やはり俺が入隊するのはまちがっている。   作:ユンケ

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比企谷八幡は同年代の正隊員とランク戦をする(前編)

雪がしんしんと降る中、俺は白い息を吐きながら歩いている。

 

2月も後数日で終わる。受験が終わった俺は完全に暇なのでボーダー基地に向かっている。やる事というと防衛任務とランク戦くらいだ。

 

今日は深夜から防衛任務でぶっちゃけ夜まで暇なのでランク戦をしに来た。

 

扉が見えてきたのでトリガーを取り出してかざす。それによって扉が開いたので中に入る。

 

さっきまで寒かった場所にいたので凄く暖かく感じる。

 

冷えた体が温まる中、俺は個人ランク戦ラウンジに向かって歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個人ランク戦ラウンジに着いた俺は早速ブースに入る。そしてパネルを見ると大量の番号が表示される。

 

(……俺のポイントは5121だからやるとしたら4500から7000くらいの相手を狙うか)

 

そう思いながら戦う相手を探す。

 

……よし。こいつにするか。

 

俺は『206 アステロイド 5923』と表示されている場所を押す。本数は……5本でいいか。

 

 

そう思いながら仮想フィールドに転送される。

 

 

 

 

 

転送された場所は……市街地A、つまりノーマルマップだ。

 

目の前には眼鏡をかけた割とイケメンな男がいた。

 

「ん?見ない顔だな」

 

眼鏡の男がそう言ってくる。歳はわからないからとりあえず敬語を使っておくか。

 

「そりゃあれっすよ。俺は今期入隊したんだからだと思いますよ」

 

実際俺を知ってる正隊員なんて同期の照屋、熊谷、巴、歌川、菊地原を除いたら俺とランク戦をした奴くらいだし。

 

「そうか。一応名乗っとくぞ、香取隊の若村だ」

 

香取って事はあの女攻撃手のチームメイトか?とりあえず自己紹介をしとくか。

 

「個人の比企谷っす。んじゃやりましょうか」

 

そう言ってスコーピオンを出すと向こうも突撃銃が出してくる。銃手タイプか。俺、基本的に攻撃手とやるから新鮮に感じるな。

 

そう思いながら俺は若村に向かって突っ込む。

 

対して向こうはガンガンアステロイドを放ってくるのでシールドを小さく展開して防ぐ。集中シールドならアステロイドを防げるだろう。

 

すると向こうはあらゆる方向にアステロイドを放ってくるのでシールドの面積を広げる。

 

面積を広げたので耐久力が下がったシールドにはヒビが入ったり穴が開いて俺の体を襲うが絶対に足は止めない。攻撃手が銃手相手に距離をとるのは愚行だ。多少ダメージを受けても攻めあるのみだ。

 

俺はスコーピオンをしまってメインのハウンドを大量に放つ。

 

対して向こうは銃を囲むように自分の頭と心臓部前方にシールドを展開してハウンドを防ぐ。

 

それと同時に俺はサブのシールドを消す。それによって若村からの銃撃に襲われる。

 

体に幾つも穴が開く中俺はテレポーターを起動して距離を詰める。

 

飛んだ先は若村の前方3メートルだ。

 

テレポートすると同時に地面スレスレまで顔を近づけながら更に距離を詰める。

 

「なっ?!」

 

若村が驚くがもう遅い。

 

俺はスコーピオンを出して一気に若村の両足を斬り落とす。

 

それによって地面に崩れる若村の後ろに回り再度スコーピオンを振るって首を斬り落とした。

 

それによってベイルアウトしたのを確認して息を吐く。先ずは一本だな。

 

そう思いながら俺自身も光に包まれた。

 

 

 

 

 

ブースに戻り息を吐く。相手は銃手だが嵐山さんみたいにスコーピオンを使うタイプじゃないようだ。それならテレポーターやグラスホッパーを使えば撹乱は出来るな。

 

そう思いながら次の試合の準備をしていると転送された。

 

 

 

 

 

 

