やはり俺が入隊するのはまちがっている。   作:ユンケ

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比企谷八幡は可愛い義妹とプールに行き沢山ハプニングを体験する(前編)

8月12日、夏休みも半分以上が過ぎ太陽は夏らしく外出する人間を苦しませている。

 

俺も他の人と同じように苛々しながら太陽の光を浴びているが……

 

 

 

 

 

「お待たせ!お兄ちゃん!」

 

後ろから聞こえてくる義妹の可愛い声を聞いた瞬間、一瞬で苛立ちは消えて幸せな気分になる。

 

後ろを見ると可愛い義妹の歌歩が満面の笑みを浮かべながら俺に近付き……

 

「おはようお兄ちゃん。今日はよろしくね……」

 

ちゅっ……ちゅっ……

 

いつものように両頬にキスをしてくる。既に慣れたからどうこう言うつもりはないが、文香にしろ姉さんにしろキスをし過ぎじゃね?

 

「おはよう。集合して早々悪いが、バスも来てるし走るぞ」

 

言いながら俺は今回の目的地の四塚マリンワールドに向かうバスを指差す。アレを逃したら次は20分後だ。このクソ暑い中、20分も待つのは絶対に嫌だ。

 

「そうだね。行こう!」

 

それは歌歩も同じみたいだ。俺の手をギュッと握ってバスに向かって走るので、俺もそれに続き2人でバスに乗る。

 

俺達が空いている席に座ると同時にバスが発車される。到着まで1時間弱、クーラーの効いたバスでゆっくりと休むとするか。

 

そんな事を考えていると右隣に座っている歌歩が話しかけてくる。

 

「お兄ちゃん。今日は私の誘いを受けてくれてありがとう。凄く嬉しかったよ」

 

言うなり歌歩は俺の手を握って指を絡めてくる。毎度思うが恋人繋ぎって流行ってるのか?

 

「気にすんな。兄は義妹の頼みは断らないんだよ」

 

てか歌歩の誘いのメールでは、嫌だったら無理しなくて良いって書いてあったがアレは狡いと思う。用事のない奴があのメールを見たら絶対に断れないと思う。

 

「ありがとうお兄ちゃん……大好きだよ……」

 

ちゅっ……

 

言いながら歌歩は右頬にキスを落としてくる。俺は同時に顔が熱くなる。歌歩や遥姉さんはお礼を言う時にしょっちゅう大好きと言ってくるが、アレは顔が熱くなるからやめて欲しい。

 

歌歩は義理の兄妹的な意味で、姉さんは義理の姉弟的で大好きと言っているんだと思うが、俺からしたらガチの告白と勘違いしてしまいそうだからな。

 

(まあ歌歩にしろ姉さんにしろ文香にしろ俺が止めろと言ったら毎回毎回凄く悲しそうな表情をするから止めるに止めれないんだよなぁ……)

 

いや、まあ俺もキスをされるのが大好きだから、2人の激しいスキンシップを止めてないのも原因の一つなんだろうな……

 

そんな事を考えている間にも、歌歩は俺の頬にキスを落としてくる。それを見た俺はどうでも良くなった。

 

もう良いや、好きにしろ

 

俺がアイコンタクトを歌歩に送ると、アイコンタクトの内容を理解した歌歩は喜色を露わにしながら更に頬にキスを落としてくる。

 

結局俺は四塚マリンワールドに到着するまでの1時間弱、無抵抗で歌歩のキスを受け続けたのだった。

 

 

 

 

 

そして……

 

「あー、緊張してきた」

 

四塚マリンワールドに着いた俺達は着替える為に一度別れた。そして着替えるのが早かった俺は女子更衣室の出口の近くで歌歩を待っているが、緊張して顔が熱くなってきた。

 

ボーダーに入隊してからはコミュ力もそこそこ上がり女子と2人で出掛ける事も増えたが、プールに行くのは初めてだ。女子の水着、それも可愛い可愛い義妹の水着姿だ。緊張してもおかしくないだろう。

 

え?姉さんと一緒に風呂に入ったから平気だって?馬鹿野郎、確かにアレはヤバかったが、だからと言って歌歩の水着を見て平気な保障は何処にもないだろうが。

 

そんな事を考えながらぼんやりと砂浜が付属してある波のプールを見ていると……

 

「お、お待たせ……」

 

