魔法少女リリカルなのは×銀魂~侍と魔法少女~   作:黒龍

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第八十四話:親は子供の反抗期結構気にする

 プレシアが古い知人たちに再会してから時間は経過し、翌日。

 日が夕方から夜になる時間帯。

 

 なのは、フェイト、アリシア、はやて、ヴィータ、アリサ、すずか、といったリリカルメンバーでも小さい――もとい幼いメンバーはここ数日の日課となる定春の散歩を行っていた。

 ちなみに今日はアルフ(狼姿)もフェイトに赤いリードで繋がれ一緒である。

 

「つうかあたしは幼いに当てはまるのか?」

「ヴィータ、誰に言ってるん?」

 

 メタイ発言をするヴィータに対して、首を傾げるはやて。ヴィータは「なんでもねぇ」と返す。

 いま定春の背中には、はやてとすずかが乗っていた。ちなみに定春の背中に誰かが乗るのもここ数日の日課みたいになっている。とは言え、犬の背中に乗って散歩と言うのはいかがな物かと真面目ななのはとかは考えもした。

 だが、定春事態が人(特に少女など)を背中に乗せて散歩することに対して抵抗がない上に、定春もなんやかんや満足そうに散歩するのだ。たぶん、神楽を背中に乗せる事が多かった為にそれが習慣化してしまったのだろう。

 

 そんなこんなで、ある程度歩く度に順々になのはたちは定春の背中に乗っているのだ。ただ、フェイトだけは遠慮していたものの、姉に勧められて少し顔を赤くしながら乗ったのは、記憶に新しい。

 

 そしてこの散歩の光景、最初こそ時折すれ違う人がビックリしたり、携帯で写真撮ったりしていた。もちろん、街から離れた道なのでそこまで目立つワケではないが、やっぱり人目は引く。

 とは言え、定春よりも小さいが大型犬を散歩させている人もいるにはいるので、定春もそういう大型の珍しい犬種かという事で割かしスルーされちゃったりしている。

 

 なのはは最初こそ、テレビの取材でも来るんじゃないだろうか? と身構えていたら、本当にテレビの取材が来たりした。まあ、アリサが取材NGでキッパリ断ったので、事なきを得たのが。

 

 住宅街から離れた道を歩いている時に、

 

「思ったんだけど……」

 

 定春のリードを握っているアリサが足を止めて口を開く。

 

「あたしたちって、定春の散歩……体よく押し付けられてない?」

「う~ん……押し付けられたー……とは違うんやないかな?」

 

 定春の背中に乗るはやては眉間に皺を寄せながら腕を組んで言う。

 

「私ら進んで定春くんの散歩楽しんでるワケやし」

「ここ数日、神楽は〝一度〟も定春の散歩に付き合ってないのよね……。あいつ飼い主なのに……」

「無責任だな……」

 

 どうでもよさそうにしながらもバッサリ言うヴィータの言葉を聞いて、なのはは苦笑する。なにせ、新八を除いて万事屋のメンバーは自由奔放でテキトーな面が強いのだから。

 

「やっぱり、今度あいつにもきっちり散歩させないとね」

 

 と言うアリサの言葉と共に、再び歩き出す一同。

 犬好きでありしっかり者のアリサとしては飼い主の責任を度々放棄する神楽の態度はあまり看過できるものではないのだろう。

 

 そんなこんなで談笑や雑談を交えながら住宅街から終盤の散歩コースである海沿い歩道へと差し掛かる。

 

 いくばくか歩くと、なのはの目にある二人の人物が映る。地面に尻を付きギターを弾く男と、隣に立つのは人形を持った黒いローブを纏う少女だ。

 

「あッ、レノックスさんとミルカちゃんだ」

 

 なのはの言うレノックスと言う男。フルネームはレノックス・アウテンダー。

 成人しているかしていないかくらいの人物で、青いジーンズに白いシャツの上に土色のジャケットを着ており、首には指輪の穴に銀色の鎖を通したネックレスを掛けている。

 髪型は金髪のソフトモヒカンのようで、髪の中央部分をツンツンに立たせている。

 

 もう一人のミルカという人物。フルネームはミルカ・ツルコットン。

 ふちに金色の装飾が施された黒いローブで体を覆い隠した少女。

 碧眼で、髪はウェーブの掛かった紫のセミロング。頭を猫耳フードで覆っている。

 腕にはクマの人形を抱きかかえ、肩にはなんと黒いウサギと白いネコの人形を乗せているという変わった格好だ。

 身長はなのはたちより頭一つ分高いくらい。

 

「おッ、なのはちゃんたちじゃん」

 

 演奏をやめるレノックス。

 

 レノックスはここ最近この海鳴市にやって来たらしく、〝妹〟のミルカ連れて海沿いの道でギターを弾いている。

 ストリートミュージシャンと呼ばれる存在を初めて見たコミュ力高めの少女たちは、初めて彼を見かけた日に声を掛けた。もちろん演奏が終わった後、拍手してから。

 そして意外とミュージシャンは気さくな人物なこともあって、あれよあれよという間に顔見知りになったのである。

 

