やはり俺が入隊するのはまちがっている。   作:ユンケ

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ヒロインについては書いている内に考えてみる事にしました。アドバイスをくださった皆様ありがとうございました


比企谷八幡は初めての防衛任務に挑む

2月4日、ちょうど総武高校の入試10日前だ。熊谷と照屋に言われて数学が少し伸びて好調な気分の中、憂鬱な気分になってしまった。

 

 

B級に上がってから3日。

 

遂に初の防衛任務だ。B級はトリオン兵討伐の出来高で給料が決まるので頑張らなきゃいけない。

 

金を稼ぐ為ある程度の事は我慢するが……

 

 

(いきなり知らない人と組むのは緊張するな)

 

俺は今回組むチームの作戦室の前にいる。

 

ったくいきなり知らない人と関わるようになるなんて……今のままじゃヤバイので少しでもコミュ力を上げないとな。

 

 

そう思いながらインターホンを鳴らす。

 

『ほ〜い。どちらさま〜?』

 

おっとりした女子の声が聞こえてくる。女子かよ?!ただでさえ会話が苦手なのに……

 

「えっと……すみません。今日の3時からそちらの隊と防衛任務をする比企谷と申します」

 

『お〜。聞いてるよ。入って』

 

そう言われると同時に扉が開くので中に入るが……

 

 

(……随分と生活感が溢れているな。作戦室ってこんな感じなんだ)

 

そこはゲームや雑誌、シャツや鞄など色々な物が散らばっていて住んでる感じがある。てかこれ家じゃね?

 

そう思っているとふわふわした雰囲気を醸し出している女子が近寄ってくる。

 

「太刀川隊の国近柚宇だよ。よろしくね〜」

 

「は、はい。個人の比企谷八幡です。よろしくお願いします」

 

よし、何とか今回は噛まずに済んだ。俺も成長したな。

 

(……にしても初めて組む部隊がA級1位とはな)

 

俺が今日組むのはつい最近A級1位の東隊が解散して代わりに1位になった太刀川隊だ。

 

隊長が個人総合ランクで1位の太刀川慶さんが率いる部隊が初めて組むって運が良いんだが悪いんだか……

 

「太刀川さんと出水君は任務開始10分前に来るから少し待っててね〜」

 

「あ、すみません。少し早く来過ぎましたか?」

 

流石に30分前は早過ぎたか?

 

「気にしないでいいよ〜。それより比企谷君」

 

そう言って国近先輩は真面目な表情をして俺を見てくる。何だ?初陣だから心構えを説いてくれるのか?

 

俺も真剣な表情をして国近先輩を見る。さあ、何を言ってくるんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷君、ゲームは得意?」

 

………は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

15分後……

 

俺は今テレビの前で大乱闘を国近先輩と2人でやっている。ちなみにルールはストック10だ。

 

大乱闘は小町や日浦としょっちゅうやっているからかなり自信があるが国近先輩はかなり強い。

 

しかしやるからには勝つ。

 

俺は配管工を操作して何でも食べるよくわからない生物から距離をとり、くす玉を割る。

 

すると大量の動く爆弾が現れるので地面に落ちる前に手に取り投げつける。

 

国近先輩は巧みに操作をして爆弾を躱す。しかし俺はそれと同時にもう1つ拾って投げつける。

 

投げつけた爆弾は何とか当たる。それによって未確認生物は爆発に巻き込まれ画面外に飛んで行った。

 

『GAME SET!!』

 

そんなアナウンスが流れて配管工がはしゃいでいる画面に変わった。今回は俺の勝ちのようだ。

 

BGMを聞きながら国近先輩を見るとプルプル震えているがどうしたんだ?

 

「……あの、国近先輩?」

 

おそるおそる尋ねると国近先輩はこちらを見てくる。

 

 

そして…….

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁ〜!!」

 

いきなり泣きながらヘッドロックをかけてきた。

 

(……はい?!)

 

いきなりどうした?ゲームに負けて泣くとか完全に予想外だ!!

