ワイルド&ワンダラー   作:鷹雪

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次回投稿は数日中にも。


Heavy (LEO)

 霧が出る朝であった。

 ウェストン水処理場呼ばれるその場所は、ケンブリッジやボストンからあふれ出てしまったスーパーミュータントの一団が住処として使っていたが。施設の内部に彼らが興味を持つことはなかった場所だ。

 

 それを遠くから眺めるレオの顔は緊張している。

 問題はない。スーパーミュータントは確かに脅威ではあるものの、ミニッツメンと仲間達が――ガービー、ケイト、マクレディ、ストロングらが居れば十分にあれを撃破できるはずだった。

 

 とするなら、この不安は別の所にある。

 それは両手に抱えた一丁のレーザーライフル、あのダンスから譲り受けたそれの軽さが原因だった。

 

 兵士として長らく自分の身を護る武器は火薬式で、重いものが一番という意識がしっかりと脳に刻まれている。想えばあのアンカレッジの狂った戦場でも、この手に握られていたのはそういう”本物の武器”であった。

 おかげでこの状況が、なんとも気に入らなくて困っているという現実。

 

 ミニッツメンに帰還したが、レオは武器を失っていた。

 

 新たな武器が是非にも必要と感じてはいるものの、以前と同じコンバットライフルなどではどうかと問われると。素直にうんとも言い難いものがあった。

 コンバット、の名の付くライフルは連邦ではショットガンなども含めて規格が統一されているらしく。発射時の反動がだいぶ暴れるのがわかってきていた。

 

 当初こそ、それを心地よいものと受け止めていたのだが。

 やはり故障と劣化速度は尋常のものではなく。より使いやすい確かな武器が必要と考えているが、それを探す暇も。当ても残念ながら今はなかった。

 

「将軍、兵士達は準備が出来ている。いつでもいけるぞ」

「――わかった」

 

 ミニッツメンへの帰還を境にレオはB.O.S.のパワーアーマーとケロッグより奪った服を脱ぎ棄て。

 ミニッツメンの昔の制服へと着替えていた。そうすることで自らもミニッツメンのリーダーとして、重鎮として振る舞わねばならないと意識を変えようとしているのである。

 

「斉射3連、その後は――」

「あたしらは突撃するんだろ?わかってる」

「ニンゲン、ハヤク戦オウ。ナニヲシテイル」

「私も前に出る。背中は心配しなくていい」

 

 マクレディはガービーと4人の若いミニッツメンと並んで、狙撃の態勢にすでに入っている。

 

「ガービー、戦闘開始だ」

「ミニッツメン、狙えっ……ファイア!」

 

 赤い光線とライフル弾が、見事にその全てが狙い通りの場所へと吸い込まれるように着弾した!

 

 

==========

 

 

 コベナントの壊滅は、すぐにはガービーも。そして私も冷静に受け止めることが難しいものがあった。

 

 情けない話ではあるが、山のような証拠は確かにそこにおぞましい事件があったことを示してはいるが。それに対してあの若者が行った苛烈な報復行動に私たちはショックを受けてしまったのだ。

 

 頭を冷やそうと2、3日の間をとり。私達はミニッツメンの居住地の整備で時間を稼いでいるつもりになっていたが。

 アキラはそれを許さず。

 誰の許可も得ないままに、コベナントの資源を好き勝手に使いつぶし。異変に私たちが気がついた時にはすでに大量のロボットたちが、そこでなんらかの作業に入っている所であった。

 

「この居住地をあるべき姿にしたいのです」

 

 アキラは私達にはそう説明した。

 実際に彼が作り出したロボット達も、それが事実であるというように町に残されていた傷跡を消そうと。修理や大胆な改装を始めているのをこの目で確認していた。

 だが安心はできなかった。不安と不信が、よくないものを刺激している――。

 

 私は確信していた。今度こそアキラは何かを隠している、と。

 彼は自分の身に起きた恐るべき経験の全てを話そうとはしなかった。なぜ話せないのかすら、今回はなにも口にしなかった。

 私は彼の老いた友人で、私はまだ彼を信じてはいたが。

 同時に以前からガービーが主張するような「連邦の凶暴な、何か」を彼がついに吸収してしまったのではないかという疑念もまた。消せなくなってしまった。

 

 