「…………」

 

 一方、気さくなミュージシャンとは違い無口でヴィータより人見知りな少女がミルカ。

 なのは達から少し顔を逸らしつつ、チラチラ見ている。

 

「こんにちは。そんで散歩ご苦労さん。相変わらずデッカイ犬連れてんね」

 

 とレノックスが気さくに話しを振る。

 

 定春を散歩していたからこそ、知り合ったレノックスとは散歩コースが毎度同じなこともあり毎日顔を合わせている。

 一方のミルカは時々だが、顔を合わせない事もしばしばあったりする。

 

 レノックスとミルカも最初こそ、デカい定春に度肝向かれたようで驚いていた。だが、今では慣れたようで普通に挨拶する。まあ、気さくな挨拶をするのはレノックスだけではあるのだが。

 

「「「「「こんにちはー」」」」」

 

 レノックスの軽い挨拶を聞いてなのは、アリサ、すずか、はやて、フェイト、アリシアもまた軽めの挨拶を返す。ヴィータも「こんちわ」とぶっきらぼうながらも挨拶。

 

「こ、ここんにちは……」

 

 一方、レノックスと違いミルカの言葉はたどたどしい。猫耳フードを深く被り直して顔を逸らし、クマの人形をギュッと握りながら、視線だけをチラリと向け、声を震わせつつ挨拶。

 

 そんな人見知りな少女に対し、ヴィータ以外の面々は苦笑を浮かべてしまう。

 

 すると突如として、ミルカは腕に抱いたクマを両手で持ち、顔の前にバッと移動させ、指で操りだす。

 

「ごめんね~~、なのはちゃんたち。知ってると思うけど、ミルカはすごく人見知りなんだ~~。だからこんな失礼な態度しちゃってごめんね~~」

 

 野太いまったりとした声を出すミルカに合わせて、クマの人形はペコリとお辞儀をする。

 

「アハハ、大丈夫だよ『クママル』くん。全然失礼なんて思ってないからね」

 

 なのはは微笑を浮かべながら、クマの人形――クママルとお話をする。

 どうやらミルカは腹話術が得意らしく、こうやって会う度に人形劇を開始してお喋りしだすのだ。

 

「ありがとうなのはちゃん。なのはちゃんは優しいね~~。こんな人見知りで変人のミルカと仲良くしてくれて、ボクは涙が出ちゃうよ~~」

 

 おいおいおい、と腕で涙を拭うポーズをするクママルに対し、

 

「……く、クママル! 変人は……余計……!」

 

 ミルカは顔を真っ赤にしながら、クママルの頭をペシッと叩く。

 

「あいた~! 痛いよ~、ミルカ~~!」

 

 ミルカとクママルの会話劇を見て、なのは達はつい笑ってしまう。

 

 もちろん、ミルカの腹話術について深堀するような野暮ったい真似をする人はこのメンツにはいない。

 ただ最初こそヴィータが、

 

『えッ? お前なんで人形使って喋ってんの?』

 

 とツッコミを入れたが、

 

『ボクはクママルだよ~~。人見知りで内気なミルカに代わってボクがお喋りするから、これからよろしくね~~』

 

 と何気に強い精神力でクママル使った会話を強行したミルカ。

 

 ミルカはクママル劇場を発動するとスムーズな会話ができるので、敢えて腹話術を止めさせない。

 それどころか、一種の芸の域にまで達している節があるので、なのはたちもクママルとの会話をそれなりに楽しめているのだ。

 

 クママルモードに入ったミルカに対して、やれやれと肩をすくめるレノックスは、ギターの弦に指を掛ける。

 

「折角お客さんも来てくれたことだし、一曲披露しちゃいますか」

 

 レノックスの発言を聞いて、なのはとすずかとはやてはパチパチパチと軽めの拍手。そして柔らかいギターの音色が奏でられ始める。

 

 するとクママルは両手を上げて万歳のポーズを取りだす。

 

「よ~~し! ボクも踊ってなのはちゃん達を楽しませちゃうぞ~~!」

 

 レノックスの音楽に合わせて、クママルは踊りを開始した。

 ミルカのクマは可動域がすごいのか、ミルカの操り技術がすごいのか、クママルは素早い動きでダンシング。

 腕を振り、腰を振り、足を使って回転したりなど、軽快なダンスを手の平と言う名のホールで披露。

 その様はまるで、本当に生きて動いているとすら錯覚し、指で動かしているとは思えないほど動作に自然さが宿っていた。

 

 やがて、演奏の途中でアリシアが横に立つフェイトに告げる。

 

「思ったんだけど、レノックスさんて〝下手〟だよね?」

 

 ズジャンッ!! とズッコケたようにギターの音は外れ、フェイトは慌てて姉を(たしな)める。

 

「お、お姉ちゃん失礼だよ!! 例え本当のことでも!!」

「オウッ!?」

 

 ズジャジャンッ!! と更にギターの音は盛大に外れる。なのはは焦りながらツッコム。

 

