「あたたたた、おーイタ~。」
なぜか突如空から降ってきてボージャックに強烈な先制攻撃を決めたサタンが打ち付けた頭を抱えながら唸っていた。
頭には大きなこぶが出来上がっており、ある意味ギャグキャラ的なダメージの受け方である。
そのこぶをビーデルが撫でながら聞く。
「パパどうして空から降ってきてたの?」
当然の疑問であろう。
そのビーデルに説明するために、まだ残る痛みに堪えながらビーデルに話す。
「パパはビーデルのことが心配で、急いでコースターに乗り込んだんだが急ぎすぎていてシートベルトをしていなくてな、ハハハハハ。」
サタンは照れながらビーデルに話す。
そのサタンのいつも通りの光景に今までの恐怖が緩和されるビーデルであった。
ある意味場を和ませ、安心感を与えるという面では悟空と似ているのかもしれない。
だが、すぐにサタンは真剣な表情に変わる。
「ビーデル、ここは危険だ、悟飯君を連れて早く逃げるんだ。」
今までのほとんど見たことがない程の真剣な表情と、語り口調にビーデルもここが戦場であることを再認識する。
「でもパパ、私はパパのことが心配だよ。
一緒に逃げようよ。」
ビーデルは瞼に涙をため、今にも涙を流しそうになりながらサタンに懇願する。
それは当然であろう。
とんでもない力を持っていたZ戦士をも赤子の手を捻るが如くほふってきた化け物を、自分の父のサタンが1人で相手をするというのだ。
心配にならないはずがない。
そんなビーデルの頭に手を乗せ腰を下ろし目線をビーデルにあわせ、落ち着かせるように笑顔で話かける。
「大丈夫だ、パパは世界チャンピオンなんだぞ。
誰にも負けはしないさ。
それにパパはお前の花嫁姿を見るまでは死ぬつもりもないからな。
安心して悟飯君を連れて行きなさい。」
サタンの語りかけにビーデルは静かに頷くのであった。
「あっ、パパ。
このヤムチャさんはどうしよう。」
逃げようとしたビーデルが突如止まり、ヤムチャに視線を向けながらサタンに問いかける。
「この人はパパがあとで連れていくからビーデルは気にせず悟飯君を連れて行きなさい。」
再度ビーデルは頷くと、振り返り振り返りしながらも悟飯を抱えて戦場を離脱していった。
「さあ、いったか。
私の娘を逃がしてくれたことには感謝をしよう。」
サタンは睨み付けるようにボージャックに視線を向ける。
そこには恐れも何もない英雄サタンの姿があった。
「どうせこの星の人間たちは遅かれ早かれ死ぬことになる。
それに今はこの俺に膝を付かせたお前を殺したくて仕方がないからな。」
ボージャックは身も凍るような残忍な表情で怒りを露にしている。
「いいだろう。
この世界チャンピオンのミスターサタンが相手になろう。」
サタンは構えをとり、真剣な眼差しでボージャックを見据える。
「雑魚が楽には死なせんぞ。
ハアアアア!!」
ボージャックは溢れる気を解放する。
その体から暴風のような突風が辺りに巻き起こり、大地は揺れ、地面には亀裂が入る。
しかし、まだまだそれは序章であった。
次々と亀裂が入った地面から破片が浮き出す、大小に関わらず。
(しまったついついやつがビーデルを傷つけそうになったことに怒り、後先考えずに行動したらこんなふうに戦う状況になってしまったが。
どうしよう、このまま戦ったらわし死ぬかも、カーシさん早くきてくれ~。)
サタンはすでに涙目である。
今までの英雄の姿は微塵もなく、足はガタガタと震え、辛うじて立っているという状況である。
「おい、お前。わしは本当に強いぞ、今謝るならまだ許してやる。いや、許しちゃおうかな~。」
サタンは後退りしながらボージャックに語りかける。
「行くぞ。」
ボージャックは強烈な踏み込みからサタンめがけて襲いかかり、悟飯やトランクスを葬ってきた拳をつき出す。
「ご、ごめんなさい~。」
その拳はサタンに見事にかわされる、サタンが土下座をし、頭が下がった時にちょうど上空を通過した。
しかしこれがボージャックの怒りに火を注いだ。
「ふざけるな!!」
サタンが土下座から顔を上げた瞬間にボージャックの拳がサタンの顔面を直撃し、サタンは後方の岩にまで吹き飛び叩きつけられた。
「しまった。弄んでやるつもりがついつい力が入ってしまい殺してしまったか。」
ボージャックは吹き飛んだサタンはもう死んだて判断したのか背を向けて去ろうとした時だった。
「イタタタタタ、お~イッテ~。」
死んだと思っていた、サタンが顔に手を当てて地面を転がりのたうち回っていた。
「は、鼻血がこんなにも。
手加減なしだもんな~。」
垂れ下がる鼻血を袖で拭いながらサタンはたちあがった。
「な、なぜだ。あの小僧を葬った一撃より遥かに強かったはずだ。
なぜ死んでいない。」
ボージャックは驚愕し、表情を歪ませる。
そう今は悟飯を相手にしたときより遥かに強いフルパワー状態である。
その攻撃すら「イッタ~」と鼻血で済ませてしまうサタンに驚きが隠せないボージャックである。
サタンはサタンで
「悪くてちっこかったブウのパンチのほうが痛かったな。」
と界王神界で受けた純粋悪のブウのパンチを思い浮かべ身を震わせていた。
「貴様絶対に許さん。
この世から消し去ってくれる!!」
プライドを傷つけられたボージャックは怒りに燃え上がり再度サタンに襲い掛かり豪雨のような攻撃をサタンに開始した。
――――
「でりゃあ!!」
「効くかっ。喰らえハアッ!!」
「おーー。すごいぞ二人とも。」
赤いなにやら肉のような壁に囲まれただだっ広い空間で、黄金のオーラを撒き散らしながら、とてつもない戦いを悟空とベジータは繰り広げ、カーシはそれを手を叩きながら喜んで観戦していた。
だが喜びも束の間、カーシを衝撃が襲う。
カーシの開けているのか、閉じているのかわからない棒のような目が開かれた。
「な、なんでだ。少し離れたところにサタンの気がある。
その気が少しずつ小さくなっていく!!サタン今行くぞ、死なないでくれ。」
サタンの気を感じ取ったカーシは意識を本体に戻し、サタンを救出に向かう。
他のカーシはというと、煮えたぎる溶岩エリアのカーシはグルグル撒きになったザンギャを抱え向かう、また別のおもちゃの国改め、お菓子の国のカーシはというと、大好きなお菓子を食べるのを止める、しかし空間が閉鎖されているため出口がない。しかしこのような状況は一度悪に吸収されている時に体験しているため、その経験を生かし、「サタンー!!」という大声で空間に穴を開け脱出し、サタンの気に向かって飛び立った。親友兼家族のサタンを救出すべく4人のカーシが戦場に集結しようとしていた。