 コベナントの秘密のエリアとやらで最初のミニッツメンの集まりをしようと決めた時。私はガービーに、強く。アキラへの不信を隠すように求めた。

 

 コベナントで彼がしでかした事件と、事件の後の暴走も。彼に邪心があっての行動とは思えない、と。

 少なくとも彼には信じるに足るものはまだ残されていると、あの炎の前で交わされた再会の言葉から考えることは出来たから。

 

 ならば、我々は彼の話を聞き。

 きちんと理解したうえで、妥協できるポイントを見つけ出していくほかないだろうということを。

 ガービーも色々と思うところはあったはずだが、表面上では私の言葉に同意をしてくれた――。

 

 

 だが、その会議ではアキラは我々の上を簡単にこえる発言を繰り返してみせた。

 最初の議題は当然、『ミニッツメンによる連邦北部をどうやって抑えるか』というそれであった。

 

 

 キャピタルB.O.S.の目的が判明した以上。

 この連邦をひっくり返すような激しい戦争が起こるのは、もはや時間の問題といってもよかった。

 同時に、連邦でこれまで強い影響を与えてきた。ガンナーが南部でその動きを鈍くして、B.O.S.もまた。ボストン空港で落ち着きを見せている今こそ、ミニッツメンは動かなくてはならない。

 

 一方では新生ミニッツメンには問題も多い。

 人的資源の不足を先頭に、最近では居住地の運営でもポロポロとほころびが見える出来事が重なっていて。実際は北部がどうとか言っていられない状況で、そう考えているミニッツメンの若者達も少なくなかった。

 その彼らにできるのだと信じさせる、確かな方針を私たちは考えださねばならない――。

 

 それは簡単なことではなかった。

 すでに活動のいたるところで限界を迎えつつあるようなミニッツメンに、さらにそれ以上の限界を突破するような方法を見つけろ。

 不可能は不可能でしかないわけで、これほど無意味な議論はあるはずがないと。普通は思うはずであった。

 

 実をいえば私もガービーも、まさかアキラにそんな調子のよい名案があるなどとは全く考えてはいなかった。

 そのかわりに、同じく考えながら。言葉を交わすことで、心の中で生まれてしまった疑念をなくそうというのが、本当の狙いであったはずだった。

 若者はそんなコチラの考えを簡単に飛び越えてみせた。

 

「レオさん、ガービー。実は僕に、ひとつ考えがあるんです」

「アキラ?本当なのか?」

「でも、これは簡単なことではないです。互いの信頼も必要だし、難しい決断でも首を縦に振ってもらう必要があるのです。それも、ひとつやふたつじゃない」

「――それは、わかる。俺も将軍も、このことは簡単ではないことは理解している。

 だが、本当にそんなことが出来るのか?」

 

 あまりにあっさりと口にするので、私もガービーも思わず何度も聞き返してしまった。

 アキラはまず、計画ではなく。彼が必要とするものと、なにをするのかだけを私たちに簡単に説明した。

 彼の提案はあまりにも厳しいもので、私もガービーもさすがに沈黙してしまった。

 

――現在の活動の中心としているレッドロケットを離れ、ボストンにミニッツメンの活動を移す

――ミニッツメンの主力を北東部へと集中させていく

――レキシントンを包囲すべく、このコベナント、スターライト・シアター跡地、グレーガーデンの3つの居住地の経営権をアキラに与える。それをミニッツメンとの合意として文書に残す

 

 大きくはこの3つが提示されたわけだが。

 私たちはそのどれも、素直に認めるということは難しかった。

 

「レッドロケットを離れる。それは構わないが、サンクチュアリはどうするんだ?」

「落ち着かなかったサンクチュアリはもう過去の話です。彼らの生活はこれからさらに安定するものとしなくてはならない。そのためにも、ミニッツメンの活動の中心をいつまでも連邦の北西部に押し込めてはいけません。中央に移しましょう」

「彼らはそれを我々に見捨てられたと不安に思うかもしれない」

「それはただの甘えです。

 それにレッドロケットは残すのですから、彼らの側にはまだ、ミニッツメンがいることに変わりはない」

「厳しいんだな」

「ボストンの近くにまでガービーとレオさんが来れば、ミニッツメンへの参加希望者は。レッドロケットにいた時とは比べ物にならないはずです。人的資源の拡大はこれだけでも十分に果たせる」

 