転送されると再び正面に若村が正面に現れたので俺は若村が銃を向けると同時にメインとサブ両方のハウンドを分割せずにぶっ放す。向こうもいきなりフルアタックしてくるとは思わないだろう。

 

それと同時に俺と若村の左肩はお互いの弾丸トリガーによって破壊された。

 

(……ちっ。フルアタックはシールドを展開出来ないから攻撃を食らいやすいな。……だが俺は腕が落ちても問題ない)

 

何せ俺が入れている攻撃トリガーは全部腕がなくても使えるからだ。対して若村は銃手、しかも両手で撃つのが基本的な突撃銃タイプだから片腕になるとキツいだろう。

 

勝つのは俺だ。そう思いながら突っ込もうとした時だった。

 

若村が周りの背景に溶け込んで姿が見えなくなった。

 

(……これはカメレオン?!歌川と菊地原以外と戦うのは初めてだな)

 

レーダーを見ると横に回り込もうとしている。俺は油断せずに若村がいる方向に顔を向けてシールドを展開する。

 

ハウンドを使えば倒せるかもしれないが、カメレオン使い(歌川と菊地原)に無理に攻めて痛い目を見た俺は絶対に自分からは攻めない。

 

シールドを展開して隠れている場所から攻撃を待つ。

 

カメレオンは使うだけでトリオンを消費するから長時間は使えない。ましてや若村は腕が落ちてるからそこまで長くは使えないだろう。

 

こっからは我慢勝負だ。

 

俺からは攻撃しないで待つ。攻撃するのは若村が攻撃してきた時、もしくは一定距離に近づいた時だけだ。

 

俺はレーダーを常に意識しながらシールドを展開し続ける。さあ……さっさと攻めてこい。お前を倒す算段はついた。

 

 

 

 

暫くの間にらめっこをしていると

 

「ちっ……!!」

 

しびれを切らしたのか若村がカメレオンを解除して銃をこちらに向けて発砲してくるのでそれと同時に俺はハウンドを放つ。

 

お互いがシールドを展開して弾丸を防ぐ。

 

瞬間、俺は高くジャンプして若村を見据える。対する若村も銃を上空に向けて発砲してくる。

 

(……この1発が勝負だ)

 

「グラスホッパー」

 

 

そう呟いて俺の足元の近くにジャンプ台トリガー『グラスホッパー』を設置する。

 

それを踏むと同時に俺は弾丸の真下を潜り地面に向かって一直線に飛んでいく。

 

 

 

 

 

ここからが勝負だ。

 

以前歌川と戦った時も似たような戦法をとった。しかしあの時は地面に激突するという黒歴史を作る結果に終わってしまった。

 

あれから約2週間……俺はグラスホッパーを特訓した結果、あの戦法の成功率は8割を超えるようになった。

 

しかし確実ではない。ミスしたら地面にぶつかって隙が出来て負ける。

 

 

よって俺はグラスホッパー特攻にさらなる戦法を加えた。

 

 

 

俺は若村との距離が5メートルを切った所で新しいカードを切った。

 

 

 

 

 

 

(……テレポーター)

 

 

内心そう呟くと同時に俺は若村の真上に現れる。

 

若村はテレポーターを使ったのは理解したようだが左右を見渡しているだけで上は見ていない。

 

こいつが新しく作った戦法でグラスホッパーとテレポーターの合わせ技だ。

 

グラスホッパーを使った後、テレポーターを使うかどうか意識を散らせて相手の判断力を鈍らせる戦法だ。

 

 

 

 

はっきり言って俺はそこそこ剣の才能はあると思うが本当の天才、太刀川さんや風間さんには単純な斬り合いじゃ一生勝てないだろう。

 

でも天才達の戦闘体の耐久力は天才以外の人間と同じで個人差はないから、もし1発急所に当てる事が出来れば勝てる。

 

だからこそ俺はオプショントリガーを熟知して相手の隙を突く戦法に特化するつもりだ。オプショントリガーを駆使して相手の隙を作り、スコーピオンで一撃急所に当てる、そんなスタイルを目指している。

 

