変わっていく日々を君と   作:こーど

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第十話 罪の告白流れゆく 下ー下

 

 

 

 

 

「どうぞ」

 

「……えっと。ありがとう、ございます」

 

玉砕覚悟のドキドキ雪ノ下先輩お宅訪問から、一気にお通夜ムードへと急降下した私は、結衣先輩に導かれるままリビングへと連行された。

先日は楽しい空気で満たされていたこの部屋も、今は圧迫感と緊張感が漂い、私の息を浅くさせる。

目の前に出された紅茶の香りですらも、どこかよそよそしく感じた。

 

「送辞書くので忙しいのにごめんね、いろはちゃん」

 

「い、いえいえ。そんな滅相もないです」

 

「外、寒かったでしょう?部屋の温度は大丈夫かしら?」

 

「は、はい。だいじょーぶですけど、えっと……」

 

お、重すぎる……。

自分の紅茶を淹れ終えた雪ノ下先輩がソファに腰を掛けると、ただでさえ重たかった空気は私を潰さんとせんばかりにその圧を増した。

ぴりぴりと神経が跳ねるみたいな感覚に、膝の上で動かせない手は固くなる。

 

な。なにか話さないと窒息しちゃう……!

この場の空気に耐え切れなくって、自分から今日のお呼び出しはどんなご用件で、って聞こうと口を開く。

が、口が浮ついて上手く回らないし、それどころか吐く息は音にならない。

 

視線が泳ぐ。

雪ノ下先輩から結衣先輩へ、それから紅茶の順にくるくると視線が廻っていく。

しばらく二人は私の様子に首を傾げたまま、中途半端に途切れた言葉の続きを待っていたけど、私がどうにも話始めないのでお互いに目を配らせてから、

 

「……ねぇ、一色さん。聞いて欲しいことがあるのだけれどいいかしら?」

 

と言って、重い沈黙を破った。

 

「……えっ?」

 

きっとこれから耳に痛くて、心にぐっさぐさと刺さるお説教が始まるものだとばかり思っていた私は、想定の範疇を簡単に越えてきた雪ノ下先輩の言葉に呆けた声を漏らした。

えっ、聞いて欲しいこと?

雪ノ下先輩と結衣先輩が私に相談?

ってことは、

 

「お説教じゃないんだ……」

 

「えっ?なんでおせっきょー?」

 

「あぁーいえいえ!気にしないでください、こちらの話です!」

 

とりあえず予想していた事態は避けることが出来たみたい。

親しい二人にお説教なんてされたら、私きっと二日は寝込む自信があったよ。

 

「えっと、それで聞いて欲しいことですよね?私で良ければ喜んでお聞きしますけどなんでしょう?」

 

ホッと胸を撫で下ろして、さっきまでと比べて嘘みたいに軽くなった手で少し冷めた紅茶を取った。

いつの間にか乾いていた口の中に紅茶がじんわりと染みこんでいく。

 

「あの、ね。その、実は私―――」

 

雪ノ下先輩はそこで小さく息を吸って、揺れていた瞳を瞼で覆い隠した。

……どうしたんだろう?

その表情には、いつも凛然とした彼女らしからぬ不安と緊張の色が浮かんでいる。

さっきまでとはまた違った緊迫感が私達の空間を狭くしていた。

そして、いくつか間を置いてから次にその瞳が開かれた時、

 

「―――私、比企谷君が好きなの」

 

雪ノ下先輩は再び私の想定を軽々と飛び越えた。

 

「……ぇ。……えっ?」

 

たった数文字の言葉が飲み込めなかった。

聞き返すみたいに同じ言葉を二度繰り返す。

 

あまりに突然の雪ノ下先輩からの告白。

きっと、もう一度聞かされたとしても私はそれを上手く飲み込めないだろう。

だって、こんなにも頭は真っ白になって動かないのだから。

何を言ったって、私の前で止まることなく通り過ぎてしまうだろう。

 

驚きや戸惑いだとか、そんな色んな感情に翻弄される。

身体は重い空気に張り付けられて動かせない。

だというのに、口だけは「ぇ?」とか「あ、えっと」とか、そんな意味を為さない呟きを流し続けた。

 

「いろはちゃん」

 

私の困惑を断ち切るようにいつもとは全然違う、鋭い口調で結衣先輩は私を呼ぶ。

呆然とその声の方に目を移す。

目が合うと結衣先輩は、ほんの少しだけ朗らかに笑ったかと思うと、すぐに表情を引き締めて、

 

「あたしも好きなんだ。ヒッキーのこと」

 

迷いなく、はっきりとそう告げた。

なんで……?

