変わっていく日々を君と   作:こーど

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第八話 翳る信頼その答え 中

 

 

 

 

 

暗い世界が眩しい。

ゆらゆらと右へ左へ揺られながら、そう思った。

街を照らしていた綺麗な夕日は、もう遥か遠くに沈んでしまっている。

だけど、その代わりに大きさも色もばらばらな光の粒たちが、我こそはと精一杯に輝いて街を照らしていた。

 

私は車窓からそんな景色をぼんやりと眺めつつ、家に一番近い駅へと着くのを待つ。

……綺麗だなぁ。

なんて、胸の中で呟いてはみるけど、大してその景色に心震わされているわけじゃない。

それどころか意識の殆どは、景気を眺めることより今日を思い返すことに一生懸命だ。

今日のこと。

 

朝、昼、そして放課後のこと。

学校の全ての時間、もちろん、授業中や生徒会の作業中は無理だったけど、でもそれ以外の時間を全部使って今日は彼を追いかけていた。

追いかけて、捕まえて。

ちょっと、悪いしちゃったかなぁー。

そう、困惑しながら今日一日私の我儘に付き合ってくれた彼に申し訳なさを感じる。

そんなことを思うならしなければよかったのに。

そうやって、私の良心が自分を責める。

 

むぅ、そうなんだけどさぁ……。

分かってはいるし、止めようとも思ったけど。

でも。

うー、耐えきれなかったんだよぉ。

 

「……はぁ」

 

肩を落とすのと同じタイミングで吐息が漏れる。

ホントは、私が進んでこんなことしてちゃだめだよね……。

大局よりも目先のことに飛びついてしまった感じはある。

折角、あのお二人が上手いことしてくれたのにぃ。

噂のこと考えたら絶対しちゃだめなのにぃ……。

 

「……あぁぁぁぁぁ」

 

自分がしていることに、終いには頭まで抱えてしまう。

それもそのはず。

だって私と彼との間には、まだいつでも燃え上がりそうな火種が燻っている。

だと言うのに、それを理解した上で自分から薪をくべるようなことをしているのだ。

どうぞ、燃やしちゃってくださいって言ってるようなもんだよ。

自分のことながら、やってることが信じられない。

あぁー!もうっいろはってばダメな子っ!

 

……いや、ほんとうに。

まぁもし、もう一度火が付いたところで、今までのように激しく燃え上がることはないのだろうけど。

火元の対処を雪ノ下先輩と結衣先輩がしてくれたらしいから。

彼女の言葉を借りれば、とりあえず火元の消火作業は終わったからあとは残り火だけね、だそうだ。

そういうこと、らしい。

 

私が直接その現場を見たわけじゃないけど、今日奉仕部へお邪魔、もとい彼を追って訪ねた際にそう教えて貰った。

言い広めるのを止めること、そして私が元凶の彼女達へしたことについての口止め。

その二つを見事にしてのけたそうだ。

 

私のしでかしたことを教師に報告すれば、間違いなく私の立場を危うく出来るだろう元凶達の切り札。

それをどうやって封じたのか、気になって聞いてみたのだけど頑なに教えてくれなかった。

でも、その代わりにってことなのか、雪ノ下先輩と結衣先輩はただ私に柔らかく微笑みかけていた。

その微笑みときたら、

 

「ふ、ふっふぉぉぉ……」

 

お、おおおお恐ろしい、なな、ななにかを見たようななな……。

穏やかな笑みの裏で見え隠れしていた、威圧感を伴う黒い霧。

 

「あ、ぁわ、わぁぁぁ……」

 

思い出してぶるぶると身体が震える。

あ、あのお二方は怒らせてはいけない、絶対にだ!

私はそう改めて心の中で誓ったのであった。

……笑顔を見て、誓うことじゃないけどね。

 

「…………」

 

そんなお二人の活躍を、もしかすると無駄にしてしまうかもしれない私の行動。

本当にあの三人には迷惑ばかりかけている。

悪いとも、もちろん思っている。

 

だけど、耐えられなかった。

じりじりと迫りくるような焦りにいてもたってもいられなくなったんだ。

彼が、もしかしたら私の前からいなくなってしまうかもしれない。

そう心のどこかで囁かれて、私を焦がして、いつしかその焦燥感は不安へと変わってしまったから。

私を陥れる為に、私の所為で過去の傷を抉り返された彼は、いつか私を迷惑に感じて遠ざかってしまうんじゃないか。

先日の浮かれた勘違いが頭から冷たい水を浴びせられるように正されてから、私はそんな思いに駆られていた。

 