 アキラにはサンクチュアリとの間に遺恨があった。

 それを晴らすためにしているとは思いたくないが――どうしても気になって、ガービーは同意することは出来ない。

 

 

「現在のミニッツメンを全て北東部へ向けるというのは……過激にすぎないかい?」

「それが必要なんです」

「だが、それだとレキシントンなどはどうする?」

「レキシントンはこの際、忘れてください。居住地の事も」

「……」

「連邦北部をミニッツメンが抑えるというなら、今だ着手していない東海岸の調査が必須なのです。

 今ある部隊すべてをそこに投入し、そこでどうやったら人を送り込めるかまでを具体的な計画を立てる段階にまでもっていかねば。B.O.S.が動き出す前に北部を抑えることは難しいというそれだけが残ってしまいます」

 

 これまで居住地を再開し、積み上げてきた実績での信用を投げ捨てて自らのため偵察に全力を傾ける。

 それはあまりにも強引で無謀なことのようにしか思えず。レオもどう理解していいのか戸惑っている。

 

 

「ここにある3つの居住地をどうするつもりなんだ?」

「別に。僕はこれまでと同様に普通に町を作るだけです」

「悪いがアキラ、それを素直に信じるわけにはいかない」

「なぜです?」

「まさにそれらはレキシントンに近いというだけじゃない。グレーガーデンだって?そこはまだ我々の管理する居住地ですらないというのに」

「でも、必要なんです」

 

 あまりに途方もなく。それは聞くべき価値すらないかもしれない、そう思える提案であったはずだったのに――。

 それでもそれが実現できるというならば、彼の計画はあまりにも強くこちらを誘惑する力を持っていた。

 

 

 ミニッツメンからの狙撃はたいしたものだったが。

 兵士達のレーザーはもちろんの事、マクレディの308口径ライフル弾すら直撃したスーパーミュータントも頭部を激しく揺さぶられるだけで。フラフラとしてはいても立ち上がり。ひるむことなく反撃の鬨の声を張り上げてみせる!「敵ダ、殺セ」と。

 

「頑丈なんてもんじゃねーな」

 

 キャピタルの奴等の仲間であったなら、この一撃であっさりと倒れてくれるだけありがたかったとマクレディは愚痴りたくもなる。

 連邦のスーパーミュータントは、キャピタルとは違ってまさにバケモノという表現がお似合いの危険な存在でしかないのだ。

 

 だが、そんな連中を相手にしてもまったく恐れない存在がここにもいた。

 

「ストロング、負ケナイ!」

 

 重量の増したケイトから譲られたスレッジハンマーをすごい勢いで振り回すと。

 ミュータント・アーマーを着た相手と体力の削りあうような殴り合いを始めている。そんなストロングの背後に立とうとするもう一匹の相手を、どう見ても華奢にしかみえないケイトがコンバットショットガンをむけて引きつけに入る。

 知ってはいたが、この2人(?)はなぜだか相性がいいようで。何も口にせずに、自然と連携を今回も取ってみせた。

 

 レオは冷静にそんな2人を援護しようとするが。

 新たに出現したスーパーミュータントの一匹は、巨大な剣を振り回すかのように。手にした木片で大きく振りかぶろうとする。

 

「ニンゲン、死ネ!」

 

 叫びと同時にそれを一気に振り下ろす。

 だが、そこには一瞬早く動いていたレオの姿はなく。木片は空を斬ることしかできない。

 

「将軍!?」

 

 遠くでガービーのあせる声が上がるが、レオは全く気にもしなかった。

 相手が目の前に来るのをしっかりと確認していたから、射撃体勢は早々に崩すとスタンスを広げて逆に待ち構えてすらいた。以前は体の切れに重さのようなものを感じて、少なからず自分の弱った体に失望も抱いたこともあったが。

 今はそんなことはなく、記憶に刻まれているスピード以上の身軽なフットワークでもって、相手の死角へ。

 あっさりと移動しつつもレーザーライフルをわざわざ背中に回すという余裕すらみせている。

 

 

 レオはミニッツメンの制服の上から、新たにコンバット・ライト・アーマーを身につけていたが。

 両手を護るショルダー部分には細工が施されていて、構えを本格的にとると同時にそれの一部が拳を覆い隠せるようになっていて。つまりそれは変形のパワーフィストになるのだ。

 