様々な単語が入り乱れる私の中で、一番多く頭を過ぎったのはこれだった。

 

二人ともそれ、隠してたんじゃないの?

未だに回らない頭は返す言葉を考えてなんかくれない。

けど、その代わりに彼女達の間で出来上がっていた暗黙のルールが思い浮かべていた。

いや、そんなものは出来てもないし、二人が守っていたわけでもないんだ。

でも二人は頑なに彼への好意、それを見せることをしなかった。

暗黙のルールというよりも、それはこれまでの事実だった。

なのに、急にどうして……?

 

「……そうね。確かに隠していたわ。私も由比ヶ浜さんもね」

 

私の困惑を正しく読み取った雪ノ下先輩はそう認めた。

 

「これだけ近くにいるのだから、お互いわかっていたわ。……ずっと前から」

 

「そうだね。あたしもゆきのんの気持ち、ずっと前に気づいてた」

 

二人はお互いのことを話しているのに、お互いを見ていなかった。

その視線の先はずっと私だけに向けられていて、逸らされることはない。

 

「気づいていて、知っているけど。でも、あたしとゆきのんは知らない振りをし続けた」

 

この関係が変わってしまうのを怖がって。

この関係が終わってしまうのが怖がった。

 

「一色さん。先日あなたに話した覚悟の話」

 

私達にも、まだそれが足りていなかったの。

自嘲しているみたいな苦笑いを雪ノ下先輩は浮かべた。

 

「でも、その覚悟もやっと出来上がった」

 

今まで出来なかった最後の一枚を重ねることが、やっと出来た。

苦笑いは溶けるようになくなって、輝きを増した瞳は小さな揺らぎさえ見当たらない。

今まで交わることのなかった二人の視線が重なる。

そこには同じ想い人を奪い合うような剣呑さはなくて、ただ真剣に澄み切ったそれだけが交わっていた。

 

「いろはちゃんにはあんなこといったけどね、あたしもゆきのんもそこはずっと逃げてたんだ。でも変わらなきゃって、このままじゃダメだって思ったの」

 

一生懸命ないろはちゃんを見て、そう思えたの。

頷き合った二人は、そのどこまでも真っ直ぐな光で私を照らした。

 

「一色さん。私達は進むわ」

 

進む?

一体、どこに二人は進むのだろう。

……いいや、わかってる。

それは、今まで隠して逃げていた思いを受け止めて、躊躇していた彼へと踏み込むってことなんだ。

 

「それでね、いろはちゃんにお願いがあるの」

 

「お願い、ですか……?」

 

「そう。私と由比ヶ浜さんからのお願いよ」

 

二人からのお願い。

本当ならば二つ返事で快く受けたい。

だけど、なんだか心がちくちくと痛んだ。

まだ、その内容だって聞いてもいないのに。

 

「あたしたちを応援してくれないかな?」

 

「応援って……何をですか?」

 

ちくちくとした痛みは、ずきずきとした痛みになる。

言っていることも、その意味もわかっているけど、でもわからない振りで聞き返した。

少しでも、それが私に辿り着くのを遅らせる為。

 

「私と由比ヶ浜さんが比企谷くんと上手くいくようによ」

 

結衣先輩の足りない部分を雪ノ下先輩が補足する。

そうされると、もうとぼけることが出来ないくらいに明確だった。

私の心音が一際大きく跳ねる。

それからは、一回一回の脈動が怖いくらいに大きい。

血管が張り裂けてしまいそうで、心臓がつぶれてしまうんじゃないかって思った。

 

「どう、かな?お願いしていい?」

 

断りたい。

すぐにそう思った。

私だって彼のことが好きなんだから。

そのお願いを受けるわけにはいかない。

 

