やはり俺が入隊するのはまちがっている。   作:ユンケ

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初投稿ですがよろしくお願いします


比企谷八幡は入隊する。

 

「……三門市、そして人類の未来は君達の双肩に掛かっている。日々研鑽し正隊員を目指してほしい。君達と共に戦える日を待っている」

 

1月8日、俺、比企谷八幡は体育館のようなステージで白い隊服を着て壇上にいる男性の話を聞いている。

 

(……遂に今日から俺もボーダー隊員か。何としても稼いでお袋と小町に楽をさせないとな)

 

俺は今日から界境防衛機関『ボーダー』という組織に入る事になった。ボーダーは簡単に言うと異世界からの侵略者から街を守る仕事だ。

 

今から2年半前、俺が住んでいる三門市に『近界民』と呼ばれる化け物が現れて三門市を蹂躙した。それによって俺の親父も殺された。

 

こちらの世界とは違う技術を持つ近界民には地球の兵器の効果は薄く俺含めて誰もが都市の壊滅は時間の問題だと思っていた。

 

しかし突如現れた謎の一団が近界民を撃破して世間に宣言をした。

 

『こいつらのことはまかせてほしい。我々はこの日のためにずっと備えてきた』

 

彼らはわずかな期間で巨大な基地を作り上げ、近界民に対する防衛体制を整えて三門市の平和を守っている。

 

俺は当初はボーダーに入るつもりはなかった。ぶっちゃけ怖いし働きたくないし。

 

しかしそうもいかない事態が起こった。

 

 

 

 

親父を失い女手一つで俺と妹を養っていたお袋が過労で倒れてしまった。それを見た俺は少しでも負担を減らしたいと色々考えたが中学生は基本的にバイトが出来ないからいい案が浮かばなかった。

 

その事に絶望しながらも諦めず色々と調べていたらボーダーのホームページで正隊員になったら給料も出るし作戦室という部屋も与えられると知った。

 

それを見た俺は「これだ!」と叫んで即座に試験を受けた。そして合格したのでお袋に許可を貰いにいった。初めは拒否されたがこれ以上お袋に苦労をかけたくないと食い下がった結果、「無茶だけはするな」と入隊許可を貰った。

 

 

まあそんな訳で今日から入隊だ。何としても正隊員になって金を稼いでやる。

 

そんな事を考えていると騒めきが生じたので前を向くと騒がしい理由を知った。

 

壇上にはいつの間にか本部長はいなくなっていて4人の男性が立っていた。

 

(……あの2人は確か嵐山准さんと柿崎国治さんだっけ?2年くらい前にテレビに出てたな)

 

曖昧な記憶だがテレビに出て街を守るとか言ってた気がする。オリエンテーションはあの4人がするのか?

 

すると嵐山さんが前に出て口を開ける。

 

「さて、これから入隊指導を始めるがまずはポジションごとに分かれてもらう。アタッカーとガンナーを志望する者はここに残り、スナイパーを志望する者はうちの佐鳥について訓練場に移動してくれ」

 

佐鳥と言われた人が近くの出口に立ち狙撃手志望と思われる隊員を連れて行った。

 

狙撃手志望がいなくなると同時に壇上を見る。

 

 

「改めて、アタッカー組とガンナー組を担当する、嵐山隊の嵐山准だ。初めに入隊おめでとう。忍田本部長もさっき言っていたが、君たちは訓練生だ。B級に昇格して正隊員にならなければ防衛任務には就けない。じゃあどうすれば正隊員になれるのか、最初にそれを説明する。各自、自分の左手の甲を見てくれ」

 

そう言われて左手を見ると左手には1000という数字が表示されていた。

 

 

「君たちが今起動しているトリガーホルダーには、各自が選んだ戦闘用トリガーがひとつだけ入っている。左手の数字は、君たちがそのトリガーをどれだけ使いこなしているかを表す数字だ」

 

……なるほどな。これで大体の実力がわかるって訳か。となるとこの数字が一定以上にかとB級やA級に昇格できるって事か?