「追い打ちしてるフェイトちゃんもかなり失礼だから!! レノックスさん傷ついてるから!!」

 

 なのはのフォローに対して、ミルカはクママルを使わずに、小さな声で話し出す。

 

「うん……たしかに、レノックスのギターは……下手……」

「グォッ!?」

 

 レノックスはまた精神的ダメージを受けた。あと弦を弾く手も強張ったように止まった。

 はやては苦笑を浮かべる。

 

「身内にまでダメ出しされとる……」

「さすがにお前はフォローしてやれよ」

 

 と微妙な表情で言うヴィータ。

 

「そ、そのー……そんなに下手ではないと思いますよ」

 

 アリサは視線を逸らしつつフォローし、すずかも続く。

 

「そ、そうですよ! 下手の横好きくらいですよ!」

「アウチッ!」

 

 顔面を殴られたように顔を後ろにそらすレノックス。

 

「すずかちゃん! それフォローになってないよ!」

 

 なのははツッコミ入れた後、レノックスをチラリと見る。

 

「…………なんか、すみません……」

 

 もう演奏もせずに暗い表情を浮かべているレノックスを見て、冷や汗を流すなのは。

 

「まぁ、なんつうかよ……」

 

 とここで、腕を組みながらヴィータが言い放つ。

 

「ミルカの方が芸が面白くて見応えあるんだよな」

「アァウッ!」

 

 ヴィータの言葉を聞いて、レノックスはギターの端に頭を叩きつける。

 たぶん芸を嗜む者として一番言われたくない事を言われてしまったらしい。

 

「ありがと~~、ヴィータちゃ~~ん♪」

 

 一方、クママル(ミルカ)は上機嫌でダンスを再び披露しだす。

 横にいるレノックスは目元を右手で覆いながら告げる。

 

「ご、ゴメン……。今日のライブは中止するね……。なんか前が霞んじゃって……上手く演奏できないや……」

 

 涙声で告げられ、なのはは冷や汗流しながら「い、いえ……その……演奏ありがとうございました」と頭を下げる。

 十近くも歳が上であろう人を泣かせた事実に対して、いたたまれなくなったのか他の面々も口を閉ざす。

 

 そしてレノックスは目元を抑えながらポツリポツリと言葉を漏らす。

 

「俺もね……ホントはもっと人を引き付けたいし……大勢の人に聞かせたいし……。でも……中々思い通りにね……いかなくてね……やることあるし……」

 

 演奏じゃなくてもうただの愚痴のお披露目にしかなっていないが、泣かせた責任として去らずにレノックスの呟きを聞き続けるなのはたち。

 愚痴を零す彼の横で、クママルが軽快なダンスを披露しており、場違い感が半端ない。

 

「下手の横好きとか……二流以下とか……言われちゃうとね……やっぱ他人の評価ね……怖くなっちゃうから……。あと音楽だけで食っていけないから……仕事しなきゃだし……」

 

 そんなこんなで一人の音楽家の悲しい愚痴とクマ人形のダンスを、幼い少女たちは見聞きし続けるのだった。

 

 

 次元は変わって魔法と科学が発展した世界ミッドチルダ。

 場所は首都クラナガン西部の地方エルセア――そして、エルセアの中でもクラナガンに近い地域に建てられた一軒家。

 

「スバルの奴、坂田の奴にまた会えて嬉しそうだったな」

 

 その一階のダイニングの椅子に腰を掛けたゲンヤ・ナカジマは、机の上に右腕を乗せながら娘たちの部屋を眺めている。

 

「スバル、銀時さんに助けられたからと言うもの、彼の事が気になって仕方なかったものね。銀時さんが来た時もとっても素敵な笑顔を浮かべてもの」

 

 来訪した銀時とスバルがどんな会話を繰り広げているのか気になっているであろう父親。その姿を見て妻であるクイント・ナカジマは笑顔を浮かべながらキッチンで銀時たちに振舞うであろう料理をこしらえている。

 

「くぅ~……! まさか俺の娘の心をもう虜にしちまうとはな~! 坂田の奴も罪深いやつだぜ!」

 

 などとワザとらしいゲンヤのセリフを聞いて、クイントは料理を作りながら「フフ……」と笑みを浮かべる。

 

「アハハ……ソウナンデスカ……」

 

 ダイニングテーブルを挟んでゲンヤと対面する形で座るプレシアは、乾いた笑いと言葉を出してからコーヒーカップに注がれた黒い液体を啜る。

 なんかゲンヤの言葉を聞いていると色々と思うところがあるので、純粋に笑えない。

 

 カップのふちから口を離してから、プレシアはある質問をする。

 

「あの……そもそも私もお呼ばれしてもよろしかったんでしょうか? あなたたちや娘さんを助けたのは私の連れと使い魔ですし」

 

 プレシアの疑問を聞いて、ゲンヤは言葉を返す。

 

「坂田の奴はともかく、あんたはリニスの主人だ。主共々礼を尽くさねェってのは失礼に当たるだろうしな。だから、今日は妻の手料理を食べっててくれ」

「はぁ……なるほど。そういうことなら」

 