けど、そう思ってもそれをすぐに言い出すことは出来なかった。

いいや、出せなかったんだ。

やっぱり二人への裏切りみたいで、私はすぐに断れなかった。

 

本当に大切な二人。

だからこそ、幸せになって欲しい。

なら、私がここで引き下がるべきなのかもしれない。

だって後から来て、図々しくも三人の輪に入れて貰ったんだ。

それにも拘わらず彼に好意を抱いてしまう、そんな恩知らずの私なんかはこれ以上を求めちゃ、いけないよね……。

 

「頼めるかしら?一色さん」

 

勝手に伏せていた顔が弾かれるように舞い上がる。

私の口は何も言わないのに、縋るみたいに戦慄いていた。

引き下がるべきだとわかっていても、何かが邪魔をしてそれが声になって出なかった。

 

こんな私の様子を見れば、もしかしたら口にせずとも胸中をわかってくれるかもしれない。

そう思って二人を見つめる。

けど、二人は何も言わなかった。

ただ、じっと私の返答を待つだけ。

 

―――なんで?なんで言えないの?

 

色んな感情が私の中で渦巻く。

情けない顔を見られたくなくって、隠すように俯いた。

私が引けば上手くいく。

全部が丸くは収まらないかもしれないけど、余計な争いはひとつ減る。

ならそうするべきだ。

 

私は後から来た。

雪ノ下先輩と結衣先輩が先にだった。

彼のことを好きだった。

じゃあ、一番最初に引くべきなのは私だ。

二人を裏切ることなんて、出来ないし……。

始まる前から、終わっていただけだ。

始める前に、終えるだけだ。

じゃあ、もう答えは決まっているじゃないか。

だから私は、

 

「……わかりました」

 

そう返事をする。

わかりましたって、二人に伝える。

さっきまで言葉にならなかった私の声は、今は寧ろいつもより明瞭だった。

 

覚悟が固まったからなのかもしれない。

私の中で最後の一枚が重なったのかもしれない。

薄かった覚悟は、もう厚く固くなったのだんだろう。

ここから、私は揺るがない。

 

「……そう。ありがとう一色さん」

 

「……ありがと、いろはちゃ―――」

 

俯いて表情は見えなかったけど、頭の端で聞こえた二人の声はなんでか少し悲しそうに落ち込んでいる気がした。

でも、今はそんなことなんかに構っていられない。

だって、私の答えには続きがあって、

 

「―――では、お断りします」

 

結衣先輩の言葉をぴしゃりと遮って、はっきりと断った。

 

「……それは、何故かしら?」

 

短くて冷たい質問が私に突き刺さる。

雪ノ下先輩の声は少し低くなっていた。

それだけで、私の身体も心も小さく揺れる。

 

怖い。

そう思った。

雪ノ下先輩と真正面でぶつかりあうのが、とても怖かった。

 

酸素が急に薄くなったみたいな息苦しさに、無意識に息を呑んでしまう。

その恐怖は、怒りの感情を向けられるからではなくて、変わってしまうことへの恐怖だった。

さっき、二人が言ったことと同じだ。

私も、この関係が変わってしまうのを怖がって。

私も、この関係が終わってしまうのが怖がった。

もしかしたら、二度と元には戻れないかもしれない。

指先どころか、身体全体がその恐怖で震えていた。

 

……けど、私は退かない。

 

「私も先輩が―――」

 

この先を言ってもいいの?

そうやって、私の何処かから声が聞こえてくる。

後からの私が、入れてもらった私が、そんなことしていいのって。

 

……いいの。ううん、言わなきゃダメなんだ。

囁きを否定する。

それじゃダメなんだと、私はこの三人に教えてもらってきたんだから。

 

踏み出せないのなら、明日からも、一生わたしは踏み出せはしないってことを。

たくさん傷つけ合って、傷つき合って、それでも共にあろうとするってことも。

私には私のやり方があって、他の私以外の奴になんか似せなくていいって。

大切だからこそ、途中で諦めたり、楽な道は選んじゃダメって。

その為に覚悟を積み重ねるんだ。

 