 

てか背中!背中に何か柔らかい物が当たってますから!!偶に小町や日浦に抱きつかれる時はあるがあの2人とはレベルが違うくらい柔らかいな!!

 

「ちょ、ちょっと!!落ち着いてください!」

 

慌てて引き離そうとするが全然引き剥がせない。てか力強いから!

 

「うわぁぁぁ〜!」

 

そして更に締めが強くなる。ヤバイ……これは

 

 

 

そう思っていると……

 

 

 

 

 

「遅れて悪いな。ちょっと怖い師匠からの説教が長引いて……」

 

「うーっす。お、もう新人は来て……」

 

髪がモジャモジャした人と金髪の2人組が作戦室に入ってきて俺達を見て黙る。

 

そして「あー」と全てがわかっているようなため息を吐く。どうやら事情はわかっているようだが知ってるなら助けてください。

 

その後国近先輩が泣き止むまでヘッドロックを受けた。

 

 

 

 

「はっはっは。防衛任務初日から国近からヘッドロックをくらうなんてついてないな」

 

笑いながら肩を叩いてくる。まあついてないのは確かかもな……

 

 

「あ、俺は隊長の太刀川慶な。よろしくな」

 

「俺は部下の出水公平。よろしく」

 

「B級個人の比企谷です。よろしくお願いします」

 

そう言って頭を下げる。

 

「おう。よろしくな。んじゃ早速だが警戒区域行くから付いて来い」

 

「……うす」

 

そう言って作戦室を出る。

 

「比企谷君、初めてだけど頑張ってね〜」

 

後ろからは既に泣き止んだ国近先輩が激励の言葉をかけてくる。とりあえず泣き止んで良かった。

 

安堵の息を吐きながら歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…それで基本的には市街地と警戒区域の境界あたりを巡回するって感じだな」

 

「つまり市街地にトリオン兵が出ないことを最優先にすると?」

 

「そういうことだ」

 

本部から出た俺は現在、警戒区域にある民家の屋根の上に立って太刀川さんから防衛任務の基本的な流れを聞いている。しっかり聞いて今後も頑張らなくてはいけないな。

 

「そんな肩に力入れんなよ。気楽に行け、気楽に」

 

出水はそんな事を言ってくるが……

 

「こっちは初めてなんだよ。無茶言わないでくれよ」

 

「まあそうかもしれないが力の入れ過ぎはミスの元だ。今回は俺がお前のフォローにまわるから安心しろ」

 

そう言われると少し安心する。やっぱりA級1位の言葉には安心感があるな。

 

そう思っている時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の正面から黒い門が現れた。そして門からはモールモッドが1体出てきた。

 

『来たね〜。太刀川さん達の真ん前にいるからよろしく〜』

 

国近先輩から通信が入る。いよいよか。

 

息を1つ吐くと太刀川さんが俺の方を向いてきて……

 

 

 

 

 

「比企谷、モールモッド1体いるが、お前の実力を見たいからお前がやってみろ」

 

そんな事を言ってくる。顔は笑っているが目は真剣だった。

 

(……まあモールモッドには借りがあるから構わない)

 

「わかりました」

 

「もしもヤバくなったら俺と出水がヘルプに入るから全力でやれ」

 

「頑張れよ」

 

「はい」

 

そう言われて腕からスコーピオンを出す。

 

訓練じゃない初めての実戦。ゲームだと訓練と実戦は同じくらい簡単だがここは残念ながら現実だ。上手くいく保証はないだろう。

 

 

しかし不思議と不安はない。

 

初めて戦った照屋、お互いに何度も訓練した熊谷や巴、格上として何度も俺と戦った歌川や菊地原……

 

あいつらと戦った経験があるのか不安はない。ただ今まで自分が磨いた腕を目の前にいるモールモッドに見せるだけだ。

 

 

俺は息を1つ吐いてモールモッドに突っ込んだ。

 

するとモールモッドは背中から6本の腕を出してくる。

 

(……先端のブレードはクソ硬い。狙うはブレードの付け根部分)

 

モールモッドの特性を頭の中で思い直しながら距離を詰める。

 