 

「その数字を4000にする。それがB級になる為の条件だ」

 

なるほどな。つまり後3000稼げばいい訳だ。B級で4000って事はA級だと10000か?やだ何それ怠い。

 

「ほとんどの人間は1000ポイントからのスタートだが、仮入隊の間に高い素質を認められた者はポイントが上乗せされている。当然、その分即戦力としての期待がかかっている。そのつもりで励んでくれ」

 

何だと?仮入隊ってあったのかよ?やれば良かった。

 

 

「ポイントを上げる方法は二つある。週2回の合同訓練でいい結果を残すか、ランク戦でポイントを奪い合うかだ。まずは訓練のほうから体験してもらう。ついて来てくれ」

 

そう言って歩き出した嵐山さんを先頭に訓練生たちが続々と部屋を後にするので俺もそれに続く。

 

訓練は何となくわかるがランク戦って何だ?トーナメントでもやって順位に応じてポイントが貰えるのか?

 

わからない事が多いが後で説明をさせるだろう。今は訓練で良い記録を出す事だけを考えよう。

 

暫く歩いていると広い部屋に到着した。

 

「さあ、着いたぞ。対近界民戦闘訓練だ。これから仮想戦闘モードの部屋の中でボーダーの集積データから再現された近界民と戦ってもらう」

 

え?いきなり戦闘訓練?てっきり理論による説明があるかと思った。

 

周りもかなり騒めいている。どうやら殆どの人も予想外だったようだ。

 

「仮入隊の間に体験した者もいると思うが仮想戦闘モードではトリオン切れはない。ケガもしないから思いっきり戦ってくれ」

 

あ、怪我はしないんだ。それなら安心だな。

 

「今回、君達が体験するのは初心者レベルの大型近界民だ。攻撃力はないがその分硬いぞ。制限時間は1人5分で早く倒すほど評価点は高くなるから自信のある者は高得点を狙ってほしい。……説明は以上!各部屋始めてくれ!」

 

嵐山さんがそう締めくくると訓練が始まった。正直言って緊張するがやるしかないな。

 

そう思いながら息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練は始まって訓練生は訓練室に入り早速始めている。

 

俺は少し離れたベンチに座って様子を観察している。どうせやるなら徹底的に分析してからやるべきだろう。

 

先ずは自分のトリガーの特性の確認、その後に近界民の動きや癖、弱点を調べ自分のトリガーの特性と擦り合わせてどう攻めるか調べ上げるつもりだ。

 

俺に支給されたトリガーは攻撃手用トリガーの『スコーピオン』

 

 

入隊した際に貰った説明書には重さが殆どなく、体中どこからでも出現させることが可能な上、形を自由に変えられると記されていた。

 

ただし刃の耐久力が低いため受け太刀には不向きでまさに攻撃に特化されたトリガーだろう。

 

しかし俺が思うにスコーピオンは怒涛の攻めだけでなく、足や背中から生やして不意打ちをするのにも適していると思う。

 

まあ今回は攻撃力はないと言っていたら受け太刀はしないだろう。

 

となると問題は攻め方だ。

 

 

 

再度訓練室を見ると偶然にもスコーピオンを使っている訓練生がいたので見ると近界民の足を狙って斬っているが殆どダメージはない。どうやら本当に硬いようだ。

 

スコーピオン使いは時間切れで失格となった。制限時間があるって事は倒せない事はない。しかしやり方次第では時間切れとなる。

 

となるとあの近界民には何処かに弱点がある筈だ。もしもないなら制限時間5分は短すぎるし、そこまでB級隊員はいないからな。

 

(……しかし何処にある?)

 

可能性があるとしたら目の部分と装甲の繋ぎ目部分だろう。他の部位は硬そうだから攻撃するのに適していない。

 

(……おそらく今訓練している連中も弱点を探しているだろう。それをじっくり見れば…)

 

そう思っていると訓練生の1人が近界民の目を撃ち抜いて動きを停止させた。

 

(……ビンゴだ。弱点は目だな)

 

そう判断した俺は立ち上がり訓練室に向かって歩きだす。最後の方だと間違いなく目立つからな。やるならちょうど半分終わった頃だろう。

 

 

 

 

 

訓練室に並ぶ事10分、ようやく俺の番だ。

 

 

訓練室に入り息を一つ吐く。ここで良い記録が出るかどうかで向いてるかどうか大体分かるだろう。

 

