やはり俺が入隊するのはまちがっている。   作:ユンケ

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お久しぶりです。この作品は1年ぶりですね。

大学生活が忙しくて更新が遅れました。

アスタリスクの方は……すみませんがモチベーションが上がらない為まだ少し更新に時間がかかると思いますがご了承ください


比企谷八幡は中学最後のイベントとして遊園地に行った

冬の風が吹く中、俺は駅のロータリー近くで端末を弄っている。以前戦った米屋との試合を見直している。

 

……やっぱりマスタークラスはマスター以下と一線を画するな。しかも米屋の奴、今は使ってないけどスコーピオンもかなりの実力じゃねぇか。この前の試合、あいつが槍とスコーピオンを合わせて使ってきたら一勝もできなかったな。

 

とりあえず俺も少しトリガー構成を弄るか?最近じゃカメレオンを入れる事も考えている。攻めパターンを少し増やしたいし。

 

 

 

そう思っていると……

 

 

 

 

「お待たせしました八幡さん!!」

 

横から声をかけられたので振り向くと日浦が一生懸命走っていた。

 

「いや、集合時間前だから気にすんな。それより疲れただろ?呼吸を整えろ」

 

「は、はい!」

 

そう言うと日浦はスーハーと呼吸を整え始める。その間端末の電源を切ってポケットにしまう。

 

「落ち着いたな?」

 

「はい!それじゃあ行きましょう!」

 

そう言うと日浦は俺の手を引っ張ってくるので俺は若干慌てながらそれに続いた。

 

 

 

 

 

電車を乗って目的地の遊園地に向かう。

 

「遊園地は久しぶりですから楽しみです!」

 

「まあ俺もだな」

 

最後に行ったのは小学校時代だし。

 

「八幡さんは楽しんでくださいね。受験勉強頑張ったんですから!」

 

「サンキューな、お前も楽しめよ」

 

「はい!」

 

そう言うと日浦は笑顔を見せてくる。天真爛漫なこいつの笑顔を見てると癒されるな。

 

そう思いながら電車の揺れに身を任せた。

 

 

 

 

1時間後……

 

「着きましたね!!」

 

電車から降りるとすぐ近くに巨大な遊園地があった。ちなみにディスティニーランドじゃない遊園地だ。まああれも最近行ってないから行きたいな。

 

「ああ。ところで今日のプランって考えてんのか?」

 

ディスティニーなら細かいプランを立てるが……

 

「とりあえず初めにジェットコースターに乗ってもいいですか?」

 

ジェットコースターか。まあ学生なら一番始めに乗るパターンもあるからな。

 

「わかった。じゃあその後はジェットコースターの近くから回ろうぜ」

 

「いいですよ。ところで八幡さんは小町ちゃんからお土産は頼まれたんですか?」

 

「ん?ああ。……ほれ」

 

そう言って携帯を見せる。

 

そこには『お兄ちゃんへ。お土産はお母さんにはバタークッキーを、小町にはカステラと茜ちゃんとの楽しい思い出をお願いね!!……あ!今の小町的にポイント高くない?!』

 

と表情されているが……アホか?

 

「あ、あはは……」

 

日浦も苦笑いしてるし。マジで何のポイントなんだよ?

 

「と、とりあえず!私も協力しますので楽しい思い出を作りましょう!!」

 

そう言うと日浦は拳をギュッと握り頑張るの意を見せてくる。まあ小町から頼まれたし、久々の遊園地って事で楽しむのも悪くないな。

 

「わかったよ。じゃあ今日はよろしくな。そろそろ入ろうぜ」

 

「はい!!」

 

日浦から返事を受け取ったので俺達は入場券を購入して中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊園地の中に入ると沢山の人が色々な場所に走っている。そんな中、俺達はジェットコースターの並ぶ場所に向かって走り出す。

 

最後尾に到着すると待ち時間は30分と遊園地にしては微妙な待ち時間だった。お菓子を買って時間を潰すのは早過ぎるし。

 

「そう言えば受験勉強も終わってボーダーも落ち着きましたか?」

 

「ん?ああ、まあな」

 

「それは良かったです。それと4月から私も入隊しますのでよろしくお願いします!!」

 