でも。

彼があの時に言った、『頼ればいい』って言葉の中には彼自身にも頼っていい、そんな意味も含まれていた。

……と、私は思っているんだけど。

 

だから、彼は何も言わずに消えてしまうことはないと私は信じている。

だってあの時の笑顔は、嘘を欠片も混ぜてはいないと確信しているから。

 

……私は信頼してる、先輩を。

それこそ、絶対の信頼ってくらいに。

ありったけの、これ以上ないくらいに信用して信頼してる。

そう思っていることに間違いなく自信がある。

絶対にあるのに。

それなのに、滲む不安は消えてはくれない。

まるで、私が彼のことを本当は信頼していないんだぞって騙し込んでいるみたいに。

 

『モノレールをご利用いただき、ありがとうございます。次は―――』

 

案内放送が次に停車する駅名を教えてくれる。

それを頭の片隅で聞き流しながら、不安に苛まれた意識の中で思う。

辿る道や行き着く先が分かっていること。

結果や結論とか、そういった答えが出てるのって、こんなにも楽なことだったんだ……。

 

そんなことを今更ながら改めて思い知った。

はっきりと進むべく道が分かっているこのモノレール、それに比べて私ときたら。

あっちへ向いたりこっちへ逸れたり、右往左往して行ったり来たり。

進んでるのか退いているのか、それすらもさっぱりだ。

くるくると空回りばかりしている。

もう複雑すぎて目が回りそう……。

そんなことを考えれば考えるほど、

 

「うぐぅ……」

 

誰にも聞こえないぐらいの小さなうめき声が勝手に漏れるのだった。

 

 

 

 

 

    ×  ×  ×

 

 

 

 

 

二月は寒い。

それが、例え晴れた日の昼間でもね。

人気のない廊下。

ただそこを歩いている、それだけでも十分に寒い。

だというのに、どこからともなくやってくる隙間風は纏わりつくみたいに触れてきて、私の体温を身勝手に奪う。

私はそんな極寒の中で身を震わせながら、とぼとぼと一人で歩いていた。

 

「ぐぬぅ……」

 

あぁー逃げられたー!

今日も彼を捕まえようと、午前の授業が終わってすぐ彼の教室へ飛んで行った。

だけど、昨日の今日で彼も同じ轍は踏むまいと、私が到着した時にはもう姿をくらました後だった。

すぐに廊下をきょろきょろと見回してみたけど、彼の痕跡は綺麗さっぱりなくなっていて、追いかけようにも手掛りゼロ。

 

まぁ、でもだよ。

そこで仕方ないと諦めておけば良かったと、そう今は思うんだけどね、諦めの悪いところがあるのがこの私であって。

逃してなるものかーって、そんな感じで私の火が付いちゃって。

昼休みの半分以上。

それだけ使って校舎を隈なく捜索したのだ。

……その結果、今の私が出来上がったわけ。

 

「ぐぬぬぬ……。先輩めぇ……」

 

きっと今ハンカチを手に持ったら、それを噛みながらキーッと恨めしそうな声を出しちゃいそうだ。

逃げたら追う。

引かれたら押す。

そんな本能に従って、あちらこちらと探したのに見つけられなかったのが、少し、あー……いや、なんかかなり悔しい。

むー、後姿も見つけられなかった。

前にもこんなことあったけど、彼が本気で逃げる時は私が知らないどこかに隠れているんだろうなぁ。

 

「ぬぅ……」

 

もういっそのこと、授業が終わる少し前にこっそり抜け出して尾行してやろうか……。

なんて生徒会長としてあるまじき行為を画策していると、引っかかった。

私の知らないどこか。

そう自分が胸の中で呟いた言葉。

それが、私の心にじわりと染みを作る。

私の知らない彼がいること。

それが、どうしようもなく引っかかって、

 

「……はぁ」

 

ため息が零れる。

まただ。

じんわりと滲んで、それからぴりぴりと焦げるみたいな不安。

そんな感情が私に沁み込んでいく。

彼への信頼が、隠れ場所があるくらいで揺らぐことなんてありえないのに。

隠し事があるくらいで変わることなんかないのに。

もし、そんなことがあったとしても絶対の信頼は揺るがない。

なのに。

不安はなくならない。

 

「うぅー」

 

また、ぐるぐると考えが輪っかになって回り始める。

あーあぁーもうわかんなーい!

