8つのステージに別れて行われる第一ステージ、どのステージもZ戦士が勝つことは当然であるが、ステージごとにZ戦士の戦い方の違いがよく分かるものであった。
第一ステージの悟空は戦闘能力に天と地以上に差があるのでウォーミングアップとして軽くいなしながら淡々と対戦相手を場外負けにさせている。
「おらこんな戦い初めてだけど、結構おもしれえな。」
どんな戦いであろうとも、戦い自体が好きな悟空であった。
第二ステージのベジータはというと、
「フン、くだらん、早くカカロットとやらせろ。ハアッ!」
詰まらない戦いだと憤りながら、気を解放し全ての対戦相手を場外に弾き出していた。
地球暮らしで丸くなっているのがわかる戦いである。
以前の地球来襲時であれば全ての対戦相手は粉微塵になっていただろう。
第三ステージはピッコロ。
「フン。」
ベジータと同様にくだらなそうな表情で宙に浮いて成り行きを見守っている。
またピッコロの気迫や威圧感が別格な為に好き好んでピッコロに襲い掛かる者もいなかったので、対戦相手同士での潰しあいを見ているという状況だ。
そして最後に残った者を潰す、まさに利にかなった戦いである。
第四ステージ、第五ステージのサイヤ人の息子悟飯とトランクスは似たような戦いである。
力を隠しながら、来るものだけを倒し自ら攻めることはしないといった感じである。
戦い方が似ているのは、大人トランクスの武術の師匠が悟飯であったためでもある。
因に、トランクスの師匠が悟飯、悟飯の師匠がピッコロ、並べるとピッコロ→悟飯→トランクスという感じであり、トランクスはピッコロの孫弟子といってもよい関係である。
第六ステージのクリリンは、皆と同じZ戦士であるが他のステージとは違い少し苦戦していた。
クリリンの多人数相手をする戦いはサイバイマン戦以来であるからだ。
といいながらも、クリリンも戦闘能力だけならフリーザ第一段階程の力があるので当然勝ち上がるのだが。
第七ステージ、天津飯は今までチャオズとのみの修行で他の者との手合わせはなかったために、体をならすことを第一に戦っている。来る本番の第二回戦の為に。先を見据えた戦いである。
第八ステージ、激闘が繰り広げられている。
「はい、はい、おー。」
「グハァ」
「どわぁ」
「ヘギャア」
戦闘力6位の相手に戦闘力6桁越えが手加減なしに、猛威をふるう。
全く大人気ない戦いである。
しかし、本人はその戦いを楽しんでいた。
(俺が無双している、なんて楽しいんだ、今の俺なら悟空達にも勝てそうだぜ。)
大いなる勘違いをしていた。
同ステージではビーデルも頑張っていた。
「ハアッ、ハアッ。」
常にサタン道場で大人を相手にしているために、戦いなれてはいるが、多人数相手は初めてなので少しぎこちなさは出ている。
しかしながらまだ小さなカーシの手助けを必要としない程の戦いをしているのは見事である。
「はあ、はあ、まだこんなにいるの。」
まだ子供といってもいいビーデルなので体力的にはきつくなっていた。
しかし、そんなビーデルであっても次々と大人が襲い掛かる。
普通の少女であればそのようなことはないが、ビーデルがミスターサタンの娘だということが知れ渡っており、少女であっても倒せば名が売れると思ってのことだろう。
「ビーデルちゃん頑張ってー。」
「こらー。ビーデルちゃんばっかり狙うなんてどこまで最悪なのよ。」
「くたばれ男ども」
「ビーデル、ビーデル。」
観客は全て健気なビーデルの応援に周り、相手は全て嫌悪すべき敵である。
「んなの関係ない。」
1人の巨漢がブーイングをものともせずにビーデルに襲い掛かる。
すでに二人を相手にしているビーデルには反応することさえもできない。
(や、やられる)
ビーデルが目をつぶる。
しかし痛みがビーデルを襲うことはなかった。
「貴様ら、こんな少女に手をあげるなんて、同じ男と恥ずかしくなるな。俺にぶっ飛ばされたくなかったら、消えろ。」
ビーデルのピンチを救ったのはヤムチャであった。
今までに見たことがないほどの勇姿であった。
これが後に災いするのであるが。
