冬の寒さがその日、まるで忘れたかのように。
春の到来を信じてもいいくらいの、不思議と晴れた日となった。
連邦の街道をいく商隊も、そんな太陽の下で久しぶりに気を緩めているのがその歩き方を見ればわかる。
しかしそれを見つめる、冷たいレンズの存在――。
それはメカニストの打ち放ったロボット軍団のひとつ。
隊長を務めるロボブレインは、プログラムに従い。さっそく攻撃命令を下すプロセスを開始する。
まず先陣を切るのはアイボットだ。
彼らが”一番槍”とばかりにメカニストからのメッセージを流しつつ、レーザーで攻撃、目標のかく乱を開始すると。
獲物の左右に別れて、近接戦闘に特化したMr.ハンディがグルリと奴等の前方へと回りこむように移動し。
最後に残るプロテクトロンや、ロボブレイン。さらにはセントリーボットが押し込むように、にじりよってあの人間達を殲滅する。
奇妙なことは、メカニストのメッセージのそれだ。
――注目せよ、連邦の人々よ。私はメカニスト。
――警戒する必要はない。私はこの混迷を極めた連邦の現状を憂い。間違いを正すために立ち上がった。
――このロボットたちは皆の守護者であり、護民官であり、仲間でもある。彼らは休むことなく動き続け、連邦が救われるその日まで止まることはない。
――我らとともに立ち上がり、そして来るべき平和の時代の到来を実現しよう。
襲撃者が口にするには、不愉快をおぼえるほど真逆のメッセージだが、それは戦術的なものだと解釈すれば別に不思議はない。
実際、こちらを味方かと錯覚した間抜けな獲物は数多くいたし。ロボットたちはそれに対して、当然のように殺戮でもって答えてやって来たのだから。
だが、どうやらメカニストは休むことなく活動を続ける自らの軍団の働きには満足してはいないらしい。
ごく最近だが、ロボット達に新しいメッセージに変更するよう指示がやって来た。
だがロボットたちはその中身には気にしない。やることは変わらなかったし、命令が求めた”結果”こそが彼らには重要なのだから。
しかし、この時は違った。
いよいよ、アイボットが突撃しようとした。まさにその時、どこからともなく伸びてきた高エネルギービームの一撃がそれを破壊し。勢いを失い、地面にボールのように激しく叩きつけられ。転がっていくそれを見て、メカニストのロボットたちはようやく気がつくことができた。
いつからかはわからないが、こうやって彼らが動く時をじっと待ち構えていた。自分たちをこそ獲物とする、同じく冷たい機械の目が近くにあったことを。
超長距離の狙撃を成功しても、エイダの声に喜びは少ない。
戦闘機能が、中距離戦闘へと切り替える中。自分の率いる部隊に命令を与える。
「ローグス、攻撃開始。メカニストのロボットを排除せよ」
『『『『了解』』』』
エイダの隣にいた、ダークグレイのアサルトロンは遮蔽装置を起動させ、透明化を開始し。
前面にエイダと並んで出ていくプロテクトロンとセントリーボットは、メカニストのロボット達とは比べ物にならない正確さと圧倒的な火力をともなう攻撃で自分たちの存在を周囲にはっきりと知らしめてみせた。
メカニストのロボブレインは混乱するが、すでに獲物である商隊はこの騒ぎに気がつき。巻き込まれてはたまらないと、大慌てですでに逃げ出してしまっていた。
ならば無駄な戦闘をやめさせ撤退をしようにも、明らかに性能差を感じさせる相手のロボット集団からの正確な射撃と火力は。
見る見るうちにこちらの味方を破壊し、それどころかいつの間にか接近していたアサルトロンによる近接戦闘が始まり。一気に殲滅という結果に転がり落ちるのを止めることが出来ない。
「エイダ、任務完了」
「ローグス、見事な勝利でした。戦闘を終了、索敵と回収の後。スロッグへと通常任務に帰還します」
「了解」
エイダ自身も、ローグスと並んで、破壊したばかりのロボットの部品回収に入る。