倒す青写真は出来ている。問題はそれを実行できるかだ。

 

(……頼む、上手くいってくれよ)

 

 

 

 

 

 

『3号室用意、始め!』

 

俺が祈り終わった瞬間、アナウンスが流れる。

 

それと同時に走り出して近界民に突っ込む。近界民は足を上げて近寄ってくる。

 

 

近界民が足を下ろそうとした瞬間、俺は足に飛び移り、足に着地すると同時にジャンプして近界民の背中に乗る。

 

 

……乗り心地は余り良くないな。

 

そんな事を考えながら俺は背中から頭に向かって走り出す。ここでミスるとタイムロスになるので注意しよう。

 

 

しかしそんな心配も杞憂に終わり特に問題なく近界民の頭に乗れた。これで準備は整った。後は……

 

 

 

 

 

俺は近界民の頭から正面に飛び降りる。それと同時にスコーピオンを手から出す。絶対に決めてやる。

 

 

そう固く決意して弱点と思われる目にスコーピオンを振るった。

 

 

 

 

 

重力によって地面に背中をぶつけると同時に目から煙が生じて近界民は倒れこんだ。どうやら成功したようだ。

 

安堵の息を吐いているとアナウンスが流れる。

 

 

 

 

『3号室。記録、29秒』

 

どうやらかなり良い記録が出たらしい。訓練室を出るとかなりの騒めきが生じている。

 

「30秒切りやがったぞあいつ……」

 

「やばいな」

 

「凄いな……目は腐ってるけど」

 

ちょっと最後?目の腐りは関係ないですよね?それは言わないでくれるかな?

 

呆れながらベンチに座る。どうやら俺の記録がトップのようだ。この調子でガンガン行って正隊員になってやる。

 

 

 

そう思った時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『2号室。記録、24秒』

 

『3号室。記録、27秒』

 

『5号室。記録、32秒』

 

立て続けに好記録が出て更に騒めきが生じる。マジかよ?一気に好記録が出たなり

 

 

そう思っていると2号室からは人の良い雰囲気を出すいかにもリア充みたいな少年が、3号室からは猫目っぽい目をした少年が、5号室からは品のありそうな可愛い女子が出てきた。

 

3人同時に訓練室から出てきたのでかなり注目を浴びている。そんな中3号室から出てきた少年が明らかに嫌そうな雰囲気を出しているのが印象的だった。……あそこまであからさまに出すなよ。

 

 

呆れている中戦闘訓練が終了した。俺の記録は3位だった。

 

 

 

 

 

 

その後も訓練は続いて、地形踏破、隠密行動、探知追跡訓練と色々な訓練をこなした。

 

ちなみに俺の記録は地形踏破訓練が4位、隠密行動訓練がぶっちぎりの1位、探知追跡訓練が2位で終わった。

 

……隠密行動訓練でぶっちぎりの1位だったのは影の薄さが関係してるのか?

 

「それじゃあ最後にC級ランク戦についての説明をするから付いてきてくれ」

 

そう言われて嵐山隊に続く。

 

左手の甲を見ると1071と表示されていた。どうやら1つの訓練で満点を取ると20点貰えるようだ。

 

合同訓練は週2回、つまり毎週満点を取ったら160点入る。仮に訓練だけでポイントを稼ぐなら19週間かかる。普通に考えたら時間がかかり過ぎる。

 

つまりランク戦はかなりポイントを稼ぐ手段として重視されているのだろう。

 

 

そう思っていると広い場所につく。そこは壁に大量の部屋があり中心に巨大なモニターがある部屋だった。

 

「ここがC級ランク戦のロビーだ。それじゃあC級ランク戦のやり方を説明する。C級ランク戦は基本的に仮想戦場での個人戦だ」

 

マジか。てっきりトーナメントかと思ったぜ

 

「C級ランク戦のやり方は簡単だ。ブースの中にあるパネルにブースの番号と武器とポイントが出ている。それが現在ランク戦に参加している隊員だ。好きな相手を選んで押せば対戦が出来る。逆に向こうからも指名される場合もある。対戦をやめたい時はブースから出ればいい」

 

しみじみ思っている中嵐山さんの説明は続く。

 