「おう……っと、次かよ」

 

前をを見ると次の番だったので係員の人が指し示した場所に立つ。

 

 

すると直ぐにコースターが来たが……

 

「最前列かよ……」

 

「いいじゃないですか。インパクトがあると思いますよ」

 

まあそれは否定しないが……

 

 

息を吐いてコースターに乗り安全バーを付けると同時に動き始める。隣にいる日浦はかなり楽しそうだ。

 

「お前はジェットコースター好きなのか?」

 

「はい。遊園地の中では一番好きです。帰る直前にもう1回乗りましょうね」

 

まあジェットコースターと観覧車は最後に乗るのが定番だからな。

 

俺が頷くとコースターはゆっくりと登り始める。後30秒くらいで高速で降りるのだろう。

 

 

息を吐いて景色を見ると遥か遠くにボーダー本部が見えた。ボーダー本部は今の千葉でディスティニーランドと同じくらい有名だ。そんな場所で働くなんて人生は何が起こるか本当にわからないな。

 

 

するとコースターは頂上に着いて下を向く。それと同時に右腕を掴まれて、バーから手を離される。横を見ると日浦が楽しそうな表情で俺を見ている。おそらくバンザイしろと言う事だろう。

 

俺は苦笑しながら日浦と手を繋いだまま左手も上げる。

 

それと同時にコースターは勢いよく下り始める。

 

 

 

 

「きゃあぁぁぁ!!」

 

日浦は両手を挙げて歓声を上げている。その顔は本当に楽しそうだ。

 

 

(……てか予想以上に速いし怖いな。バーに掴まりたい)

 

俺が手をバーに掴まろうとするが日浦はそれを許さない。

 

「ちょっ、日浦…マジで勘弁…!」

 

そう叫ぶも日浦は思い切り笑いながら首を振る。このドSめ……

 

(……もういいや。どうにでもなれ…)

 

投げやりになった俺はバーに掴まる事を諦めてそのまま流れに身を任せてジェットコースターを楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

ジェットコースターが止まり降りる。初っ端から疲れたので呼吸を整えていると日浦が近寄ってくる。

 

「楽しかったですね!」

 

笑顔でそう言ってくる。普段ならこの笑顔に癒されるが今はイラってきた。

 

「お前、バーに掴まるのを邪魔したのにいい笑顔してんじゃねーよ」

 

そう言って俺は日浦の頬っぺたを引っ張る。

 

「ふぇ?!はひはんしゃんほへんなはい!!」

 

驚きの表情でそう言ってくる。おそらく「八幡さんごめんなさい!!」と言っているのだろう。

 

……まあ悪気があった訳じゃないしこの辺にしておくか。

 

「わかったよ。もう離す」

 

そう言って頬っぺたから手を離す。

 

「ごめんなさい……」

 

今度はシュンとした表情を見せてくる。表情豊かだな…

 

「もう怒ってないから気にするな。それより次は何処行く?ジェットコースターから近いのはコーヒーカップとお化け屋敷だが「あれ?比企谷に茜?」……ん?」

 

いきなり声をかけられたので振り向く。するとそこには私服姿の熊谷と照屋がいた。

 

「あ、やっぱり比企谷に茜じゃん。奇遇だね」

 

「そうだな。お前らは2人か?」

 

「はい」

 

俺の問いに照屋が軽く頭を下げてから答える。相変わらず礼儀正しい奴だ。こん中で1番精神年齢が大人なのは間違いなく照屋だろう。

 

「そっちはデート?」

 

すると熊谷がニヤニヤした笑みを浮かべて聞いてくるがそんな訳ないだろ……

 

「で、でででデート?!ち、違いますっ!」

 

呆れる中隣にいる日浦が真っ赤になりながらそう返す。おいおい、否定するのは構わないが、そんな風にテンパりながら言うと逆に怪しまれるぞ?