最初の攻撃で沈黙させた。あのアイボットの機能は、完全には沈黙していなかったらしい――。
――連邦の人々よ、私だ。メカニストだ。
――この混乱する連邦では今も罪もない人々は襲われているのに。ついに彼らを救うロボット達にまでその破壊を広げる新たな疫病神があらわれたことをここに警告する。
――奴等は己の醜い欲を満たすためだけに、命を奪い。さらには私の仲間までもその手にかけている。
――奴等は平和な時代の到来を妨げるだけではなく、この世界の存続をこそ望んでいるのだと宣言しているのだ。
――私はそれを許すつもりはない。
――疫病神共が我らの進歩を苦々しく思っているのは間違いなく。これはそのことへの返礼である。
――そして次は、疫病神共の正体を暴き。その許されざるすべての罪を償わせてみせる。連邦の人々よ、これは私からの約束だ。
(メカニスト、傲慢にして破壊と狂気の悪魔)
ロボットであっても、エイダの記憶装置に苦悩の二文字を刻んだ相手の存在の言葉に。回路を焼き切るのではないかと思うくらいの激しい熱と、奴が触れた厄病神というそれが、アキラや自分達の存在であると気がつくことができる。
そして確かな手ごたえに満足する、自分と仲間の存在が敵に認められているというなかなかに複雑な”感情”めいたものにしばし翻弄され、動作を止めた。
だが、それは長いことではない。
「回収を完了しました、エイダ」
「撤収しましょう、ローグス」
アンチメカニスト、そう呼んでいいものかどうかわからないが。
彼らの部隊がそうであるように。エイダとローグスも、目的が達成されればすぐに次の行動に移っていく。
5分と立たずにそこは再び自然と静寂が戻り、そこで戦いがあったことなど連邦も忘れてしまったようだった。
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スロッグと呼ばれるグールが集まって生活する農園があった。
ここを立ち上げたワイズマンは、どこからともなく戻ってきたロボット達が。再びこの居住地の整備に手を貸してくれる姿を、嬉しそうに見つめていた。
(まさか、ここまでやってくれるとは思わなかった)
グールとなって厳しい日々を過ごしてきただけに、相手がロボットであったとしてもその援助に人のぬくもりにも似た温かさを感じて涙ぐみそうになる――。
あの時、連邦がようやく静かになったと思ったら、スロッグに大量のロボット達があらわれた。
当時のワイズマン達にしてみれば。巷に聞く、パラノイアなメッセージと共に襲撃を繰り返す狂ったロボット軍団についに目をつけられたのかと怯えたのは無理からぬことだったと言える。
隠れつつも、ここから逃げるかどうかをうかがっていたら。集団の中から一台のロボットが進み出てきた。
「私の名前はエイダ。このスロッグの住人、ワイズマン氏にメッセージがあります。聞いてもらえませんか?」
繰り返しそう言われては、ワイズマンも観念するしかなかった。
出ていくと、礼儀正しいロボットはある人物からのメッセージを伝えるといってホロテープを再生した。
『スロッグの住人、ワイズマンにこれを送る。かつて彼をサウガス製鉄所で助けた知り合いだが、覚えてくれているだろうか?』
若い男の声がすると、あの日のイエローマンの姿がすぐに思い出すことが出来た。
驚いたことに彼はミニッツメンであったらしい。新たにスロッグにも参加を呼びかけつつ、何か必要なことがあればこのロボット達に申し付けてもらって構わないと言ってきた。
「この参加ってやつをしたら、本当にミニッツメンは我々を助けてくれるのかい?」
「この件に関しては、私はマスターから大使として任命を受けています。
『参加する意思がある』とおっしゃっていただけるなら、すぐに最後のミニッツメン、プレストン・ガービーから詳細が届く手はずになっています。彼は人々の平和のためなら、協力を惜しまないという人物で知られているはずです」