そんなスタイルは人によっては批判する奴はいるだろう。だが俺の知った事じゃない。持てるカードを使って何が悪いんだって話だ。

 

 

そんな事を考えながら俺は若村の真上から滑空して距離を詰める。

 

3メートルを切った所で向こうも気付いたがもう遅い。銃を真上に向ける前にこっちが首を刎ねる方が早い。

 

俺はスコーピオンを手から出して振るった。

 

 

そして俺の予想通り銃を向けられる前に首を刎ねる事に成功した。

 

それによって若村がベイルアウトしたのを確認して息を吐く。

 

 

 

 

調子が上がってきたな。この調子で行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして10分後……

 

『5本勝負終了 勝者比企谷八幡』

 

そんなアナウンスを聞いてブースに戻る。結果は4-1で俺の勝利。4試合で若村の胸を刺した瞬間に若村が俺の脇腹に銃口を当てて大量に銃弾を放って俺が先にベイルアウトした。

 

(……心臓を1発で刺せば勝ってたな。首だけじゃなくて心臓部を狙う練習もしとかないと)

 

 

息を吐いて次の対戦相手を探そうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『良い試合だったぜ。やるなお前。次は俺とバトろうぜ!』

 

 

いきなり通信が入ってきた。

 

モニターを見ると『332 弧月 8025』と表示されていた。マジかよ?マスタークラスから挑戦が来るとはな。

 

「わかった。ところであんた誰だ?」

 

モニターには名前が表示されないから誰だかわからん。

 

『あ、悪りーな自己紹介もしないで。三輪隊攻撃手の米屋陽介だ』

 

三輪隊……てことはこいつ、元A級1位の東隊のメンバーの1人、三輪秀次の部下って事か?

 

元A級1位のメンバーが選んだ部下だ。間違いなく強いだろう。

 

(……まあ俺がマスタークラスとのどれくらい差があるか知るのも悪くないな)

 

そう判断して口を開ける。

 

「個人の比企谷だ。それで勝負形式は5本勝負でいいか?」

 

『いいぜ。そんじゃお前の所の番号押すぞー?』

 

「構わない」

 

そう返すと同時にステージに転送させる。

 

それと同時にアナウンスが流れ正面に米屋が現れる。

 

『対戦ステージ 市街地B 個人ランク戦5本勝負開始』

 

アナウンスが流れ終わると同時にスコーピオンを右手から出す。それに対して米屋も武器を………ん?!

 

 

「……槍?」

 

そこには弧月ではなくて槍があった。何だあの武器は?

 

俺の視線を理解したのか米屋は笑いながら槍を軽く手の中で遊ばせる。

 

「気になるか?こいつは俺がエンジニアと一緒に弧月を改造したんだよ」

 

へぇ……そんな事も出来んだ。

 

まあそれは今は関係ない。問題はどう対処するかだ。初めて見るトリガーだから迂闊に攻めたくない。しかし……

 

(……俺のメインはスコーピオンだ。タダでさえ守りに弱いのに対戦相手は格上だ)

 

守りに入ったら反撃に転ずる事なく負けるだろう。となると攻めしかない。

 

(……槍は狭い所や密着されるのが苦手な筈だ。1発避けて距離を詰めるしかない)

 

 

方針が決まった俺は米屋を見据える。格上相手に様子見はダメだ。速攻で決める。

 

 

俺は全力疾走をして米屋に詰め寄る。

 

対する米屋は楽しそうな表情を浮かべ槍を構える。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の首目掛けて高速で突いてきた。

 

(……速い!!でもギリギリ避けられる…!)

 

俺は首を横に動かして紙一重で穂先を避ける。

 

槍は突いたら隙だらけの筈だ。今のうちに決め……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで俺の視界は揺れた。

 

 

(……え?)

 

 

不思議に思って周りを見ると首のない俺の体があった。……え?首がないって事は……

 

(……俺の首が刎ねられたのか?でも何で?)

 

 

確かに穂先は避けた筈だ。間違いなく当たっていない。

 

 

頭の中が疑問に埋め尽くされながら俺の体は光に包まれてベイルアウトした。

 

 

 

 


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