 

「別にデートじゃねぇよ。日浦がくじ引きで当たってから一緒に行っただけだ」

 

「だよね。言っちゃなんだけど比企谷がデートするのは想像し難いし」

 

否定はしない。俺みたいに目の腐った男が天真爛漫を地でいく日浦と一緒に歩いてたりしたらデートではなく誘拐に思われるだろうし。

 

「ほっとけ。そういやお前らは何処のアトラクションに行くつもりなんだ?」

 

「私はジェットコースターかお化け屋敷。そっちは?」

 

「コーヒーカップかお化け屋敷だな」

 

「あ、そうなの?じゃあ被ってるお化け屋敷に一緒に行かない?」

 

熊谷がそう言った瞬間、照屋が若干顔を青くして震え始める。その仕草から察するにお化け屋敷が苦手なのだろう。しかし遊園地にいるという手前断れないって所か?

 

「良いですね!八幡さん、行きましょう!」

 

一方の日浦は楽しそうな表情を浮かべながら俺に話しかけてくる。実に断り難い顔をしやがって……

 

すると俺はいつの間にか日浦に手を掴まれてお化け屋敷の方に引っ張られた。見ると熊谷も楽しそうに日浦と並んで、照屋は震えながら俺の後ろを歩き出していた。お前ら対称的だな……

 

 

「それじゃあ行きましょう!ペアはどうします?」

 

そんな事を考えているといつの間にかお化け屋敷の前に到着していた。ここのお化け屋敷はテレビでも特集された事があるが、日本でも10本の指に入るくらい怖いと有名なお化け屋敷だ。

 

そんなお化け屋敷だから俺自身も割と興味あるが……

 

「普通にグッパーで良いでしょ」

 

言いながら熊谷は手を出すので他の3人もつられて手を出す。どうでもいいがマジで照屋は震えてるが大丈夫か?

 

しかし手を出してるので参加する意思はあるのだろう。ならば俺は何も言わん。

 

そう思いながら手に力を込めて……

 

「グッパー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ私と茜が先に行くね」

 

「おー、行ってこい」

 

「はい!行ってきまーす!」

 

熊谷と日浦がそう言ってお化け屋敷に入った。

 

グッパーの結果、熊谷・日浦ペア、俺・照屋ペアとなった。俺の場合照屋と組む事に不満はない。女子は苦手だが、照屋の性格は入隊した頃から知っていて信頼出来る。それについては日浦や熊谷についても同じだ。てか誰と組んでも女子だし。

 

しかし……

 

「なあ照屋。怖いなら無理しないで入らなくても良いぞ?」

 

横に並んでいる照屋は顔を青くしながら震えている。ここまで怖がっていると一緒にお化け屋敷に入る俺が悪いように感じてしまう。

 

「い、いえ!折角来たんですから入ります!」

 

明らかに痩せ我慢だが、入らない選択を取らないようだ。目は怯えてないし。

 

それを見た俺は照屋に入らないかどうか尋ねるのを止めた。照屋と知り合ってから2ヶ月弱、照屋は意外と頑固であり、こうなったら譲らないのを俺は知っている。

 

「……へいへい。じゃあ行くぞ」

 

お化け屋敷に入ろうとした時だった。

 

「は、はい!」

 

言うなり照屋が俺の服の右袖を摘んでくる。やっぱり怖いんじゃねぇかよ。

 

「なぁ、やっぱり「大丈夫です!」そ、そうか……」

 

話してる途中に遮るという事は怖いけど入る気はあるようだ。これ以上は野暮だな。

 

今度こそ説得するのを諦めた俺は右手に若干の重みを感じながら中に入る。するとそこは江戸時代の街並みで所々に青白い火の玉がウヨウヨと浮いている。

 

それらは薄暗い環境にあり、時偶涼しい風が吹くからか、中々と雰囲気があって俺もちょっとビビっている。俺でもちょっとビビってるのだ。照屋は言うまでもないだろう。

 

「………っ!」

 

はい。メチャクチャビビってます。入った瞬間、涙目になってガタガタ震えてます。

 

しかし入った手前引き返すのは厳禁だ。てか後ろの扉は閉まってるし。

 

「おい……とりあえず歩くぞ。怖いのは嫌かもしれないがいつまでもここにいるのはもっと嫌だろ?」

 

「……っ、は、はいっ……!頑張りますっ……!」

 

健気だ。小町や日浦とは違う意味で守りたい顔だ。

 