歌歩の消え入るように小さい声が聞こえてきたので振り向くと……

 

「お、おう……」

 

予想通り歌歩の水着姿に見惚れてしまう。俺の視線を受けた歌歩は恥ずかしそうに、それでありながら不安そうに身を捩る。

 

「ど、どうかな?やっぱり似合ってない?」

 

歌歩が着ている水着はシンプルなビキニだった。全体的に青く、水着の淵や紐の部分は白で、マイクロビキニまでとは言わないが割と布の面積は小さいビキニで、歌歩の肌が輝いていた。

 

そんな歌歩の水着姿を見た俺は首を横に振る。

 

「いや……普通に似合ってるぞ」

 

「そっか……」

 

「ただ気になるのが何で派手な水着を着たんだ?俺の予想じゃそこまで派手ではない水着を着てくると思ったぞ」

 

俺は歌歩が着てくるのは露出が少なく落ち着いた雰囲気を持つワンピースタイプの水着だと思っていたので、割と露出が高いビキニを着てきたのには見惚れながらも結構驚いた。

 

すると歌歩は急に真っ赤になって……

 

「だ、だって……お兄ちゃんがエッチだから……」

 

「はい?!」

 

予想外の返事をしてきて俺は素っ頓狂な声を出してくる。俺がエロいから派手な水着を着ただと?てか……

 

「待て歌歩。俺は別にエロくはないか「私のスカートの中に顔を埋めたり、文香ちゃんの胸を揉んだり、裸の遥ちゃんに抱きつかれたのに?」………ぐっ」

 

そこを言われたら返す言葉はない。幾ら故意にやった訳ではないとはいえ普通に考えたらエロいと思われても仕方ないかもしれないな……

 

「そ、それでね……お兄ちゃんはエッチだからエッチな水着を着て、その……お兄ちゃんを喜ばせようと思ったんだけど……やっぱり胸の小さい私じゃ喜ばない、よね?」

 

歌歩は途端に悲しそうな表情で乾いた笑いを浮かべるが、俺は首を横に振る。

 

「そんな事ないぞ。俺はお前の水着を見て可愛いと思ったし、胸に対して拘りはない」

 

俺は胸の大きさに拘りはない。拘るのは胸の形と胸を持つ本人とのバランスだ。その点で言えば歌歩はかなり良いと思っている。まあそこまで口にするつもりはないけど。

 

「本当?私の事、可愛いと思う?」

 

歌歩は不安そうにしながら上目遣いで見てくる。破壊力がヤバ過ぎるな……

 

「ああ。俺は良いと思うぞ」

 

「そっか……お兄ちゃんにそう言って貰えると嬉しいな……ありがとう」

 

すると歌歩は不安な表情を消して可愛らしい笑みを見せてくる。俺はさっきまでの不安そうな表情とのギャップ差にドキドキしてしまい、思わず歌歩から目を逸らす。

 

「き、気にするな。それよりどのプールに行くんだ?折角プールに来たんだし泳がないと損だろ?」

 

本題に戻すべくそう口にする。

 

「あ、そうだね。じゃあ波のプールに行こうか」

 

「あっ、お、おい!」

 

言うなり歌歩は俺の手を引っ張って走り出す。対する俺は引っ張られる形で波のプールに向かうも……

 

(や、ヤバい……刺激が強過ぎる……!)

 

視界には歌歩の色白とした背中と、小振りで可愛らしい尻が目に入って顔が熱くなってくる。一応姉さんの裸は見た事があるが、あの時は色々とハプニングがあって鮮明に覚えてないが、今回は間近で見ているので絶対に時間が経っても忘れないだろう。

 

そんな風にドキドキしている間にも歌歩は俺に引っ張り続けて、遂に波のプールに来るとそのままプールの中を突っ切り、波の近くまで行くと……

 

「えいっ!」

 

いきなり俺に抱きついてそのまま波に突っ込んだ。同時に波が俺達に襲いかかり、そのまま砂浜の方に流される。そんな中、俺の中に波の強さによる驚愕と水による息苦しさが生まれるも、それ以上に……

 

(歌歩の身体……柔らか過ぎるだろ……!)

