「おいクリリン、本当に俺とやりあう気か?
今の俺はカカロットと殺りあいたくてしょうがないから、手加減してやれんぞ。」
「マジかよ…」
すっかりと綺麗に修復された舞台の上でベジータとクリリンが向かい合っている。
しかしもうすでに勝負は決まっているのかもしれない。
クリリンは蛇に睨まれた蛙のようになっている。
「クソッ俺はどうすれば。」
ついには頭を抱えて悩みだすクリリン、その時だった、ベジータから妥協案が出された。
「俺は早くカカロットと戦えればそれでいい。お前が今棄権をして、俺がカカロットを倒して優勝したら賞金はお前にやる。どうだ悪い話ではないだろう。」
さすがはサイヤ人の王子、強きものであり、最大のライバルである悟空とすぐにでも戦えれば金などどうでもいいというのだ。
といっても世界的な大富豪のブルマの夫であるから金が要らないということもできるだろう。
「!!」
ベジータの提案に驚くクリリン。
「よっしゃあ当然棄権だな。しかし少し悩んだふりをするか。(俺も武道家だ。そんな誘惑には負けんぞ。)」
あまりの同様に心の声と言うべき言葉が逆になっているクリリンであった。
というように円満に解決した。
ただそれに納得できない者が4名ほどいた。
時給850円ていう安さであるのにこきつかわれて舞台を綺麗にした係員だ。
『俺達の仕事が無駄になった…』というように。
まあ係員の悲哀は置いといて、ついに決勝戦進出の4人が決定した。
――――
決勝戦の会場ではまだ戦いが終わっていない所もあった。
順に見ていこう。
そこには赤き溶岩がそこらかしこにある、煮えたぎる溶岩エリアである。
その場には、オレンジ色の長いカールした髪を持ち、鋭い目つきをし、薄緑色の肌を持った女性である。
その美貌はサイヤ人や魔人といった一部の例外を除けば皆が見惚れるといった位の女性である。
そしてカーシはその女性の周りをジロジロと熱心に観察しながら歩き回っていた。
「なんなんだお前は。」
「う~ん、お前どっかで見たことある気がする。」
女性の問い掛けにもカーシは答えることなくマイペースで行動している。
「あっそうだ思い出したぞ。サタンの元秘書だ。」
カーシの頭に浮かんだのはセルゲームの時までいた女性秘書である。
その秘書は有能であったが一身上の都合でサタンの元から去っていた。
なのでこの天下一大武道大会の打ち合わせなどもサタンが1人で行っていたのだ。
秘書が辞めてからは、サタンは時々寂しそうであり、逆に仕事は増えていた。
そんなサタンを見ていたからこそカーシは言った。
「お前俺達の仲間になれ、死にたくなかったらな。」
カーシはにこやかではあるが、後半の言葉には残虐さが感じられ、決して嘘とは思えない。
「バカを言うな。誰がお前の仲間になんぞなるか。
お前などボージャック様の敵ではない。すぐにボージャック様に殺されるだろうしな。」
女の言葉に少し思案するカーシ。
そして
「そうか、俺がそのボージャックってやつを倒せばいいんだな。元々するつもりだったしな。
じゃあお前は俺が倒す所を見せないといけないから拘束するな。」
そういうとカーシは腹の肉をひとつまみちぎり長く伸ばし、グルグルと回し女に投げつけた。
「な、なんなんだこれは。」
「ギュッ」
カーシの肉は女に巻き付き拘束した。
溶岩地帯の戦いは終わりを告げた。
――――
陽炎渦巻く砂漠エリアでは、突如砂の中から現れた男ビドーによりカーシは首を絞められていた。
「死ぬがいい。」
力一杯にカーシの首を締め付けるビドー。もしこれが太った相撲取りであれば死んでいただろう。
しかしカーシが相手では話が違う。
ぐぅ~~、そんな中かすっとんきょうな音がカーシの腹から聞こえた。
「あーあ、腹減ったな。お前はクッキーと飴玉どちらが好きだ。」
「貴様なにを言っているんだ。」
いきなりのカーシの場違いな問いかけに聞き返すビドー当然の行動ではあるが、その行動はカーシには受け入れられることはなかった。
「まあいいか。クッキーになっちゃえ。」
「な゛なんなん――」
ビドーはすべてを言い終わることはなく巨大なクッキーと化していた。
カーシの非道な攻撃によりビドークッキーができあがった。砂漠エリアでの戦いも終わりを迎えた。
――――
最後はおもちゃが所狭しと転がっているおもちゃの国である。
ここでは、紫色のダーバンをかぶり、高貴さを醸し出す小さな男である。
しかし、すでにこの男はカーシに追い詰められていた。
「なんで俺の超能力が効かないんだ。」
「もう面白いことはできないのか。
じゃあ死ぬか。」
カーシが下す死の宣告。
カーシは男に手を向ける。
手にしだいにとんでもない気が集まり、収縮する。
星一つでも簡単に消し去るほどの黄色い気集まっている。
「腹減ったな。これが終わったらサタンからお菓子をもらおっと。」
「なに。」
カーシの発した呟きをたしかに男は聞き逃さなかった。
「しめた、はあ」
男が手を振り上げるとおもちゃの国ががらっと姿を変え始める。
「おおっ」
現れた世界にカーシは気を霧散させるほど驚き、歓喜の声をあげた。
現れたのはお菓子の国であった。
「なあ、このお菓子全て俺が食っていいのか。」
「ああいいぜ。(死ぬまで食い続けな)」
男の了承を得た瞬間カーシはお菓子に飛び付き傍若無人に菓子を食べまくっている。
「菓子に囲まれて死ぬがいい。」
それを傍目に男はその世界から脱出するとともにその世界の唯一の出入り口を閉ざした。完全に世界が隔絶された。
次回 決勝戦開始