 これによって人間でありながらも、スーパーミュータントを相手にも十分なパンチを放つことが出来る。

 そしてレオのパンチは現在、かつてのそれ以上の鋭さと重さでもって連打が可能だ。勝ち誇った表情を見せていたスーパーミュータントの頭部に複数の打撃音が炸裂し、強靭な頭蓋骨にひびを入れ。脳味噌をかき回してみせる。

 たまらずに片足をついてしまう相手であったが、レオは全く容赦などかけるつもりはなく。

 一瞬、バックステップで距離をとると、そこから宙に飛び上がって必殺の一撃を見事に弱るスーパーミュータントの側頭部へと叩き込む!

 

 遠く離れて並んでいる兵士達とガービーは、人がスーパーミュータントを殴り殺すなどという姿を見て驚嘆と唸り声の混じったそれを口からもらす。

 わかっていたことだが。しかし、それでも彼はとんでもない男である。

 

 

 

 会議が再びアキラによって動かされたのは、それからすぐの事であった。

 彼はレキシントンの封じ込めを、その役目を引き受けるのだと粘り強く何度も説明して聞かされても。ガービーも私もそれぞれが別の理由からそれに首を縦に振ることは出来なかった。

 だが、本当の問題はその後で起こったのだ。

 

「実は、僕はこれを機会にサンクチュアリから手を引こうと思ってます」

「なに!?」

「サンクチュアリとの間に結んでいる今の約束事は全てを破棄します。ついでに、代表に置いていたマーヴィンもその任から解き放すつもりでいます」

 

 何をこんな時に冗談を、と最初は怒ろうかと思っていたが。

 どうやらそれが本気らしいと知ると、私はなぜ彼がそんなことを口にしたのかで混乱してしまう。

 この一瞬が、私の致命傷となった。

 

「なんだって?」

「本気なのか、アキラ?」

「ええ」

「いや、それは――」

「それはいい!」

 

 止めようとする私の言葉を、歓喜するガービーの言葉が遮ってみせた。 

 彼がそんなことを言い出す理由は簡単ではないはずだから、その真意をしっかりと聞きだしておかなくてはならないはずなのに。ガービーはなぜか興奮してそれを口にする。

 

「アキラ、俺はずっと君があのサンクチュアリにわだかまりをもっているんじゃないかと気になっていた。あの契約も必要だというから、仕方なく認めはしたが。決していいことではないとわかってくれていると信じていた」

「ガービー、そんな簡単な話では――」

「将軍、何を言うんだ。あんただって、アキラにとっても。またサンクチュアリにとっても。

 お互いが距離をとるなら、早い方がいいに決まっているし。今のような状態が長くなるのもよいとは全く思えなかったんだ。これで、物事はきっと良いほうに向かうはずだ」

「ミニッツメンには僕も参加しているからね。遺恨は正直、残したくはないんだ」

「そうだな。全くその通りだ!ははは、良かったよ」

 

 ここで私は自分が本当にウカツであったことを思い知らされた。

 アキラがいつになく饒舌であるだけではなく。力強い言葉と、迷いのない勢いが今の彼にあるということに。

 

(薬!?メンタスを使っているな、アキラ――)

 

 アキラはこの会議に最初から、私と向き合うことで隠している真意を暴かれないようにと。前もって薬物で自身を強化して、ガービーにむけてひたすら話して続けていたのだ。

 ガービーが聞きたいこと、知りたいこと、望んでいることを並べてみせ。この会議に私と向き合う時間を可能なだけ削ってみせようという魂胆であったのだ。

 

(賢いな、まったく……)

 

 この場合、若き友人に悪意があるとは断言することは出来ない。

 あくまでも彼はルールの中で、自分が守勢に入らないように考えぬいてこの場に立っているというだけの話だ。話し合いとは、議論とはそういうものだ。

 

 今の彼には秘密があって、何かをなそうと考えてはいるものの。

 同時に参加するミニッツメンを裏切るつもりはさらさらないし、友情だって大切にすると考えているに違いないのだから。

 

(若者にしてやられるとは――)

 

 無様に過ぎた。

 私の中の若者は、いまだあの日の弱々しい裸の少年のままだったのかもしれない。

 アキラはすでに計画を明らかにしている風を装っていて、ガービーは私の副官としてそれに対して修正を求めていくつもりなのは明らかだ。そのせいで私はリーダーとして、ただ承認するだけの役目に追いやられていこうとしていた。