「じゃあさっさと行くぞ」

 

そう言って一歩踏み出した時だった。

 

 

 

 

 

『あぁぁぁっ!』

 

「きゃぁぁぁぁぁっ!」

 

「うぉぉぉぉい?!」

 

声が3つ生まれた。

 

最初に出たのは近くの和風の家の扉から飛び出してきた全身血塗れでボロボロの死体を模した人形の口から漏れた低い声。

 

次に生まれたのはそれを見て驚いた照屋の叫び声。

 

そして最後に生まれたのは驚いた照屋に抱きつかれて驚いた俺の声だった。

 

(……って、それどころじゃねぇ!い、いきなり抱きつくなよ?!)

 

見ると照屋は正面から俺に抱きつき俺の背中に手を回していた。女子に抱きつかれるなんて小町以外には初めてだが……破壊力がヤバい……

 

女子特有の良い匂いや照屋の柔らかな身体が俺を変な気分にしてくる。

 

「て、照屋……落ち着け。可能なら離れてくれないか?」

 

「す、すみません……ですが、もう少しだけっ……」

 

流石に無理矢理引き離すのは良心が痛むので離すように頼んでみるも……照屋は涙目+上目遣いで俺を見ながらそう言ってくる。

 

「……少しだけだぞ」

 

ダメだ、断れなかった。あの目を見ている断れる奴はいない。俺が断ったら胃痛が生まれるだろう。

 

「はいっ……」

 

言うなり顔を俺の胸に埋めて、ギュッと俺の背中に回す手の力を強めてきた。

 

(にしてもお化け屋敷に入ってから30秒もしないで抱きつかれるとか完全に予想外だな……って、考えるな。でないと変な気分になっちまう)

 

俺は暫くの間無心となりながら照屋の抱擁を受け続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ご迷惑をおかけして済みませんでした」

 

それから2分、漸く俺から離れた照屋は涙目のまま頭を下げてきた。その事については怒ってない。しかし照屋に抱きつかれたり、他の客に抱きつかれているのを見られたから羞恥心によって顔が熱くて仕方ない。

 

「き、気にするな。それより早く行くぞ」

 

予想より時間を食ったし早めに行った方が良いだろう。外には先行した日浦と熊谷が待ってるだろうし。

 

「あ……先輩。それなんですけど……手を繋いで貰って良いですか?」

 

言うなり俺の手を握ってくる。お前俺の返事を聞く前に繋いでんじゃねぇか。

 

とはいえ、アレだけお化け屋敷が苦手なのだ。ここで拒否するのは無理だ。拒否したらまた抱きついてくるかもしれん。嫌って訳ではないが緊張で死ぬし、それだったら手の方がマシだ。

 

「……好きにしろ。後怖いなら目を瞑っとけ」

 

お化け屋敷の意味は大分無くなるが。

 

言いながら照屋の手を振り解かずに歩き出す。手に感じる柔らかで温かな温もりを感じないように努力しながら。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

言いながら照屋も続く。チラッと横を見ると目を瞑っていた。これなら大丈夫だと思うが……

 

バタンッ!

 

『ゔぁぁあっ!』

 

「……っ!」

 

音を無視するのは無理なようでお化けが出てくる度に生まれる音が出るとビクンと震えて俺の手を握ってくる。どんだけお化け屋敷が嫌いなんだよ……そんなに嫌なら一緒に外で待っても良かったのに。

 

「……大丈夫か?」

 

「は、はいっ大丈夫ですっ……」

 

いや絶対に嘘だろ。俺は別に揶揄わないし気にしなくて良いものを……

 

 

若干呆れながらも俺達は道を進む。その間照屋は一度も目を開けなかったものの、お化けの声やお化けが出てくるときに付随してくる音が出る度に小さく喘ぎ震えだす。その度に俺の胸に罪悪感が湧くのは気の所為ではないだろう。

 

そう思いながら進むこと3分、人面巨大蜘蛛を俺達に近寄るのを無視して曲がり角を曲がると薄っすらと光を目にした。それはセットの薄暗い光ではなく……

 

「照屋、多分アレが出口だ」

 

おそらく太陽の光だろう。お化け屋敷のセットの光にしては明る過ぎるし。

 

すると……

 

「本当ですか?!」

 

照屋は閉じていた目を開けて一歩を踏み出した。そして……

 

 

 

 

 

『ぶぁぁぁぁっ!』

 

次の瞬間、正面の天井から顔面の半分から骨が剥き出しになっている血塗れお化けが降ってきた。

 

瞬間、照屋は一瞬で笑みを消し……

 

 

 

 

「きゃぁぁぁぁぁっ!」

 

ドゴムッ!