私は逃げない。

傷ついても踏み出して、私のやり方で進む道を決めていくんだ。

このまま、この想いを隠して続ける関係なんか、そんな脆い偽物はいつかきっと壊れてしまうから。

だから。

 

「―――好きだからです!」

 

厚くて固い覚悟に支えられた私は、そう言い切る。

私達の間に何も感じられない沈黙が降り注いだ。

そんな中でも私は二人から目を逸らさないし、二人は私から目を逸らさなかった。

お互いをぶつけて、逃げる素振りも見せずに視線を交わす。

 

「……それで、いいのね?」

 

雪ノ下先輩はまた一段低い声色でそう言った。

圧迫感が私の全部を握り潰さんとする。

それでも私は、

 

「はい」

 

迷いなく、間髪入れずそう返した。

 

「……そっか」

 

言葉は軽いけれど、結衣先輩にいつもの朗らかさはない。

いつもでは見れない、ずっと深くに秘めている重みを湛えていた。

 

「一色さん」

 

雪ノ下先輩は結衣先輩にちらりと目を配った後、鋭い眼光で私を射抜く。

その表情はさっきよりも真剣で、周りの空気を完全に従えて、動きを止めさせていた。

耳にはノイズすら入ってこない。

世界が止まった。

そう感じるくらい、何もかもが止まっていた。

 

少しの間を経て、雪ノ下先輩の口が開かれようとする。

その動きがとても遅く見えた。

一瞬の世界が間延びして、私を覆い尽くそうとしている恐怖が背筋を走っていく。

そして、二人から紡がれる、

 

「まぁ知っていたけども」

 

「まぁ知ってるけどね」

 

その言葉が私の身を引き裂こうと襲いかか…………って、え?

 

「あれ?……えっ?」

 

ん、んん?

ちょっと待って……。

これ、おかしいよね?

流れが間違ってない?

 

こういう時ってさ、お二人とも私に厳しいことぶつけるのが定番じゃないですか?

そんでもって、それでも私が諦めずに彼への深くて大きな想いとかを打ち明けて、なんやかんやあってハッピーエンドみたいな展開が一般的だと思うんですけど……?

 

「あれだけあからさま態度なんだから、わからないはずないじゃない」

 

「そうそう。知らない人が見てもあれならわかるよねー」

 

事も無げにそう言った二人は、揃って呆れた表情をしている。

なにこれ、思っていた以上にバレバレなんですけど……。

えっ、じゃあ私だけがバレてないって思って、どうやって打ち明けようか悶々としてたの?

と、言うかもしかしてその悶々としているのも?

 

「勿論、わかっていたわ。由比ヶ浜さんとなかなか言い出してくれないわね、って話していたほどよ」

 

「んでね。いろはちゃん言い出し難そうだったから、ゆきのんと作戦を立てたの」

 

ちょんちょん突いて言わせてしまいましょう大作戦。

結衣先輩は朗らかに笑いながらそう言った。

「大成功だったねー?」って続けると、雪ノ下先輩は「少しひやりとしたところもあったけれど、まぁ成功ね」って返した。

 

「……ぇ。え!?ちょっ……えぇぇぇぇ!?」

 

お見通しだったっていうの!?

って、言うかあの緊迫した雰囲気も、私をぺったんこにせんばかりの圧迫感も全部作り物!?

お、恐ろしっ!

この二人恐ろしっ!

私もどっちかというと得意な方だけど、ここまで迫力ある演技は絶対出来ないよ。

なんというか。

私から踏み出したように見せかけて、これ両手思いっきり掴まれて引っ張り出された感がすごい……。

 

「ふふふーいろはちゃん、これからは恋敵としてもよろしくね!あたし負けないからっ!」

 

世間一般が恋敵に向ける表情とは全然違う。

ぽわっとした屈託のない笑顔で結衣先輩はそう言った。

 

ちょ、ちょっとお待ちくださいよ。

私まだ状況を飲み込めてないっていうか、シリアスからの急展開に追いついていけてないっていうか―――

 

「私も負けないわ」

 

雪ノ下先輩も優しく微笑みながらそう言う。

だ、だからちょっと待ってくださいってば。

話しに着いていくなんてもんじゃなくて、引っ張っていくを越えて、されるがままに引き摺られてるんですけど私!