「そして、ポイントが高い相手に勝つほど点がたくさん貰える。逆に自分よりポイントが低い相手だと勝っても余り貰えず負けた時に沢山取られる」

 

つまり大量に増やしたい場合は3000以上の相手に挑めばいい訳だ。仮に負けてもポイントに差があるから殆ど取られない、と。まあ3000クラスはキツイから1500以上あたりから挑戦してみるか。

 

俺が意気込んでいる時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ2人組になって試しにやってみよう!好きな相手と組んでくれ」

 

嵐山さんがそう言った瞬間絶句してしまった。

 

 

好きな人と組めだと?それはボッチの俺にとっては厳しいです!何せ学校で組む時は必ず余った生徒、下手したら先生と組むのが俺だぜ?

酷い時は運動会の組体操で教師と組む俺にそれは酷な話だ。

 

しかもこの場の先生は嵐山さんだ。もう2年くらいボーダーで働いている嵐山さんと組んでも間違いなく瞬殺される未来しかイメージ出来ない。

 

しかも周りからは「あの目の腐った奴、強いからやりたくないな」とか聞こえてくるし。好記録が仇となる。

 

こうなったら流れに身を任せよう。この場にいる訓練生の数が偶数ならそれで良し。奇数なら嵐山さんに「見るだけでいい」と言えばいい話だ。

 

 

そう思いながらポケーっとしている時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、私と組んでくれませんか?」

 

後ろから声をかけられたので振り向くとさっき戦闘訓練で好成績を出した品のある女の子が話しかけてきた。

 

え?マジで?こんな可愛い子が俺に組めと頼んでくるか?何を企んでるんだ?

 

「えーっとだな。俺じゃなくても他にも人はいるぞ?」

 

「そうですね。ですが私は実力のありそうな貴方と手合わせをしたいんです。組んでくれませんか?」

 

顔を見る限り特に含みはなく企んでいるようには見えない。……大丈夫か?

 

「……わかった。じゃあよろしくな」

 

「はい、よろしくお願いします。私は照屋文香です」

 

そう言って頭を下げてくる。随分と礼儀正しいな。どこか良いところのお嬢様か?まあこれだけ礼儀正しいならこちらも礼を返さないと失礼だな。

 

「俺は比企谷八幡だ。こちらこそよろしくたにょむ」

 

 

 

 

 

 

 

 

……噛んでしまった。よりによって自己紹介で噛むってどんだけコミュ力低いんだよ俺。

 

照屋はキョトンとしてから、

 

「ふふっ……」

 

クスクスと笑いだす。それを見た俺は恥ずかしくなり顔が熱くなってきた。

 

「頼むから笑わないでくれ」

 

「ごめんなさい。ちょっと可愛くて…」

 

いやいや、女子に可愛いって言われても嬉しくないからな?

 

「言わないでくれ。てかそろそろペア決まったみたいだし前向こうぜ」

 

こういう時は話を逸らすに限る。すると照屋は「あ、そうですね」と頷いて俺の横に立ち前を向いた。どうやら話を逸らすのは成功したようだ。

 

「ペアは決まったみたいだな。それじゃあ1ペア毎に個人ランク戦をやってくれ!」

 

嵐山さんがそう言うと1番前にいるペアの2人が2つのブースに入っていった。

 

それから20秒くらいしてから巨大なモニターにさっき入った2人が映り向かい合っていた。

 

「なるほどな。本当にタイマンという訳か」

 

しかも試合開始地点は敵の真ん前だから隠れて奇襲も出来ないな。ステージにいる2人は弧月とスコーピオンを出して戦闘を開始している。

 

確か照屋は弧月を使っていたから弧月使いの動きを学んでおこう。

 

 

すると弧月使いはスコーピオンを避けて弧月を振るう。スコーピオン使いはスコーピオンで防ごうとするもスコーピオンは呆気なく砕け散りそのまま真っ二つにされて敗北した。

 

どうやらスコーピオンは本当に脆いみたいだな。となると照屋と戦う時は防ぐんじゃなくて避けて戦うしかない。

 

横を見ると照屋も真剣にモニターを見てブツブツ言っていて対策を練っているのがわかる。

 

どうやら俺は厄介な相手と戦うようだ。

 