 

泣きながら拳を構え、可愛い叫び声と共に可愛くない拳をお化けに叩き込んだ。鈍い音が響くと同時に天井から吊るされたお化けはプラプラと揺れる。血塗れ且つ骨が剥き出しになっているお化けがプラプラ揺れるのは不気味極まりない。

 

それは照屋も同様みたいで、

 

「いやぁぁぁぁぁっ!」

 

ドゴッ、バキッ、ガッ!

 

更にお化けに拳を叩き込む。それは正に暴風のような攻撃で隣にいる俺は圧倒されていた。

 

しかしそれも一瞬だ。暫くすると辺りに警報音が鳴り出す。間違いなく壊れる寸前だろう。これはガチでマズい!

 

「これ以上は止めろ!」

 

そう判断した俺は後でセクハラと怒られるのを覚悟で照屋を羽交い締めにして動きを封じようとするも……

 

 

「来ないでぇぇぇぇっ!」

 

ドガァァァァンッ!

 

完全に動きを封じる前に放たれた照屋の拳はお化けの顔面に叩き込まれお化けの顔面は木っ端微塵となり、天井からドサリと地面に落ちた。

 

同時に警報音が更に強くなり、薄暗かったお化け屋敷に照明が灯されて係員がやってきた。やはりお化け屋敷に入らないのが正しかったのだろう。

 

現実逃避気味にそう考えながら、俺は漸く正気を取り戻し現状に気付き真っ青になっている照屋から離れた。こりゃ説教は確定だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3時間後……

 

 

「では、今回はこれで終わりにしますが次からはこういう事がないようにしてくださいね」

 

「「「申し訳ありませんでした」」」

 

係員のお姉さんに対して3人の頭が下がる。頭の正体は俺と照屋、照屋の母親だ。

 

照屋がお化けを返り討ちにした後、俺と照屋は係員に捕まり事務所に連行された。係員に連れられてお化け屋敷を出た俺達を見た熊谷と日浦の驚いた顔は一生忘れないだろう。ちなみに2人には事務所に連行される直前に2人で遊んでろと言ったので今頃微妙な空気の中、ジェットコースターにでも乗ってるだろう。

 

事務所に連行された俺と照屋は言うまでもなく説教を食らった。そんで弁償云々の話になって親を呼び出すように言われ、照屋が母親を呼んでたった今弁償し終えた所だ。

 

(てか照屋の家がデカいから金持ちなのは知っていたが、数十万をポンと払うって財の力は凄いな……)

 

そう思いながら頭を上げるとお姉さんはため息を吐きながら頷く。

 

「ではもう行って良いですよ」

 

「「「失礼しました」」」

 

言いながら事務所を出ると辺りは夕焼けに包まれていた。まあ3時間近く窓のない事務所に居たからな。

 

そう思いながら熊谷達に連絡を入れようとした時だった。

 

「比企谷先輩!私の勝手な行動によって迷惑をかけてしまいすみませんでした!」

 

照屋が頭を下げてくる。角度は45度。実に綺麗な礼だった。

 

「文香がごめんなさいね」

 

照屋のお袋さんも軽く頭を下げてくるが、止めて欲しい。大人に頭を下げられてるからか視線が痛いし。

 

「どうか頭を上げてください。自分は別に怒ってないから気にしないでください」

 

実際俺は殆ど怒ってない。俺は弁償してないし、事務所で説教を食らったのはとばっちりかもしれないが大人に頭を下げられてまで怒るほどでもない。

 

そう返すとお袋さんは頭を上げるも照屋だけは未だに上げない。

 

「でも……他にも先輩に抱きついて先輩の服を涙で濡らしたりと迷惑をかけたので……」

 

「いや、アレはだな……っ!」

 

「あらあら。青春ね」

 

一方照屋のお袋さんは楽しそうに俺と照屋を見ているが笑い事じゃないですからね?

