない。

 そうあることが重要――生き残ることができる。

 

 あの騒がしい日々はもう過去のページだ。

 再会はあれば嬉しいが――嫌、わからない。それは考えないようにしないと、次は自分が死ぬだろう。

 

 

=========

 

 

 恐れていたことが実現してしまったようだった。

 

 サレムの町は、もはやゴーストタウンのそれだと認めないわけにはいかなかった。

 海岸のボートハウスにはマイアラークというカニの化け物がせっせと卵を産み育て。さらに多くのために新しい巣作りまでしているのを遠目から確認した。

 

 地上の町でもそれは一緒で、通りでは道路にへばりついた植物か何かをチマチマとつまんでは口元にやってる連中の光景をいくつも見かけた。

 

(住人たちは全滅?それとも、逃げ出したのだろうか)

 

 自分はこのまま回れ右をして、本部に戻るのが正しいと心が叫ぶのを聞いた。

 もちろんディーコンの答えはノーである。

 だいたいそれを 例の隠れ家でやったせいでこんなところに来たともいえる。本当にゴーストタウンになってしまったのかどうか、確実だと報告できるようにもっと中に入っていかないといけない――。

 

 

 気配がないと感じたら、通りを覗き込んで確認。

 トレマーはバラモンでもさらにノソノソ動く奴だったが、のんきにすぎるのかまったく声を上げようとしないのが素晴らしい。

 気の抜けた昼食を続けるモンスター共の視覚の外を移動し、怪しい旅商人の一行は町の奥へと進む。

 

 家の中をのぞけば元住人達が餌になった姿を確認できるかと思ったが、今のところそんなものはない。

 そのかわり生きてここで暮らす人の気配も、まったくない。

 

(さてどうする、ディーコン?)

 

 進むも戻るも、難しくなった辺りでディーコンは決断を自分に迫る。

 

「トレマー、お前はどうしたらいいと思うんだ?」

 

 聞いたが答えはない。

 というより、そもそもトレマーには関係ない話だ。この先に進めば、どこかであいつらに気づかれ。ディーコンはこいつを置いて逃げるし。

 ここから戻っても、どこかであいつらに気づかれ。やっぱりディーコンはこいつを餌にしてくれと、置いて逃げるだろうから。

 

(ん!?)

 

 最初、それは空耳かと思った。

 だがリズミカルに続いたことで確信に変わる。

 

 どこかで誰かが、のんきにマイアラークに飲み込まれた町の中で射撃練習を始めたようだ。一発、一発の感覚があまりにも空きすぎているし。なんだか危険を前にした切羽詰ったものを感じない。

 そしてそんなことをしそうな人物に、覚えがあった――。

 

「お前!気は確かか?あいつらに追い回される前に――おい!お前、お前の顔には見覚えがあるぞっ」

「元気なようだ、バーニー」

「参ったな!お前かディーコン、まったく姿をあらわさないからとっくにクタバッタと思っていた」

「あんたの隣人は風変わりなのばっかりだな。おかげでこっちも、あんたはそいつらの食卓に並べられたと諦めかけていた」

「ヘン!お互い様というわけか」

 

 正気を疑ってもらってかまわないが、この会話をディーコンは背後に足を止めたミラルークの群れに見つめられる中で、お互いが怒鳴りあうように言葉を交わしていた。

 クレイジーな爺様だ。

 

「中に入れてくれるんだろ?」

「おお、急いで入れ!後悔させてくれるなよ」

 

 先ほどまでと違い、素早く装填と狙いと発射を忙しくしているこの町最後の住人は許可をくれた。

 

「トレマー、きびきび動けよ?あいつらに小突き回されて、食われたくはないだろう?」

 

 バラモンを引く綱を強く引っ張り、ディーコンは開いたゲートの中へと駆け足気味に入っていく――。

 

 

 地上にバラモンを置いて、地下のバンカーにうつると改めて2人は再会を喜んだ。

 