 まぁ、妥当な考え方ではあると思ったプレシアは特に反論することもないでコーヒーを啜りながら夕食の間まで何か話題はないか考え出す。

 すると二階の方から、

 

「わぁ~ッ!! カッコいい!!」

 

 スバルであろう少女の声が壁や廊下を通して一階まで薄く聞こえて来た。

 

「おッ、スバルの奴! 珍しく元気に声出すじゃねェか!」

 

 体を後ろに捻って子供の部屋へ顔を向けるゲンヤは、額に掌を当てながらワザとらしい声を出す。

 

「チクショースバルの奴、あそこまで惚れこみやがって~! ホントに坂田の奴は罪作りな奴だぜ~!」

 

 ゲンヤの冗談を聞いてプレシアは色のない瞳で相槌を打つ。

 

「アハハ……ソウデスネ……」

 

 ゲンヤとの言ってることは場を和ませようとするただの冗談。きっとスバルもあの天パに恋心なんてものは抱いておらず、ただ助けた者に対して懐いているだけなのだろう。

 

 だが、だがしかしだ。

 

 プレシア的には全然笑えない。社交辞令のような乾いた笑いしか浮かべられない。

 なにせ自身の年端もいかいな娘があの銀髪モジャモジャ頭に恋心がどうか怪しいラインの感情を抱いているのかもしれないのだから。

 あのなにしですか分からん駄目な人間に娘が淡い感情を抱いていると考えると、心の底から笑えない。

 

「フフ……助けてくれた人に恋するなんて……まるで絵本の王子様みたいね」

 

 とさきほどの旦那(ゲンヤ)の冗談に乗っかる(クイント)の言葉を聞いて、プレシアは反射的に思った。

 

 ――ないわー……あの天パが王子様とかないわー……。

 

 白馬の王子様的なアレとか、あの一日中鼻ほじってるようなアホに最も合わない言葉である。せいぜい鼻くその王子である。

 そしてその鼻くその王子にうちの娘が惚れてるかもしれないとか、もっとない。

 まぁ、さすがにいつものノリみたく思った罵倒をこの夫妻の前でいうワケにはいかいないので本心は呑み込み口はつぐんでおくが。

 

 ――……助けてもらった……か……。

 

 まぁ、あの天パには色々と助けてもらったし、色々と自分たちの為に頑張ってくれたし、色々と思うところがあるワケだが。

 

――なんやかんや、銀時たちには助けてもらったものね……。

 

 なんてしみじみ銀時とその仲間たちの功績について思いを馳せながら思う。まぁ、あれだけ体張ったバカな男にフェイトが惚れるんなら仕方ないこともなくもない、と。

 そんなことを思ったプレシアはふと顔を上げ、天井を見上げる。

 プレシアの視線の先は、スバルと銀時、そしてお目付け役として付けた使い魔がいるであろうナカジマ姉妹の部屋の辺り。

 プレシアは目を細めながら考えた。

 

 ――助けてもらって……恋に落ちる、か……。

 

 すぐさまふっ、とプレシアは笑う。

 

「いや、まさかね……」

 

 首を軽く横に振りながらプレシアはコーヒーを啜る。

 

 

「わァ~! カッコいい!!」

 

 ナカジマ姉妹の部屋ではスバルが目の前の存在をキラキラとした瞳で見つめ続ける。

 

「ホントにお好きなんですね」

 

 とリニスはニコニコ顔で告げる。

 

「あァ、好きなんだな」

 

 と銀時も腕を組みながら告げる。

 

「――木刀が」

 

 銀時の視線の先では、木刀の柄を両手で持ち、切っ先を天井へと向けながら子供特有の純真無垢なキラキラとした眼差しを向けているスバルがいた。

 銀時の言葉を聞いて、リニスは小首を傾げながら言葉を告げる。

 

「そうでしょうか? 単純に憧れの対象である銀時さんの持ち物に興味を示しているのでは?」

 

 スバルは軽く木刀を縦に振り始める。

 リニスの言葉を受けて銀時は呆れた声を漏らす。

 

「お前なー、フェイトの教育係とかしてたくせにガキの心ってのをまったくわかってねェな」

 

 スバルは木刀を縦や横や斜めに振り始める。

 銀時は指を立てて説明を開始。

 

「いいか? ガキが注目するはいつも使う奴より使ってるアイテムなんだよ。例えばガンダムの操縦者よりもガンダム、仮面ライダーの変身者よりも仮面ライダー、一護よりも天鎖斬月、トニースタークよりもアイアンマン、ピーター・パーカーよりもスパイダーマン。元来ガキが注目しがちなのはカッコいいアイテム。食玩のラムネより玩具なんだよ、結局注目されんのは」

「は、はぁ……なる……ほど」

 

 銀時のうんちくを聞いてなんとも言えない微妙な非常で相槌を打つリニス。たぶん言ってることのほとんどが分からなかったのだろう。

 スバルはどんどん木刀を振る勢いを強め、ブンブン! と風を切る音が強くなる。スバルの近くに居た姉であるギンガはさすが心配になったのか両手を出して困ったようにおろおろし始める。