ため息を吐きながら試合を眺め続けた。

 

 

 

 

 

あれから何試合も見てみた。

 

その際に色々な隊員を見て勉強になった。

 

特に身長の高い女子と小学生と思える男子ペアの試合と俺より早い記録を出した2人のペアの試合はかなりレベルが高かった。

 

特に後者のペア、あの2人は間違いなく仮入隊していただろう。2人とも俺と同じスコーピオンを使っていたがある程度形になっていた。あの2人に勝てる奴はこの中にいないだろう。

 

「じゃあ次のペアの番だ!」

 

嵐山さんにそう言われていよいよ俺の番だ。俺と照屋は前に出て歩き出す。

 

「では比企谷先輩、よろしくお願いします」

 

「ああ、よろしくな」

 

挨拶を交わしてブースに入る。操作方法はさっき嵐山さんが言っていたので理解できる。

 

俺はパネルを見て照屋がいる102室を探す。

 

暫く探していると『102 弧月 1069 』と表示されているのを発見したので該当する番号を押す。

 

 

それと同時に体が光に包まれる。

 

 

光が消えるとそこはブースではなく住宅地が広がっている道路だった。

 

数秒後俺の正面15メートルくらい離れた場所に照屋が現れた。いよいよ試合開始か。

 

さっきまでの訓練を見ているとそこまでの差はない。油断した瞬間負けるだろう。

 

 

俺は左手からスコーピオンを出して照屋に向ける。てか今更だが怪我をしないとはいえ可愛い女子に剣を向けるって明らかにヤバイ絵面だろ?

 

そう思っていると照屋も弧月を出して構えを取る。

 

剣同士のぶつかり合いじゃ敵わない。となると取れる戦法は照屋の攻撃を躱して斬るしかない。

 

 

 

 

 

 

方針が決まったので俺は照屋に向かって突っ込んだ。それと同時に照屋もこっちに向かってきた。

 

距離が3メートルを切った所で照屋が走りながら弧月を振るってきた。

 

俺はそれを紙一重で躱そうとするが……

 

(……ヤバい!予想以上の剣速だ)

 

モニターで弧月を振るっているのは何度も見たが予想以上だった。実際に見るのと体験するのは違うのか、はたまた照屋が他の弧月使いより優秀なのか……多分両方だろう。

 

 

俺は横にジャンプして照屋の弧月を躱そうと横にジャンプしたが肩から若干の緑色の煙が出る。やっぱり完全には躱すのは厳しいか。

 

しかし弧月を振り切った照屋には隙がある。

 

俺はスコーピオンを横薙ぎに振るう。狙いはシンプルに照屋の首だ。すると照屋は後ろに下がりながら左腕を出して首を隠すようにしてきた。

 

急にスコーピオンを止める事は出来ずそのままスコーピオンを振るった。

 

その結果照屋の左腕には切り傷が出来て俺と同じように緑色の煙が出る。

 

照屋はそれを一瞥するだけで再び弧月を振るってくるので後ろに大きく跳んで照屋の攻撃範囲から出る。

 

 

 

(……ダメージは与えられたが腕を落とすのは無理だったか。しかもあの振り方からしてそこまで影響はないみたいだな)

 

俺は頭を冷やしてスコーピオンの特性を考える。

 

(……スコーピオンは受け太刀に不利で腕以外でも使える。対して弧月はバランスが良いが重くて腕を斬られたら使えない)

 

となると腕を斬るのが良いと思うが向こうもそれを読んでいるだろう。

 

となるとそれは危険だ。だったら……

 

俺はスコーピオンを起動して腕からではなく手首から出してみる。どうやら本当に腕以外からも出せるようだ。

 

(てかそれだったらバカ正直に手から出す必要なくね?)

