陽炎渦巻く砂漠地帯では場違いな光景が存在していた。
サタンの胴着を着た大きな男と、山吹色の胴着を着た男、そして青タイツを着た少しM型の男の三人が黙々と大きなクッキーを食べていた。
なぜ戦闘ではなくこのような光景になっているのか、それは約10分前に時を遡ることになる。
――――
カーシと悟空が仲良くビドークッキーをわけあって食べ始めた時であった。
「カカロットー!!」
どこかで聞いたことがある声が聞こえてきた。
声が聞こえてきたところにはすでにサイヤ人の王子ベジータの姿が、
「んお、へひーはひゃえか。ほうひはんは。」
「悟空口の中の物を食ってからいったほうがいいぞ。俺もよくサタンに叱られてるからな。」
悟空はカーシに言われた通りによく噛んで、ゴクリと飲み込んだ。
そして、仕切り直し。
「よっ、ベジータ何でここにいるんだ。
もうエリアのボスっちゅうやつは倒したんか?」
「ボスなど俺にはどうでもいい。
俺はお前を妨害しに来たんだからな。」
そうベジータはが試合前にアナウンサーに確認したのは他選手の妨害についてであった。
大会開催側は、決勝戦が行われる会場の広さは広大であるのでまず選手同士がかち合うことはあり得ないと思い了承したのであるが、このサイヤ人の王子には広さなどあってないようなものであった。
「勝負しろカカロット!!」
妨害しに来たと言いながらすでに勝負しろと詰め寄るベジータ、しかしそこに入ってくる者がいた。
「落ち着けベジータ。
お前もこれ食え。」
「貴様は確かカーシとかいったな。
お前にも聞きたいことは山ほどある。
話してもらうぞ。」
それだけベジータがいうとその場にどかりと胡座をかき、
「さっさとよこせ」
と食欲に負けていた。
「ほれ。」
カーシはビドークッキーの頭の部分を割ベジータに手渡す。
「なに、俺はたったこれだけだと!!カカロットお前のほうが大きいだと、卑怯だぞ。」
ベジータはカーシからもらった部分て悟空が持っている食べかけの部分を見て不平を言う。
「わかったよ、ベジータ。怒るなって、これやるから。」
「フン、それでいいんだ。」
悟空が自分の持っているビドークッキーの足の部分を割与えることによりベジータは落ち着いた。
とまあこんな事があり、この光景が広がることになっていた。
――――
別のエリア、悟飯とビーデルはオモチャの国に降り立っていた。
「結構広いのね。
ねえ、さっさと行きましょ。エリアボスは誰かは分かっているからその人と戦ってもらってあなたの力を見せてもらうわ。」
「待ってよビーデルさん。」
少年と少女の時でも同じようにビーデルに主導権を取られ、ひっばり回される悟飯であった。
「あれどこにもカーシさんいないわね。
あ、あれは。」しばらくビーデルと悟飯は歩き周りエリアボスを探したが一向に見つかることはなかった。
そうこの場のカーシは隔絶されたお菓子の世界に自ら留まると言うか、封印されているからだ。
しかし、ビーデルは何かを見つけていた。
「悟飯君行こう。
あそこに人影があるわ、多分カーシさんだと思うわ。」
「え、カーシさん。あビーデルさんちょっと待ってよ。」
先に走っていくビーデルを追う悟飯。
しかし、悟飯はある違いに気づくのだった。
(あれ、カーシさんっていったら前にセルゲームでセルを倒した人だったけど。
あそこから感じる気はカーシさんじゃない。
カーシさんの気からは悪い感じはしなかったけど、あの気からは邪悪な感じがする。まずい。)
「ビーデルさんだめだ。」
悟飯が気づいた時には、その邪悪な気から気弾が放たれていた。
「え、きゃあ。」
迫りくる気弾に悲鳴を上げるビーデル。
しかし、その気弾はビーデルに着弾する前に、ビーデルの前に立ちはだかった悟飯によって遥か彼方に弾き飛ばされていた。
「大丈夫ビーデルさん。」
「あれ、悟飯君。私を助けてくれたの?」
少しぽーっとしながら悟飯を見上げながらビーデルは問いかける。
「うん、そうだよ。
ビーデルさん、ここは少し危なくなるから離れてくれる。」
「うん。」
ビーデルに語りかける悟飯の口調には優しさが感じられたが、悟飯が気弾を放った人物を見ながら言った「離れてくれる。」には普段の悟飯からは到底感じられない、有無を言わせぬ気迫を感じたのでビーデルは素直に言うことを聞き、離れていった。
ビーデルが離れて行くのを確認したのちに、悟飯は厳しい視線を男に向けた。「お前は何者だ?いきなり気弾を放つなんて。」
「俺はブージン。死んでもらう。」
悟飯の問いかけに紫色のダーバンを巻いた男は名を名乗り、いきなり襲いかかった。
「はあ。」
迎え打つ悟飯、互いに拳を打ち合う、ブージンは小柄ではあるがかなり強く悟飯を押し始める。
(こいつ強い。このままじゃ。)
「はあ。」
気弾を放つが避けられ、気弾を放つことによりできた隙に鳩尾に一撃をくらい、動きが止まったところに背に強烈な肘うちを浴びせる。
「うわーっ」
悟飯は地面に叩きつけられた。
「たいしたことなかったな。」
ブージンは砂煙が舞い上がった場を見て勝ち誇ったように呟くが、次の瞬間には驚きの表情に変わる。
砂煙が晴れるとそこには、黄金のオーラを纏い、碧眼をした悟飯が先程とは全く違い好戦的な笑みを浮かべながら立っていた。
「本気で行くぞ。」
超化した悟飯とブージンの第二ラウンドが始まる。