 

「つまりだ、修学旅行の中学生みたくはしゃぐあのガキは俺じゃなくてどうせ附属品である木刀に注目して――」

「テリャァッ!!」

 

 スバルが横に勢いよく木刀を振った瞬間、スポッと少女の手から柄は抜けて、凄まじい勢いで木刀の切っ先は銀時の太ももにぶち当たる。

 

「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!?」

 

 不意打ちによって生じた突然の激痛に銀時は苦悶の声を漏らしながら太ももを抑え、横に倒れ伏す。

 

「ああッ!! ご、ごめんなさいッ!!」

 

 木刀が銀時にぶつかってしまったことに気付いたスバルは涙目になりながら慌てて謝り、姉であるギンガも銀時に近付きながら頭を下げて謝る。

 

「ごッ、ごめんなさい!! 妹が!!」

 

 小さな少女たちに謝罪されている銀時。その姿に呆れた視線を向けながら、リニスは腰に手を当てて苦言を呈す。

 

「不用心に小さな子供に木剣なんて持たすから……」

 

 と言ってからため息を吐くリニスに対して、銀時は顔を上げて声を荒げる。

 

「うっせェーッ!! 木刀に興味津々だったから持たせただけです!! 銀さん悪くありません!!」

「そもそもあなたがスバルと話すのをめんどくさがって、木刀を与えて時間を潰そうとするから罰が当たったんですよ」

「話すっつうか部屋誘われてからずっと質問攻めじゃねェか!!」

 

 ガバっと銀時は立ち上がり、リニスに食って掛かりながら勢いよく語る。

 

「今までなにしてたとか、なにが好きとか、好きな食いモンとか、どこに住んでるとか、果てはどんな魔法使えるとか、どんな必殺技使えるとか、根掘り葉掘り訊かれる俺の気持ちも考えやがれ!! 質の悪いマスコミかよ!!」

「いやスバルは慕っているあなた事を純粋に知りたいから色々と聞いているんですよ。そういう子供の純真な気持ちに応えるのが大人なのでは?」

「そうなんだよ!! 純真過ぎるだろコイツ!!」

 

 と銀時は頭を下げるスバルをビシッと指さし、指をさされた少女はビクッと体を震わす。

 銀時はスバルの反応に構わずリニスへと自身の心をうちを吐き出す。

 

「頭の天辺から足の先まで純真無垢過ぎんだろ!! 真っ白なシーツかよ!! そんな純真なキラキラした瞳で見つめられたらいたたまれなくなるだろうが!! あの無垢な瞳にどう向き合えば良いのかもうわかんねェよ!!」

「いやそれ単純にあなたの心がスレて汚れてシミだらけだからでは?」

 

 冷めたジト目で冷たく告げるリニスに銀時は熱く語る。

 

「あのな、俺の元の世界じゃ頭の天辺からつま先まで真っ黒なクソガキなんてわんさかいんだぞ!! 可愛げのねェ捻くれた悪ガキいっぱいんだぞ!! どうなってんだこの世界!! なんでこんなにキラキラ輝く瞳を持ったガキが多いんだよ!! フェイトだったりなのはだったり!! 世界違うとこんなにガキの良しあしも違うのかよ!!」

「あなたの世界、だいぶ殺伐としてるんですね……」

 

 少し同情した視線を向けるリニスに対して、銀時は色々と吐き出してからハァ、ハァと肩で息をする。

 スバル、更にはギンガといった少女にまであそこまで純粋に興味持たれるとは思ってなかった銀時。

 部屋にやって来たからと言うもの、スバルには質問攻めされ、ギンガには黙ってキラキラした瞳を向けられ続けた。そんなある種の居たたまれない空間にいたせいで、精神的にどんどん疲れてどんどんストレスが溜まってしまったのである。

 どうも元の世界で生意気な悪ガキを慣れ過ぎた上に、子供に免疫が薄い弊害なのだろう。

 

「でもフェイトとは普通に接せられますよね?」

「フェイトは口数少ねェし、そもそもこいつらみたく俺を興味津々って感じで見てこねェよ。まぁ、あと慣れてるしな。さすがにここまで純粋にガキに興味持たれたの初めての経験なんだよ」

 

 銀時は疲れたように頭をボリボリと掻く。

 すると、

 

「あの……」

 

 声と共に、ズボンの裾が引っ張られていることに気付く銀時。

 銀時は「ん?」と声を漏らしながら下へ顔を向けると、涙目になったスバルが木刀を両手の掌に乗せて差し出している。

 スバルの横には申し訳なそうな顔で涙目になっているギンガもいる。

 

「「ごめんなさい……」」

 

 弱々しい声で二人はまた謝り、スバルは少し手を上にあげて木刀を返そうとする。そんな姉妹の姿を見て銀時はため息を吐きながらしゃがみ、片膝を付きながら木刀を手に取って受け取り、床に置く。