「君の主人にはすでに私も、このスロッグも救われた恩がある。
わかった、スロッグはミニッツメンに協力する意思があるよ」
そこからの動きは本当に早かった。
重武装のロボット達はスロッグの警備を担当してくれていると思ったら、いきなりどこからともなく大量のゴミを抱えてきた若きミニッツメン達があらわれ。このスロッグにそれをおろして立ち去ると、ロボット達はそれを使って居住地のためにと建設を開始しはじめた。
今ではこの場所はもう、まるで別物だ。
建物の上に、高床建築でもってもう1階の住処が増築され。屋根には危険なレーザーを発射するターレットがいくつも設置されている。
街道沿いにはしきいのようにコンクリートの壁で守られ、プールサイドにはなんとここで商売が始められるようにと屋台までが用意された。
――まるで夢のようだ
他にこれ以上何を望めと言うのか。
何度も味わう感無量の境地にあるワイズマンに、近づいてきたディアドラが声をかけてきた。
「なぁに?また、ニヤニヤとしちゃって」
「そうかな?気がつかなかったよ」
「嘘よ。でも、気持ちはわかるわ。本当に凄い変化よね」
「――ああ」
「私もここで、本物の店を構える日が来るとは思わなかったわ」
「ミニッツメンの巡回が通るし、商人も来る。これからはもっと、もっと。たくさんの人の出入りが増えていくはずさ」
「怖いわね」
「ん?」
「こんなにいい事ばかりが続くと、なにかあるんじゃないかって考えちゃう自分がいるの」
「……そうだな。苦しいことがあまりにも多かったからな」
まだスロッグは本当に参加するとは断言していない。
それは噂のガービーとやらがまだここに来ていないという事情があるが。そのミニッツメンは参加を決定する前に、すでにこれほどの事を自分たちにしてくれている。
これでは後で何かがあったとしても「参加できない」とはなかなか言い難くなるということか――。
「ワイズマン、あのロボットさんたちは説明してくれたの?」
「なんのことだ?」
「あのプールサイドの、あれよ」
「――いや、ミニッツメンで使わせてほしいということだけだ」
それはプールサイド側の空き地に作られていた。
コンクリートで作られた、ただの四角形の台座であったが。4角には照明装置が設置され、なぜかそれはサイレンと直結するように配備されていた。
ミニッツメンが使うもの――年寄りのグールならば、それがかつての世界にもあったことを思い出せる。いや、どうかんがえてもアレしか思い浮かばない。
テレビのニュースが伝える、前線基地の空を飛んでいたものが降りるためのもの――しかし、そんなはずは……。
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曇り空、夜明けを直前にしたコベナントでは、すでに出発の準備に忙しくしていた。
遮蔽装置が解除されたベルチバード、ロメオ・ワンのエンジンは温まり。アキラは仲間たちの顔を見回すと「今日は大忙しの1日になりそうだ」とだけ告げた。
実際、この日のベルチバードの飛行計画はこれまでのそれとは比べ物にならない距離を飛ぶことになっていた。
コベナントを発ってまずはグレーガーデンへ。
そこで前日から待機しているであろう、ガービーとミニッツメンの部隊を回収。
今度はそこから、スロッグに向けて大勢を乗せて運んでいく――。
だが、このくらいのことはもう十分に可能であるはずだとアキラは自信を持って保証を口にしていた。
ロメオ・ワンはその期待に応えた。
驚くことに昼過ぎにはスロッグに到着し、ガービーとワイズマンはようやく直接の対面を果たした。
アキラはその間にエイダとローグス、アンチメカニストとして活動していた彼らと再会を果たした。