 

「あぁー……」

 

一人で同じところを何度も行ったり来たりするくらいなら、もういっそ他の人の意見を聞いてみてもいいのかも。

でも、相談するなら誰だろ?

同級生の友達には……む、無理っ!

こんなこと相談したら、次の日からどんな顔して会えばいいかわかんなくなりそうだし。

 

じゃあ、両親?

んー、それもなんだか言い出しにくいしなぁ……。

あれやこれやと、人の顔を思い浮かべては理由を付けて消していく。

そして粗方の候補者が消えた頃、初めからそこへ収まるのが当然かのように、ある二人が思い浮かぶ。

 

優しい微笑みと朗らかな笑顔。

似てるけど、少しだけ違う二つの笑顔。

雪ノ下先輩と結衣先輩。

そりゃ、この二人なら相談出来るって思えるけど。

 

……でもなぁ。

こんな自分でもよくわかってないこと相談されても、二人ともきっと困るよね。

せめて、少しくらい自分の意見が出来てからじゃないと、ってそれが出来ないから困ってるのにぃ……。

そうすると、また一つ余計な悩み事が増えてしまって。

動いていた足を動かすのも忘れて、あーでもない、こーでもないと、うんうん頭を抱えていると、

 

「一色さん?」

 

「へっ?……ぁ」

 

まさに今、思い浮かべていたその人。

雪ノ下先輩が気が付くと心配そうに私の顔を覗きこんでいた。

 

お、おぉ?

思い浮かべたら目の前に本人が現れちゃった。

私の苦悩を解決する為に颯爽と現れたヒーローみたいだ。

雪ノ下先輩だから……白レンジャー?

って、いやいや漫画や小説じゃないんだから、そんな都合のいいことあるわけないよね。

ということは。

 

「なーんだ、ここは夢の中なんですかー」

 

そうなんだろうなー。

きっと私はお昼ご飯を食べた後、寝ちゃったんだ。

夢の中でも先輩方に助けを求めるなんて、この悩みがどれだけ私を困惑させているかがよくわかるなぁ。

 

「い、いえ現実だけれども」

 

「……デ、デスヨネー」

 

困惑しながら若干引き気味の彼女は、それでも律儀に私の言葉に答えてくれる。

い、いやわかってたんですよ。

ただ、あんまりも悩み過ぎてて少しだけ夢と現実の境界線が曖昧になってただけなんです!

……言い訳にもなってないね、これ。

むしろ、私頭おかしいです宣言だ。

 

「……まぁ、その辺りは触れないでおくわ。それよりも。一色さん、何か悩み事でもあるのかしら?」

 

「うぇ!?」

 

彼女は私の奇行にあえて触れず、生暖かい配慮をしたかと思えば、次に私の胸中をずばーんっと当ててきた。

まだ、なにも言っていないのになぜそれを!?

……ま、まさか、エスパー!

さては私の心を読んだんですね。

もー親交のある雪ノ下先輩とはいえ、読心術はぷらいばしーの侵害ってやつですよ!

 

「いえ、そのくらいさっきの一色さんを見ればすぐにわかると思うのだけど……」

 

「うっ……」

 

そう当然のように言われて口ごもる。

ま、まぁそうだよね。

確かに、さっきまで露骨に悩んでますってポーズしてたもんね、私。

そんな人に「おっ楽しそうだな」とか思う方がおかしいか。

夢オチ逃避に口ごもり。

そんな、夢の世界から抜け出しきれてない不審な行動が続いたからか、彼女は目尻をどんどん下げてさっきより心配そうにこちらを見つめる。

これは口を開けばきっと「保健室行きましょう」って台詞が出るに違いない。

 

あちゃー。

やっちゃったなー、いらない心配までかけちゃった。

私としては、いっつもお世話になってるから、無用な心配もご迷惑もかけたくないんだよね。

ふーむ。

さて、そうしない為にこの場をどう誤魔化して切り抜けるべきかな。

 

「…………」

 

って、今までの私ならそう思っていただろう。

それで、きっとテキトーな話題を振って、何も話さないまま逃げていただろう。

彼女からも。

そして、向けられた感情からも。

 

だけど。

今は違った。

ちゃんと、言わなきゃって思った。

逃げちゃだめだって。

そう思えた。

だって。

さっきから、私の中で蘇ってくるんだ。

 

―――頼ればいいんだよ、お前はな。

 

彼の言葉。

それと。

あの時に感じた、頼られない辛さ。

私は彼女にそんな思いさせたくなかった。

それに、私は彼に言ったんだ。

もうしないって、ちゃんと頼るって。

だから。

 

「あの、雪ノ下先輩。もし、もしですよ?良かったらなんですけど……。その、私の話をお聞きいただけませんか?」

 

彼女は私の言葉に驚いたように目を瞠った。

でも、それは一瞬。

すぐに表情は驚きから嬉しげな微笑みへと変わる。

 

「……えぇ、私でよければ喜んで」

 

こうやって誤魔化しもはぐらかしもせずに、真正面から真剣に誰かを頼るのって初めてな気がした。

だからかな?