それと同時にモールモッドはブレードを振り下ろしてくる。

 

もう奴の癖は理解している。6本まとめて振り下ろした後は隙が出来る。

 

「グラスホッパー」

 

俺はそう呟いて自分の足元にグラスホッパーを設置してブレードが振り下ろされる前に真上に跳び上がる。

 

下を見るとモールモッドは地面にブレードを叩きつけていた。

 

それを確認すると同時に再度グラスホッパーを踏んで一直線に落下する。

 

初めて使った時は勢い余って地面に激突したがあれから何度も練習してグラスホッパーによって起こる速さには慣れた。

 

勢いに乗ったままスコーピオンを振るいながら地面に着地する。

 

俺が起き上がりモールモッドを見ると左側の付け根を斬ったブレード3本が地面に落ちる。

 

それを確認すると同時にモールモッドは残った3本のブレードを振るってくる。

 

対して俺は退かずに前へ踏み込む。初めて戦った時はブレードは2本までしか対処出来ないと思っていたが今なら大丈夫だろう。

 

振り下ろされるブレードをスコーピオンで逸らし空いている左手を弱点の目に向けてサブトリガーを起動する。

 

「ハウンド」

 

それと同時に左手からトリオンキューブが現れて分割されないまま放たれる。

 

 

 

 

 

 

そして放ったハウンドは弱点の目に向かって飛んでいき、そのまま穿った。

 

モールモッドは目から緑色の煙を出すと同時にブレードを止めて地面に倒れこんだ。

 

(ふぅ……初めての実戦は成功か)

 

あれから何度もモールモッドのデータを見直した努力が報われて良かった。

 

息を吐いて呼吸を整えていると後ろから拍手を受ける。

 

振り返ると太刀川さんと出水が拍手をしていた。

 

 

「よー、お疲れさん。初めてにしちゃ中々良かったぜ」

「この実力なら1ヶ月もしないで支障なく防衛任務をこなせるぞ」

 

「……あざす」

 

マトモに褒められたのは久々だから対処に困ってしまう。とりあえず目を逸らしながら礼を言う事しか出来なかった。

 

「そんじゃ、比企谷の実力もわかったし本格的に防衛任務に入るぞ。前衛は俺と比企谷で、出水は比企谷優先で援護な」

 

「うす……」

 

「出水了解」

 

え?何?返事する時は了解って返事しないといけなかったのか?だとしたら次から気をつけよう。

 

そう思いながら配置についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから3時間……

 

防衛任務をこなしている俺は正面から来るバムスターに飛びかかり弱点の目を削る。今のでバムスターの群れは終わりだ。

 

そう思いながら太刀川さんの所を見ると凄まじい光景が目に入る。

 

太刀川さんが剣を振るう度にトリオン兵はなす術なく斬られていく。

 

そして太刀川さんや俺を狙う砲撃型トリオン兵、バンダーって奴は俺達の後ろにいる出水が正確無比な射撃で殲滅させている。

 

 

(凄い。これがA級1位の2人かよ……!)

 

 

凄い、それ以外の言葉では言い表せない。

 

圧倒的な剣才を持つ太刀川さんに、圧倒的なトリオン制御能力を持つ出水。たった2人しかいないのに百人力としか言いようが無い。

 

おかげで初めての防衛任務だが全く緊張せず恐れる事なくこなせている。初めて組むのがこのチームで良かったな。

 

そう思っていると太刀川さんが残ったモールモッドを弧月専用のオプショントリガー『旋空』で一掃した。いや、マジで強過ぎるからな?