そしてマクレディ、ケイト、キュリーと共に。ローグスとエイダはコベナントへここから徒歩で帰還するようにと新しい命令を与える。
ロメオ・ワンにはこれほどの多くのロボットを収納して飛ぶことは考えられていなかったのだ。
「おい、ボス。あんたは来ないのか?」
「悪いけど、これからハンコック市長と空の散歩に出る予定がある」
「俺達を放ってか?ポンコツ軍団の面倒を見ろって?」
「エイダの命令は聞きたくないんだろう?なら、頑張ってくれよ。マクレディ大統領」
「おい、ボス!?」
「ぷぷっ、なにそれ?大統領って?」
「なんでもない!なんでもないぞ、クソ」
アキラは騒がしい護衛の2人を放って、寂しそうな顔をするキュリーの前に立つ。
「空を飛ぶのは好きとは言えませんが。一緒には連れて行ってもらえないのですか?」
「連邦の北東部からの帰り道は、なかなか刺激的だと思うけど。嫌なのかい?」
「そういう意味ではないのです」
「――エイダもローグスも、長いこと頑張ってくれた。あいつらをきちんとコベナントに迎えたい。本当は自分も行きたいけど、信頼できる君達に頼めるなら、ぜひお願いしたいんだ」
「わかりました。我儘は言いたくないのです」
「いい子だ、キュリー」
「アキラ。私はあなたよりずっと年上なのです。200年を越えています」
「――それはロボットのキュリーであって。人造人間のキュリーじゃないって反論したいけど、今はやめておくよ」
「それがいいのです」
アキラが笑顔であったのはそこまでだった。
すぐに厳しい表情に変わると、ハンコックに顎でロメオ・ワンに搭乗するように促していく――。
マクレディ達は飛び去って行くロメオ・ワンを見送ると。
自分たちは2時間以内にここから出発すると、宣言した。ここからコベナントまでは数日が必要となる距離がある。
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僕が作り出したベルチバード。ロメオ・ワンには多くの機能が搭載されているが。
一番の特徴は何かと言えばパイロットだろう。
捕らえた僕にアイツらが与えた、あの個人用浮遊移動装置フライヤー。あれのAIを僕は回収し、このロメオ・ワンに使っている。
この「使っている」って表現が、搭載云々と違うところで。また複雑であったりするわけだが――。
かつてフライヤーと僕が呼んでいた相棒はバスケットボールくらいの大きさの球体の中に収められ、今はコベナントのあの秘密のエリアにドンと設置されている。
残念ながらフライヤーとしての僕とのわずかな時間をすごした記憶は失われたが、機能の方は再現できた。
そこで僕はアレに大型の記憶装置とシミュレーター装置に直結させ、終わりのないベルチバードの訓練を続けさせることにした。
これのおかげで700時間をこえる飛行経験を蓄積し、今もゆっくりとパイロットとしてあらゆる状況に対処できるようにとレベルアップを続けている。
ロメオ・ワンにはこいつの最新のコピーユニットを搭載し、この飛行も終わったら。その情報をフライヤーの元へと持って行って、新しい経験値にしてもらうようになっている。
B.O.S.にとってベルチバードは飛行機かもしれないが。
僕は飛行物体――はっきり言うと、人を乗せて運ぶロボットを作ったというのが多分正しいと思う。
このAI搭載型ベルチバードは、あくまでも秘密裏の輸送任務が主眼であるため。
兵士を回収するための強行着陸などは現在の所考えてはいないが、予定されている3段階の計画が進めばまた状況も変わるかもしれないだろう。今はまだ第1段階を追えただけの状態、先はまだまだ長いね――。
とはいえ、当面はこのロメオ・ワンと。数週間のうちに完成する予定のロメオ・ツーを使い。
増援のミニッツメン達を北東部へと間断なく送り込む支度は整えられつつある――。
「どうやら俺と話したいことがあるらしいな、小僧」
「そうだね」