 

とりあえず照屋を落ち着かせよう。でないと話は出来ないし。

 

「それも含めて怒ってないから気にすんな。お願いだから頭を上げてくれ」

そこまで言うと照屋は漸く頭を上げる。しかし表情には申し訳なさが若干残っている。

 

「はい……申し訳ありませんでした」

 

「だから謝んなって。それよりこれからどうすんだ?お前の場合親が来てるし帰んのか?」

 

とりあえず少しでも話を逸らそう。でないとこいつ、いつまで経っても謝り続けそうだし。

 

「あ、えと……」

 

すると照屋は俺の思惑通り、顔から罪悪の色を消して俺と自分の親を交互に見る。

 

するとお袋さんの方がニコニコしながら俺に近寄ってくる。

 

「私達は帰るけど、まだ時間もあるし比企谷さんさえ宜しければ文香と遊んであげてくれるかしら?」

 

そんな事を言ってくる。すると照屋は若干驚きの色を浮かばせる。まあ予想の範疇だ。さて、どう返事をしようか?

 

返事に悩んでいると……

 

「お願いしても良いかしら?」

 

「あ、はい」

 

笑顔のままプレッシャーを掛けられて思わず了承してしまった。

 

「ありがとうね。じゃあ私は帰るわ。文香も9時過ぎになるなら出る時に電話しなさいよ」

 

「あ、うん。今日は迷惑かけてごめんね」

 

照屋はお袋さんにも謝る。まあ休日にわざわざ遊園地にアトラクションの弁償をさせる為に呼んだなら普通謝るよな。

 

「別に良いわよ。私としても例の比企谷君の顔も見れたし」

 

「は?」

 

予想外の言葉に思わず「は?」なんて言ってしまったが例の比企谷君って何だよ?

 

するとお袋さんはニコニコしながら俺を見てくる。

 

「文香からは殆ど毎日比企谷君の話を聞いてるわよ。ランク戦?とかいう試合で負け越して悔しいとか訓練の記録が勝って嬉しいとか色々。ボーダーに入ってからの文香は毎日楽しそうだけど比企谷君のおかげかしら?」

 

「お、お母さん!」

 

文香は焦るようにお袋さんに詰め寄る。どうやら変な事は言ってないようだが、何かモヤモヤするな。

 

「あらあらごめんなさいね。それじゃあ私は帰るけど……比企谷君」

 

「何ですか?」

 

俺が尋ねるとお袋さんは俺の耳に顔を寄せて

 

「貴方の事は文香から友人に近い関係って聞いてるけど……それ以上の関係になりたいなら頑張りなさいよ?」

 

とんでもない発言をしてくる。

 

 

「いやいや、それは多分ないですからね?」

 

普通にないだろう。見た目も性格も照屋に比べたらショボいし。普通に考えて照屋にはもっと素晴らしい男がいるだろうし。

 

「あら?意外とわからないわよ。それじゃあ私はこれで。今度ウチに遊びに来て頂戴、歓迎するわよ」

 

言いながらお袋さんは笑いながら手を振って去って行った。ただ話しただけなのに予想以上に疲れたな……

 

「あの……比企谷先輩、さっきお母さんに何を言われたんですか?」

 

お袋さんが見えなくなると同時に照屋が聞いてくるが……

 

「まあ色々だ。それより日浦達に連絡を入れよう」

 

「むぅ……」

 

言いながら携帯を取り出して日浦の携帯に電話をかけ始める。その際に照屋は頬を膨らませながら俺を見てきて不覚にもちょっと可愛いと思ってしまった。

 

「あ、比企谷に文香じゃん。お説教は終わったの?」

 

しかし電話をかける前に熊谷と日浦がこちらにやって来た。偶然というのは恐ろしい。

 

「まあな。だから今電話をしようとしてた」

 

「そうでしたか。それで結局どうなったんですか?」

 

「照屋のお袋さんが賠償金を払った。ちなみに帰った」

 