 銀時はスバルの瞳を真っ直ぐ見つめながら問いかける。

 

「別に怒ってねェから、そんな捨てられた子犬みてェな顔すんなって」

「怒って……ないの?」

 

 涙目になりながらおずおずと聞くスバルに対して銀時は「あぁ」と頷く。

 

「ガキのやった失敗に一々腹立てるほど、短気じゃねェから安心しな。ま、反省する必要がねェとは言わねェけど」

「嫌いに……ならない?」

 

 弱々しいスバルの問いかけに銀時は視線を斜め下に向けながら息を吐き出す。

 ギンガは分からんが、どうやらスバルの方は本当に自分を慕っているらしく、自分の好意の有無を気にしてるらしい。

 銀時は頭をボリボリ掻きながら疲れたような声で聞く。

 

「お前、なんでそこまで俺を気にしてんだ?」

「その……」

 

 問いかけに答え始めるスバルは頬を赤くし、両の人差し指をつんつんと突っつけながら答える。

 

「お人形から助けくれたとき……おにいちゃんが……カッコよかった……から……。それで……おにいちゃんみたく……なりたくて……」

「プリキュアとかセーラームーンとかじゃなくて……どうして俺に憧れるかねー……」

 

 どうやらスバルはヒーローゴッコする子供の気分で木刀を振り回していたのだろう。さきほども銀時の剣技を真似た節がある。まぁ、憧れたの対象にクリティカルダメージ与えた将来有望な子ではあるワケだが。

 

 ――さてどうしたもんかなー……。

 

 落ち込ませしまったワケだし、気持ちを切り替える為にも時間を潰す為にもまた話し相手をするべきなのだろうが、また質問攻めされるのもメンドーだ。

 とは言え、おもちゃで遊んでろ、テレビ見てろ、的なことを言うのも気が引ける。かと言って、逃げるように下の階に行くのも論外だろう。

 神楽みたいなクソガキならこの対応でも無問題だし、心もまったく痛まないのだが、このスバルは違う。自身に憧憬に近い感情をぶつけてくるので、テキトーに扱ってやろうって気持ちが薄れてしまうのだ。

 

 銀時は心底めんどくさそうに頭を掻きながらチラリと床に置いた木刀へと目を向ける。

 

「しゃーない……」

 

 銀時は深く息を吐きながら立ち上がるのだった。

 

 

 一方、少し時間は戻り一階のダイニングで話は進んでいた。

 クイントが小刻みに包丁の音を鳴らしながら嬉しそうに語る。

 

「あの子たちが『銀髪のお兄さんにまた会いたい』ってお願いをしてきた時はビックリしたもの」

 

 ゲンヤも嬉しそうに相槌を打つ。

 

「確かにな。あいつらがあそこまで他人に興味を示したのも驚いたが、俺たちに頼み事までするとはさすがに予想外だったし、良い傾向なのかもしれんな」

 

 などと会話を弾ませるナカジマ夫妻の言葉を聞いてプレシアはコーヒーのカップを小皿に戻しながら口を開く。

 

「スバルちゃんたちって、あまりわがままを言わない子なんですか?」

 

 プレシアが思い出すのは大人しくわがままなんて口にするかどうかも怪しい娘であるフェイト。我が強く天然なところはあるが、消極的な性格は自身の過去の行いもある。

 そしてそんなフェイトと同じようにスバル・ナカジマとギンガ・ナカジマと言う少女たちは消極的なのでは? と気になってしまった。

 

「あー、いや……なんと言うか……スバルたちはなぁ……」

 

 プレシアの問いに対してゲンヤはどうにも言い辛そうに後頭部を掻く。

 

「あッ、すみません。つい不躾な質問をしてしまって」

 

 困ったようなゲンヤの態度にプレシアはハッとし、すぐに頭を下げる。

 フェイトに結びつくような疑問だった為に、相手の家庭事情も考慮せずに無遠慮な質問をしてしまった事を少し後悔する。

 

「あーいや、頭を下げるほどのことじゃねぇって。気にせんでくれ」

 

 と少々困り気味に右手を出すゲンヤ。すると彼はふと問いかけてくる。

 

「にしても、テスタロッサさん。さっきの口ぶりからすると、あんたもしかして子持ちだったりするのか?」

「え、えぇ……まぁ。お二方の娘さんたちより少し歳が上ですけど、私も幼い二児の娘を持つ母親として、思わず気になってしまって……」

 

 さっきの不躾な質問の代わりと思っておずおずと親子の事情を話すプレシアに対して、ゲンヤは顎を撫でながら探るように言う。

 

「とすると……あんたとこの娘もあんまり自分を前に出さない、感じか?」

「姉の方は違うんですが、妹の方は消極的と言うとか大人しいと言うか、自分の欲求を前に出さない感じですね」

「なるほどな……。やっぱ、子供に一歩後ろに引いたように接せられる時ってどこの家庭でもあるもんなのか……」

「一歩後ろ……ですか?」

 