 

正面から抱きついて俺と一緒に流される歌歩の感触による羞恥の感情が強かった。水に流れながらも歌歩の感触が伝わる。

 

俺の胸板に当たる小振りで可愛らしい胸、俺の背中に回される白魚のように綺麗な腕、俺の足に絡まる健康的な美脚。

 

水の中でもハッキリと伝わる歌歩の感触に、俺はドキドキしてしまう。

 

そんな事を考えている間にも俺達は流され続け、砂浜近くに着いた時に漸く動きが止まった。

 

安堵の息を吐いていると先ほどまで抱きついていた歌歩が俺から離れて楽しそうな笑みを浮かべてくる。

 

「ふふっ……いきなりごめんねお兄ちゃん」

 

歌歩はそう言ってくる。別にそこまで怒っている訳ではないが……

 

「許さん、くらえ」

 

「えっ?!わあっ!」

 

俺が歌歩の顔面に水をかけると、歌歩はよろめく。そこまで怒っている訳ではないが、いきなり抱きつかれてドキドキさせた挙句に悪戯成功、みたいな笑顔を見せられるのはちょっとイラっときたのは事実だ。よってお返しをさせて貰ったぞ。

 

すると歌歩は膨れっ面になり……

 

「お兄ちゃんのバカッ!お返し!」

 

反撃とばかりに俺の顔面に水をかけてくる。それによって俺も歌歩と同じようによろめく。

 

よろしい、戦争だ。

 

「お返しだ」

 

「きゃあっ!」

 

今度は両手を使って歌歩に水をぶつける。顔面にモロに食らった歌歩はさっきよりもよろめきながら、反撃とばかりに水をかけてくる。同時に俺がやり返し、歌歩がまたやり返す。

 

次第に俺達は全力で水をかけ合う。ここで引いたら負けとばかりに全力でかけ合う。

 

そんな中、俺の胸の内にあった僅かばかりの怒りは消え失せて、楽しい気持ちになってきた。プールに行くなんてガキの頃以来だが、あの頃のように純粋な水のかけ合いを楽しいと感じている自分がいる。

 

暫く水を掛け合っている時だった。

 

「よっと」

 

「むぅ……きゃあっ!」

 

俺が両手を使って歌歩の顔に水をぶつけると同時に一際大きな波が俺達に襲いかかる。

 

それによって俺は多少グラつくだけで済んだが、歌歩は顔から水にぶつかるように倒れかかり。

 

それを見た俺は歌歩の肩を掴んで倒れないようにする。今回は波もあったとはいえ少しやり過ぎたな……

 

「大丈夫か?」

 

俺が尋ねると歌歩は顔を上げてコクンと頷く。

 

「あ、うん。大丈夫」

 

「なら良かった。今回は少し水をかけ過ぎて悪かったな」

 

「ううん。私は気にしてないよ。助けてくれてありがとう」

 

歌歩は言うなり、俺の背中に手を回してギュッと抱きついてくる。同時に歌歩の胸が当たりドキドキしてしまう。

 

「か、歌歩。わかったから離れてくれないか?」

 

「……ダメ?」

 

「……好きにしろ」

 

ダメだ。歌歩のおねだりには逆らえん。俺が了承すると歌歩は小さく頷いて更に強く抱きしめてくる。

 

俺は暫くの間、歌歩に抱きしめられるだけの存在と化したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから2時間後……

 

「お兄ちゃん。そろそろお昼にしない?」

 

波のプールではしゃいだり、ジャグジーに入って歌歩が膝の上に乗って甘えてきたり、借りたボールを投げ合ったりしていると歌歩がそんな事を言ってきた。

 

時計を見ると12時前と、昼飯を食う時間だった。

 

「はいよ。じゃあ混む前に店に行こうぜ」

 

四塚マリンワールドには飲食店が幾つもあるが昼飯時は混んでいるので早めに席取りをしないといけない。

 

すると……

 

「あ、実はお弁当を作ってきたんだ。だからお兄ちゃんに食べてほしいな」

 

歌歩がそんな事を言ってくる。マジで?歌歩が弁当を作ってきてくれたのか?

 

「わかった。ありがたく貰う」

 

歌歩の料理が美味いことは知っている。混雑を避けれるだけじゃなく歌歩の弁当を食えるとか俺得過ぎだ。

 

 

そんな事を考えていると……

 

「良かった……あのねお兄ちゃん。私、お兄ちゃんが美味しいって思えるように沢山愛情を込めたから、ね?」

 

「がはっ……!」

 

歌歩の破壊力抜群の言葉を聞いて思わず吐血しかけてしまった。何なのこの子。そんな風に健気に言われたら……幸せ過ぎて死にそうだな。

 

「だ、大丈夫お兄ちゃん?!」

 

対する歌歩は心配そうな表情で俺の顔を覗き込んでくるが、お前の言動の破壊力がヤバいからだからな?