「あ、そうなんだ。それにしてもそんなにお化け屋敷が怖いなら言ってくれたら良かったのに」

 

熊谷の言う通りだ。さっきの事については実害が無かったから怒ってないが、そんなに苦手なら無理する必要はないだろう。

 

「そうですね……次からは気をつけます。ご心配をおかけしました」

 

ぺこりと頭を下げる。まあいきなり知り合いが係員に連行されたら心配するよな。

 

「気にしてないから良いよ。それより私達今からアレに乗りに行くんだけど2人は大丈夫?」

 

熊谷の指差した方向を見ると最初に乗ったジェットコースターが目に入る。え?もう一度あれに乗るの?さっき乗ったら予想以上に怖かったし遠慮したいんだけど。

 

「あー、悪いが俺はジェットコースター苦手だし「大丈夫ですよ!アレさっき八幡さんと乗りましたから」……」

 

「じゃあ比企谷は大丈夫だね。文香は大丈夫?」

 

「大丈夫です」

 

「決まりだね。じゃあ行こっか」

 

熊谷はそう言って歩き出すが日浦ェ……余計な事を言うなよ……純粋無垢な笑顔の癖にドSだな。

 

そう思いながら行列を並ぶこと1時間、いよいよ俺達の番になったが……

 

 

「また最前列かよ……」

 

空が真っ暗の中、俺は気分も真っ暗になりながらジェットコースターに乗る。タダでさえ最前列は怖いのに真っ暗だと更に怖くて嫌だ。

 

「いいじゃん。もう乗ったんだしグチグチ言わない」

 

隣に座る熊谷はガチで楽しそうだ。後ろからは後ろに乗っている照屋と日浦の楽しそうな声が聞こえてくる。どうやら憂鬱な気分なのは俺だけのようだ。

 

ため息を吐くと安全バーが準備されて間髪入れずにに動き始める。そして直ぐにコースターは線路をゆっくり登る。熊谷は既に手を離していて楽しむ気満々のようだ。

 

「アンタは手を離さないの?」

 

「さっきやったら怖かったらパスで。言っとくが俺の手をバーから離すなよ」

 

「はいはい。わかったよ」

 

さっき日浦にやられたらメチャクチャ怖かったし。

 

そして遂に……

 

『きゃぁぁぁぁぁっ!』

 

約20名を乗せたコースターは悲鳴を空から地面に降らせながら一直線に降り始めた。

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、今日は楽しかったです!」

 

帰りの電車の中で日浦は楽しそうにはしゃぐ。ジェットコースターに乗った後も幾つかのアトラクションに乗った俺達はお土産を買って帰路についている。

 

「それは私も……って、比企谷は疲れ過ぎでしょ」

 

「ほっとけ。俺は基本的に外出しないから慣れてないんだよ」

 

てかこいつらのテンションがおかしいだけな気がする。

 

「お疲れ様です。お茶どうぞ」

 

言うなり照屋がお茶のペットボトルをくれる。それにしてもこんな礼儀正しい奴がお化け屋敷で暴れたのは未だに信じられないな……

 

「サンキュー。それにしても遊園地は久しぶりに行ったな」

 

「私も久しぶりです!最後に行ったのは1年位前ですね」

 

「私もそのくらいかしら?熊谷先輩は?」

 

「私は受験が終わって直ぐにお疲れ会としてディスティニーに行ったから久しぶりでもないわね」

 

「なるほどな。まあ中学最後のイベントとしちゃ悪くなかったな」

 

一部トラブルはあったが、まあまあ楽しめたし悪くないだろう。

 

「そうね。中学最後と言ったらもう直ぐ卒業ね。4月からは高校入学だし」

 

ああ、そうだな。漸く最低の中学生活も終わる。俺は総武に行くが、ウチの中学の奴らは殆ど海浜総合に行くからな。平和な高校生活を送れると信じたい。

 

「私は来月に入隊しますね!今から楽しみです!」

 

「そういえばアンタは来月に入隊するわね。B級に上がったら一緒にチームを組まない?」

 

早速チームの勧誘か。ランク戦は2月から4月、6月から8月、10月から12月に3シーズン行われるが、熊谷は6月から始まるランク戦に備えているのだろう。

 