「俺も、お前には聞きたいことがあるが――まぁ、しばらくはこの空の旅って奴を楽しむのもいいだろう」
「……」
この2人だけの飛行経路を僕はハンコックには言っていない。
でも、どうやらこの人はなんとなくだが。僕がどこに彼を連れて行こうとしているのか、わかっている風に思えた。
「どうしてもこの目で、確かめておきたかったものがあるんだ」
「ほう」
「B.O.S.の飛空艇」
「こいつでアレの側を飛ぶつもりなんだな。無茶をする」
こんな軽口を叩きあっている間にも、このヘリの前方左手にはすでにあのプリドゥエンとやらがゆっくりと大きくなって迫ってきているのだ。
「こいつは別に、戦闘は出来ないんだろ?」
「装甲は厚めにしてるから、耐久性はあるよ」
「逃げられるってことか?」
「残念、そのかわりに足が少し遅いんだ」
言いながらも僕の目は外に浮かぶ巨体から目を離せない。
しかしロメオ・ワンはプリドゥエンの船尾とボストン空港のそばをすいとあっさりと通り過ぎてみせた。
「どうだ?満足か?」
「少しね」
言いながら僕は脳裏に刻んだ、プリドゥエンや空港などの見下ろした風景を思い返す。キャピタルのB.O.S.はやはりしっかりと空港に防備を構築しているように見えた。
今のミニッツメンをあそこに叩きつけようとすると、死体の山を作ることにしかならないだろう――。
「アキラ、俺からもひとついいか?」
「なに?」
「確かお前、プレストン・ガービーにコベナントにあったものを全て渡したと言ったそうだな」
彼が言ったことは、コベナントの犯罪を証明するデータについてだと思って、僕はそのまま答えた。
「言ったね」
「嘘だな、お前は全ては渡していない。違うか?」
「――なんでそう、疑うのかな?」
「このベルチバードって奴を見たらそう思うからさ。ロボットを、AIをパイロットにするなんてどうかしているぞ。
そうなるとお前がマッドでイカレているだけか。なにかとんでもないものを手にしているのか、どちらかってことになる」
「たったそれだけのことで?」
「善人の顔を見せたいなら、相手を選べってことさ。俺にそいつはきかないぞ」
役者が違うんだよ、両手を広げて余裕のあるハンコックの言葉には説得力がある。
いや、そうじゃないな。
コベナントからこっち、僕はきっと無理を通し過ぎているのだ。それだからあのマクレディから怪しんで、策略化の如く僕にはなにか壮大でち密な計画があるんだとか考えられてしまっている。
僕は自分のピップボーイに入っているデータを呼び出すと、それをハンコックにも見えるように腕を差し出した。
「なんだ?これは人の名前のようだが」
「そう、これはあのコベナントを支援した連中の名前のリストだよ」
心の中を読まれたくなくて、僕の表情は今死んでいる。
感情が噴出せば、それはたちまち業火となって誰かの命を奪いに行きたくなる衝動に駆られるはずだ。
「それは興味があるな」
「ほかにもいくつかあるけど、今見せられるのはコレだけだよ」
「この空飛ぶ棺桶も、そのひとつか?」
「違う――本当だって。これは、ちょっと凄いものをたくさん目にする機会があってさ。そこを立ち去る前に、ちょっと面白そうなものをひとつふたつ、抜き出してきたんだよ」
こっちも正気を疑われたくはないので、素直に宇宙から持ってきましたとは言えない。宇宙人から地球を守っている、守護者達がいるなんてね、信じてもらえないさ。
「本当はコレ、もっと楽に完成すると思ったけど。想像以上に苦労させられたさ」
「自慢にも苦労にも聞こえないぜ。その言い方じゃ」
「ウンザリさせられただけ。だからこれでいいんだよ」
「そうかい……ところで、さっきから南に方向をむけてからかわってないみたいだな。次はどこに行くつもりだ?」
「それじゃ、今度はこっちの番だ」
僕は次の疑問を口にする。
――連邦の南は、今どうなっている?