 

そう思いながら俺は歌歩に大丈夫と伝えて一緒にプールから出たのだった。

 

 

しかしこの時の俺は知らなかった。

 

これからもっともっと刺激的なやり取りがあるということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ。今準備するから待ってね」

 

波のプールと砂浜の近くにあるベンチにて、歌歩が更衣室から弁当を持ってきて俺の隣に座ってくる。その距離はメチャクチャ近く、俺の肩と足に歌歩の肩と足がぶつかる程だ。その上、互いに水着なので生肌同士がぶつかり合って変な気分になってくる。

 

俺は舌を噛んで煩悩を断っている中、歌歩は弁当箱を膝の上に置いて開ける。

 

見ると中には旨そうな料理が揃っていた。

 

ハムやチーズ、卵にローストビーフなど様々な食材を挟んだサンドイッチ、色が濃く旨そうな衣を付けている唐揚げ、ホクホクのポテトサラダ。見てるだけで唾液が込み上がってくる。

 

「美味そうだな……本当に貰って良いのか?」

 

「もちろん。私、お兄ちゃんの為に一生懸命作ったから食べて欲しいな……」

 

歌歩は白魚のように綺麗な手を俺の膝に添えながら耳元でそう囁く。余りに蠱惑的な仕草に俺はピクンと跳ねてしまう。マジでこの子可愛過ぎだろ?

 

歌歩のボディタッチにドキドキしている中、歌歩はサンドイッチを一つ摘み……

 

「はいお兄ちゃん。あーん」

 

俺の口に差し出してくる。え?あーんって……マジか?

 

予想外の展開に俺がポカンとしていると……

 

「えいっ」

 

俺の口の中にサンドイッチを入れてくる。同時に再起動した俺は口の中に入ったサンドイッチを咀嚼する。同時に口の中には旨味が広がる。マジで美味すぎる……普段コンビニで買うサンドイッチが目じゃない位に美味いな。

 

「どうかな?美味しい?」

 

「最高」

 

「なら良かった……はい、あーん」

 

歌歩は次に唐揚げにフォークを刺して突き出してくるのでパクリと口にする。

 

(やっぱり美味いな。だが……歌歩が可愛過ぎて味がわかりにくい)

 

マジで歌歩が天使過ぎる。俺にボディタッチをしながらも健気に俺にあーんをしてくれる歌歩。そんな可愛い姿を見せられなら全然集中出来ん。

 

そんな事を考えながも俺はしっかりと咀嚼して味を知ろうとする。折角作って貰ったんだからしっかりと味わないと罰が当たるに決まっている。

 

それから10分、俺は歌歩にあーんをされながらも全ての料理を食べ終えた。

 

「お兄ちゃん、美味しかった?」

 

俺が食べ終えると歌歩は弁当箱を片付けながら感想を求めてくる。

 

「ああ。凄く美味かったよ」

 

「なら良かった。お兄ちゃんにそう言って貰えて嬉しいよ」

 

歌歩は幸せそうな笑みを浮かべてそう言ってくる。俺こそ俺なんかが褒めただけで嬉しくなる歌歩を見ると嬉しくなってくるな。まあ恥ずかしいから口にはしないけど。

 

「本当にありがとな。今度お礼に何か奢る」

 

美味い飯を食わせて貰ったんだから、こちらもそれなりの物をご馳走する位問題ない。

 

そんな事を考えていると歌歩は首を横に振る。

 

「あ、お兄ちゃん……お礼ならご飯じゃなくてお願いしたい事があるんだけど聞いてくれない?」

 

「お願い?何だか知らないが構わないぞ。俺に出来る事なら何でもしてやるよ」

 

俺がそう返すと……

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当?じゃあ……今度から作戦室で私と一緒に寝る時にお兄ちゃんからも頬にキスをして欲しいな……」

 

歌歩が真っ赤になりながら爆弾発言をしてきた。はいぃっ?!