「この野郎、まったく知らせもよこさないとは」

「俺はビジネスマンだぜ?あんたみたいな爺さんに手紙を書くくらいなら、あちこちにいる恋人達に会うことから優先するに決まっている」

「まだ遊び歩くのか、さっさと嫁をもらって落ち着け。この町はどうだ?」

「ああ……見て回ったけど。商売の先行きが心配になる、隣人達に悩まされそうだ」

 

 皮肉を混ぜ、互いの無事を祝って握手を交わすとさっそくバーニーと呼ばれた老人は奥の棚から2つのグラスと琥珀色のアルコールを取り出してきた。

 ディーコンは(太陽がまだ高いが)と内心では思ったが、「いいね」と答えてグラスになみなみと注ぐように要求した。

 

「そっちはどうなんだ?」

「――こいつは旨い。なんだ、俺か?」

「ああ、あんただ。あんたのその……」

 

 すっかり忘れてしまった。なんとかいう傭兵会社だったか。

 

「サレム・ボランティア・ミリシア――俺様、バーニー・ルークがS.V.M.の司令官!今じゃ他にも主計官、守衛官、公式会議の書記官も兼務している」

「ワォ、凄いな。俺よりはるかに高給取りなのは間違いなさそうだ」

「仕事は連邦のすべての人々に仕えること、ああ、そうだ。報酬はいつもたっぷり貰っているよ」

「あんたが居てくれりゃ、俺も安心していられる。連邦の守護者に乾杯だ」

「乾杯!連邦に栄光を!」

 

 現実と虚構の狭間で必死に正気を保とうとする勇者と、ディーコンはしばし楽しい酒を酌み交わした――。

 

 

 夜、目を覚ましたディーコンは静かにバンカーを抜け出るとルーニーの家の屋根へと登る。

 目が慣れてくると眠ることなく動いているモンスター達の姿がはっきりとわかる。昼間、バーニーに倒された仲間の死肉をあさりに、今はこの家の前に集まってきているのだろう――。

 

(バーニーを残して、ほかの住人は去ったんだな)

 

 この町はあの霧とは関係なかったようだ。

 バーニーはなかなか話そうとはしてくれなかったが。大口を空けて大喜びしながら飲み続ける老人の悲しみは次第にディーコンへと伝わってきていた。

 

 あの老人はこの町を愛していた。

 すでに未来はないとわかっても、あのモンスター達にこの町を飲み込ませるわけにはいかないと今も孤独に戦いを続けている。そして彼が生きている限り、この町は彼だけの町なのだ。

 

 こんな悲しい話は連邦ではもう、飽きられる類のものだ。

 穏やかで平和な日常を望んでも連邦はそれを許さない。傷つき、追いたてようと激しく、ある日突然誰かの姿で攻撃してくる。

 怯えれば逃げるしかないし、戦って勝っても。死者は並ばされ、数が減ったその場所には悲しみしかない。

 

 それが繰り返され、そしてついにそこから誰も居なくなってしまう。

 

 たまらない気持ちになって、ディーコンは商品のはずのタバコのケースを取り出し。乱暴に中身を取り出した。

 火をつけて、ゆっくりと煙を吐き出す。

 夜の凍るような海風がそれを白い糸のように闇の中へと引きずり込んでいく――。

 

 

=========

 

 

 ――ダイアモンドシティ。

 

 その日、ナットは学校の授業が終わるといつものように家路に着く。

 子供ではあるが、彼女にはやるべき仕事があった。いつからだっただろう。彼女が子供たちと混ざって遊ぶのをやめ、すすんで新聞をつくることに熱意を注ぐようになったのは。

 

 自分には準備が必要で、その時は次第に近づいていると感じている。

 まずはマーケットで掘り出し物がないか調べないと。忘れずにえんぴつと油も買わないといけない。姉がいなくとも、ナットにはやるべき仕事が山のように抱えている。

 

 買い物を済まし、足早に床屋のジョンの前を通り過ぎようとした時である。

 

「っ!?」

「はい、毎度。またどうぞ!」

 