ねぇそれ私のやつですから!

お二人はそうじゃないでしょ!

強引さは私のアイデンティティですよ!

 

「でねでね。あたしとゆきのんで考えたんだけど、アピールするのを高耐性ってやつにしてー……」

 

「発音がおかしいから訂正しておくけれど、高耐性じゃなくて交代制よ。それじゃすごく頑丈なアピールを考えることになるわ」

 

「そうそう、それ!」って言いながら結衣先輩は鞄の中からメモ帳を取り出して、カレンダー欄を開いた。

あのー、さっきから私のこと忘れてませんかねー?

今の私的には、高耐性とか交代制じゃなくて、この状況への抗体性とか後退性が欲しいんですけど……。

 

「ここにヒッキーいないし、さっそく順番決めちゃおー!」

 

「あ、あのー?ちょっと待って欲しいと言いますか、少し時間をで―――」

 

「―――私は一日目を所望するわ。先手必勝で即陥落させてみせるから、二日目以降は決めなくてもいいかもしれないわね」

 

「むっ、言うねーゆきのん。でも、あのヒッキーがそう簡単に堕ちるとは―――」

 

あれよあれよと流れて行く話に待ったを掛けようとしても、濁流に飲まれる落ち葉の如く、さらりと流されてしまう。

やだ、こんなやり口まで私に似せてきてるんですけど……。

私の個性がピンチなんですけど……。

 

そんな完璧に置いてけぼりの私を差し置いて、二人は楽しそうに彼へアピールする日付を決めていた。

こっちの頭は未だにシリアスシーンを引き摺っていて、上手い事回らないって言うのにだ。

けど、どうにかしてこの二人にストップをかけないと、このままじゃ話が全然纏まらないまま終わっちゃう。

混乱しまくっている自身を落ち着かせる為に「すー、はー」って何回か深呼吸を繰り返して、

 

「私は三日目で!!突然のことに揺らぎ始めた先輩を一気に堕としますんで三日目で!!」

 

私は身を乗り出して、今日から三日目の日付を思いっきり指差した。

シリアスシーンのちゃんとした解決?

話しの纏まり?

知りませんよそんなこと。

それより彼をどう堕とすかの方が大切だし。

 

「……なるほど。そういう手もあるのね」

 

「ちょ、ちょっと二人ともまだ決まったわけじゃないからねっ!?あたしの意見も聞いてからだから!えっとあたしは―――」

 

ここはとある高級マンションの一室。

学校と違って、玄関も廊下にも人気がなくて、流石高級マンションって感じの上質な静けさが漂っている。

その一角にあるこの部屋の中もいつもはそうなのだろうけど。

でも、今日は「特に何かあるわけじゃないけど、なんかこの日がいいっ!」なんて声や、「あの由比ヶ浜さん?少しは策を練った方が……」なんて声が賑やかに部屋を満たしていた。

 

二人に告白をした結末。

裏切りと呼べる、そんな罪の告白があった後。

怒られたり、悲しまれたり、失望されたり。

そんな色んなことが起こるものだと私は思っていた。

 

でも、現実は想像していたものとは全然違う。

私達の関係にひびが入ることまで想像したというのに。

今の私達はそんなものとはまるで無縁で、なんの引っ掛かりもなく心の底から笑い合えていた。

絆は解れることもなくて、寧ろ強くなった気がする。

これはきっと、逃げていたら手に入れられなかった。

震えるくらいに怖いことから、本当に大切な二人から逃げなかったからこそのものなんだろう。

 

そうだ。

私は……ううん、一人じゃくて私達は、だね。

私達は、また一歩前に進んだんだ。

そして近づいたんだ。

本物へ。

この賑やかさと共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十話 罪の告白流れゆく 下ー下

 

 

 




 









お疲れ様でした。
拙い文章にもかかわらず、ここまでお読みいただきましてありがとうございます。


第十話、完結!

残り三日。
(気力も体力も)あと僅か……。



こほん。
それでは、皆様。
また近いうちにお会いできることを、心待ちにしております。









 
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