その返答に肩の力が抜けるのを感じた。

無意識の内に緊張していたみたい。

一度、ゆっくりと息を吐いて気持ちを落ち着かせる。

 

「えっと、ですね―――」

 

それから、私はぽつりぽつりと話し始めた。

彼を本当の本当に信頼していること。

でも、それなのに不安が抑えられないこと。

そして、そんな自分がわからなくって、彼を本当に信頼出来ていないのかもしれない自分が嫌だということも。

全部、正直に打ち明けた。

 

彼女は、私のなにも纏まっていないちぐはぐな説明でも真摯に耳を傾けて、受け止めてくれた。

あ、でも彼が好きってことは言わなかった。

なんとなくだけど。

今はきっと。

その時じゃないって、そんな気がしたから。

だから、それだけは秘密のままにしておいた。

そして短くはない時間をかけて、それ以外のことを全て話終える。

彼女は窓から空を見上げながら私の話をゆっくりと反芻して、そして一つの言葉を呟く。

 

「……絶対の信頼、ね」

 

それは私が説明する中で口にした一つ。

今回のキーワードで、それでいて悩みの種。

それが、どうにも彼女にはしっくりこなかったご様子。

視線を空に投げかけたまま、少しだけ逡巡した後に、

 

「一色さん。改めて聞くけれど一色さんは私へ相談、もとい意見を求めているということで相違ないかしら?」

 

今更ながら、彼女はそんなことをいった。

 

「へっ?」

 

あれ、こっちとしては端からそのつもりでお話ししていたんだけど。

そうは取れなかったのかな?

ちょっとだけ呆気にとられていたら、「わかっているけれど、でも、まだ私は聞いて欲しいとしか言われていないから」と彼女は言葉を付け足した。

大切なことを相談するならば、きちんとそう言いなさいってたしなめているみたいに。

 

「……はい。雪ノ下先輩のお考えとか、教えて欲しいです」

 

「わかりました。では、今から言うことはあくまでも私の意見であって、私の考えよ。だから鵜呑みにはしないでね」

 

私の返事に小さく頷いた彼女は、そう念を押す。

似ている。

つい先日、彼から教えられた言葉。

―――お前はお前だ。お前以外に似せなくていい。

その言葉の意味と、なんだかよく似ていた。

 

「さっき一色さんが言った絶対の信頼、」

 

それについて少し厳しい言い方になるかもしれないけれども、とそこで一旦彼女は言葉を区切った。

遠いどこかへと向けられていた澄んだ黒い瞳は、そこから私へと移り変わる。

ぶつかる視線。

 

確認を取ってるの、かな?

その意思を汲み取って、私は頷いて見せる。

彼女は私の返事を受け取ってから、口火を切る。

 

「それは確かに文字で見ても言葉で聞いても、とても良いことのように感じるわ。実際、一般的にはそういった意味で使われているわね」

 

だけれど。

 

「その本質は怠惰であり、全てを捨てて、只々逃げるだけの忌むべく卑怯な行いよ」

 

苛烈な言葉は、私の考えとはまったく違う色をしていた。

信頼が怠惰で卑怯?

怠惰ってなまけるとかで、卑怯は勇気がないみたいな意味だよね。

……うーん?

私の中での信頼と、怠惰、そして卑怯はどうやっても結びつかない。

見当がつかない疑問が私の表面に現れて、勝手に視界が斜めになる。

 

「……ふふ」

 

私のその仕草が面白かったのか、彼女は真剣な表情を崩して緩やかに微笑んだ。

……うわわぁぁぁ。な、なにこれ照れるぅ。

こ、この妙なそわそわ感というか気恥ずかしさ。

なんだか、お母さんに授業参観でも見られるみたいな感じ。

 

「一色さん。何故なら、その絶対の信頼とは―――ん?」

 

柔らかな微笑みをそのままに、彼女が続きを口にしようとすると「キーンコーン」と予鈴がその邪魔をした。

ちょ、今良いとこなのにこんなのある!?