 

 

==========

 

 

 積もらぬ雪の降った翌日。

 Vault81に与えられた部屋で私は目を覚ます。

 

 今、ミニッツメンはハングマンズ・アリーとオークランド駅跡地の両方で活動していた。

 やはりハングマンズ・アリーはダイアモンドシティに近すぎていたし、魔都ボストンへの前線基地としての意味合いの方が強い。多少は不便ではあるが、一か所に手中させない方がいいだろう、そんな風に思われた。

 だから私はガービーと話し合い。レッドロケットに用意した仮の本部としての機能は、この2ヶ所に分けることで解決した。

 

 さらに私はあえて距離をとるように、このVaultからそれぞれの居住地へ通うような生活をしていた。

 

 机の上に投げ出されたアーマーと、ハンガーにかけられたミニッツメンの制服を見る。胃の辺りに猛烈な吐き気を覚え、その場でなんどかえづいてみせると。正直それに手を通すことが出来ない、とその瞬間は思ってしまった。

 

 

 ひどいものだった。

 結局、ガービーはアキラにいくつかの修正を求めはしたものの。

 アキラの計画のほとんどすべてに同意してしまった――。

 

 約束した通り、サンクチュアリは代表が人間へと交替し。あそこで権利を主張したアキラの用意したものすべては、住人達へ寄贈されるということになった。

 そしてミニッツメンに変わり、3ヶ所の入植地を経営と防衛をすることを約束してみせた。

 むろんこれでコベナントの騒ぎは有耶無耶にするしかなくなり。アキラの真意をただす機会を私はその後も結局用意することは出来なかったことになる――。

 

 

 Vault81を出て、気がつくと私の足はダイアモンドシティへと向かっていた。

 中に入り、一直線に向かったのはあの場所。ニック・バレンタイン探偵事務所。

 

 扉を開けて中に入ると、めずらしくそこにいたのはニックと。そしていつも留守を守っているエリーが笑顔で私を迎えてくれた。

 

「あ、ニック。彼が来たわよ」

「おお、こりゃ嬉しいな」

「やぁ、エリー、ニック。その――」

「わかってる、最後まで言わなくていいかさ」

 

 私はミニッツメンの服ではなく。ニックにもらった、ボロボロのトレンチコートを着てそこに立っていた。

 

「悪いけど、本当に仕事は山のようにあるのよ。だから、急いで調査に入って。まずは――コレから」

 

 そういってエリーはファイルを私に差し出してきた。

 中をパラパラと目を通していると

 

「詳しいことはそのファイルにもあるけど。このダイアモンドシティで、また新しい失踪事件が発生よ。セキュリティはこの事件を無かったこととして処理すると早々に決めてしまったから。あとは探偵が結果を出すしか解決はしない」

「それじゃ、相棒。さっそく事件の調査に向かおう」

「ああ、ニック」

 

 2人の探偵が扉を開けて出ていく。

 朝日は眩しく、エリーはその背中を頼もしげに眺めていた。

 

 

 

 その日、最近は少なくなったミニッツメンが居住地から巡回に出るのと入れ違いにして、バラモンを連れた一人の男――商人が姿をあらわした。

 商人は自分は旅をしながら雑貨業を営んでいると口にすると、軽快な喋りで居住地の住人達に取り入り。そう悪くもない取引も少しは行ったりもした。

 

「さきほどのは、あれですかい?ミニッツメンの方々で?」

「ああ、そうなんだよ。

 最近じゃ、またレイダー共が騒がしくなったと言われちゃいるけどね。

 彼らが居てくれてここもなんとか、平穏無事にやっていけてるよ」

「ほう、そりゃ凄いもんだ」

「……あんた、連邦の人じゃないのかい?」

「ええ、まぁね。

 あのくらいに見える山を、5つ6つほど越えたところから来たばかりで」

「そりゃ大変だ、長旅だったんじゃないか?」

「へっ、まぁ……あの人たちは、俺のような商売でも聞いてくれますかね?」

「どうだろうか、商人とは取引をしているはずだけどね」

「はァ、なるほど」

 

 言いながら商人は素早く居住地の中の様子をチェックする。

 スコープの付いたライフルを構えた男が2か所に設置された櫓の上から周囲を油断なく警戒し。

 その近くには異変を知らせるサイレンが立っているのが分かる。

 