 いきなり前を横切られ、あやうくぶつかりそうだったと足を止めたナットは。どんな奴だと顔を見ようとして、一瞬あれと驚いた。

 

 黄色のフェドーラ帽にコートにスーツ。

 こんな時代に汚れのない綺麗なビジネスマン、そいつは間違いなくヘンな奴だった。誰にも帽子の下にある顔を見られたくないらしく、店を出るときにはすでに星条旗柄のバンダナで表情を隠していた。それでも――。

 

「あれ、今の」

 

 自信がなかった。でも、見間違いとも思わない。

 

「アキラ?」

 

 一度だけ一瞬、それを見た覚えがあった。

 町を飛び出していきなり発砲し、通りに男を引きずり込んだあの時に見せた恐ろしげな横顔。

 姉がブルーと呼んで慕う男の仲間だったが、なんか悪い人のようにも感じた、彼。

 でも向こうはこちらに気がつく様子はなかった――。

 

 探しに行ったほうがいいのだろうか?

 不安を覚える中、判断に迷って立ちつくした。マーケットはいつものように盛況で、そこにあの黄色で統一されたビジネスマンの姿はここから見えない。

 

 ナットは結局そのまま帰宅した。

 悪い予感がずっとあった。それでも、今のあのアキラかもしれない男を追うのはなにか危険なことに触れるかもしれないという恐怖があった。脳裏に焼きついたすれ違った男の目は、確かにナットを見たはずなのに。

 こちらを見ても変わらずに恐ろしく冷たい目をしていたと、確信もあったから――。

 

 

 そのアキラは――イエローマンは通りを抜けると離れのオープンカフェでひとり座っている人物のところへと一直線で向かっていく。

 ジョンの店で口元の髭を整え。頭は軍人のように短くきめ。

 髪と髭はそろって赤色に変更してもらった。

 

「あら、いい男ぶりじゃない」

「……」

「仕事にやる気もあるようで、感心するわ」

 

 椅子に座るのは女性だった。

 グッドネイバーで尊敬を受けていた悪党のひとり、”鼻なしのボッビ”その人である。

 ダイアモンドシティにグールは足を踏み込めないので、今は顔がわからないようにガスマスクをかぶってとりあえず誤魔化している。

 

 当然だろう、この町はグールを拒否した町だ。

 このイエローマンがここでいきなり周囲に「グールがここにいるぞ」とでも叫べば、たちまち大騒ぎが起こるだろう。

 

「次は?」

「私が仕事するには、チームが必要。だからこれからチームを作る。

 あんたが最初で、2番目はここに居るわ。どこに居るのか教えるから、あんたが彼をここまで連れてきて頂戴」

「その後は?」

「準備する時間があと少し必要なのよ。それが終わったら、皆でグッドネイバーへ戻るわ」

「いつ?」

「――それはあんたが今から連れてくる仲間の意見も聞かないとね。わかった?」

「そいつはどこにいる?」

「この町のセキュリティに捕まって、牢にぶち込まれているらしいわ。あんたちょっと、そこから連れ出してよ」

「……わかった。ここにいろ、すぐ戻る」

 

 イエローマンはそれだけ言い残すとボッビに背を向けた。




(設定)
・フライヤー
文字通り空飛ぶ円盤、のような移動装置。
性能は一人用、ステルス装置、毎時40~70キロ程度の速度が出せる。あとAIも搭載。

原作での「ファスト・トラベル」を再現する装置と考えてもらえれば。
戦闘ができないので臆病な性格をしているらしく、イエローマンとはさっそく仲が良くないようだ。

・サレㇺ
大航海時代から伝わる貿易港であり、魔女狩り、魔女裁判でも有名な場所。
原作では他にも博物館が別に用意されるくらいに有名。

・バーニー
ここでの自己紹介はゲームでもやっている。S._V.M.の経営者であり、社員でもある。
陽気と、どこか狂気の爺さんと会った後。遠くに離れた街を見ると、いろいろと感じるものがあるのではないだろうか。

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