で、でもまだ予鈴だし。

雪ノ下先輩、いや先生の御言葉を聞く時間は残されてる!

さぁさぁ、続きをお願いします。

 

「……今は、ここまでね」

 

えぇそんな!?

凄い気になるところで止まってますよ雪ノ下先生!

この前からずっと悩みに悩んでて、ようやくヒントらしいものを貰えそうなのに!

な、なんたる焦らし。

この苦悩が続くのですか……。

 

「焦らしているつもりはないのだけど、ごめんなさいね一色さん。私、次の授業が移動教室だから早めに行かなければならないの」

 

「うっ、うぅぅ。……はーい」

 

これ以上ぐずったら彼女の迷惑になってしまう。

ここは、よき後輩として引き下がらなきゃ……!

内心ではそう思っているんだけど、でも、続きがどうしても気になる私は無意識に縋るような目をしていたんだろう。

彼女は、私を見てからもう一度「ふふっ」と笑みを零した後、

 

「放課後までの宿題ね」

 

答え合わせはその時に、と小さく手を振りながら言い残して、この場を後にした。

その後ろ姿を見送りながら、思うことが一つ。

なんというか、まぁ。

 

「いい女って感じだなぁー」

 

一連の仕草とか流れが、もう大人の女性って感じ。

それに、私がどれだけ悩んでもわからないこの矛盾した気持ちを、その先にあるものを彼女は知っているみたいだし。

それも含めて、大人っぽい。

一つしか歳は変わらないのに、私とは大違いだ。

一体何をやったらあんなに大人っぽくなれるんだろ?

 

「……むむー」

 

まぁ、これは長期的な宿題として、とりあえず後回しにしよう。

放課後までに終わらせなくちゃいけない宿題があるんだから、先にそっちへ取り掛からなきゃ。

信頼と怠惰、卑怯。

見たことのない配色のパレットだ。

上手いこと混ぜないと変な色になっちゃいそう。

三色が混ざり合った鮮やかな色を目指す為、私はさっきよりも頭をうんうんと悩ませながら教室へと足を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第八話 翳る信頼その答え 中

 

 

 




 









お疲れ様でした。
不堪な文章にもかかわらず、ここまでお読みいただきましてありがとうございます。


昼間も暑さを感じにくくなった、今日この頃。
皆様は如何お過ごしでしょうか?

自分はアニメ「キノの旅」おかげで、曇りの多い憂鬱な日々を健やかに営んでおります。
いいですよねぇ、あの雰囲気。
それに触発されて久しぶりに原作を読み返して、昔を懐かしんだりみたり。
それに連れられて出てきた他の本を読んでみたり。
紅、狼と香辛料、半分の月がのぼる空、キーリ、されど罪人は竜と踊る、人間失格、等々。
ただ今、一昔前の本が自分の中でブームとなっております。
……えっ?最後のだけ古さが違う?
お、面白いからせーふ!


それでは、皆様。
また再来週辺りでお会いできることを、心待ちにしております。










×××裏物語×××




昼休憩、某ベストプレイスにて。

「八幡っ」

「んぁ?戸塚?今日は練習しねぇの?」

「ううん、後でするよ。その前にね」

「なんかすることがあると」

「うんっ!八幡に聞きたいことがあったんだ」

「俺に?」

「そう八幡に」

「……そうか。わかった。みなまで言わずともわかってる」

「えっ?」

「式場を何処にするか聞きにきたんだな」

「……式場?八幡何かの式を開くの?って、そうじゃなくって。八幡!僕に隠し事してたでしょ?」

「隠し事?」

「噂のことで、だよ?してない?」

「い、いや別に隠し事なんがしてねぇ―――」

「ウチの部の後輩くん」

「うっ」

「いつもは、なれないかもしれないけど。でも、今回のことならボクにだって八幡の力になれたよ?」

「…………」

「なのに、教えてくれないんだもん。……そんなの寂しいよ」

「……だが、戸塚には何も関係がないだろ?そんなことに態々首を突っ込まなくとも―――」

「―――ううん。ボクも関係あるよ」

「どこに?」

「ボクの友達が困ってる。なら、放ってなんかおけないよ」

「と、戸塚」

「ボクは八幡の味方、だよ?だから困ってるのに隠し事なんて、」

―――そんなことしないでよ、八幡。

「と、戸塚ぁ―――」


この後、めちゃくちゃ何処かで見たシーンが繰り広げられるのだった。









  

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