 古い住居をそのまま寝起きに使っているようだが、補修もしっかりされているようで。いくつかは家の塗装を新たにしているところも見られる。

 

(農場、って感じだな。食い物は問題なさそうだが、意外に人も多いようだ)

 

 少し前までは新生ミニッツメンも一進一退を繰り返していると聞かされていたはずだったが。

 この静かな2カ月余りの間にも、なにやらまた勢いを取り戻したか。特になにか騒ぎが起こったとは聞いていない――。

 

「あんた、次はどこへ?サンクチュアリを目指すのかい?」

「そこは今、どうなってますか?何か噂でもありませんか?」

「一時期とは違うと言われてるけど、それでもあそこは家を持たない放浪者にとっちゃ希望の町だって話だよ。

 ミニッツメンとの関係も深いし。今でも落ち着きたいって連中はまずあそこに顔を出すって話さ」

「へぇ……ミニッツメンの偉い人は、まだそこにいらっしゃるんですかね?」

「ああ、最後のミニッツメン。プレストン・ガービーだね。

 あの人は確か今、ボストンの方にいるとかなんとか。噂で聞いた限りだけどね」

「おや、サンクチュアリとやらから離れたんですか?」

「前にボストンに派遣したミニッツメンがあの辺のレイダーと激しくやりあったってことがあったからね。

 あの人らの所も少なくないし人死にを出したって聞いてるし、その立て直しにむかったんじゃないかな」

 

(ハングマンズ・アリーとやらの騒ぎのことか。馬鹿な)

 

 商人は表面上は頷いてみせたが、心の中では鼻で笑う。

 最近じゃ連邦のレイダーってやつらも地に落ちたものだと情けなくなる。

 数だけ大勢を揃えておきながら、居住地に引きこもった20人もいないミニッツメン相手に負けてしまったっていうのだから、他にどう言ったらいい。

 

 むしろこれは別の見方をするべきだろう。そうして手に入れた名声をさらに高めるために、ガービーはボストンに出向いてさらに兵士をそろえようと募集をかけているに違いない。

 

「やっぱり、危険かもしれませんが。バンカーヒルってところまで、行くのがよさそうに思えますね」

「ああ、そうかもしれないね。あそこにはアンタらのような強欲な商人がわんさか集まってるから、きっとあんたの知りたい情報だってこんな農場とちがって、ちゃんとわかるだろう」

「へへへ、それじゃ。これで」

「ああ、道中気を付けて。なにかあったら、北部ならミニッツメンもいるし、何かあれば助けを呼んでみたらいい」

 

 商人の男はそうやって居住地を後にする。

 この連邦に戻ってきたのは本当に久しぶりだ、1年?いや、2年ぶりか。

 

「相も変わらず、クソなものだな」

 

 先ほどまでとはがらりと違う、生気の抜け落ちたかのような声で久しぶりの大地へ、感想を吐き出した。

 

「やれやれ、それじゃこのクソの中からどうやって探す――俺達のオーバーボス」

 

 商人の男は――いや、ヌカ・ワールドにいるはずのポーター・ゲイジはどうやってかこの連邦に姿を現していた。

 ようやくのこと落ち着けると喜んだ、”あの連中から送り込まれた”若き支配者。彼はちっともこちらに戻る気配がないので、ついに我慢できずに自らここへとやってきた。

 

 ポーター・ゲイジは今のアキラがミニッツメンの一員であるとは、まだ知らない――。

 




(設定)
・ウェストン水処理場
原作ではグレーガーデンから始まるクエスト。
ちなみにこの水処理場からは川を挟んで居住地が見える。

・武器を失っていた
どこかで新装備と成長についての報告をはさむ予定。


・変形のパワーフィスト
これはレオのお手製のもの。アーマーと一体型のオリジナル武器(?)
威力はナックルの2.5倍程度で、普通のパワーフィストと比べると幾分か劣る。

・ニック・バレンタイン探偵事務所
コベナントの後、ニックはパイパーとダイアモンドシティへと一足先に帰還している。
またもやたまってしまった仕事をこなす中。きっとダイアモンドシティ・マーケットで、殺人事件なんかを解決していたと思われる。

・ポーター・ゲイジ
ボス、来ちゃった・・・・・

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