 

圧倒的な実力に戦慄していると国近先輩から通信が入る。

 

『防衛任務終了だよー。トリオン兵の回収は次の嵐山隊が引き継ぐから皆はそのまま本部に帰還してね〜』

 

「了解っと。んじゃ帰るぞ。比企谷は中々筋が良かったぞ。強くなったらランク戦しようぜ」

 

そう言って肩を叩いてくるが個人総合1位とのランク戦なんて恐れ多いだろ!!無理無理無理。いくら強くなっても瞬殺される未来しか見えないですから。

 

「は、はぁ……」

 

俺は曖昧な返事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

基地に戻り太刀川隊の作戦室に戻り報告書とやらを書き始める。

 

中学生にも報告書を書かせるとは……本当に職場みたいだ。

 

そう思いながら巡回時間や倒したトリオン兵の種類や数を記入した。これが給料に関わるのは簡単に予想が出来るので間違いないように記入しなくてはな。

 

 

念入りを報告書を書き終えると太刀川さん達も書き終えたようだ。それを太刀川さんに渡せば今日の防衛任務は終わりだ。

 

「ほいっと。……って、比企谷報告書書くの上手いな。今度組む時は俺のも書いてくれよ」

 

……え?

 

「だーっ!自分の報告書は自分で書いてくださいよ!また本部長に怒られますよ!」

 

予想外の言葉に呆れていると出水が太刀川さんに説教をしていた。どういう事だ?

 

そう思っていると出水が話しかけてくる。

 

「報告書き終わってるなら上がっていいぜ。それと太刀川さんから頼み事されてもはっきり断われよ」

 

「お、おう。じゃあ今日はこれで失礼する」

 

「おう。またな」

 

「今度俺ともランク戦しようぜ」

 

「お疲れ〜」

 

3人から挨拶を受けて俺は頭を下げて作戦室から出た。さーて、今日は帰るか。

 

そう思いながら廊下を歩きエレベーターを待つ。

 

そして俺がいる階に着いたのでドアが開くと

 

「あ、比企谷じゃん」

 

熊谷がいた。

 

「よう。お前は訓練帰りか?」

 

「うん。それと今日文香がB級に上がったよ」

 

「マジか?そいつはめでたいな。ちなみにお前はどうなんだ?」

 

「私は3924で巴君は3895だから今週にはB級に上がれると思う」

 

「ほう」

 

顔見知りがB級に上がるのは何というか……嬉しいな。

 

「そういえばあんたは今日防衛任務だったんでしょ?どうだった?」

 

興味津々に聞いてくる。

 

「それが組んだチームがA級1位の太刀川隊でメチャクチャ頼りになった」

 

あれは完全にラッキーとしか思えない。

 

「そうなんだ!初めからそんなチームと組めるなんて運がいいわね!」

 

「それについては否定しない」

 

そう返すと1階に到着したのでエレベーターから出る。

 

「お前は帰んのか?」

 

「私はご飯食べてから個人ランク戦やるから帰らないわね。あんたは?」

 

「俺は小町が飯作ってくれてるから帰る」

 

「そっか。あ!それと携帯番号教えてよ。文香達がB級に上がったら祝賀会するって言ってから連絡手段欲しいし」

 

マジで?中2の頃色々あって女子とはメールしないと思っていたが……

 

 

(……まあ熊谷なら大丈夫か)

 

熊谷と知り合ったから一月も経ってないが裏表のない熊谷なら大丈夫だろう。

 

「わかった。ほらよ」

 

そう言って熊谷に投げ渡す。

 

「私が打つの?というか比企谷、あんた迷わず携帯渡せるって凄いね」

 

「別に見られても困るもん入ってないし」

 

まあ本当の理由は携帯番号の交換なんて殆どしないからやり方を知らないだけだ。

 

「ほい。入れといたよ。私達がB級に上がったら連絡するね」

 

「おう。サンキューな」

 

「どういたしまして。じゃあまたね」

 

そう言って熊谷は食堂に向かって歩き出した。俺は熊谷が見えなくなるまで見送ってから基地の出口に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして3日後の夜……

 

 

 

from:熊谷友子

 

件名:B級昇格祝賀会について

 

私と巴君B級に上がったし前言ってた祝賀会やるから

 

明日、以前小町ちゃんや茜と食べた洋食屋でいい?

 

 

 

 

そんなメールが来ていた。どうやらB級に上がったようだな。

 

俺は『了解した。集合時間が決まったら連絡頼む。それとB級昇格おめでとう』と返信して布団に入った。

 

 

 


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