 ゲンヤの言葉に少し引っかかりを覚えるプレシア。

 確かにフェイトは消極的ではある。だが、娘として十二分に母親に甘えたいと言う感情や視線は常々感じているし、親子として関係を修復した今ではそれなりに甘えてくるので一歩後ろに、と言うワケではない。

 話しているうちにプレシアは違和感を覚え、もしかして親子間で何か悩み事を抱えているのでは? とも思った。だが、会って間もない自分が深入りするのはあまりよくないと考えて言葉を飲み込む。

 すると、

 

「なんだ? 娘にもう洗濯物一緒に洗わないでって拒否られてんのか?」

 

 いつの間にか二階から降り来た銀時が、着物の襟に手首を入れながらゲンヤへと語り掛ける。

 

「ちょっと、さすがにその言い草は失礼でしょ」

 

 呆れて苦言を呈するプレシアとは対照的に、

 

「いやいや、さすがにうちの娘たちはそんなに早く思春期は迎えてねぇよ。俺もまだまだ加齢臭なんざ気にする歳でもねぇしな」

 

 ゲンヤは顔色一つ悪くせずに冗談交じりに応える。

 

「ほ~ん? ならなんだ? もうお風呂一緒に入らないでって言われたか?」

「いや、残念ながらあいつらと一緒に風呂入ってんのはクイントだ。俺も一緒に娘たちと風呂入ってやりてぇが、中々勇気が出なくてなぁ~……」

「おいおいマジでか? 娘が『パパとお風呂入るの嫌』なんて言い出す時期はレースカー並みに早くやって来るぜ」

「マジかよ……ヤベーなそりゃ。このままだと娘と体一つ洗った事ない父親になっちまうのか俺は……」

 

 少しワザとらしくしょんぼりする仕草をするゲンヤ。

 そんな二人の息の合った会話の応酬を見てプレシアは思った。

 

 ――えッ、なんでこんなに昔から友達みたく喋ってんのこの二人……。

 

 一晩酒を飲み交わしただけの関係なのにまるで旧知の仲のようにノリが通じ合ってるゲンヤと銀時。

 ちょっと短時間で交友深め過ぎでは? これが飲みニケーション? などと考えてしまうプレシア。二人の会話の弾みっぷりに少し唖然とする中、彼女を置いてけぼりにして話は進む。

 

 銀時が「なんだァ?」と言いながら片眉を上げる。

 

「おたく、赤ん坊の時すら娘を母親に全部まかせっきりにしてた感じか? そんなにブラックな職場なのか、管理局員て?」

「あ~……いや~……その~……なんだ……」

 

 頭を掻きながら言い辛そうに言葉を濁すゲンヤ。その態度を見て、やっぱり知り合って間もない彼らの事情に押し売りみたく深入りするのは失礼だと考えるプレシア。彼女はすぐに銀時を(たしな)めようと「ちょっと」と強く言葉を掛けた時だった。

 

「――養子なんです」

 

 クイントが漏らすように語る。

 

「えッ?」

 

 少々驚きの声をプレシアは漏らし、銀時は視線を料理するクイントへと顔を向ける。ナカジマ家の妻は視線を下に向け、包丁を鳴らしながら言葉を続ける。

 

「スバル、それにギンガも本当の娘じゃなくて養子なんです」

「そう……なんですか」

 

 憂いを帯びた表情で語るクイントを見ながら、プレシアはなんとも言えない表情で相槌を打つ。

 

 養子という発言にプレシア自身もなんとなく思うところはある。

 アリシアは正真正銘お腹を傷めて生んだ子ではあるものの、フェイトはそうではない。当然、自分の娘であると胸を張って言えるし、血の繋がった娘と言える。だが別の見方をすれば養子と言えなくもない。そんな不安定な存在でもあるのだ。

 

 アリシアとは別の意味で、常々フェイトについては色々と思考を巡らすことが多い。

 無論、フェイトの出生関係ついてはジュエルシード事件に関わった者たち以外には相談できないことなので、この場で口に出す事は決してないが。

 さきほどのクイントの言葉を聞いてゲンヤは頭を掻きながら語る。

 

「まぁ、なんつうか……あいつらを家族として迎えてから半年以上は経ってはいるんだが、どうにもまだぎこちなくてな……」

「なるほどな」

 

 銀時は顎を撫でながら合点がいったと言わんばかりに語る。

 

「どうりでおたくら娘、な~んか家に居ても強張った感じが抜けきらない感じだったんだよな。特にスバルなんかは元気娘って感じなのにどうにも他人の目ばっか気にしてる感じだ。(ここ)に慣れ切ってねェってことなのかねェ」

「ちょっと、さすがに言葉が過ぎるでしょ」

 

 無遠慮過ぎると感じてプレシアは席を立つと、ゲンヤは手を出して制す。

 

「いやいいんだ。この半年、俺ら夫婦もずっと悩んでてきたことだからな。こうやってはっきり言ってくれる方がありがたい」

「えッ、ええ……あなたたちが言いなら」

 