 

「か、歌歩?!それは勘弁「さっき、何でもしてやるって言ったよね?」……いや、それはだな……」

 

しまった。歌歩は鬼畜な要求をしてこないと思って何でもしてやると言ったが、ある意味鬼畜な要求をしてくるとは思わなかったぞ。

 

「………」

 

歌歩はジーっと俺を見てくる。俺が目を逸らしてもジーっと見てくる。

 

「あの、歌歩さん?」

 

「………」

 

話しかけても返事をしないでジーっと見てくるだけ。これはアレか?了承の返事をしない限り喋らないのか?

 

「………」

 

はぁ……仕方ない。一度何でもしてやると言ったし……

 

「……わかったよ。次からはそうする」

 

「本当?ありがとうお兄ちゃん」

 

すると歌歩は漸く口を開けて、笑顔で抱きついてくる。てか本当?、とか言っていたが、お前俺が了承するまでシカトしてただろうが。

 

しかしとんでもない約束をしちまったな。一応歌歩の頬にキスをした事はあるが精々3、4回だ。歌歩や姉さんや文香がやるようにキスをするとなると一回寝る度に100回以上しなきゃいけないことになる。

 

……こうなったら今後は作戦室で寝る回数は減らすしか「ちなみに週一回は一緒に寝ようね?」……どうやら拒否権はないようだ。

 

「……了解した」

 

結果俺は抵抗するのを諦めて歌歩の要望を聞くことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな恐ろしい約束をしてから30分……

 

「お次の方、どうぞー」

 

「後5、6人くらいだし待つのは5分位だな」

 

「そうだね。並んだ甲斐があるよ」

 

俺と歌歩はウォータースライダーに乗るべく並んでいる。このウォータースライダーは長くてコースも独特であることから四塚マリンワールドでトップクラスで人気のアトラクションだ。

 

前を見ると1人ずつ滑ったり、カップルの内彼氏が彼女を膝に乗せて滑っているが、全員はしゃぎながら滑るという共通点があった。

 

そんな事を考えていたら……

 

「次の方、どうぞー」

 

漸く俺と歌歩の番だ。俺と歌歩が入り口に向かうと女の係員さんが口を開ける。

 

「お客様は1人ずつ滑りますか?2人一緒に滑りますか?」

 

1人ずつか2人一緒だと?んなもん当然……

 

「1人ず「2人一緒でお願いします!」……」

 

俺が1人ずつと言おうとしたが、その前に歌歩が2人一緒を要求した。これじゃあ……

 

「はい2人一緒ですね。それじゃあ彼氏さんが先に座ってくださいねー」

 

予想通りだ。係員のお姉さんは2人一緒と認識しているよ。

 

「か、彼氏?!違います!お兄ちゃんはまだ彼氏じゃないです!」

 

すると歌歩は真っ赤になりながらお姉さんに言い返す。するとお姉さんは……

 

「……え?お兄ちゃん?なのにまだ彼氏じゃない……?」

 

俯いて何かボソボソと呟き出す。何を言っているかはわからないが嫌な予感しかしない。

 

若干冷や汗を流しているとお姉さんは顔を上げるが、何故か引き攣った笑みを浮かべていた。

 

「し、失礼しました。世の中色々ありますからねー。とりあえず座ってください」

 

言いながら俺を見てくるので釈然としないながらも指示に従ってスタート地点に座る。足にはウォータースライダーに流れる水が当たり涼しくなる。

 

「で、では次に貴女は彼の足の間に座ってください。」

 

「は、はい。じゃあお兄ちゃん。お邪魔します……」

 

歌歩はそう言って恥ずかしそうにしながらも俺の足の間に座る。同時に俺の足には歌歩のムッチリとした足が当たり妙な気分になる。

 

「で、では貴方は妹さんにしっかりとくっ付いてくださいね」

 

お姉さんがそう言うと俺の背中を押して歌歩にくっ付ける。同時に歌歩の温もりが直に伝わって顔に熱が溜まる。

 

「……お、お兄ちゃん」

 

「わ、悪い!でも我慢してくれ」

 

「だ、大丈夫。お兄ちゃんにギュッとされるの、嫌じゃないから」

 

歌歩の顔を見れない体勢で良かった。でなきゃ恥ずかしい事を言ってきた歌歩に対して碌に反応が出来ないだろう。

 

そんなことを考えていると……

 

「ではいってらっしゃーい」

 

係員さんが俺の背中を押して出発した。瞬間、尻に水の感触を感じ俺の身体はコースに沿って進み始める。

 