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混沌だ。
ハンコックの返事は短く、そして簡潔なものだった。
「いいか、アキラ。ガンナーってのは確かに脅威ではある。
この連邦で最も組織化された巨大な傭兵集団だし。装備はしっかりと選び抜かれ、戦闘に関してはプロフェッショナルなのは間違いない。
武装組織としての命令系統は上から下まで厳格に守ることを要求しているから、ナメて造反など考える奴はまずいない」
「――マクレディは抜けたと言ってたけど?」
「そりゃ、完璧ってワケじゃないさ。組織のやり方が肌に合わないって奴は当然出てくる、あいつのような一匹狼じゃな」
「なるほど」
「だが、連邦の南部に秩序のようなものが見られない理由もまた。このガンナーに問題がある。
奴等にはB.O.S.のような組織としての目標がない。組織の外側の政治には興味がないと言ったらいいのだろうか。
とにかく自分たちが最強の存在であることと。それを維持することのみが目的になっちまっている」
――だから、混沌しか生み出せない。
なるほど、改めて学べば学ぶほど。百害あって~と言うしかない存在なのだと理解するしかない。
歪んでいる、どうしようもなく。
「お前はどうもアレをどうにかできると考えているようだが、俺はまだ信じられんよ。南部を支配していると言える程度には、あいつらは連邦に広く展開している。
そいつをいちいち叩き潰したからって、あいつらを簡単には排除できると考えるのは間違っている。家の中からローチを全滅できる。綺麗に締め出せると、啖呵をきってみせるようなものだぞ」
「それは――あの時は、考えている計画でもいいから聞きたいって言うからさ」
「なるほど。現実味は無視していたってことか。なら、これで学んだろ?」
「まぁね」
ところどころを崩れている高架橋と海岸沿いを見下ろしながら、僕はボウっと自分の計画を見つめなおしていた。
ミニッツメンをボストンに放り込んだ影響から、ガンナーはそれを無視できなくなるはず。
そうなれば当然、衝突するってことになるが。それをどうにかボストンの南側で出来れば、ミニッツメンとしても面白い状況に転がせはしないか?
(――この辺のことはレオさんに任せた方がいいんだろうな)
突然、機体が激しく揺れた。
驚く僕とハンコックに対し、パイロットユニットは不快な電子音をあげてガーガーと叫び続けていた。
「ついに墜落か?命を捨てに来たつもりはないぜ」
「おい、パイロット!なんだよ、どうした」
そう口にしながら僕はピップボーイのコードを引き抜き。
ベルチバードのパイロット席、背面にあるコネクタにそれを突っ込んだ。
「アキラ、なんだ?」
「――S.O.S.信号?誰かが救難信号を出しているってこと?」
なんともおかしな話に思えた。
ガンナーの支配する南部で、救難信号を出すということは襲われているのだろうが。そんなもので救援が来ると、本気で思っているのか?
「パイロット、音声を拾っているなら聞かせてくれ」
それはすぐにスピーカーから流れてきた。
――こちらはVault88からの、緊急信号です。認証コードは……
(設定)
・ローグス
アンチメカニストを掲げ、メカニストの部隊を攻撃することを目的とした即応のロボット戦闘部隊。
構成は以下の通り
セントリーボット
アイボット
プロテクトロン
アサルトロン、Mr.ハンディ2台
だが、計画ではさらにもう一台が追加予定となっている。
エイダと共にアキラの元を離れ、連邦北東部でメカニストの部隊を殲滅しつつ、情報を集めていた。
・ベルチバード
ロメオ・ワンとロメオ・ツーに使われた元のベルチバードは原作のゲーム中に登場するものを選んだ。
ワイルドウッド墓地の南で水に沈んでいるのがロメオ・ワン。
グレイ―ガーデンから東にいった高架橋最上段にひっかかっているのが、ロメオ・ツーに使われたということになっている。