MrサタンZ 真の英雄   作:寅好き

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ピッコロVS悟飯 〈後編〉

「わたたた、わたーっ」

「うわーっ!」

ピッコロの熾烈な実戦稽古が始まった。

ただし、始めてこの師弟の稽古を見たものにしたら、一方的な蹂躙、もしくは強き者が弱き者を弄んでいるようにも見えるだろう。

「あちゃー、ピッコロやりすぎだろ。ガーリックジュニアの時のことを思い出すな。」

「そうか、おらはガーリックジュニアの時のことは知らねえが、やり過ぎだとは思わねえぞ。」

クリリンは相変わらずのスパルタ指導のピッコロに少々苦言を呈すかのように悟空に話すが、悟空にしたらそのようには見えていないらしい。

サイヤ人と地球人の戦闘への考え方の違いが如実に現れた場面である。

「どうした悟飯、お前の力はこんな物なのか。もうやめるか。」

「まだお願いします。」

ピッコロは悟飯の「まだいける」という宣言を聞くと口元を緩め、

「少しあげていくぞ。」

と声高に声をあげ悟飯に再度向かっていった。

「わた、わたーっ」

「くっ、くっ」再び始まる戦いでも、ピッコロが攻撃側、悟飯が防御側の構図は変わらなかった。

そのため観客達も目を背け出す者も出始めた。

Z戦士にすれば悟飯も立派な戦士であるが、初めて見る者にしたら、まだ年端もいかない少年だからである。

「ねえ、すこし酷すぎない。あの緑の人。」

「大人げないな。あんな小さな少年に大の大人がむきになって」

等の意見が大半である。

そしてここにも、

「ピッコロのやつ、おらの悟飯ちゃんになんの恨みがあるんだ。

もうやめてけろ。

悟空さもなぜ止めねえんだ。」

チチは悲痛の声をあげていた。

チチも悟飯とピッコロの修行を見たことがないためである。

別の所では。

「なんなのこの戦い。」

ビーデルがピッコロと悟飯の戦いのレベルの高さに唖然としていた。

とZ戦士以外のこの戦いの見方はこんな感じである。

だがこの戦いがすこしずつ変わりだしていた。

「わたーっ」

「見えた。」

ピッコロの横凪ぎの手刀を最小限の動きでかわし、

「いきます。魔閃光」

「ぬわっ」

隙ができたピッコロに悟飯渾身の魔閃光が炸裂した。

「はあはあ、やったのかな、でもピッコロさんはこんな攻撃じゃあ。」

巻き上がる煙を見ながら悟飯は呟く。

「ああ、これぐらいではな。」

煙が晴れてくると、少し傷付いたピッコロが現れるが、その表情には喜びが込められていた。

「段々調子を取り戻してきたんじゃないのか。」

今までとはうって変わって優しげな声で語りかけるピッコロ。

(そういえば、段々体の重さも取れてきたし、以前のように戦いの勘が戻ってきている。)

悟飯もそう考え出した。

「(やっぱりピッコロさんは僕のことを考えて)

ありがとうございます、ピッコロさん。

鈍っている僕を鍛え直してくれて。」

「フン、弱いお前に腹がたち、少しいたぶってやっただけだ。」

悟飯の感謝の言葉に、ピッコロは毅然とした態度で痛烈に返すが、悟飯には照れ隠しであり、素直になれないピッコロなりの返し方であることは分かっていた。

「本当に僕はピッコロさんの弟子でよかったです。

ピッコロさんのことは大好きです。」

「やめろ戦いの最中だぞ。」

悟飯の素直な心中の吐露にピッコロは焦りながらも返すが、動揺が目に見えるものとなっていた。

「次は僕からいきますね。はああああっ」

(な、なぜだ、悟飯が二人、いや三人に見えるぞ、残像拳か)

迫り来る悟飯、動揺し、汗?で視界がボヤけ、戦闘体制がととのっていないピッコロ。

勝負はもう決していた。

「はあっ」

「ぐはっ(お前の拳利いたぜ。)」

ピッコロは海上に落ち、悟飯の勝利となった。

「勝者悟飯選手。」

「ピッコロさん。」

アナウンサーの悟飯の勝ち名乗りと、どっと沸く観客達をも気にせず悟飯は一直線にピッコロの元に向かおうとしたが、

(よくやった悟飯よ。次の試合も頑張れよ。俺に構わず先にいけ。)

というピッコロの念話に押し止められて、寂しさと嬉しさがない交ぜになった状態で、悟飯は皆の元に帰っていった。

「悟飯やったな。」

「ああ、さすがは孫の息子だ。」

クリリン、天津飯は帰ってきた悟飯を讃えるが、悟飯は

「いや、あれはピッコロさんが…。」

と言葉を濁すだけだった。

「よくやったぞ悟飯。ピッコロも喜んでると思うぞ。」

悟空が悟飯の頭に手をおきながら、そう悟飯にいうと少しばかり悟飯は気が楽になったようである。

天下一大武道大会は続いていく。

「第二回戦。天津飯選手とビーデル選手は武舞台にお上がりください。」

アナウンサーの声がかかり、ビーデルと天津飯が武舞台に上がる。しかし天津飯の表情は固かった。

アナウンサーはビーデルの説明をするたびに歓声が上がるがそれさえも天津飯には聞こえていないようである。

「天さん…」

心配そうにチャオズも成り行きを見守るしかなかった。

「では第二回戦始めてください。」

「お願いします。」

アナウンサーの声が上がると、ビーデルは天津飯に礼をし、構えをとる、しかし天津飯は微動だにしない。

そしてしばらくたつと、急に天津飯は口を開いた。

「すまんが、棄権する。」

「えっ…。どうして?」

天津飯の棄権という声にアナウンサー、観客、ビーデルそしてZ戦士も驚きを隠せないでいる。

天津飯はビーデルの問いに答える。

「以前の俺ならば相手が少女であろうが子供であろうが、倒すことも、殺すことも躊躇しなかただろう。

しかし今は違う。

確かに俺は高みを目指しているが、いたいけな少女を倒してまで高みを目指そうとは思わん。」

それだけをいい終えると天津飯は舞台を降りて行った。

少し間があいた後にアナウンサーがビーデルを勝者と名乗りをあげた。

第一回戦と第二回戦が終了した。




色々な意見があると思いますが、私の中では殺し屋を諦めた天津飯は紳士であると思っているのでこのようにさせてもらいました。

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