(俺今最高に輝いているぜ。ここでこの少女を救えば客の好感度も上がるし、美しい女性客を敵にはしたくないしな)
助けた理由は最悪であるが観客はヤムチャコールである。
「あ、あの、ありがとうございます。」
少し顔を赤らめながらビーデルがお礼をヤムチャに述べる。
「俺は女性の味方だ気にするな。(おいおい俺はこんな少女をも惚れさせちまった。俺の生まれ持ったかっこよさは罪作りだな)」
ヤムチャがキザに決める。
ビーデルの頬が赤くなっているのは今まで戦っていたためであり、決してヤムチャに惚れたわけではない。
「じゃあな俺は行くぜ。お嬢ちゃんがまだ残っていたらお手柔らかに頼むぜ。」
ヤムチャは片手を上げ挨拶したあと、再び他の敵を駆逐し始めた。
「私も頑張らなくちゃ。」
少しの休憩で体が休まったことで再びビーデルも戦いに戻る。そして10分後ステージに残っていたのはヤムチャとビーデルである。
「お、お嬢ちゃんも残ったか。」
「さっきは言いませんでしたけど、私はお嬢ちゃんじゃありません。ビーデルです。先程はありがとうございました。でも今回は手加減しないでくださいね。」
「ああ、いいぜ。どんとお兄ちゃんにかかってきな。」
「はい。」
もうすでにお兄ちゃんよりもおじさんの方に年齢は近いが。
ビーデルは先手必勝とヤムチャに向かって拳をつきだした。
「ハアッハアッ、ハアッ」
幾度もビーデルは拳をつきだすが当たることはない。紙一重でかわしている。このかわしかたが後々に問題となる。
「(おっこの子なかなかやるな。他の相手よりはかなり強いな。まあここは紳士的に…)
グホァ」
ヤムチャがビーデルの倒し方を考えている時に突如として激痛がヤムチャを襲った。
ヤムチャが腹を見ると、ビーデルの拳は紙一重で避けているが、ビーデルの拳に乗った小さなカーシがヤムチャの横っ腹に拳を叩きこんでいた。
ヤムチャは(またコイツか。助けなければよかったぜ。)と後悔しながら意識を失った。
「全てのステージで戦いが終わりました。激闘を勝ち抜いたのはこの八人だ。第一ステージ、悟空選手。
第二ステージ、ベジータ選手。
第三ステージ、ピッコロ選手。
第四ステージ、悟飯選手。
第五ステージ、トランクス選手。
第六ステージ、クリリン選手。
第七ステージ、天津飯選手。
第八ステージ、ビーデル選手。
以上の選手が勝ち上がりました。
次は第二回戦になります。
この八人が一対一での戦いになります。
では第二回戦の対戦相手を発表します。」
会場は対戦相手を聞くために静まり返る。
(カカロット、カカロット、カカロット)
(天津飯かこのビーデルって娘ぐらいしか勝てそうにないな)
ベジータやクリリンは祈るように聞き耳をたてる。
そしてついに対戦相手がアナウンサーによって告げられる。
「第一試合
ピッコロ選手VS悟飯選手」
「えっ」
「…悟飯か」
悟飯とピッコロが驚きの表情を浮かべる。悟飯には困惑の色も混じっている。だがそんなことは関係なしに発表が続く。
「第二試合
天津飯選手VSビーデル選手」
天津飯もビーデルも表情を変えない。
「第三試合
悟空選手VSトランクス選手」
「な゛、なんだと!!」
「おおっトランクスかよろしくな。」
「悟空さん、は、はい…お願いします。」
ベジータは落胆しながらも何かを考え始め、悟空はワクワクした表情になる。
トランクスも戸惑っているが、意を決したようだ。
この試合の発表は別の所にも火種を産んだ。
「トランクスは残念だな。おらの悟空さと戦うなんて。」
チチは自信満々にいい放つ。
「な、なによ、孫君だって強くなったトランクスなら危ないわよ。」
ブルマが言い返す。
「むっ」
「フン。」
『ひ、ひえぇ』
火花を散らすチチとブルマ。近くのウーロンと亀仙人は怯えている。
「第四試合
ベジータ選手VSクリリン選手」
「終わった…」
クリリンの悲痛な呟きをこぼした。
ベジータは第三試合のことで何か考えているのか、反応はなかった。
次回
師弟対決 ピッコロVS悟飯
悟飯の相手は最初はサイヤ人の息子同士のトランクスとも考えていましたが、私の独断でピッコロにさせてもらいました。