暫くすると目の前に急カーブが現れて俺達は倒れるように曲がり出す。

 

「ふふっ……気持ち良いな……」

 

俺の腕の中にいる歌歩は楽しそうにはしゃいでいる。顔は見えないがそんな風に楽しそうなら俺も幸せになってくるな。

 

そんな風にほっこりした気持ちになった時だった。前方に大量のカーブが現れて俺達の身体はメチャクチャ揺らされる。

 

そして最後のカーブを曲がった瞬間、俺の右手は歌歩の腹から離れて……

 

 

「ひゃあんっ!」

 

歌歩の右の胸に触れてしまう。歌歩の叫び声と共に手には柔らかな感触を感じる。姉さんの胸は大きくモッチリした感触だったが、歌歩の胸は小振り故、手にスッポリと収まって心地が良い……って、何を感想を考えてんだ俺は?

 

「わ、悪い!わざとじゃ……っ!」

 

「あんっ……!お、お兄ちゃん……!」

 

慌てて謝りながら歌歩の胸から手を離そうとするも再度カーブが現れて、曲がった瞬間、今度は俺の左手が歌歩の左の胸を揉みしだいていた 。

 

(何なんだマジで?俺にはラッキースケベの神様に憑かれているのか?)

 

俺がそう思いなが歌歩の胸から手を離そうとするも……

 

 

 

「きゃあっ!」

 

「うおっ!」

 

その前に出口にある巨大プールに落ちた。いきなりのゴールに俺は歌歩の胸から手を離すのを忘れたまま、勢いに乗ってプールの落ちた。

 

同時に着水の衝撃で俺と歌歩は離れる。良かった……このままさっきまでの体勢が続いていたらマジでヤバかったな……

 

そう思いながら俺はプールから顔を出すと……

 

 

「お兄ちゃんのエッチ……」

 

目の前では歌歩が両手で胸を覆い、顔を赤くしながらジト目で俺を見ていた。

 

「わ、悪い」

 

「べ、別にわざとじゃないから良いけどさ……エッチ」

 

「返す言葉もねぇ……」

 

事故とはいえ、悪いのは間違いなく俺だ。歌歩に何を言われても文句は言えない。

 

 

結局、俺はその後何度も謝り倒し、マリンワールドの店でパフェを奢ったら漸くジト目を消して許してくれたのだった。

 

 

 

 

 

 

それから4時間……

 

「んー、今日は楽しかった」

 

「まあな……」

 

帰りのバスにて、歌歩は楽しそうにそう呟くが、俺も同感だ。色々とサプライズ的な物はあって割と疲れたが、楽しかったのは事実だ。

 

「機会があったらまた行こうね?」

 

歌歩は俺の肩に頭を乗せてそう言ってくるが、またラッキースケベを起こしそうだから勘弁して欲しい。あの後も流れるプールで流れていたら人にぶつかってその勢いで歌歩の尻を揉んだり、転んだ際に歌歩の股に頭を突っ込ませたし。全部許して貰えたとはいえ罪悪感が半端ない。

 

返事に悩んでいると……

 

『次は終点、三門駅前……』

 

バスから終点ーーー俺達が降りるバス停に到着する知らせが来た。バスはロータリーにある指定のバス停に到着すると動きを止めてドアが開く。同時に他の乗客は一斉に降りるが、俺達は最後で良いか。

 

そんな事を考えながら出口を見ると俺と歌歩を除いて全員が降りたので俺も立ち上がり運転手に金を払ってステップを降りてバス停に降りる。

 

(後は歌歩が降りて、解散を告げれば今日の予定は終わりだな……)

 

そう思いながら後ろを向くと歌歩がバスの運転手に払って……

 

「わあっ!」

 

ステップを降りようとしたが、踏み外してバスから地面に落ちようとしていた。あの馬鹿……!危ないだろうが。

 

俺は歌歩を地面に激突しないように咄嗟に前に出て受け止めようとすると、歌歩の顔が俺の顔に近付き……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちゅっ……

 

そのまま互いの唇が重なった。

 

(………え?)

 

予想外の出来事に俺が呆然としていると、歌歩を支え切れず背中から地面に激突した。

 

しかし俺の頭の中では痛みは無く、呆然としたままだった。

 




いつも自分の作品を読んでいただきありがとうございます

活動報告にも書きましたが暫く執筆を休ませていただきます。

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