 

うん、それがいい。攻撃する時だけ出そう。そうすれば向こうの判断力を鈍されられるだろうし。

 

 

 

 

方針は決まった俺は再び照屋に突っ込む。今度は手にスコーピオンを持たずに。

 

照屋を見ると若干驚いた表情をしながらも突っ込んでくる。作戦は決まった。後は運に身を任せるだけだ。

 

 

照屋との距離が5メートルを切ったので俺は右腕を照屋に向かって思い切り突き出す。

 

照屋は戸惑いながらも弧月を振るってくる。

 

(……さあ思い切り振るってこい)

 

俺が祈った為か照屋は全力で弧月を振るった。それによって右腕は斬り落とされて、胸から腹にも大きな斬撃痣が付けられる。

 

それによって大量の緑色の煙が上がるが俺の戦闘体はまだ壊れていない。

 

それを自覚した瞬間、笑みが浮かんでるのを実感した。今の照屋は弧月を振り切った為に直ぐに体勢を立て直す事は出来ない筈だ。

 

 

 

 

 

「俺の勝ちだ、照屋」

 

 

 

 

 

俺はそう言ってスコーピオンを先に纏った左足を照屋の脇腹に叩きつけた。

 

それによって照屋の腹は真っ二つになった。照屋は驚いた表情をしながら光に包まれて空に飛んでいった。

 

 

 

 

 

『個人ランク戦終了。1-0 勝者 比企谷八幡』

 

そんなアナウンスが耳に入り俺も光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブースに戻り息を吐く。腕を見ると個人ポイントが1102になっていた。おおっ、同じぐらいのポイントの相手を倒すと30近くも貰えるのか。となると1500ぐらいの相手だと50ポイントくらいか?

 

そんな事を考えながらブースを出ると視線を感じたので周りを見渡すと他のC級隊員が引いていた。

 

 

(……まあ勝ち方が女子の腹に蹴りを入れてだからな…。照屋にも謝ろう)

 

そう思っている時だった。

 

「比企谷先輩、ありがとうございました」

 

ブースから出てきた照屋が頭を下げてくるが罪悪感しか感じない。

 

「ああ。それとさっきの試合だが……腹蹴って悪かった」

 

俺がそう言って頭を下げると照屋はキョトンとしてから直ぐに笑う。

 

「気にしないでください。実際のお腹じゃないですし勝負だから恨みっこ無しです」

 

どうやら本当に怒ってないようだ。良かった。場合によっては土下座を覚悟してた。

 

「そうか」

 

「はい。でも次は負けませんよ」

 

そう言って勝ち気の笑みを浮かべてくる。それを見て俺も苦笑を浮かべる。

 

「悪いが次も負けるつもりはない」

 

会釈をして元の場所に戻る。

 

ボーダーには家計の為に入隊したが……訓練やランク戦は割と楽しいな。

 

クソみたいな中学生活を送っている俺としては実力さえあれば認められるボーダーはかなり気に入ったようだ。

 

 

そう思いながら残りのランク戦を見学した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ペアのランク戦が終了して新入隊員は初めの入隊式があったステージに戻った。

 

「これでオリエンテーションを終了する。君達が正隊員に上がり一緒に防衛任務に就ける日を待っている」

 

嵐山さんがそう締めくくりオリエンテーションは幕を閉じた。

 

さて早速だがランク戦に行くか。お袋は夜まで仕事で小町は友人の家に泊まると言ってたから暇だし。

 

「比企谷先輩はランク戦ですか?」

 

「まあな。照屋は?」

 

「私は用事があるので帰ります。次は3日後の合同訓練で会いましょう。その時にまたランク戦をお願いします」

 

「いいぜ、またな」

 

「はい。失礼します」

 

照屋はペコリと頭を下げて去って行った。

 

今回は勝てたが次は向こうも対策を講じてくるだろう。それまでに強くなっておこう。

 

 

 

 

 

 

そう思いながら俺は個人ランク戦をする為に走り出した。




読んでいただいてありがとうございます。

俺ガイルとワートリのクロスは大抵高2からスタートですがこの作品では中3からスタートです。

予定としては10話くらいやってから高2に入りたいと思います。

今後ともよろしくお願いします。



パラメーター

比企谷八幡(中3時点)

攻撃手

PRFILE

ポジション:アタッカー
年齢:15歳
誕生日:8月8日
身長:169cm
血液型:O型
星座:ペンギン座
職業:中学生
好きなもの:妹、金、MAXコーヒー、平穏

PARAMETR

トリオン 7
攻撃 6
防御・援護 5
機動 6
技術 5
射程 1
指揮 4
特殊戦術 2

TOTAL 36



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