 ゲンヤの言葉を聞いて、銀時に対する苦言を止めるプレシア。

 ゲンヤは両膝の上に腕を乗せて、両手の指を絡めながら真剣な表情で自身の悩みを打ち明ける。

 

「半年……されど半年だ。長いようで短い時間あいつらと一緒に居たワケだが、どうにも今一歩溝がある感じだ。あいつらに本当に安心できる居場所を与えられてない、そんな空気を薄々感じてはいたんだ。なんつうか、近づきたくても近づけない、そんな感覚をたまに覚えるんだ」

 

 ゲンヤに続いてクイントも暗い表情を浮かべながら自身の悩みを吐露する。

 

「お腹を痛めた子でもない。ましてや赤ん坊の頃から一緒に時間を過ごしてきたワケじゃない。家族として絆がどうやったら得られるのか不安な部分もないと言えば嘘になりますから」

 

 ――お腹を痛めたワケでも赤ん坊の頃から一緒なわけでもない……か……。

 

 クイントの言葉を聞いてプレシアも少なからず彼女たちの立場を自分と重ね合わせしまった。

 血の繋がりこそあるものの、実質本当の親子として過ごした時間は少ない。だからフェイトとこれから上手くやっていけるか? 精神的に不自由はさせないだろうか? という不安は抜けきらないところもあるのだ。

 

 ナカジマ夫妻の悩みを聞いた銀時は、顎を掻きながらなんでもないと言わんばかりに口を開く。

 

「まァ、なんだ……。俺はそこにいる親バカみてェにガキ持ったことがねェから分かんねェけどよ……」

「ん?」

 

 親バカなどと言う失礼な発言にプレシアは少しムッとしてしまう。(本人自覚なし)

 銀時は言葉を続ける。

 

「あんたたちが知ってるかどうかは知らねェが、俺の国には『生みの親より育ての親』って言葉があんだよ」

「生みの……親より……育ての親……」

 

 銀時のことわざをゆっくりと復唱するゲンヤ。

 銀時はゲンヤの瞳をまっすぐ見つめながら言葉を掛ける。

 

「まぁ、なんつうか……親ってのは、ガキに認められて初めて親になんじゃねェの? 親と子の絆なんて積み重ねてなんぼだろ。信頼だとか絆とか繋がりだとか、生んだ時に股と一緒にセットメニューみたく付いてくるもんでもあるめェしよ。たかだか半年かそこらだろ? ガキが物心付くのに五年くれェかかんだ。もうちょっと粘ったって罰は当たんねェよ」

 

 銀時から言葉を受け取ったゲンヤはフッと笑みを浮かべて、そうだな、と言ってうんと頷き、頭を掻く。

 

「ハハ……確かにな。他の親御さんたちに比べたら、俺たちなんてまだまだ親としてペーペーも良いとこだったわ。粘り強く根気強く、あいつらに一歩一歩近づく努力をしねェとな」

「私たちちょっと……焦り過ぎだったのかもしれないわね」

 

 クイントも銀時の助言で少し気が楽になったのか苦笑いを浮かべている。

 

 ――そうね……。あの子と時間は……大切にしていかないと……。

 

 プレシアもプレシアで銀時の言葉を聞いて娘と親子として家族として触れ合う時間をもっと大事にしていこうとあらためる。

 すると銀時は朗らかに笑うゲンヤの肩に手を置いて、真顔で告げる。

 

「まぁ、四年も立ったらスバルもギンガもあんたと風呂入るのも嫌がるだろうけど。まぁ、頑張れや」

「それはいやだぁぁぁぁ!!」

 

 とゲンヤは頭を抱えて顔を青ざめさせる。

 

「娘とお風呂に入った思い出すら持てずおっさんになっていくのは嫌すぎる!! でも今無理に誘って生理的に嫌われようもんならすんげー凹む!! 俺は一体どうすれば!!」

 

 父として男として色々と微妙な立場に立たされるゲンヤの姿にプレシアとクイントは苦笑を浮かべる他なかった。

 プレシアはふと思い出したように銀時へと問いかける。

 

「そもそもあなた、なんで下に降りて来たの?」

「あッ、ジュースとか入りますか? お菓子の方はもうすぐ夕食なので子供たちに上げられませんけど」

 

 プレシアの問に続いてクイントが尋ねると、銀時は頭を掻きながら告げる。

 

「あァ、ジュースは頼む。あと、俺的には肉より菓子派なんだが、欲しいもんはそれじゃねェんだわ」

「じゃあ、なにが欲しいの?」

 

 プレシアの問に銀時は視線を少し流してから、口を開く。

 

「この世界にさ、折り紙とか新聞紙ってあんの?」

「へッ?」

 

 プレシアが呆けた声を漏らしている頃、ナカジマ姉妹の部屋では。

 

(銀時さ~ん……早く戻って来てくださ~い……)

 

 大人姿だと気まずくて、二人を和ませようと猫の姿へと変身したリニスは、スバルやギンガにわしゃわしゃともみくちゃにされて、少し後悔しているのだった。




第八十四話の質問コーナー:https://syosetu.org/novel/253452/94.html
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