「ああブウさんも来てくれたんですね。寂しかったですよ~。」
「俺が来ないとサタンの悩みも解決できないだろ。」
さてサタンの悩みとはなんだろう。まあ皆さんは分かると思いますがあれしかないです。
「わしの悩み、セルを倒したのは悟空さんや悟飯君なのに、わしがその手柄を奪ってしまった。地球中の人をわしは騙している。それだけじゃない、歴史に残ったことで未来の人々をも欺くことになってしまう。わしは良心の呵責に耐えられない。なんとかしてわしが、わしがセルに。」
以上がブウのおかげで綺麗になったサタンの独白です。
「でもブウさんなんでセルゲームの前ではなく、第24回天下一武道会の前日なんですか。」
サタンは疑問に思っていたことを正直にブウに尋ねる。
「セルゲームの前にいって俺がサタンの弟子と言ってセルを倒してもいいけど、全く認知されていない俺が倒しても本当にサタンの弟子かとなるし、サタンが霞む。それならば第24回天下一武道会にサタンの弟子として出てサタンの弟子と認知され、決勝でサタンが勝てば俺よりサタンが強いとなって、俺がセルを倒しても問題なくなるってことだ。」
「……」
あのブウが正論を切々と語っている。それもサタンよりも先を読んで。
サタンはそれを嬉しくも思いながらも寂しくも思っていた。
サタンがブウと合ったときにはブウは子供のようであった。それがもう一人前の大人の考えである。自分の子供が自分から離れていってしまうような寂しさを感じていた。
「そこまで考えてくれてありがとうございます。じゃあ大会にエントリーしにいきませんか?」
サタンは目を潤ませながら感謝の意を示し、大会出場のエントリーをしに行こうと提案するが、
「まだだぞ。俺は顔と服と体格を変えて、肌の色も変えたいぞ。」
「え?」
ブウの発言にまたもや悩まされるサタン。その真意とはサタンが尋ねる。
「これは過去だ。この先に前の俺が復活して暴れまわる。サタンの弟子と同じやつが暴れまわったらサタンは悪者になっちゃうぞ。それじゃあ嫌だ。ということで顔、体格、服、肌の色を変えたいんだ。」
さらに先を読んでいるブウ。感心するしかなかった。
「サタンに頼みがある。服を買ってくれ、サタンと同じのがいいぞ。」
「ブウさん…。」
ブウの発言にまたもやうるうるさせられるサタンであった。
サタンとブウは家に帰ってきた。ただ家の前には数多くの記者が集まっていた。
「サタンさん、明日の天下一武道会への意気込みをお願いします。」
「こちらにも。」
「サタンさんお願いします。」サタンはあっという間に記者に囲まれて、マイクを数多く突きつけられる。しかし、サタンはあの時のサタンではなかった。ブウと同じく大人になっていたのである。
「皆の期待に答えられるように頑張るよ。それと私の隣にいる者は私の弟子で明日の天下一武道会でデビューする。皆応援してやってくれ。」
『……。』
それまでうるさいほどだった記者達は一様に静かになっていた。
あのいつも強気のサタンが殊勝な態度で答えたからである。
皆珍しい物を見たように驚いている所をサタンはブウとともに過ぎ去り、家に入っていった。サタンの家はとても広く豪華なホテルのように部屋が多く、赤い絨毯が敷き詰められている。
「パパー。」
家の奥からビーデルが走ってくる。
「あ、あの娘がビーデルなのか。かわいすぎるーー!!」
音速を遥かに越えたスピードでビーデルに近づき抱きつき、頬擦りをする。
「やめてよパパー。くすぐったいよ。」
やめてよと言いながらも嫌がってはいなかった。まだこのときのサタンはビーデルにはあきれられてはいずに、よい父親であった。
「パパ、隣の人は誰?」
ビーデルは初めて見るブウが誰かと聞く。
「ああ、この人はブ、いやカーシさんという人でわしの新しい弟子だ。とても強いんだぞ。」
サタンは紹介する。ブウと言う名はやめようとブウと話し合い、菓子が好きだからということでカーシという名であることにしたためである。
「カーシさん。私明日の天下一武道会に出るから少し練習に付き合ってくれませんか。」
「ビーデル父さんが今日は練習に付き合ってやるぞ。」
「え、本当に。」
ビーデルはサタンは忙しいと思い気を使ってブウに話をしたのだが、予期していなかったサタンの提案に喜び勇んで道場に向かった。
「サタンいいのか、俺が付き合ってやってもいいんだぞ。」
「明日の試合の対戦相手については分かっているし、ビーデルに父親らしくしてやらないとな。」
綺麗なサタンは伊達ではなかった。
その後サタンはビーデルの相手をし、大会にエントリーし、ブウにあうサイズの服がなかったので、服屋を呼んでオーダーメイドの胴着をつくってもらうなどの充実した時間を送り、次の日の天下一武道会を迎えた。