「良いですね!あ、その場合八幡さんも一緒にどうですか?」

 

すると日浦はそんな事を言ってくる。

 

「あれ?アンタもチームを組む事を考えるの?」

 

熊谷は俺にそう聞いてくる。

 

B級に上がった頃の俺はチームに興味無かったが、今の俺はチーム入りを考えている。本来ならコミュ障の俺はチームを組むなんてしないだろうが、そうしなきゃいけない理由がある。

 

今は3月4日で俺は一昨日ボーダー本部から2月分の給料を貰った。金額については中学生が使うにしては破格と言って良い値段だったが、家計を助けられるかと聞かれたら微妙だ。助けにはなるとは思うが、お袋は過労で倒れて以降勤務時間を減らしている以上そこまで余裕はない。

 

そうなると俺が取れる方針は2つ。防衛任務の時間を増やすか、固定給のあるA級隊員になる事だが、前者は厳しい。防衛任務の時間を増やし過ぎて学業に支障が出たら本末転倒だ。高校に行かないでボーダーに就職する事も考えたが、流石にそれはお袋に却下された。

 

となると残りは必然的にA級隊員になる事だ。A級隊員になる方法は2つ。チームを作るもしくは何処かのチームに入ってB級ランク戦に参加してB級1位か2位に上がり昇格試験を受けるか、A級チームに勧誘される場合だ。俺自身今まで何度が色々な部隊から勧誘を受けたがその中にA級部隊からの勧誘は無かったので、B級ランク戦を勝ち上がる以外の道はない。

 

以上から……

 

「ああ。俺も何処かのチームに入る事は考えてるな」

 

そう返す。元々お袋に楽をさせる為に入ったボーダーだ。他人と組むのが勘弁して欲しい気持ちはあるが、私情を挟むつもりはない。

 

「そうなんだ。じゃあ茜の誘いについては?私としてはアンタと一緒でも良いけど」

 

熊谷の誘いについては悪くない提案だが……

 

「どんなチームになるかは知らんが今は保留にしてくれ」

 

やるからには本気でA級を目指さないといけないので簡単に頷けないからな。

 

「別に良いわよ。ランク戦までまだ時間はあるし」

 

そこまで言った時だった。電車は降りる駅に到着したので俺達は立ち上がり電車から降りる。そして改札を出て出口に到着した。ここからは皆バラバラだ。

 

「じゃあ今日はここで解散。次はボーダー本部で会いましょう」

 

「へいへい。んじゃぁな」

 

「お疲れ様でした。比企谷先輩は今日ご迷惑をおかけしました」

 

「ありがとうございました!」

 

各々言葉を交わしてそれぞれの帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

夜10時過ぎ、ドアを開けると同時に風呂場の方からパジャマ姿の小町がやって来た。

 

「あ、おかえりお兄ちゃん。お土産は買ってきた?」

 

「バタークッキーとカステラだろ?ほれ」

 

「おー、ありがとー。それと茜ちゃんとの思い出は?」

 

そういやメールにはそんな要求もあったな。途中から熊谷と照屋もいたけど。まあ……

 

「悪くはなかったな」

 

途中にデカいハプニングもあったが楽しくなかったと言えば嘘だろう。

 

「なら良かったよ。中学最後に楽しい思い出が出来て良かったね」

 

「まあ中学生活は碌なもんじゃなかったからな」

 

寧ろ最悪だったし。

 

「まあ総武は進学校なんだし平和な学園生活を送れるんじゃない?」

 

「そうなる事を祈る。今日は疲れたから風呂入ってちゃっちゃと寝るか」

 

「ほーい。ゆっくり休みなよ」

 

「へいへい」

 

言いながら靴を脱ぎ、自室へ向かう。明日も防衛任務はあるし早めに休まないといけない。

 

(にしても、俺が働くのを頑張るって……環境の変化って凄いな)

 

ため息を吐きながら自室のクローゼットから着替えを取り出して疲れを癒すべく風呂へと向かった。

 

明日への頑張りを胸に秘めて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1ヶ月後……

 

俺は総武高に入学した。

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